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1991年5月4日(土)


ゴールデンウィークの新宿駅は旅行客で大混雑だ。

今日から4人で1泊2日のツーリング。3名で小淵沢まで輪行し、1人がカーサイで合流だ。

千葉からやってくる中央本線の直通列車も、大混雑しているという放送がホームに流れる。


まずいな、乗れるかな? と不安になる。入ってきた列車は当然満席。自転車を置くだけでも苦労するほど。

仕方ない、いつものように通路で我慢するしかない。

小淵沢で降りて、カーサイメンバーと無事に合流。


今回のツーリング、目的は明日の「信玄棒道」だ。

初日の今日は、小淵沢に宿をとって、周辺の軽いツーリングを考えていた。


まずは宿の確保だ。車を置いて駅周辺の宿を探す。運よく2軒目にして宿を確保することができた。

これで一安心。宿に車を置かせてもらい準備を整える。

すでに11時近くになろうとしている。最小限の荷物をもって走り出す。


どこを走ろうかと考えていたが、釜無川の南側にちょうどいい林道が地図上にある。

小淵沢を起点に、手頃な距離で周回コースがとれそうだ。

食料を仕入れ、釜無川に沿ってまずは塩沢温泉を目指す。


釜無川から離れ塩沢温泉方面へ分岐すると、「林道雨乞尾白川線」の標識が現れた。

しっかりと整備された林道のようで、路面もきれいに舗装されている。

車も全く入って来なく、しばらくは小さな川に沿って静かな林道を楽しめそうだ。


すでに時刻はお昼。まだほとんど登っていないが、さっそく川原へ降りて昼食とする。

まあ今日は、初日でのんびりとポタリングムードなので、時間を気にせず楽しくランチタイムを楽しむ。

手に入れた得意の食材を適当に調理してお腹を満たす。


天気もいいし、いい気候だし、そして誰もいない。

やっぱりこの季節のツーリングは、何もかも明るく、そして爽やかでいいですね。


お腹を満たして登りに入るけれど、勾配がきつくてさっそく押しの状態だ。

この林道、まだ完全舗装ではなく、すぐにダートへと変わってしまった。


沢を渡る所では、路面が池のようになっていて、すっかりリムまで浸かるほどの深さがある。


時には壁のような坂も現れ、押すのさえ厳しい。

ちょっと道路の作り方に無理がある気がしてならない。


4WDのオフロード車が余裕で走り抜けていく。

しだいに林道も路面が荒れ始め、小石が多くなり落石も転がっている。


かなり路面に落石が目立つようになってきた。大丈夫かなと、思わず上を見上げてしまう。

相当厳しい所に道を作っているということだろう。


大小の石や枝木を避けながら登っていく。

ピークを越え下りに入ると、スリリングなダウンヒルが待っている。


小石の転がるダウンヒルは非常に危険だ。

ハンドルを持っていかれれば、一瞬でフロントから転倒しかねない。

それでも大きな声を出しながら、勢いよくダートを攻める。


なかなか大変な下りだ。

スピードは出るものの、油断すればあっという間にひっくり返る。

展望が広がる中、路面から目が離せない。緊張の連続がしばらく続く。


狙ったラインを行きたいが、そうはいかない。

行きたくない方向に、自然とハンドルが向かってしまうのがいつも不思議でならない。

細いタイヤでは疲れるだけだ。無理せず慎重に下るしかない。


激しいダートを抜けると舗装路に変わった。そして小さな雨乞隧道のトンネルを抜ける。

路面も良くなって、ようやく豪快なダウンヒルを楽しめる。


気持ちのいい下りだ。舗装路はなんて快適なんだと実感する。

邪魔されるものは何もなく、広々とした林道をハイスピードで下っていく。


さて、ふもとに下りてくると現在地がよくわからない。そんな時は地元の人に聞くのが一番。

甲州街道まで出てきたが、その先の道もよくわからない。


小淵沢方面へ最短で行く道は現在工事中で、まだその先は繋がっていないらしい。

迂回するとなると、かなり遠回りになるため何としてでも通り抜けたい。


まあ、とりあえずどうなっているか見に行くしかない。

