峠への招待 > ツーリングフォトガイド > ’2002 > 京柱峠・落合峠・桟敷峠
京柱峠:徳島県三好郡東祖谷村/高知県長岡郡大豊町(標高1120m)。昔は祖谷地方の南の入り口であった。
落合峠:徳島県三好郡東祖谷村(標高1519m)。秋にはススキの大原野が見られる。
桟敷峠:徳島県三好郡三加茂町/東祖谷村(標高1021m)。祖谷地方と吉野川縦谷平地とを結ぶ。
雑誌で見かける、あの美しい峠の写真、見事な峠の標。 この峠が四国にあると知ってからは、自分にはまず越えられない峠だと諦めていた。 四国の最も険しい所とされる祖谷地方。深い谷と急峻な山岳。
高知と徳島にまたがるこの京柱峠は、東日本の峠越えではなかなか味わえない、本当に「美しい峠」であった。 |
四日目はまったく走ることができず、大歩危、かずら橋の観光、ケーブルカーで行く祖谷渓温泉で過ごした。 早く走りたい、早く京柱峠へ行ってみたい。そんな気持ちを抱きながら五日目を迎えた。
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京柱峠へ至る道筋は、美しく、静かで、そしてなんとも味のある、最高の「ツーリズム」の世界だ。
そして、国道の標識に記された峠までの距離が、峠への期待を徐々に高めていく。 |
登りの苦しさも、つらさも、そしてこの後の不安もすべて忘れさせてくれる。 「京柱峠 土佐の国 ようこそ大豊町へ」と記された、おなじみの標の向こうに、今登ってきた道筋がかすかに読み取れる。
そして、なんとも言えぬ心地よい風が峠を吹き抜ける。 |
これで下っておしまいということであれば、この眺めをしばらく味わいたいところだが、まだまだ前半戦。 悔しいけれど小一時間で宴会を切り上げ、気を引き締め直す。
下りきると、もうすでに一日のツーリングを終えたほどの満足感と疲労感だ。
もう、足はかなり出来上がっている。
これからさらに1000m以上登らなければならない事実に恐ろしくなってきた。 |
最初こそ頑張って乗っていたが、いよいよ足が悲鳴をあげてきて、後半はほとんど押しの状態になった。
しかし、よく頑張った。本当によく登った。 これほど長い時間登ったことは初めてだ。頼りは、高度計だけだった。
そして、ついに落合峠が見えてきた。 16:15 長い長い登りが終わった。 |
峠からは瀬戸内海が見えると、通り過ぎた車の人が言っていたが、残念ながら雲が多く、確認することができなかった。
しかし、ゆっくりしているほど時間はなかった。
狭い道幅、新しい路面、きつい勾配、きついコーナーということで、かなりのテクニックを要求される。 |
ただし、度胸とテクニックがあれば、疲れを吹き飛ばす豪快なダウンヒルをたっぷり満喫できる。
だが、このプランニング、やはりただでは終わらなかった。
150m程度の登りだから、どうにでもなるだろうと甘く見ていたが、もうペダルを漕ぐ力はどこにも残っていなかった。 |
悩んでいても仕方がない、とにかく急ぐしかない。
最後は、本当にやけくそで歩いていた。もう、ツーリズムの世界はとっくに消え去り、サバイバル状態だった。 |
どこまで走っても、どこまで登っても、一向にゴールが見えない。 下界にかすかに街が見える。あそこまで下りきればとりあえず安心だ。
桟敷峠の下り、これはかつて経験したことのないほど完成度の高い下りだ。 勾配といい、道幅といい、長さといい、自分の下りはこんなに速かったか、と思わせるほどハイスピードのダウンヒルだ。
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ところが、まだまだこれで終わりではなかった。 衰弱。無人駅。明かりも、店も、人の姿もない。
しかし、何もない。誰かに聞こうにも誰も見当たらない。 列車の時刻が刻々と迫る。そして、ようやく酒屋を発見し、ビールとつまみを手に入れ、大急ぎで分解する。
いくらローカル線だって、最終は10時頃まであるはずだ。と、思っていた。
たまげた。ここまできて、こんな仕打ちを受けるとは・・・ |
組み立てる時間、残された体力、食料。タクシーを呼ぶにも、あの寂しい大歩危駅はすでに真っ暗なはず。 電話で呼ぶったて、電話があるのか? 携帯は通じるのか? 第一、電話番号は? さあ、大歩危駅、万が一でもいいから、タクシーがこの最終を待っていてくれ・・・という期待は、当然のように打ち砕かれた。
さすが秘境だ、なんて感心している場合ではない。
すぐに携帯で電話すると、眠そうな人が出てくれて、すぐに来てくれるとのこと。
救いのタクシーを待つ間、一人ベンチに座って今日一日を振り返る。 あまりに長い一日なので、前半の京柱峠が昨日のことのように思えてくる。疲れすぎて、思考能力も散漫だ。
自転車があるなんて言っていなかったので、「そりゃ乗らないよ!」なんていうものだから、「いや、こうすれば後ろのシートに入りますから」と、強引に乗り込む。 車には何も食料はなかった。移動する元気も、運転する気力もなく、すぐに横になった。 もう、何も欲しいものはなかった・・・ |
距離:
82.7 km 所要時間: 11 時間 12 分 53 秒 平均速度: 毎時 7.4 km |
最小標高:
64 m 最大標高: 1527 m |
累積標高(登り): 2287 m 累積標高(下り): 2384 m |
追記(2015/5/11)
先日、四国を走った友人から情報をもらいました。
最近では、こんな凄い企画を行っているんですね! これ凄すぎ!! 私には1泊2日コースですね。
(2002/8/29 走行)
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