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A

東京(8/7)〜博多〜川内〜知覧〜指宿〜西鹿児島〜熊本〜阿蘇〜高千穂〜宮崎〜羽田(8/15)

1993年8月10日(火)

新湯温泉 〜 知覧 〜 頴娃運動公園


夜が明けて、少しずつ風雨もおさまってきた。それでも出発できたのはもう12時に近くなっていた。
すっかり台風に足止めをくらってしまった。まあ、何事もなかったことに感謝するしかない。


パンクの次はディレイラーだ。ジュビリーツーリングが死んだ・・・と思ったらスプリングだった。
とにかくトラブルが多すぎる。この先何が起きるか不安で仕方がない。


やっとまともに走れる。ツーリングに来て走れないことの悔しさをたっぷり味わった。
今日からが本当のキャンピングと言ってもいいのかもしれない。

リヤキャリアに積んだクーラーボックスは、夏のキャンピングの必需品だ。
当然中に入れるのは缶ビールだ。
500mlだと6本しか入らないが、350mlだと隙間なく9本入る。150ml余計に飲めるってわけだ!


郵便局で切手を買い、ついでに駐車場横で昼食だ。
お湯を沸かしてカップラーメンをいただく。お菓子をつまんで空腹を満たす。こんな生活がキャンピングだ。

やっと調子が出てきた。重い車体の扱いにも慣れてきた。コーナーリングもコツをつかんできた。
15:50 「薩摩の小京都」知覧の町に入ってきた。


知覧

鹿児島県南九州市の「知覧」(ちらん)は、「薩摩の小京都」と呼ばれるほど、美しい街並みが特徴の城下町です。
薩摩藩(さつまはん)では、「外城制」(とじょうせい)が取られ、島津家(しまづけ)居城の「内城」(うちじょう)に対して、領内を区画した「外城」(とじょう)と「麓」(ふもと)と呼ばれる武家の集落に、城下町が築かれていました。
知覧には、今もなお古き良き藩政時代の面影が色濃く残っています。凜とした武家屋敷が続く町並みは、きっと歴女好み。なお、知覧は太平洋戦争末期に「特攻隊」の出撃地になったことも忘れることはできません。
https://www.touken-world.jp/castle-town/chiran/


セミがうるさいほど鳴き始め、やっと本来の真夏が戻ってきた。
台風が去って、観光客の姿が多くなってきた。

武家屋敷通りをのんびりと散歩する。自転車が重すぎて、こうした観光には全くのお荷物だ。
時刻は16時になろうとしている。この時間になれば、今日の寝場所を決めなければならない。

キャンピングにとって、一日の最大の課題がキャンプ地の選定だ。
そんな時は地元の人に聞くのが一番。ちょうど出会った高校生の女の子に適当な場所がないか聞いてみる。

うーん、こんな「変態おじさん」たちの要望がわかるはずもなく、いい返事をもらえなかった。
なかなかいい場所に出会えることは少ない。逆に、これがキャンピングの楽しさかもしれない。

人様の目につかないところ、水とトイレがあるところ。そして火が使えるところ。
最低これだけの条件が揃っていれば何とかなる。そして雨が降って来た時に逃げ込める屋根下があれば完璧だ。

しかし 町中ではなかなかこうした場所は見つからない。
結局知覧の町を後にして、時間の許す限り南下する。



知覧から頑張って走って再び海岸に出てきた。もう制限時間いっぱいだ。
次第に焦ってきた。日が暮れてしまっては最悪だ。なんとか地図を見て、候補地を探す。

そして落ち着いたのが「頴娃(えい)運動公園」だ。一目見て”満点”の出来だ! テーブルまで付いている!
キャンプの経験を積んでくると、嗅覚がするどくなってくる。
絶好の寝場所をこうして見つけることができるようになる。今夜は最高の夜になりそうだ。


大きな運動場は、日が落ちれば我々の貸し切りだ。
近所の住宅からは離れているし、ガスコンロの使用程度なら問題にならないだろう。

見事なまでのテーブルが用意されていて、水もトイレも完璧だ。
その横にはふかふかの芝生が広がっていて、ちょっとしたキャンプ場より快適かもしれない。


今夜もふんだんに仕入れたビールと、数々のおつまみ、ご馳走で楽しい宴が始まる。
よく走って、たくさん汗をかいて、そして大自然の中でのキャンプとなれば、もう何も言うことがない。

