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1991年11月10日(日)


標高1900mで迎える朝は別世界だ。

寒さも厳しいが、何よりも朝の空気がすがすがしい。

日の出前の空がしだいに赤くなり始めると、美しいグラデーションに染まってくる。


外に散歩に出てみる。一瞬で目が覚めるほどの冷気だ。

山荘前でテント泊している人は、この寒さの中大丈夫だろうか? と心配になるほどだ。


この標高から日の出を拝めるとは幸運だ。

雲海が広がり、南アルプスの山容がくっきりと見え始めると、いよいよ日の出の時刻だ。

炬燵に入りながら、窓を開けて日の出を見る。とにかく、寒くて寒くて仕方がない。


山荘の泊り客は皆朝が早い。我々が一番最後の出発になったかもしれない。

山荘前には、遠山森林鉄道の車両が保存されている。

遠山森林鉄道は、第二次大戦中の昭和15年、当時の帝室林野局(現在の営林署)によって国有林からの軍用材の搬出を主な目的として着工された。1944(昭和19年) 遠山森林鉄道の梨元〜大沢渡間(19.6km)完成
 


天気は最高だ。完璧な秋空が広がっている。

昨日は一日中登りの地獄。そして今日は一日中下りの天国。こんなツーリングも珍しい。


山荘の前からすぐに豪快なダウンヒルが始る。

ブレーキレバーを離せば、危険なスピードで一気に急降下していく。

朝っぱらからこんなスピードで下るのは生まれて初めてだ。


対向車はまず来ないけれど、道幅が狭いので、コーナーではスリル満点だ。

舗装路からすぐにダートに変わり、御池山林道のダウンヒル三昧の始りとなった。


下ってすぐに、こんな案内板が現れた。

まだ朝の9:30。誰もいない御池山から大展望でも見てみますかと、自転車をおいてハイキングの開始。

地図を見ればほんのわずかの距離だ。往復してもそんなに時間はかからないだろう・・・


地図からでは読み取れないのが山道の怖いところ。

登山と考えればたいした勾配ではないのだろうが、サイクリストにとってはあり得ないきつさだ。

格好だけは本格的だけど、しだいにルートも消えかかり、現在地がさっぱりわからなくなる。


ここまで来たら何としてでも御池まで行ってやろうとむきになって歩く。

こんなつもりで来たんじゃないけれど、なんと40分もかかって御池に到着。

軽く30分程度で戻ってくるつもりだったのに、とんでもないロスタイム。


中郷の御池は本当に小さな池で、わざわざ見に来ることもなかったとがっかり。

せっかく来たので、周囲をぐるっと周ってしばしの休憩だ。


再び延々と上り下りを繰り返し、元の道を戻る。結局2時間近く無駄な労力を使っただけだった。

この失敗は今でも「お池にはまってさあ大変」のフレーズで笑い話になっている。


いったいこの2時間は何だったんだ、と笑いながら、いよいよ下界への急降下が始る。

見下ろせば、遥か彼方に白く細い道が見える。上から下を見下ろすぐらいの高低差がある。

”ヒェーあそこまで下っていくんだ”、と驚きの声が出るほどだ。


素晴らしい展望の中を下っていくが、路面をしっかり見ていないと危なくて仕方がない。

迫る山肌、谷側はガードレールのない所も多く気が抜けない。

路面は走りやすいダートでかなりスピードも出せる。中腰になって小石を避けながら下っていく。


この道はさすがに太いタイヤが断然有利だ。MTBで来た価値がここで発揮される。

制動力抜群のブレーキのおかげで、ハイスピードのダウンヒルも確実に制御できる。


素晴らしい下りだ。

あまりに下りが面白過ぎて、周囲の大展望もほとんど見ていられない。


緊張の連続だ。

刻々変化する路面状況、迫りくるコーナー、一瞬たりとも油断できない。


適度に荒れたダートがより一層ダウンヒルを盛り上げる。

止まりたくても止まれない、ダイナミックな下りが延々続く。


ようやく一息つく。

いったいどこまで下ってきたのか地図で確認するが、まだまだ半分も下っていない。

いくらか高度は下げたけれど、これから1000m近くも下れる。


これだけ長い下りになると、何度も撮影ポイントがやってくる。

一気に下ってはもったいない。これほどのダウンヒルシーンを収められる林道はなかなかない。


カメラマンが先行して待ち構える。時間を見計らって後続が下る。

時には、高い所に登って撮影したり、ズームで遠景を追えるところで待ち構えたりと忙しい。


こうして無理してまでも撮影した、ダウンヒルの姿をいくつか紹介しよう。

ビデオ動画からのキャプチャーは、静止画と違ってスピード感に溢れる。

流し撮りはなかなか難しいけれど、ビデオからの画像は自然とこうした映像を得られる。


国道152号に合流。一気に道幅は広くなる。

交通量も少なく、広い道を目一杯使って下っていく。


もうこれでもか、ってぐらい下りを満喫してきたが、まだまだ下れる。

勾配は緩くなってきたけれど、ずっとペダルを回さずにぐんぐん下っていく。


空腹を忘れるほどのダウンヒルだった。気が付けばすっかり昼の時間を過ぎていた。

小さな集落で食料を調達し、川原でランチタイムの始まりだ。


もうゴールも近いので、時間にも余裕がある。

手に入れた食材を調理し、大きな石ころを椅子にしてのんびりとくつろぐ。

いやはや、それにしても言葉にならないほどのスーパーダウンヒルだった。


飯田線平岡駅まで旅のフィナーレを楽しむ。

御池山ハイキングで登った以外は、一日中下りという自転車にとっては最高の林道だった。

それにしても、この御池山林道は素晴らしい。文句なしにお勧めできる一級品の林道だろう。

 

 
距離: 43.1 km
所要時間: 0 時間 00 分 00 秒
平均速度: 毎時 0.0 km
最小標高: .313 m
最大標高: 1905 m
累積標高(登り): 284 m
累積標高(下り): 1865 m

(1991/11/10 走行)


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