峠への招待 > ツーリングフォトガイド > ’197 7 > 礼文島・利尻島
礼文岳
北海道宗谷市庁礼文郡礼文町(標高490m)
利尻山(利尻富士)
北海道宗谷市庁利尻郡利尻町/東利尻町(標高1719m)
とうとう稚内までやってきた。
稚内駅に泊まり、翌日は始発列車に合わせて駅員にたたき起こされる。
北海道に入って初の船旅が始まる。自転車を分解し輪行袋に収める。
分解したほうが料金がいくらか安い。手間であるが、先の長い旅ゆえ無駄使いはできない。
礼文島まではかなりかかった。どこまでも広がる紺碧の海、真っ青な空。この最果ての地で船に乗っている雰囲気だけでも旅情満点だった。
礼文島に入港すると、賑やかな歓迎が待ち構えていた。旅館の案内人が宿ののぼりをもって客を待っている。次々に車に乗り、気がつくと残されたのは自分一人ともう一人髭を伸ばしたむさくるしいサイクリストだけだった。
和歌山から来たこの人は、日本一周をしているアドベンチャーサイクリストだった。その後数日間は彼と行動をともにすることになった。
TOEIオーダーフレームに12mmはあろう頑丈なパイプキャリアを装備したキャンピング車には、生活に必要な道具がぎっしり装備されていた。
さらにボトルの代わりにウイスキーのビンがささっている。俺の燃料はアルコールだと豪語する、果てしなくビッグな旅人である。
入港して組み立てていると、なんとシートピンが折れてしまった。その時ボルトをもらったのが彼だった。
礼文島の名物男であるらしい彼は顔が広く、地元の人と顔なじみの様子。そのビッグさにまたまた唖然。
利尻へ渡る船は同じであったが、各々の走り方を楽しむ。大海原に浮かぶ利尻富士。その大きさと美しさに感動する。
利尻への船は漁船並みの小さな船だった。これで大丈夫かと思わせる心細い船だった。
利尻へ降り立ったサイクリストは4人だった。ここまで来ると自然と皆心が通いあう。
水平線に沈む太陽、空を赤く染め、沈んでいくその光景にしばし時を忘れてしまう。本当に美しい瞬間だ。
本州では味わうことのできない色と静かさがこの島には残っている。この島は夏にその魅力を見せてくれる。
冬季の極寒からは想像もできない穏やかな姿を現してくれる。
旅人には冬の厳しさを知ることはできないが、家の造りや、屋根の形から少なからずその自然の厳しさが伝わってくる。
その日はユースに泊まった。
いろいろな人が集まるユースは旅の魅力でもある。
いろいろな人生を送っている人たちと語るのは何よりの糧になる。そして翌日は皆で島を巡ろうということになった。
いい島だった。
北の果てにそびえる利尻富士を眺めながら、旅で知り合った仲間達と島内を一周した。
和歌山から来た日本一周サイクリスト、青森の少年、都内から輪行で来た学生、ユースで知り合った若者。
フル装備のキャンピングあり、ランドナーあり、そしてママチャリありの賑やかな集団が島を巡った。皆それぞれの目的をもって、それぞれの旅を楽しんでいる。
つわものばかりの集まりで、それぞれのスタイル、それぞれの走り方を楽しんでいる。
郷土資料館に立ち寄ったり、オダトマリ沼を見に行ったり、のんびりと一周する。山、緑、沼、全てが天然色で鮮やかな色彩を奏でている。
残された自然がここにはあるといってもいい。島を離れる時が辛い。いい島だけに離れがたい。
また何度でも来たくなる素晴らしい島だ。
峠への招待 > ツーリングフォトガイド > ’197 7 > 礼文島・利尻島