峠への招待 > ツーリングフォトガイド >  ’2004 >  糸我峠・方津戸峠


糸我峠:和歌山県有田市糸我町中番/有田郡湯浅町吉川(標高191m)
方津戸峠:和歌山県有田郡湯浅町吉川/湯浅町栖原(標高52m)



和歌山の旅も、紀伊半島東海岸から西海岸まで移動してきた。

そして、いよいよ熊野古道も紀伊路へとやってきた。

紀伊路は熊野古道の中でも最も多くの参拝者に利用された路である。

平安時代の末から、法皇や上皇の御幸によく利用され、紀伊路から中辺路をたどるルートが熊野御幸では盛んであった。

まずは藤白神社で旅の安全を祈願した後、藤白峠を車で登る。

本来は、藤白坂から藤白峠、拝ノ峠を越えたいところだが、紀伊路も見所が多くあまり時間がない。

今日のメインは糸我峠とし、前半は車を使っての熊野古道散策とした。

 

 


狭い山道をうねうねと登っていくと藤白峠に着く。

海岸から一気に登りつめるために、山道はかなりの急勾配だ。

御所の芝と呼ばれる広場からは、和歌浦湾が目の前に大きく広がり、眼下に関西電力の火力発電所が良く見える。

山岳地帯から海岸線へと景色が変わると、気分も一新され、新たな旅の魅力に満たされる。

まぶしい太陽、果てしなく広がる海は紀伊半島ならではだ。

のんびり歩いてみたい、何日もかけて熊野古道を辿ってみたい、そんな気持ちを抱かせる藤白峠からの眺めであった。

 

 

 


車を有田川沿いの土手に置き、糸我峠を目指して走り始めた。

熊野古道の案内が整備されているので、それに従ってのんびりとペダルを漕ぐ。

熊野古道も距離があるため、やはりこうした場面では自転車は有効だ。

この糸我峠越えは、熊野古道の中でも乗車率が高いため、お勧めのコースだ。

得生寺を過ぎると道は民家を抜け、みかん畑が広がる山里へ入っていく。

やがて、「左くまの道」と刻まれた道標に出る。ここから本格的な登りが始まる。

 

 

 

 


峠自体の標高は200mに満たないから、登り始めてしまえば30分程で峠に出られる。

とはいえ、距離が短いだけに、峠直下は、ちょっとした藪こぎ状態だ。

最後は、気合を入れて峠に押し上げる、といった感じだ。

峠に飛び出ると、そこは明るい日差しが差し込む山道の分岐になっていて、傍らに糸我峠と刻まれた石碑が建っている。

短時間の峠越えであるが、意外と充実感がある峠だ。

その昔、二軒の茶屋があったと記されており、ここで一息つき湯浅の町へ下ったのであろう。

峠から見える湯浅の眺めが、今も昔も変わらずに素晴らしい。

 

 


真夏のような気温の中の峠越えで、全身汗だくになっていた。

シャツを脱ぎ、全身を冷やす。

腰を下ろして、湯浅の町を眺めながらのランチタイムを楽しむ。

冷たいビールが最高の贅沢だ。誰もいない、静かな熊野古道をしみじみと味わう。

気がつけば初老の男性が峠にやってきた。

自分と同じように汗だくで、ランニングシャツ一枚になっていた。

歩いて熊野古道を旅しているようだ。これから湯浅まで行くと言う。

「お気をつけて」と挨拶を交わし、糸我峠をゆっくり下っていった。

 

 


しばらく峠でゆっくりした後、下りに入る。

急勾配の山道をゆっくりと下っていく。

下る途中、山道の脇に大きな絵が飾られている。

そこには、当時の糸我峠を越える様子が見事に描かれている。

絵は、風雨の影響で多少にじんではいるが、次々と現れる絵画を見ながらのダウンヒルは格別だ。

ガイドブックや、多くの資料で紹介されるこの峠だが、どんな文章よりも、こうした一枚の絵だけで十分にこの峠の歴史を感じ取れる。


 

 

 


先に下った初老の男性を追い越し、道は湯浅の町に入っていく。

弘法井戸を過ぎ、道は登り始めるが、その先に方津戸峠が現れる。

峠といっても、道路の分岐点で、峠を越えるというイメージではない。

ここにも絵が数点展示されており、傍らに小さな祠があり、古びれた木の柱に「熊野古道 方津戸峠」と記されていた。

そのまま下ると、湯浅の街中へと熊野古道は続く。

細い路地を抜け、生活感あふれる商店街の軒先をかすめながら、古く懐かしい町並みを楽しむ。

 

 

 


湯浅醤油発祥の地、古い土蔵倉、醤油倉など、昔の風情が残る運河沿いを楽しむ。

ランドナーがこの町にはとてもよく似合う。

美しい町並みと伝統あるランドナーの組み合わせはなかなか絵になる。 

湯浅の町を後にして、海岸線沿を北上する。

防波堤横の道路は、目の前に大海原が広がる、最高のシーサイドコースだ。

逆光の中に映し出される漁船の姿が美しく、立ち止まっては何度もシャッターを押してしまう。

ここからの夕日はどんなに綺麗だろうと想像してしまう。

邪魔なものが何も無いから、今日の天気ならば絶景に違いない。

 


車に戻って、温泉入ってからもう一度ここに来よう、と決定。

多少の登りはあるものの、ほぼ平坦な道を行く。

国道に合流してからは有田川土手を進み、車まで戻ってきた。

ちょうどゲートボールを終えたお年寄りたちが帰るところで、こちらを見ては、「鮎釣りかね?」と聞いてきた。

自転車で糸我峠を越えてきたと説明したが、理解してもらえなかったようだ。

温泉&食事は「有田川温泉 鮎茶屋」で過ごす。お湯も料理も最高であった。

本日の温泉:有田川温泉 寝場所:白浜海岸沿い

 


 

(2004/9 走行)


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