高校生の頃からこんな旅を続けている。やはり真夏のキャンピングには、すべての魅力が含まれている。
もっともっと楽な旅をしようと思えばいくらでもできる。しかしそれではダメだ。
自分の力で生活道具一式を運んで、自分の寝場所を自分で決める。何もかも自分の力でこなす。これが大事だ。


よく走った。そしてよく飲んだ。
横になれば、心地いい疲れと酔いのおかげで、そのまま寝てしまいそうだ。
虫に悩まされることもなく、周囲の危険性もなく実に快適な夜だった。


距離: 53.6 km
所要時間: 6 時間 32 分 00 秒
平均速度: 毎時 8.2 km
最小標高: 5 m
最大標高: 171 m
累積標高(登り): 233 m
累積標高(下り): 239 m

1993年8月11日(水)

頴娃運動公園 〜 長崎鼻 〜 指宿(輪行) 〜  西鹿児島


眩しい朝日を浴びて目覚める。テントの中から外を眺めると、一瞬ここはどこだ? と悩む。
草地の上だと寝心地がよく、昨夜はぐっすり眠れた。


気が付くと、グラウンドにはゲートボールを楽しむお年寄りが集まっている。
そうか、そうだった。こうした場所は朝が早いんだ・・・何か注意されるかな・・・と心配する。

自分たちのグラウンドにテントが張られていては、いったい何者かと気になるだろう。
まあ、自転車が横に置いてあるから自転車旅だとはわかってもらえるだろう。

結局何も注意されず、声をかけられることもなくゲートボールを楽しんでいなくなってしまった。
ご飯を炊いて、キャンプサイトを片付けて今日も一日が始まる。


いい天気になった。ようやく夏のキャンピングらしい朝になった。
海岸に出ると、目の前には雄大な開聞岳の姿が見える。

ここは薩摩半島の南端だ。日本地図を頭に描くと、今凄い所にいるものだとあらためて感じる。
朝の開聞岳は深い雲に覆われてしまって、その美しい姿が隠れてしまっている。


キャンプ生活にもすっかり慣れて、体調も万全だ。
テント、タープの片付け、荷造り、サイドバッグのセッティングなど、準備もすっかり効率的になった。

キャンピングは目覚めてから出発できるまでの時間が大切だ。
のんびりしていたのでは、すぐに1時間、2時間が過ぎてしまう。とにかく朝が大事だ。

積極的に動かなければ何も片付かない。
キャンピングは、頭を使い、体を使う究極のトレーニングだ。


うるさいほどのセミの鳴き声を聞きながら、南国の雰囲気が広がる薩摩半島を気持ちよく走る。
サイクリストは「半島」や「岬」など、先端まで走らないと気が済まない性分。

当然我々も開聞岳から長崎鼻を目指す。
右手に開聞岳を見ながら、じりじりと焼けそうな路面をひたすら進む。


頂上付近を覆っていた雲も消え去り、すっかり晴れ渡った開聞岳の姿が目の前に広がってきた。


開聞岳

開聞岳は、鹿児島県の薩摩半島の南端に位置する標高924 mの火山。
1964年3月16日に、霧島屋久国立公園に指定された 。
日本百名山、新日本百名山及び九州百名山に選定されている。
玄武岩の成層火山の頂部に安山岩の溶岩ドームをもつ構造であるが、遠望すると両者は連続して成層火山のように見えるため「薩摩富士」とも称される。



