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1991年8月15日(木)


吉田川の川原で気持ちのいい朝を迎えた。

まるで昨夜のことが幻だったったかのような、明るくて誰の姿も見えない朝だった。


何だったんだろう、あの光景は・・・光と唄と、そして踊りに包まれた世界。あぁ、素晴らしかった。

今夜もまたあの郡上踊りが繰り広げられるのか。もう、あきれるほど素敵な町だ。

そんなキャンプサイトを片付け、我々は次の町へ向かう。


キャンプの魅力は今更言うまでもないが、日の出から日没まで全て自分の体で感じることができることだ。

全ての光、全ての音、全ての温度、そして全ての臭い。何もかも自然の全てと向き合える。

テント泊でなければ絶対に経験できないことばかりだ。


郡上八幡の町の素晴らしさを、隅から隅までこの肌で感じることができた。

きっとこの町は、この後何度も訪れたくなる町になるに違いないと感じながら町を後にする。


相変わらず猛暑の毎日。手足はすでに日焼けで真っ黒だ。

自動販売機があれば、すぐに休憩だ。工事現場の日陰でも小休止。今日も厳しい一日の始まりだ。


楽しかった長良川を離れ、いよいよ道は油坂峠を越えて九頭竜湖へ向かう。

荷物がなければ簡単に登っていけそうな勾配も、この暑さと連日の疲労でもうギブアップだ。

とにかく暑い。舗装路の峠道は、日陰もなく過酷すぎる。


しばらく行くとこんな表示が現れた。災害復旧工事で旧道油坂トンネルが通行止めのようだ。

まあ本線を行ったほうが当然楽なので、我々には関係のない通行止めだ。

暑さから逃げるように越美通洞に入る。


ヨロヨロの走行では危ないので、歩道をのんびり歩きながらトンネルを通過する。

トンネル出口に近づくと、徐々に視界が明るくなり、展望が開けてきた。


そして岐阜県から福井県に入る。

この辺りは滅多に来ることがないだけに、福井県の標識を見ると、ちょっと感慨深いものがある。


やっと下りに入る。久しぶりのダウンヒルだ。

ハンドルにビデオカメラをセットして、ダウンヒルの様子を撮影してみる。

うまく撮れているのかさっぱりわからないが、路面からの衝撃で、たぶん画像はメチャクチャだろうな。


九頭竜湖が近づいてくると、湖畔でキャンプしている姿が目に入ってきた。

これぐらい静かで空いていれば最高だが、周囲には何も設備がない。

我々の今日の目的地は、九頭竜湖駅の先のキャンプ場だ。まだかなり距離がある。


九頭竜湖
は、九頭竜ダムによって九頭竜川がせき止められてできた広大な人造湖だ。

湖岸の道はフラットで、大きな橋や小さなトンネルを抜けていく。

スケールが大きく、大自然のど真ん中といったワイルドな雰囲気に満ち溢れている。


車道から離れ影路隧道へ入っていくと、そこはもう誰もいない静寂の世界だ。

満面の水をたたえる九頭竜湖を眺めながら、休憩所で小休止。

今日もそろそろいい時間になってきた。今日の寝場所はどうなるのかと不安にもなる時間だ。


福井県の道路地図でキャンプ場を確認する。キャンプ場のマークが記載されている地図はありがたい。

どんなキャンプ場なのかさっぱりわからないが、我々はここへ行くしかない。


食料をたっぷり仕込んで、早い時間にキャンプ場に到着できた。

ここのキャンプ場はとても環境がいい。広いし、椅子、テーブルが整備されていて快適だ。

そして、暗くなる前からさっそく大宴会の始まりだ。


酒のつまみをあれこれ作りながら、冷えたビールをいただく。

このクーラーBOXは最高だ。夏のキャンプでは必須のアイテムになってしまった。

キャンプはとにかく忙しいが、これがまた楽しい。不便こそ贅沢な遊びだと思っている。


竹串も欠かせないアイテムだ。こんなもの持って走っているサイクリストもまずいないだろうな。

きゅうり竹輪に、ウィンナー、ピーマン焼き。テーブルがあると食卓も豪華だ。


ビールがいくらあっても飲めるほど喉が乾いている。まったく水みたいな感覚だ。

日が暮れてくれば雰囲気も最高だ。小さなランタンだが、この灯りがまたいいものだ。

広いキャンプ場なので、周囲を気にせずキャンプを楽しめる。実にいいキャンプ場だ。


