峠への招待 > ツーリングフォトガイド >  ’2005 >  オバンドウ峠




秋のクラブランは昨日で終わったが、自分は帰宅せず、その夜は移動して車中泊とした。

ワゴンRでの車中泊もすっかり手慣れたもの。車内はこんな感じに収まっている。


ランドナーとMTBを車内に入れ、助手席側に簡易ベッドを置く。

寝袋を敷いて横になれば、完全なフラットな寝床の完成だ。


食事は天気や状況に応じて、後席で食べたりテールゲート下で簡易キャンプすることが多い。

TVを見ながら、または焚火をしながら音楽を流して過ごすことが秘かな楽しみだ。


翌日、神流町恐竜センターに移動する。見学ついでに車を置かせてもらおうと思っていた。

しかしあいにく休館日。しかたなく、管理人に一言断って車をデポさせてもらうことに。
 


今日のコースは「秘蔵版 MTBツーリングブック」を参考にさせてもらった。

本格的な山道なので、今日はMTBに登山靴というスタイルだ。


ショートコースなのでスタートもゆっくりだ。

いきなり10%の登りから始まる。交通量も全くない中、舗装路をゆっくり登っていく。

そろそろ最後の秋景色。風が吹くと、上からはらはらと葉が舞い落ちてくる。
 
 


200mほど標高を稼ぐと、カーブの右側に間物の分岐が現れる。

大きく「全面通行止」の看板が掲げられているが、徒歩なら十分な山道が始まる。
 


いきなり魚野川水平歩道並みの山道が始まる。転落防止の柵が設置されている。

落ち葉に気づかず滑り落ちたら、かなりダメージを受ける高さだ。
 


なんとか乗車可能な道幅だが、降り積もった落ち葉の下に何が隠れているのかもわからない。

ここは馬鹿なことはせず歩くのが賢明だ。

MTBと登山靴で正解だった。足元の不安もなく、自転車の押し歩きも楽だ。


かなりきつい登りが続く。息も大きく乱れるほどになってくる。

どんどん山深くなっていくが、道筋はしっかりとしているため安心だ。
 


ここを上から下ってくるのは、本格的なMTB好きにはたまらないだろう。

しかしカーブはきつく、転落の危険があるのでかなりの上級者でしか無理だろう。


峠までは標高差約200m。半分ほど登ってくると少しづつ空が見えてくる。

あと少しで峠というところで最後の休憩。ふかふかの落ち葉の上に腰を下ろして一枚写真を撮る。
 


12:30 オバンドウ峠に到着。

最後の300mほどは勾配も緩やかになり、気持ちよく峠まで乗車することができた。
 


峠には小さな祠が置かれている。残念ながら、峠を示すようなものは見当たらない。

峠の切通を吹き抜ける風と、揺れる葉の音だけが聞こえてくる。
 


峠から下ると、すぐに明家(みょうけ)の廃村が前方に見えてくる。

大きな赤い屋根と朽ちた家屋が林の中に現れる。
 


2台の軽トラックは錆びて赤茶けている。走れるとは思えない状態だ。

家屋の窓、壁は崩れ中まで覗くことができる。果たして誰か住んでいるのだろうか?
 


まったく音が聞こえてこない静寂の廃村だ。大きな声を出せない、といった雰囲気が漂う。

廃村の入り口に、周囲の詳しい案内地図が建っている。

人の姿は見えないが、周囲の様子から定期的に管理されている様子がうかがえる。
 


時が止まってしまったかのような錯覚に陥る眺めだ。

動く物が全くなく、聞こえてくるのは小鳥のさえずりだけ。めったに出会えない雰囲気と景観だ。


そんな廃村を眺めながら、のんびりとおでんを楽しむ。静かだった廃村にガスの音が響く。

しかし、なんてのんびりできる所なのだろう。まったく周囲に気を使う必要がない。

すっかり気に入ってしまった。秘密にしておきたい、数少ない隠れ家といった感じだ。

 


すっかり長居してしまった。約2時間もこの場所で明家の廃村を眺め、物思いにふけっていた。

それほど静かで動きたくない心地よさがある。


下りは広々とした林道を気持ちよく下る。

なんて素敵な山道なのであろう。こちらを下って正解だった。
 


MTBの性能と、自分のテクニックを試したくなるほどいい山道だ。

路面も安定しているし道幅も十分だ。さらに危険なところはあまりない。


展望が次第に開け、下界の道が眼下に見えてくる。

太いタイヤのMTBで来るべきだ。ランドナーではこの下りを満喫できない。
 


いやぁ、素晴らしい下りだ。本当のMTBの楽しさを味わえる下りだ。

こんな贅沢な楽しみが他にあるのか、ってぐらい条件が揃っている。


舗装路のツーリングとはちょっと次元の違う世界かもしれない。

いろいろなフィールドで、いろいろな楽しみ方ができる自転車の世界。やっぱり奥が深い。
 


調子に乗って下っていたら、どうやら道を間違えたらしい。

途中で分岐があったが、勢いに乗って道なりに下ってしまった。


どうせ下界は見えている、と思い下って行ったらどんどん道は狭まり、最後は消滅してしまった。

今更引き返すのも面倒なので、そのまま強引に下っていくと最後は車道の真上に出てきた。

最後は強引に引きずりおろし、何とか車道に降り立つことができた。
 


まあ、楽しい一日だった。

走った距離はほんのわずかであったが、内容は濃すぎで満足感十分だ。

こんなフィールドがまだ残っているのかと驚いた一日であった。
 


(2005/11/14 走行)


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