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1996年9月5日(木)
(立山駅 〜 立山黒部アルペンルート 〜 宇奈月温泉)


静かな朝を迎えた。

テントの外へ出てみると、周囲の景色に驚いた。


昨夜は真っ暗で、何もかもわからず寝床を探していた。

慌ただしかった昨日から打って変わって、静寂の朝をしばらく楽しむ。
 


立山黒部アルペンルート。

旅行の案内やパンフレットであまりに有名なこの観光コース。


我々サイクリストには無縁の所だが、さすがに一生のうちに一度は目にしたい。

一日すべてを観光にあてて、この日本を代表する観光ルートを味わってみようと考えた。


コース全景を見れば、立山駅から扉沢へ一直線に突き抜けたくなる。

しかし、こちらは車も自転車もある。どうしても戻ってこなければならない。

時間も費用も驚くほどかかるが、今日一日は気にしない。
 


まあ、あまりに有名な観光ルートだ。詳しい説明など不要だろう。

きれいな写真と簡単な説明だけとしておこう。

ケーブルカーとバスを乗り継いで室堂へ。別世界の景色が目の前に広がる。
 


あまりの絶景に身動き取れなくなる。いったい何なんだ? ってぐらい何もかも美しい。

トロリーバスで大観峰へ。なんだかテーマパークに来た気分。
 


ロープウェイで黒部平へ。絶景の中の空中散歩。「スゲェ〜」としか言葉が出ない。

そしてケーブルカーでいよいよ黒部湖へ。
 


これがあの黒部ダムだ。ついに自分の目で見ることができた。とにかく凄い!もう、感動。

ここがゴールだ。黒部ダムから、再び同じルート
を戻る。

長い長い往復の一日だった。この日は、宇奈月温泉の旅館に泊まった。
 

 

1996年9月6日(金)
(宇奈月温泉 〜 黒部峡谷トロッコ電車 〜 栂池)


こんなチャンスは二度とないかもしれない。

今日は黒部峡谷鉄道に乗って、トロッコ電車の旅へ出発だ。


宿に車を置かせてもらって、最短時間で往復してくるスケジュールだ。

さすがにすごい観光客で満員だ。そしてワクワクするようなトロッコ電車が出発した。
 


写真左から

●奥鐘橋(黒部川本流に架かる人道橋)
●人喰岩(岩がオーバーハング状になった登山道)
●名剣温泉(黒部峡谷鉄道終点駅『欅平』にある日本の秘湯)
 


昨日からずっと乗り物だらけだ。これほど自転車以外に乗り続けるツーリングも初めてだ。

しかしものすごい所だ。見るものすべて初体験といった印象だった。
 


車に戻って、忙しく次のプランへ移動する。

この旅も残りあとわずか。最後は大好きな白馬辺りを巡ろうかな、なんて考えた。


この日の午後から、再び大きく移動して長野県の栂池へ向かう。

栂池には行ったことがなかったので、地図を眺めていてちょっと散歩したいと思った。
 


季節外れで栂池周辺は誰もいない。車を置いてMTBの軽装で走り出す。

目的地はない。どんな雰囲気なのかちょっと知りたくてポタリング気分だ。


本当は栂池自然園まで行きたいところだが、とてもじゃないが1000mの標高差は登れない。

走り出せば、当然どこも登りだらけ。早々と断念して、周囲の小道を散策することに。
 


この日はオートキャンプ場に落ち着いた。といっても、ここもシーズンオフで誰もいない。

車をキャンプサイトに入れて、テールゲートを使ってキャンプサイトの完成だ。

色々試行錯誤したけれど、この形が最高に便利で快適だ。
 


誰もいないので、カーステレオで音楽を流しながらキャンプの夜を楽しむ。

テールゲートを使ってタープを張っているので、雨が降ってきても安心だ。

寝るときは、テールゲートを閉め、テントをタープ下に少し移動すれば完成だ。
 

 

1996年9月7日(土)
(栂池 〜 小熊黒沢林道 〜 郡上八幡)


誰もいない森の中で、気持ちのいい朝を迎えた。

静かなキャンプ場というのは、これほど素晴らしいのかと気づく。


夜露でルーフキャリヤに積んだMTBが濡れている。車内に入れておけばよかったと反省する。

さて今日はどうする? 後半の予定は考えていなかったので頭を悩ます。

天気も今一つ。しょうがない、まずは小熊黒沢林道でもドライブしてみるか。
 


車で走ってしまうと本当にあっけない。アクセル一つでどんな坂も簡単に登りきる。

やっぱり走らなきゃだめだ、と思って適当なところからランドナーでポタリングを始めた。
 


すっかり実りの秋だ。そろそろ稲刈りが始るのだろう。

広大な田んぼの中をのんびりとお散歩だ。
 


遅めにとった今年の夏休みもそろそろ終わりだ。

秋景色を眺めていると、なんだか少々寂しくなってくる。

誰もいないので、案山子と一緒に記念撮影だ。
 


今日は土曜日。今日東京に帰って、明日はゆっくりするか・・・なんて思っていたのだが・・・

そんな時、ふと気づいた。


”郡上踊りは今日が踊り納めじゃなかったっけ?”・・・そうだ今日が最後だ・・・だから・・・えっ?

まさか、今から行くなんて不可能だよね?


頭の中では目まぐるしくいろんな考えが交差し、そんなことが可能なのかどうか真剣に考えていた。

そうと決まれば、後は高速道路を突っ走るのみだった。

初日の富山へ向かう意気込みが、再び郡上八幡に向かって湧き出した。
 


なんというアイデア、なんという決断力、なんという行動力。

「風の盆」に始まり「郡上踊り」で締めくくるという豪華さ。

着いた。あの懐かしい郡上八幡にまたやってきた。そして町は熱狂していた。
 


これだ、これだ、これが郡上踊りだ。踊り納めは、人の数も尋常ではない。

23時からの屋形おくり提灯行列。

一般参加の人も提灯をくくりつけた笹の葉を持って、屋形の後ろを練り歩くことができる。
 


郡上おどりの中の代表的な曲が「かわさき」だ。 振り付けも簡単なので、自然に踊りの輪の中へ入っていける。

一度踊り始めたらもう病みつきになる。楽しい、面白い、気持ちがいい。もうたまらない。


踊り疲れて車に戻ってきた。もう十分すぎるほど満喫した。

また来よう、絶対来ようと心に誓った。それほど感動する一夜だった。

 


その夜は高速道路のSAで車中泊。

翌日日曜日、のんびりゆっくり時間をかけて東京へ向かった。


この年の
12月20日に、郡上踊りは国から重要無形民俗文化財に指定された。
 

(1996/9/5〜7 走行)


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