峠への招待 > ツーリングフォトガイド > ’2001 > 白馬きこりの道
長野県北安曇郡白馬村(標高1059m)
前日、小熊黒沢林道を満喫した後、白馬へ移動し、近くの河原でキャンプとなった。
早朝、車の外へ出ると、ドカーンと目の前に残雪の連峰が飛び込んできた。視界の大きさ、スケールの大きさに眠さも一瞬で吹き飛んでしまう。
GW2日目も快晴に恵まれた。今日は、以前走り切る事ができなかった白馬きこりの道を再度挑戦する予定だ。
河原に車をデポし、白馬駅を目指す。早朝の空気は爽やかで、車の数も少ない。
国道を離れ、線路を越え田園地帯をのんびり走る。どこを走っても、視界に飛び込んでくるのは北アルプスの迫力ある光景だ。
これだけの景色は日本でも、この時期のここだけしか目にすることができないだろう。何度となく止まっては写真を撮る。
向かった先は「大出の吊橋」。
額縁にそのままおさまりそうな、美しく見事な光景が広がっている。観光名所だけに訪れる人も多く、スケッチしている人も多い。
爽やかな空気と、清流流れるこの付近は本当に日本の美しさを感じられる。いつまでも去りがたい時間がのんびりと過ぎていく。
スキー場への辛く長い登りが始まった。前回も相当苦しい思いをしているため、覚悟はできていた。
通常のヒルクライムと違って、スキー場のゲレンデは信じられない勾配だ。周囲が広いため、それほど勾配を感じさせないのだが、いざ登り始めると相当きつい斜面が立ちはだかる。
当然すべて押し上げで、100歩登ったら一息、呼吸が整ったらまた100歩というように、自分なりに目標を決めて登らないといつまでたっても先に進まない。
一旦平坦な所に出てほっとするが、まだまだ半分で、これから後半戦が始まる。
最後は斜面をよじ登るようにして、ようやくピークのリフト乗り場に着く。
苦労すれば必ず報われる。その言葉はまさにこの瞬間を言うのではないかと思わせるほど、ここからの景色は圧巻だ。
苦しさも、辛さもこの眺めを目の前にしたら何もかも忘れてしまうだろう。
目の前に迫り来る残雪の北アルプス。眼下には白馬の街並み。360度の大展望に、どれがどの山だかまるでわからなくなる。こんな光景をたった一人で独占している。こんな贅沢、こんな喜びがあっていいのだろうかと考えてしまう。
自転車に乗っていてよかったと思った。自転車でなければこの時期にこんな所に来ることはない。そしてこんな感動を味わうこともできなかっただろう。
冷たいビールを味わいながら、そして大パノラマを目の前にしながら改めて自転車の魅力、ツーリングの素晴らしさを感じていた。
下りに入る。道は安定してきれいなトレッキングコースが続く。
何度か登り返しがあって、苦労させられるが、それでも気分のいい山道だ。
てっきりずっと下りかと思っていたら大きな間違いで、最後に担ぎ上げてようやく本当のピークに達する。
かなり広いい林道に合流する。車も通れそうな山の上のハイウエイといった感じだ。明るく開放的な山道下りを存分に楽しめる。これだけ開放的な下りも初めてだ。
やがて別荘がちらほらと現れる。どこの別荘からも最高の眺めが満喫できそうだ。
道は舗装路へと変わり、いよいよ本格的なダウンヒルが待っている。
下りは、かなりハイスピードの下りだ。テクニックと、度胸と、そしてよく効くブレーキがあれば相当満足できる下りだ。あっと言う間に嶺方スキー場へ下り、車道へと合流する。
舗装路をちんたらと走る。山の中から降りてきて、一般道へ出ると、緊張感が緩み、気合が入らない。さらに緩やかな勾配のためなおさら足に力が入らない。
100メートル程登り返し、今日もフィナーレへと近づく。再び目の前に残雪の光景が飛び込んでくる。
国道に合流する手前で、ちょうどいい具合に休憩所を発見。フィナーレをしめくくるのに最適な東屋だ。
当初の予定ではここから和地場峠を越えて周回するつもりでいたが、すでに足も出来上がってしまったし、こんなにいいロケーションがあっては、もう走る気もしない。
というわけで、のんびりとここで休むことにした。ビールにしゃけ大根といういつもの定番。ぐつぐつと缶詰を温め、誰もいない昼下がり、これまたビールがうまいこと。どうして自転車で走るとこんなにビールがうまいのか。
すっかりのんびりしてしまった。
爽やかな風が吹き抜け、近くではカエルが鳴いている。白い雲がゆっくりゆっくり流れて行く。長椅子に横たわれば、今日一日の疲れとともに、ため息が思わず出る。
次第に空がぼんやりと薄暗くなってきた。帰りは姫川沿いにサイクリングロードを走る。国道沿いに静かな道が白馬まで続いている。
白馬小径としゃれた名のついた案内に従ってのんびり走り、車のデポ地へと戻ってくる。
距離的には短いコースではあったが、内容はかなり充実したコースである。
締めくくりは、車で移動して、倉下の湯に浸かる。ツーリングの最後はやはり温泉に限る。
東京に戻る時間を気にしながらも、日が落ちるまで熱い湯にどっぷり浸かり、さて、次は何処へ行こう、と考えていた。
所要時間:7時間9分 走行距離:26.0km 最高速度:54km
峠への招待 > ツーリングフォトガイド > ’2001 > 白馬きこりの道