長崎鼻へ来るのは二度目だが、あまりの景観の素晴らしさに再び圧倒される。
青い海と空、秀峰「開聞岳」が目の前に広がる。なんて美しい姿なのであろう。


下の写真は1975年8月に訪れた時の写真。
この時は残念ながら開聞岳に雲がかかってしまって、美しい「薩摩富士」が見れなかった。


何年たっても長崎鼻からの開聞岳は見事だ。
晴れ渡った青空に、「薩摩富士」がとにかく映える。もう、これだけで満足だ。


今日はゆっくりと時間がとれるので、この絶景をお得意のスケッチで描くことに。
旅のお供に持って行くスケッチブック。ここぞというところで、サッサとペンを走らせる。

うーん、見事だ。
自分にはまったく絵の才能がないから、こんな趣味がうらやましくてしかたがない。


指宿へ向かう。
途中の成川トンネル、直線の700m弱のトンネルだが、登り勾配のため辛いトンネルだ。

直線なので車は減速せずトンネルに突っ込んでくる。こちらはフラフラと縁石に接触しそうになる。
やっとトンネルを抜けるとホットする。こんなトンネルは勘弁してほしい。


指宿へやってきた。指宿と言えば「砂風呂」だ。道路脇から覗くと、多くの人が砂浜に横になっている。
係の人が見事なスコップさばきで砂をかけていく。見ているだけではどんなものなのか、さっぱりわからない。

ということで、さっそく体験してみることに。初めてなので案内に従って着替える。
専用の浴衣に着替えて砂浜へ行くと、係の人が案内してくれる。

横になれば、あとは体にどんどん砂がかけられていく。砂はかなりの重さで、まったく動けなくなる。
しばらくすると、体の芯から温かくなり始め、自分の鼓動が”ドクドク”と聞こえて汗が吹き出てくる。

何分ぐらい「埋められた」だろう? 自分はもう暑すぎて勘弁し欲しいと思い始めた。
ようやく解放されると、とんでもない量の汗をかいていた。はっきり言って、自分には「拷問」に近かった。


今日はここから西鹿児島まで輪行する。輪行キャンピングの必殺技をここで発揮する。
距離があって観光名所が少ないところは輪行で一気に移動だ。

1975年8月の「九州・沖縄キャンピング」でも、輪行はよく使った。
美味しいところをつまみぐいできる輪行とキャンピングを組み合わせると、最強の旅を作り上げられる。

輪行するのは本当に大変だが、のろまな亀の歩みでは距離を稼げないので便利な手段だ。
分解しているとすぐにタクシー運転手が集まってくる。あれこれ説明しながら輪行する。

ホームでもまた一般客から質問される。ついでに駅員さんも一緒に話を聞いている。
どこへ行っても我々は注目のまとだ。


旅の途中で輪行するのもいいものだ。ずっと重たいキャンピングだけでは行動範囲も狭い。
うまく使えば充実したキャンピングになる。

指宿から鹿児島湾を北上する。車窓からは桜島の姿が見えてくる。
17時過ぎに西鹿児島の駅に到着。またしても駅の外まで大量の荷物を運ぶのに苦労する。


鹿児島市内、とんでもないことになっていた。
街のあらゆるところが豪雨による被害で、すさまじい光景になっている。
水害のあとはこんなことになるのかというぐらい、土砂に汚れた家財が溢れかえっている。

見るに絶えない様子が広がる中、申し訳ない気持ちで街中を通り抜ける。
こんな時に遊びに来てしまって、こちらも気が重い。


今日はホテル泊まり。
夜は天文館へ繰り出して、名店「鹿児島の郷土料理 正調さつま料理 熊襲亭 (くまそてい)」へ。

あまりの美味しさにビールが止まらない。とにかくさつま揚げの旨さには驚きだ。
こんな美味しいさつま揚げを食べたのは生まれて初めてだ。


ビールに始まり、芋焼酎のお湯割りと続く。

突き出し / 前菜盛 / きびなごの刺身 / 地鶏とカツオのたたき盛合わせ / さつま揚げ / 名物とんこつ / 季節御飯 / さつま汁 / 香の物 / デザート

もう何もかもが旨すぎてメロメロ。とどめをさしたのがこのらっきょうだ。
有機無農薬で栽培された鹿児島県産のらっきょう。

新鮮ならっきょうの旨みを際立たせるため、食塩・砂糖のみでシンプルに漬けたパリパリ食感が楽しい逸品だ。
あまりに美味しいのでお代わりしてしまうほどだった。

長居してすっかりいい気分になった我々を優しくおもてなししてくれる。
くだらない話に付き合ってくれて、本当に心温まる名店だ。

すっかり飲んで食べて、もう無理ってぐらい満腹になってホテルに戻った。

距離: 31.8 km
所要時間: 6 時間 25 分 00 秒
平均速度: 毎時 4.9 km
最小標高: 19 m
最大標高: 89 m
累積標高(登り): 89 m
累積標高(下り): 70 m

(1993/8/10-11 走行)


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