峠への招待 > ツーリングフォトガイド >  ’1991 > 南八ヶ岳林道




2週間前にしらびそ峠へ行って、またすぐに出かけることになった。

11月は峠越え、林道ツーリングには最高の季節。もったいなくて家にじっとしてはいられない。


今回選んだコースは、ニューサイNC道案内より「南八ヶ岳林道」だ。

NC道案内は、毎回魅力的なコースを紹介してくれる素晴らしい企画だ。

ニューサイクリング No.329
1991年11月号
 
NC道案内
南八ヶ岳林道
 

1991年11月23日(土)


例によって、「新宿発 夜行普通列車 441M」で輪行する。

この日はやたらと輪行が多く、数えただけでもなんと30台近くのサイクリストと一緒になった。


我々は別車両だったので影響はなかったが、この列車の人気はやはり凄い。

小淵沢に5:01に到着。小海線に乗り換えるまで駅の休憩所で暖をとる。


小海線に乗り換え、野辺山駅で降りる。さすがにもう冬も間近で寒い。

組み立てるのも寒くて大変だ。思うように手が動かない。


走り始めてすぐに温かいそばで腹ごしらえ。

今回我々はNC道案内とは逆コースを行く。まずはJR鉄道最高地点へ向かう。

スタート地点からこの標高だ。さらにここから1900mまで登る。


天気はまずまずだが、すでに山は白く冠雪している。果たして向かう先は大丈夫だろうか?

冬支度で大きなリュックを背負って登り始める。直線的な登りが前方に続く。

気持ちのいい高原の中、走り始めると体も暖まってくる。


寂しい所だ。この時期にわざわざこんな所へ来る人もいないだろう。

有名な観光地でもなく、民家もお店もない。人の姿はなく、車も全く通らない。


舗装路が終わり、小砂利のダートへ変わった。

まだまだ走りやすいダートで、ゆっくりと標高を上げていく。


やがて辛い登りに早くも歩き出す。

標高1600m付近で、「南八ヶ岳林道」の標識と、鎖で閉じられたゲートが現れた。

そして路肩にはいよいよ雪も登場してきた。


林道は道幅も広く、しっかり締まったダートで走りやすい。

ランドナーでも太めのタイヤなら十分だろう。

ここからが本格的な林道になるということだろう。その前に小休止してエネルギーの補給だ。


すぐに林道は冬景色に変わってきた。風も少々吹き始め厳しさを増してくる。

雪で靴も滑り、押して歩くのも苦労する。


まだ積雪も少なく、林道も薄化粧といった感じだ。これぐらいの雪だったら逆に楽しめそうだ。

車の轍の跡を狙って漕いでいくが、なかなか思った通りのラインを走れない。

やはりここではMTBの走破性は別格だ。太いタイヤで雪道も軽々と走ることができる。


かなり風も強くなってきた。そして初めての林道ということもあって、先の状況が不安になってくる。

地図と高度計が頼りになってくるが、高度計も誤差があって正確とはいえない。


周囲の状況、林道の曲がり具合などから現在地を特定する。

目標1900mに向かって、あといくつ、もう少しと気合を入れる。


日の当たり方によって積雪量もかなり違っている。

ダートの路面がしっかり見える所では、難なく乗車できるが、積雪量が多くなってくるともう乗れなくなる。


12月になろうとしている時に、こんな標高の高い所にいて、雪まで現れて大丈夫なのか?

日が陰って気温も下がり始めた。さらに雪も深くなってきて、より不安になってくる。


強風の向かい風でさらに走りにくくなってくる。

そして時々雪が消えたかと思うと、次のカーブでまた現れる。

ペースもかなり落ち、もう乗っても押しても同じぐらいのスピードになってきた。


ずっと登っているからここまでの走行距離はまだ10kmに満たない。最高速度もたったの17kmだ。

空腹の中、雪道の押しを頑張って、ようやくピークに到着した。

そして見事な富士山が我々を出迎えてくれた。


なんとかランチタイムを楽しめる時間に到着できた。

雪で缶ビールを少々冷やして乾杯だ。


日が出てきたが
風が強く、寒い中カップラーメンで暖まる。

見事に開けた大展望が目の前に広がる。首を大きく振らなければ全てを見ることができないぐらいだ。


たっぷり1時間の休憩後下りに入る。いよいよMTBの本領発揮だ。

この下りのためにMTBで来たと言ってもいいぐらいだ。


かなりのハイスピードでダウンヒルできる。

全く恐怖感がなく、どんな路面も自由自在に走り抜けられる。

いやぁ、やっぱりランドナーとは別次元の走りだ。


路面が安定してくればランドナーも結構楽しめる下りだ。

明るいうちに下れれば、危険な所も少ないので一気に下ってしまうだろう。


舗装路になると今度は立場は逆転する。MTBのブロックタイヤでは抵抗がありすぎて遅い。

ここぞとばかりに今度はランドナーの走りが光る。


海ノ口牧場付近では直線的な道が続く。

両側の牧草地帯に放牧された牛たちを眺めながら下っていく。


その昔、1978年1月に海ノ口牧場を訪れた時を思い出し、再び同じ場所へ行ってみる。

もう記憶が定かではないが、当時の雰囲気は変わらず残っていた。


最後は再びダートの林道を下って佐久海ノ口駅を目指す。

そろそろ暗くなり始めるが、ここまで下りてこられればもう安心だ。

登りは色々と苦労したが、下りは走りやすくトラブルもなかったので順調だった。


本日の宿は、海ノ口温泉和泉館。

暗くなる前に着くことができて本当によかった。


昨日の
夜行列車からの一日はとても長かった。

睡眠不足と今日の雪中行軍、寒さと疲労でもうくたくただ。


夕食後、20時過ぎには横になって21時にはすっかり寝てしまった。

走った距離はとっても短かったけれど、中身はぎゅっと詰まった充実したコースであった。

距離: 28.3 km
所要時間: 7 時間 45 分 00 秒
平均速度: 毎時 3.7 km
最小標高: 1039 m
最大標高: 1903 m
累積標高(登り): 678 m
累積標高(下り): 987 m

(1991/11/23 走行)


峠への招待 > ツーリングフォトガイド >  ’1991 > 南八ヶ岳林道