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1985年8月16日


大井川の橋の下でメンバー全員が合流し、新金谷駅へ車で移動する。すぐに井川駅までの輪行準備だ。

合流してきたメンバーは、フロントバッグ一つで身軽だが、我々二人は大変な荷物だ。


寝袋は輪行袋の中に押し込み、サイドバッグとフロントバッグを先に運ぶ。

どうしても輪行袋と2回に分けて運ばないと無理だ。

改札を通って、ホームにたどり着くとホットする。あとは皆で手伝って車内に放り込む。
 


今回は、カーサイ + キャンピング + 輪行 というサイクルツーリング最強の楽しみ方だ。

行きと帰りはカーサイで楽をして、現地で行動範囲を一気に広げてキャンピングを楽しむ。


ロングツーリングでなければ、なかなかできないプランニングだ。

千頭でアプト式列車に乗り換える。

アドベンチャー感たっぷり、最高に楽しい列車旅の始まりだ。
 


さすがに観光シーズンだけあって、車内は満員だ。

大自然の中をゆっくりと走るトロッコ列車からの眺めは、変化に富んだ奥大井の魅力を満喫できる。

次々と変化する景色と、ダイナミックな景観に乗車時間の長さも感じない。
 


わくわくする鉄道旅を楽しみ、終点の井川駅に到着した。

はとバスツアーの団体客が多く、駅は大変な賑わいだ。皆さんいったいどちらへ向かうのでしょう?

真夏の日差しの中、汗を流しながら自転車を組み立てる。

 


今日の予定はお散歩だ。キャンプ地を見つけて、井川湖周辺をのんびりと散策する。

井川湖の自然歩道をキャンピング3台で走り始める。


先ほどの喧騒が嘘のように、静かな湖が目の前に広がってきた。

標高680mの井川湖。明日から二日かけて海まで下るキャンピング旅。

ずっと下れるから結構楽だな、なんてわくわくしながら今日のキャンプ地を考える。
 


素敵な広場を見つけた。キャンプ場なのであろうか? 

やわらかな草地が広がり、東屋やベンチが用意されている。周囲の雰囲気も文句なしだ。

誰もいなく、開放感も抜群だ。ここにテントを張っても問題はなさそうだ。
 


さっそくここに決定して、テントを設営する。荷物を置いて身軽になってポタリングだ。

フロントバッグ一つになると別次元の軽さだ。どれだけ重たい荷物を積んでるのかがよくわかる。

自然歩道を辿っていくと、森の中に「夢の吊り橋」が現れた。


橋の長さ、高さも結構あり、歩いて渡るだけでも緊張する。

橋自体はしっかりしているので問題ないが、歩くとユラユラと揺れるのでやはり怖い。

乗って渡れるか?なんて無謀なチャレンジをしてみたが、途中で断念。(危険なのでやめましょう)
 


その先は自転車を担いで登ると、巨大な井川大仏が現れる。

「世界平和と人類の繁栄を祈念す」と書かれた案内が建っている。

こんな山の中に、こんな巨大な大仏が出現してたまげるばかり。
 


軽いポタリングのつもりだったが、真夏の炎天下で汗だくの一日になった。

キャンプサイトに戻って夕食の準備だ。しかしこの日は食糧難に悩むことになった。


何かしら手に入るだろうと思っていたのだが、まったく食料品店などない。

あるのは観光客向けのお土産店だけだ。当然夕食になる食材などほとんどない。
 


手に入ったのは多少の野菜と、そば、缶詰などだけだ。

豪華なキャンプサイトになるはずだったが、ひもじい夕食になってしまった。

まあ、それでもビールさえあれば文句なしだ。貸し切りの東屋で楽しいキャンプの宴を満喫した。
 

 

