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山刀伐峠:山形県最上郡最上町と尾花沢市との境。標高470m
(なたぎり)  江戸時代、松尾芭蕉も尾花沢に行くためこの峠を越えたと伝えられる


素晴らしい二日間のツーリングだった。

いい旅をした後はビデオがまた楽しみだ。

今回はニューサイを真似してこんなDVDケースを作ってみた。

さて、またDVDを見て二日間の旅を振り返るとするか。



6月にツーリングに行くことは意外と少ない。例年GWの後は、梅雨の時期だけにあまり走る機会もなかった。

今回突然お誘いがあり、思いもよらぬ場所に、思いもよらぬ時期に訪れることになった。


山刀伐峠(なたぎりとうげ)を越え銀山温泉に泊まる、山形・宮城みちのくツーリングである。

もう、場所と名前を聞いただけで素敵である。行ったことがない、初めての峠、初めての温泉である。

たまには、こういうお誘いのツーリングも悪くない。 行く前から期待に胸が膨らむばかりであった。
 

 


今回初対面のU氏の企画で、念願の銀山温泉が予約できたので同行者を探していたらしい。

幸運にも、自分の所まで運が巡ってきてのツーリングとなった。


新幹線ホームでU氏とご対面。

知る人ぞ知る、NC誌に紀行文を常連で投稿する重鎮だ。やはりオーラが違う・・・


東北新幹線を古川で乗り換え、陸羽東線で赤倉温泉駅まで行く。

すっかりローカル線の景色の中、ガラガラの車内で運転席にへばりついて景色を楽しむ。

いつまでたっても、男の子は好きな物が変わりませんね、やっぱり。
 


駅に着いたときはすでに時刻は10:30。さすがにここまでは遠い。

U氏の友人Y氏がすでにカーサイ&自走で到着していて、輪行組もさっそく組み立てる。


駅舎内にはちょうどいい具合にスペースがあり、U氏の豪華絢爛車の姿がお目見えする。

どうだ、と言わんばかりの存在感と重厚感。唸らせるほどのアッセンブリー、そして配色。うーん、見事だ。

この一台を囲んでしばしミーティングの時間。尽きない話に、いつまでも出発できない。
 


コンビニで食糧調達後、走り始めたのはもう11:30になっていた。

国道を山刀伐峠方面へ分岐すると、交通量もぐっと少なくなる。


6月にもなれば気温も高いが、梅雨とは思えぬ爽やかな気候だ。

赤倉温泉を左手に眺めながら、道は山刀伐トンネルへ緩く登っていく。

道路前方には気温21度の表示だ。ちょっと走ればすぐに汗をかくほどになってきた。

 