買い出しに便利なキャンプ場なので、ビールを追加で買いに行く。

これだけつまみが豊富だと、いくら飲んでも全然飲んだ気がしない。


結局500mlビール9本飲んでお腹いっぱいに・・・

18時ぐらいから飲み始めて、延々3時間ぐらい宴会してましたかね。いやぁ、楽しいキャンプでした。


走り疲れ、飲み疲れ、そして満腹になってテントに転がり込む。

ふわふわの草地が実に気持ちいい。

キャンピングも3日目の夜。さすがに疲労もピークに近づいてきた。

距離: 46.3 km
所要時間: 7 時間 40分 00 秒
平均速度: 毎時 6.0 km
最小標高:  209m
最大標高:  690m
累積標高(登り):  602m
累積標高(下り):  343m

(1991/8/15 走行)


1991年8月16日(金)


キャンピングも4日目。すっかり生活も慣れて、体も出来上がってきた。

昨晩あれだけ飲んで食べて死にそうだったけど、やっぱり凄い消費カロリーなのだろう、元気な朝を迎えた。


さすがに体は疲れ切っている。

思うように体が動かないが、キャンピングはとにかく動かないことには何一つ片付かない。

やることは山ほどある。呑気にしていたら、あっと言う間に時間が過ぎてしまう。


忙しい。食事に炊事、片付け、パッキング。そして撮影、プランニング・・・

無事に走り出せるまでにはかなりの時間が必要だ。


今日も猛暑の中を走り出す。今日は下り基調の楽なコースだ。

キャンピングも毎日欲張りすぎると、体も休まらないし余裕もなくなる。

適当なコースを適当に走り、好きなところでキャンプする。これがキャンピングの得意とするところだ。


永平寺は何としても見学したかった。今日はそのための移動日となった。

今日は辛い登りもなく、九頭竜川に沿って下りが続く「休息日」だ。

越美北線に沿ってのんびりと走る。たまにはこうした日があってもいい。


下唯野という駅で小休止。小さなホームがあるだけの無人駅だ。

休んでいると、ちょうど電車が通過するところだった。

ホームの時刻表を見て驚いた。なんと一日に10本も走っていない・・・信じられない時刻表だった。


今日は気合が入らない。道も下り基調だし、線路に沿った道筋はのんびりポタリングの雰囲気だ。

脚に負担のかからないスピードでチンタラと走り続けていると、今日もねぐら探しの時刻になってきた。

さて、本日はどこで寝ましょうか?


明日の永平寺見学に便利なところがあればと、地図とにらめっこ。

見つけたところが「永平寺緑の村」という施設。広いグラウンドの裏辺りが良さそう・・・


なるべく人目につかない所で静かにキャンプしたいと周囲を探索する。

見つけたのがその脇にあった小さな遊具公園。なんだなんだ?とワンコが寄ってきた。


いい場所を見つけた。小さな東屋に椅子とテーブルが設置されている。そして水道も使える。

ほとんど人の姿もないし、これ以上好条件の場所はなかなかないだろう。

ワンコの飼い主さんがいなくなると、誰もいない我々だけの貸し切りキャンプサイトとなった。


今夜も素晴らしい食卓が出来上がった。そして真っ赤な夕焼けが空一面に広がってきた。

今日も暑かった。連日の猛暑に今宵も冷たいビールが次々無くなっていく。

明日は温泉宿に泊まる予定なので、キャンプは今夜が最後だ。


キャンプ最終日のご馳走は、好例の「腹爆発カレー」だ。

散々ビールとつまみを楽しんだ頃、ご飯も炊けてカレーも煮詰まる。

7時頃から飲み始めて、9時になってからいよいよ大盛カレーの登場だ。


小さなコッフェルで何杯もお代わりできるほどの量が出来上がっている。

これを全て片付けないと寝れない・・・最終日のキャンプはいつもこんな地獄が待っている。

いつものように、その後一歩も動けないほど食いすぎて、倒れるようにテントの中に転がり込んだ。

距離: 50.6 km
所要時間: 7 時間 30分 00 秒
平均速度: 毎時 6.7 km
最小標高:  44m
最大標高:  428m
累積標高(登り):  155m
累積標高(下り):  480m

(1991/8/16 走行)


1991年8月17日(土)