釜無川を渡る立派な橋が出来上がっている(鳳来橋)。このまままっすぐ行けば小淵沢駅なのだが・・・


橋の先は舗装が切れてダートになっている。まだこれから作りますよ、という状況で行き止まりだ。

工事関係の車両なのか、車が数台止まっている。


まあそんな時でも徒歩や自転車なら何とかなるもの。さっそく、我々お得意のジャングル探検の開始だ。

ここさえ突破できれば、ほぼ直線距離で宿まで戻れる。なんとしてもここを越えたい。

かすかに山道が出来上がっていて、奥へ奥へと進む。そして担ぎの場面に。


なんとか行けると思ったのだが、ついに体一つでも厳しい状況になってきた。

先頭のメンバーが自転車を置いてその先を調べに行く。残ったメンバーは下で待機。


「どう? その先は?」

「町が見えるぞ! 道も続いている!」

しかし自転車を担ぎ上げて越えるのは無理と判断。それではどうするか・・・


「宿までどれぐらいかな?」
(歩けるかも?)

「1kmぐらいじゃないかな?」
(地図は見てないけれど、もう近いというイメージが 頭にあった)

「車を取りに行ったほうが早いんじゃない? 車のキー預けてあるんだよね?」
(1kmじゃ歩いちゃおうかな?)


お互いの姿がよく見えない中、協議の結果一人が歩いて宿まで行き、車を取ってくることに決定。

町が見えるから適当に歩いていけば到着できそうだ。


「じゃーねー行ってくる・・・」とメンバーの姿は見えなくなった。

自分は別れたメンバーの自転車分と2台を押しながら橋まで戻った。


たぶん戻ってくるまで1時間もかからないだろう。お茶でも沸かして待ってますか、と汗を拭う。

そして、 車のルーフキャリアには3台しか積めないで、1台は分解することに。


お茶を飲みながらしばらく待つが、いつになっても戻ってこない。

道がわからないのかな? なんて心配しているとようやく遠くから1台の車がやってきた。


到着するなりもう参ったという表情で、

「何が1kmだ! あぁ〜疲れた!」 とかなり怒っている。

「えぇ? もっとあった? 2kmぐらい?・・・」

(地図でちゃんと調べたら、”直線距離”で2.5kmもありました・・・スミマセン)


この
格好で、手ぶらで、延々1時間近く歩いて宿にたどり着き、そして車まで戻ってきたんですから・・・

本当にお疲れさまでした・・・おかげで全員無事に宿に戻れました。


今宵も笑い話で盛り上がった宴会となった。

ゴールまで辿り着けないというツーリングも珍しいが、歩いて車を取りに行ったというのも初めて。

判断が正しかったかどうかわからないが、また一つ思い出に残るツーリングとなった。



いったい当時の道路はどうなっていたのか? 

当日使っていた地図がまだ残っていたので引っ張り出してきた。


国道20号から先、工事中の鳳来橋までの道は記載されていない。

さらに鳳来橋から先は、全く道らしきものは存在しない。

どこから担ぎ上げ、どのように山を越え、どの道を辿って小淵沢へ歩いて行ったのか定かではない。


「今昔マップ」というサイトがあって、昔の地図と現在の地図を比べられる便利な仕組みがある。

それを見比べると、なんとなく辿った道筋がわかる気がする。


工事中だった道は、橋の先でループ状に一気に高度を上げて、その先で繋がっている。

ループが必要なほど、川からの標高差、勾配があるということだろう。


山道を偵察に行って反対側の道が見えたというのは、小淵沢方面からの道が出来上がっていたのだろう。

あとはループ部分の工事を残すのみとなっていたのかもしれない。


この地図からわかったことは、我々はこのループ部分の代わりに一生懸命山道を担いでいたのだろう。

どうりで目が回りそうになったわけだ・・・


距離: 20.3 km
所要時間: 0 時間 00 分 00 秒
平均速度: 毎時 0.0 km
最小標高: .653 m
最大標高: 1163 m
累積標高(登り): 465 m
累積標高(下り): 691 m

(1991/5/4 走行)


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