峠への招待 > ツーリングフォトガイド >  ’1984 > 川原湯峠




今から約36年前のツーリングを思い出して書いている。

当時の写真や8mm映像、地図を見て振り返っているが、さすがに記憶があちこち不明だ。

不確かな記憶で書いているので、間違いや勘違いがあるかもしれないのでご了承願いたい。
 



群馬県川原湯温泉の南に、川原湯峠という破線の峠がある。

最近の地図ではすっかり道筋は消えてしまっているが、昔の地図にはしっかりと記載されている。

その昔、ニューサイだったか他の雑誌だったか、記憶が定かではないがこの峠に関する記事が確かあった。
 


難所の峠と知ると行ってみたくなる。

この頃は、怖いもの知らずでなんでも挑戦していたので、さっそくプランニングしてみた。
 


前日夜に現地入りして、林道の片隅でテント泊。

好きな時に旅立って、好きな所で寝れるんだから最強でしょう。

気持ちのいい朝をむかえて、朝飯づくりだ。

 


川原湯峠の情報はほとんどない。明確な地図も、ルートもよくわかっていない。

だいたいこの辺りを行けば峠の道筋に出会うのではないか、というぐらいの考えであった。


どのルートを辿って峠を目指したのか、今となっては定かではないのが残念だ。

当時の写真、8mmを何度も見直して、どこから走り始めたのか検証したがわからない。
 


ヒントになる映像がなく、車をデポした地点も不明だし、集落の場所も不明だ。

どこからか林道に分岐し、緩く登り始める。雰囲気はいつもの峠越えと変わらない。
 


やがて道は集落の間を抜けて、さらに山の頂を目指すように変化してきた。
 


さすがにちょっと違うだろう、ということで地元の人に道を尋ねてみる。

どうにもよくわからない。峠に至る道など知らないような話っぷりだ。
 


仕方なく林道を登り詰めると、なんとがっかり・・・「終点」の標。

どうやらこの道は行き止まりで、ここでおしまいだ。
どっと疲れて倒れこんだ。


この場所にあった設備は何だったろうか? 電源設備のような感じがする。

このあたりの地図には電波塔のマークがある。ひょっとしてここなのか?

 


ここから先の行動が不明だ。

終点から先へ無理やり進んだのか、それとも戻って別の道から進んだのか・・・

その後の8mm映像は、いきなり藪漕ぎシーンが続いている。ここはどこなんだろう?

 


一気にハードな山岳コースになってしまった。

しかし、 まだまだこんなレベルならたいしたことはない。多少の担ぎなら何とかなる。


時間も十分にあるし、どこまで行けるのかどんどん進むしかない。

ほとんど誰も入らないのだろう。沢沿いの道は荒れに荒れている。
 


明確な道筋があるわけでもなく、ただ沢の跡を追って辿っていく。

担いで、倒木を越えて、そして渡渉もしながら先へ進む。


きっとこの先に峠に至るルートが見つかるはずだ、との思いだけで進んでいく。

かなりハードな行軍だ。さすがに腕も疲れ果てるほど、自転車を小脇に抱えて歩いてきた。
 


もういい加減にしてくれ・・・と思う頃、なんと目の前に衝撃の光景が飛び込んできた。

「な、なななんと・・・滝だ!」 なんと我々は滝の上に出てしまった。


この先は、真下に滝が落下している・・・まったく峠へ至るルートではなかった。

あまりの衝撃で言葉にならなかった。周囲を見渡しても、ここを抜けられる気配は全くない。


完全に行き止まりの沢渡りのルートだった。

気持ちを落ち着かせるために、とりあえず腹ごしらえして一息入れる。
 


ここはいったいどこなんだ? 現在地点がさっぱりわからず、もうこれでは撤退しかない。

地図を見て、いくら考えても答えが出ない。もうだめだ、あきらめよう。

同じ道をひたすら戻る。屈辱だ。嫌になるほどつらい戻り道だった。
 


戻るとなると帰りは軽快だ。登ってきた林道を気持ちよく下る。

結構スリリングなダウンヒルで、コーナーリングもなかなか楽しめる。
 


今日一日、いったい何だったのか。夕暮れが近づいて、どっと疲れて帰路につく。

越えられなかった峠。というか、それ以前にルートさえ見つけられなかった。

やはり、もっとしっかりと調査してから挑むべきだった。

 


車に戻って、今日のキャンプ地を探す。明日の予定に合わせ、都合のいい空き地に車を移動だ。

今夜も三人で楽しいキャンプの開始。コールマンのランタンに灯をともせば、一気に周囲が明るくなる。

ワンカップで一杯やりながら、今日の苦労話に盛り上がった。
 

(1984/9 走行)


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