早朝から地元のおじさんがやってきて、延々と世間話で盛り上がる。

こんな所にテントを張って怒られるかと思ったら、とっても理解のあるおじさんで助かった。

食べきれなかったカレーにうどんを入れて朝食をいただく。


今日もいい天気だ。今回のキャンピングは本当に天気に恵まれている。

今日は温泉宿泊りの予定なので、永平寺へ向かう途中でキャンプ道具全てを宅急便で送り返す。


大きなダンボールに一杯になるほどの荷物だ。持っただけでもかなりの重量だ。

身軽になった自転車は驚くほど軽い。まるでトラックからスポーツカーに乗り換えたような感じだ。


永平寺は、夏休みシーズンとあって驚くほどの観光客でごった返していた。

いつもは静寂の厳かな修行の場なのだろうが、この多くの人では全くその雰囲気は感じられない。


首にタオルをかけていたら、「タオルはおやめください」と注意されてしまった。

やはりここは修行の場所で、あまりふざけた格好は御法度のようだ。

時刻はちょうどお昼。我々も食事処で精進料理を美味しくいただく。
(この時のタオルは、さすがに怒られなかった)


永平寺からは一山越えて、一乗谷へ向かってダウンヒルだ。

フロントバッグ一つになって、ダウンヒルが異常に速い。スピードが違いすぎる。


時間がなかったので、「一乗谷朝倉氏遺跡」を大急ぎで見学する。急いでいたので、ここでの写真が一枚もない。

すぐに一乗谷駅へ向かう。今日はここから芦原温泉まで輪行だ。


大汗をかきながらたんぼの横で分解する。

汗を拭く間もなく、それでもなんとか間に合ってホームへ。


本日の最後は大忙しだった。無事に乗車できてほっと一息つくことができた。

それでも乗車時間は30分少々なので、のんびりする暇もなく芦原温泉駅に到着した。


本日の宿を探すために駅の観光案内所へ向かう。

係の女性を笑わせながら世間話で盛り上がり、すぐに宿を手配してくれた。これで一安心だ。

輪行も荷物がないので本当に簡単だ。すぐに組み立てて本日の宿へ向かった。


ずっとテント泊だったので、宿に泊まると本当に何もかも楽だ。あらためて日頃の便利さに気付く。

本時も無事に走り終えた。さっそく風呂上がりに乾杯だ。

さあ明日は最終日。長かった今年のキャンピングもいよいよ終わりだ。

距離: 18.9 km
所要時間: 6 時間 00分 00 秒
平均速度: 毎時 3.1 km
最小標高:  26m
最大標高:  296m
累積標高(登り):  232m
累積標高(下り):  288m

(1991/8/17 走行)


1991年8月18日(土)


寝るのも食事も、明かりも水も、風呂もトイレも全て用意されている。宿って楽ですねぇ〜

昨日までの疲れが一気に回復したかのような元気な朝だった。

テント泊ばかりでなく、こうして旅の途中に宿を利用したほうが体が楽だ。次回からはそうしよう。


最終日はのんびり遊んでいられない。さすがに福井県から東京まで帰るとなるとかなり時間がかかる。

午前中は観光ポタリング。午後には輪行しないとならない。


日本海まで出てくるとやっぱり気分が違う。スタートの岐阜駅から延々と走ってきて、ついに日本海だ。

「国定公園 越前松島」は美しい景観だ。美味しいイカ焼きを食べながら、海女さんの働きっぷりを眺める。


東尋坊も観光客で一杯だ。テレビドラマによく登場してくる眺めが目の前に広がる。

確かにここから転落したらひとたまりもないだろう。凄い断崖絶壁だ。


のんびりと観光して、再び芦原温泉駅へ戻る。

輪行袋にお土産を突っ込んで、いよいよこの旅も終わりが近づいてきた。

最後に、お世話になった観光案内の係の人に差し入れを渡して列車に乗る。お世話になりました〜


あとは次々と列車を乗り継いで、米原から新幹線に乗車する。

長かった、そして楽しかった今年のキャンピングも無事に終了した。


とにかく毎日毎日が充実しすぎて、もう頭の中の記憶がめちゃくちゃだ。

これだからキャンピングはやめられない。来年もきっとどこかに出かけることだろう。

距離: 25.4 km
所要時間: 4 時間 00分 00 秒
平均速度: 毎時 6.3 km
最小標高:  3m
最大標高:  40m
累積標高(登り):  52m
累積標高(下り):  52m
 

(1991/8/15〜18 走行)


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