1985年8月17日


気持ちのいい朝を迎えた。やわらかい草地で寝心地も最高だった。

まぶしい朝日を浴びて、今日も体が目覚める。

キャンプサイト、朝のひと時が贅沢な時間だ。
 


残念ながら、朝食はそばしかない。ほかに食べるものは何も残っていない。

そばを全部茹でて、皆ですするだけの朝食。サイクリストにとっては全然カロリー不足だ。

なんとみじめな朝ごはんだろう。こんなにひもじい朝食は初めてだ。
 


地図を眺めれば、標高700mから海まで下るのだからずっと下り基調だと思うのも当然。

山から海なんだから楽勝でしょう・・・なんて考えての作戦だった。

ところがどっこい、そんな甘いコースではないことをこのあと思い知らされる。


走り始めると、眼下に豪快な山岳風景が広がってくる。

くねくねと蛇行する山道と、それに並行するかのように辿るトロッコ列車。

上から見下ろす優越感と浸っていると、道は間もなくアップダウンを繰り返す。
 


こんなダートの路面を登ったり下ったり。ただでさえ重量のあるキャンピング車。

じっと路面を見つめながら真夏の山道を走り抜ける。


石ころが多く、結構走りづらい。グリップを失い砂埃が舞う。

暑い、重い、苦しい・・・ずっと下りだけだと思っていたのだが・・・そんな感じがずっと続く。
 


かなりの秘境だ。何もない。何かトラブルがあったら結構危険な地帯だ。

車も通らない、水も食料もない。連絡手段が何もない。

大井川鉄道の駅へ行っても何もない。そもそも駅に立ち寄ることさえ至難の業だ。


次第に空腹に・・・もう少し下って大きな町まで出ないと食料は手に入りそうもない。

長い長い山岳ルートの走りだった。快適さなどなく、暑くて辛い下りであった。


ようやく見つけた食料品店でカップラーメンを手に入れた。

今日の昼飯は川原でピクニック気分。こういう時のカップラーメンはうまいですねぇ。
 


やっぱりキャンピングはたいして走れない。暑さで体力も限界だ。

今夜はキャンプ最終日。最後の夜は豪華に盛り上げようと場所選びに悩む。


昨日みたいな条件のいい場所はそう簡単に見つからない。結局今夜は、恒例の川原に落ち着く。

条件はいま一つだが、なかなか満足いく所はそう見つからない。
 


食料を手に入れ、夕食の準備に取り掛かる。

最終日のメニューは、腹いっぱい食べられるカレーだ。


やっぱりキャンプにはカレーだ。大汗かいて、一日中体を動かした後のカレーは絶品だ。

ビールをたらふく飲んで、カレーを3杯もお代わりすると、さすがに満腹で動けなくなる。

たいした道具はないけれど、こんなにうまい食事はやっぱりキャンプならではだ。
 

 

1985年8月18日


ゴツゴツした川原で一晩寝たが、さすがに寝心地は最悪だった。

寝袋なんて役に立たないほどあちこちが痛く、一晩中全身を指圧をされているような感じだった。


それでもやっぱりキャンプは楽しい。テントから出ると、大自然が目の前に広がる。

朝は忙しい。朝食の準備、片付け、パッキング。休んでいる暇はほとんどない。
 


路面もすっかりよくなって、舗装路を気持ちくよく走る。

もうすっかり暑さにも慣れ、体調も絶好調だ。

日の出とともに起き、よく食べ、よく動き、よく寝る一日が健康の秘訣かもしれない。
 


大井川鉄道に沿って下っていくと、至る所で鉄道マニアがカメラで待ち構えている。

車で来て、撮影ポイントを移動しながらお気に入りの一枚を狙っている。


我々もちょっと写真を撮りたくなって、待ち構えることにした。

狙うのは観光用SL列車だ。時刻表を調べて、見通しのいい線路脇でしばらく待つ。
 


こんなところで写真を撮っていたら怒られそうだが・・・

やがて小さく煙を吐くSLが遠くに見えてきた。次第に近づくその姿に心臓が高鳴る。


8mmカメラで通り過ぎる雄姿を撮影する。あまりに近くてすごい迫力だ。

通り過ぎ、今度はどんどん小さく消えていく姿を見送る。いやぁ、とにかくすごいシーンだ。
 


標高もかなり低くなってきた。もうそろそろこの旅も終わりに近づいてきた。

すっかりダウンヒルのテクニックも上達し、重い自転車のコーナーリングが楽しくて仕方ない。
 


店先でおいしい牛乳で一服。

その後もSLに出会いながら、線路に沿って下っていく。

飽きないコースだ。川沿い、線路沿いだが
単調な景色ではない。
 


炎天下にさらされ続け、さすがに午後になってグロッキーだ。

広い倉庫のシャッター前にひっくり返って体を冷やす。


そしてついにゴール地点まで戻ってきた。

井川湖から二日がかりの旅。結構距離があり、そう簡単なコースではなかった。


前半の大井川キャンプ、そして後半の井川湖キャンプ、いやぁ、楽しい夏休みだった。

気が付くと日焼けで全身真っ黒だ。

これで明日通勤電車に乗ると、いつものように視線を浴びるんだろうな。

 

(1985/8/16〜18 走行)


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