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1977年8月9日(火)


北海道キャンピングも凄いことになった。

スタートこそ仲間に見送られて順調だったが、北海道に着いてすぐに駅の待合室で寝ることに。

秋田のバイクライダーと寝袋を並べて一夜を過ごした。


そして世紀の有珠山大爆発事件。

命かながらオロフレYHに逃げ込んで、やっとまともなキャンピングが始まった。

今日は、ようやく本来のテント泊。支笏湖の湖畔に早々とキャンプサイトを設営した。
車場も朝から混雑している。


やっぱり一人キャンプは最高だ。

誰にも邪魔されず、遠慮もいらない。ましてや細かいYHの決まり事もない。

好きな時間に好きなことやって、好きな時間に眠ればいい。やっぱりテントだ。



一人用のテントなんて、皆さん使ったことありますか?

横になって眠るだけの、ただの雨避け、風除けぐらいなものだ。


腰の高さぐらいしかなく、へたすりゃ踏みつぶされてもおかしくないほどの貧弱さだ。

それでも、自分にとっては大事な大事な御殿。このテントで、この先北海道をずっと巡るのだ。
朝から混雑している。


北海道に渡って初めてのテント泊。洞爺湖では、有珠山噴石の影響でキャンプなど自殺行為だった。

今日はやっとゆっくりキャンプを満喫できる。

さっそく何もかも準備を整えて夕食に取り掛かる。


と言ってもたいしたものは何もない。お湯を沸かして済ませるものばかり。

ご飯を炊いたり、肉を焼いたりなんて芸当は、まだまだ装備が揃っていない。

簡単に夕食を済ませ、あとはテントの中でラジオを聴くぐらいが唯一の楽しみ。


そんな貧相な夕食を見かねた、お隣のファミリーキャンプの方からお肉の差し入れがあった。

「よかったらどうぞ、食べきれないので」・・・あまりに惨めな姿に手を差し伸べてくれたのだろう。

本人はこれで十分と思っていても、周りからはお金のない「貧乏旅行」と見えたのだろう、きっと。


翌日は真夏の快晴。湖の早朝は爽やかだ。

いよいよキャンピングもこれからが本番だ、と心も弾む。

朝食も簡単に済ませ、まずはオコタンペ湖への軽い散策を計画する。


テントはそのままに、軽装備でキャンプ場を後にする。

貴重品を身に着け、サコッシュを肩にかけ、軽快に恵庭岳を巻くように登り始める。


すぐに展望台が現れ、汗をかいた体を冷やそうとヤッケを脱いで小休止する。

画面の右に写っているブルーのヤッケ・・・あんな所に脱いでしまって・・・大丈夫かな?
場も朝から混雑している。


さあ、ここからが事件の始まりです。

実はこれからの話は、サイクルスポーツ 1978年6月号に掲載された記事だ。

当時サイスポで失敗談を募集していたので応募したところ、見事に採用されたのが以下の記事だ。

ただし、ここに掲載されている写真はまったく関係ない、別のツーリングの写真になっている。
(上の写真が正解。編集部のミスですね)



ドジな旅

悪夢! 消えちまったキャンピング全費用

昨年の夏、ひとりで北海道へ行った時のことである。

支笏湖でキャンプした翌日、オコタンペ湖へ行くことにした。

かねてからエメラルドグリーンで神秘的と聞かされていたので、早く見ようと少なからず興奮していた。


オコタンペ湖は恵庭岳をぐるりと回った所にあり、そこまではかなりの上りである。

テントの中に荷物を置き、カメラなどの貴重品を持って湖へ向かった。


うっすら額に汗をかくころ、ちょっとした展望台に着く。

ここからは支笏湖の眺めがよいので、ヤッケを脱いで心地よい風に当たりながら休憩した。

しばらくして出発し、オコタンペ湖を見たい一心で高度をかせいでいった。


30分もたつと、グッと勾配がきつくなってきた。

「これじゃ帰りのダウンヒルは寒いぞ」と思った瞬間、「あっ、ヤッケがない!」

ガーン! さっきの展望台に忘れてきたのである。


ヤッケだけなら別にどうということはないのだが、ポケットには、これから20日余りキャンビングする全資金が入って
いるのだ。

汗水たらして稼いだ6万円の大金である。焦った。非常事態に目の前が真っ暗。

ポケットには150円しかない。もし、ヤッケが見つからなかったら、この150円で生きなければならない。


下った。ありったけのスピードで下った。何台もの自動車とすれ違った。

もう30分もたっている。拾われてしまっただろうか。オレはなんてドジなんだ。

なんてバカなんだ。そして、自転車って、どうしてこう遅いんだ。


もっと早く、もっと早く! タバコが風で飛び去るのも構わず、ひたすら下った。

そして、やっと展望台に着いた。

観光客がいる。大勢いる。オレのヤッケは・・・


あったァ!すかさず中身を調べる。一枚・・・二枚・・・すべてある。

異常なし。オレはその場にヘナヘナと座り込んでしまった。

あまりの緊張から解放されて、気が抜けてしまったのである。


もうオコタンペ湖へなど行く気もなく、しばらくボーッとしていた。

そして、なぜかしょんぼりして、そのままテントへ戻った。


教訓=やっぱり郵便貯金にしておくべきだった。

☆サイクリング歴7年 ☆愛車=自作改造ランドナー
光場も朝から混雑している。
 


すっかり意気消沈してキャンプサイトを片付けた。

まあ、お金が無事であったことが何よりだ。よかった、本当によかった。


もし150円しかなかったらどうしただろう。交番に行くしかないな・・・なんて考えながら下っていた。

まだまだ甘いな、自分は。もっと真剣にならないと・・・と反省しながら次の目的地、襟裳岬へ向かった。
ら混雑して

 

(1977/8/9 走行)


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