新緑の緑がみずみずしく、そしてハルゼミの大合唱がうるさいほど響いてくる。

この時期にこんなに大量のセミの鳴き声を聞いたのは初めてで驚いた。自然の生命力を肌で感じる瞬間だ。


出発して約30分、右カーブを登った先に山刀伐トンネルがポッカリ現れる。小休止して汗を拭う。

山刀伐峠越の立派な案内に導かれて、いよいよ松尾芭蕉の世界に我々も入り込む。


峠の入口からすぐに、深い緑に覆われた雰囲気最高の旧道が始まる。

路面は舗装されていて、適度な勾配で実に走りやすい。


視界を遮るほど豊かな森林に吸い込まれるように、道はくねくねと曲がっていく。

上空は見えないものの、新緑の緑が実に明るく、森林のシャワーを浴びている感じだ。
 


いやぁ、気持ちのいい道だ。季節にもよるのだろうが、ハルゼミのBGMがさらに雰囲気を盛り上げてくれる。

途中で地元の軽トラックの方とすれ違い、

「昔は山賊が出たって言うらしいですが、今はもう出ませんよね?」なんて会話をしながらご挨拶。
 


撮影ポイントが多く、また全員がカメラマンなのでなかなか忙しい。

前から後ろからカメラを構え、追い越したり先で待っていたりしながらゆっくりと行く。

いつまでも走っていたい、本当に気持ちのいい峠道だ。
 


その先、車道のピークには「山刀伐峠 芭蕉庵」と書かれたきれいな休憩所が設けられていた。

さっそくここでランチタイムとする。


絶好の場所に絶好の休憩所。なかなかいい具合に整っていて気分も上々だ。

誰もいない貸し切りの峠越えで気分は最高だ。ランチタイムもよりおいしく感じる。
 


ここからは車道を離れ遊歩道へ入っていく。

さっそく担ぎとなるが、階段を登れば押したり乗ったりできるぐらいだ。

担ぎも登場となって、コンパクトだけどなかなか中身の濃いツーリングになってきた。
 

峠へは気持ちよく押して到着。なんて気分のいい峠越えなのだろう。

峠には立派な石碑や案内板、そして東屋まで整っている。なんだ、ここでランチにすればよかったと後悔する。
 


吹き抜ける風が爽やかだ。

これだけ峠越えのストーリーが出来上がっていると、記憶に深く刻まれることだろう。

多くの峠を越えてきたけれど、歴史の重みをひしひしと感じる数少ない峠かもしれない。

「実にいい峠だ」
 


下りは乗車率少なめだ。

無理すれば乗れないことはないが、高級ランドナー&高齢者グループのため無理はしない。
 


階段が多く、重たい自転車を肩に担いで一段一段降りていく。

その姿が絵になる。味がある。

やっぱり、「いい峠だ」
 


車道へ出れば快適なダウンヒルが待っている。

決して豪快でも派手でもない下りだが、この新緑溢れる中、とにかく気持ちのいいダウンヒルだ。

そんな各人のコーナーリングの写真でも特集してみよう。
 


楽しかった峠越えも終わりだ。フィナーレは銀山温泉までの快走だ。

水田が広がる中、平坦な道を飛ばす。ゆっくりと楽しんで走ってきたが、最後は全員で気持ちよく飛ばす。


ゴール
が近くなると、ちょっとした登りが結構脚にくる。それでも先頭はいいペースで引っ張って行く。

峠からは結構距離があった。ようやく銀山温泉が近づいてきた。
 


銀山温泉入口に到着すると、突然別世界に引き込まれる。

いきなり多くの人と車が溢れ、そして目の前には大正浪漫の風情が広がる旅館街が現れる。


銀山川の両側に木造多層建築の旅館が立ち並ぶ。多くの橋や石畳、ガス灯など、まるで映画のセットのようだ。

なんて素敵な景観なのであろう。思わずうっとり見とれてしまうほどだ。


旅館に直行するまでもなく、ベンチに座ってしばらくはこの眺めを味わうほどだった。

自転車は離れた車庫に置かせてもらい、さっそくお疲れ様の反省会。


酒屋で
仕入れたつまみとビールで小宴会の始まりだ。明るいうちに到着すると、こういういいことがある。

軽く一杯のつもりが、すでに大瓶4本も飲んでしまってすっかりいい気分だ。

 


夕食は大広間を贅沢に使わせてもらう。

旬の地元食材をふんだんに使用した料理の数々に、さらにお酒もすすむ。

いい峠越えだっただけに、楽しく2時間近く盛り上がった宴会だった。


銀山温泉は、NHK連続テレビ小説「おしん」の舞台となったことで一躍脚光を浴び、全国的にその名を知られることになった。

5月から10月までの毎週末には、花笠踊りが橋の上で披露される。



まさか本物の花笠踊りを見れるとは思ってもいなかった。

すっかり上機嫌に出来上がった5名のおじさんたちは、カメラ片手に宿の下駄を履いて温泉街へ。


すでに花笠音頭が流れる中、大勢の温泉客が橋の周りに集まっている。いやぁ凄い人数だ。

これだけの人が今日この温泉に泊っているということだ。やはり人気のある温泉は活気がある。


やがて登場した5名の踊り手により、見事な花笠踊りが披露された。息もピッタリ合っていて見事である。

スポットライトを浴びた橋の上での踊りなので、どこからでもよく見える素晴らしい舞台だ。


一緒になって踊り、唄い、手拍子をする。温泉町全体が一つになって盛り上がっている感じだ。

親しみやすいメロディーだけに、誰もが楽しくなり、思わず笑顔がこぼれる。


こんな温かく一生懸命な温泉は初めてだ。とにかく楽しい、美しい、そして温かい。

気にいりました、銀山温泉。
 


時刻は21時。まだまだ夜はこれから。

飲兵衛おじさんたちの二次会が始まり始まり〜。


さんざん
飲んでいい気分だけど、やはり二次会になるとまた飲める、飲める。

尽きない話題に夜も更けていく。そして最後はいつもの通り、バタンキューでおしまい。
 

距離: 30.7 km 
所要時間: 4 時間 54 分 9 秒
平均速度: 毎時 6.3 km
最小標高: 140 m
最大標高: 512 m
累積標高(登り): 496 m
累積標高(下り): 503 m

(2013/6/8 走行)


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