峠への招待 > ツーリングフォトガイド >  ’2013 >  草軽鉄道跡・碓氷峠




朝目覚めると、すでに走り屋Kさんの姿はなく、二日目は一人少なくなって朝を迎えた。

宿の外へ出るとさすがに寒い。ブルっとくる寒さだ。もう11月も終わりだ、まもなく厳しい冬が訪れる。
 


昨日二度のスポーク切れに見舞われたK石さんは 、Sさんの車で駅へ向かうためここでお別れ。

走れるメンバー9名で「道の駅 八ッ場ふるさと館」の事業説明会へ向かう。


宿からいきなり激坂だ。ダムの底から地上へ出るということだ。

朝からこんな坂登れない。工事中の道を皆で押していく。


すぐに右手に「新川原湯温泉駅」が見えてきた。もうほとんど完成している様子だ。

昨日の川原湯温泉駅とは、似ても似つかぬ現代風のコンクリート駅舎だ。


線路も駅も、あっちからこっちへ移動してしまうんだから、恐ろしいほどのパワーだとつくづく感じる。

日影では路面にはうっすらと霜が降りていて、所々凍っていて滑る。
 


巨大な不動大橋(湖面2号橋)を渡って 八ッ場ふるさと館に到着。さっそく会議室へ案内されて全員着席する。

なんだか試験会場みたいな感じで、いつもは賑やかな面々が静かに授業を受けるモードに。


ツーリング中にこんな体験は初めてなので、なんだかおかしい雰囲気だ。

さっそく担当者から八ッ場ダムの事業説明が始まる。八ッ場ダムの理解を深めようと、事業担当の方々は大変だ。


これまでの長年にわたる紆余曲折を経て、ようやく今がある。

日本国中を騒がせた八ッ場ダムの現場、ど真ん中にいると思うとツーリング気分どころではない。


「皆さんは、埼玉、千葉、東京からお越しと聞いてまして・・・」

「八ッ場ダムは地図で示すとだいたいこの辺りで・・・」

DVDが故障してしまって映像が見られないので、地図を使って詳しく説明してくれる。
 



1952年5月に浮上した八ッ場ダムの構想は、カスリーン台風洪水の再来に備えるための洪水調節を目的としていたが、再浮上した1965年3月には水源開発も加わった。当時の日本は高度成長時代の真っただ中にあって、首都圏の水道用水、工業用水の需要が増加の一途を辿っていたので、それらの水源開発も加えた多目的ダムとして八ッ場ダムの構想が再浮上した。

しかし、時代は大きく変わった。水需要の状況が数十年前とは様変わりし、水需要の減少と水源開発の進捗により、水余りがますます顕著になる時代になっている。それは全国共通の傾向であって、首都圏も同じである。
(「八ッ場ダム 過去・現在・そして未来」より引用)
 



ダムに詳しいメンバーの専門的な質問に、担当者が答えてくれる。

私にはさっぱりわからない質問だったが、この事業説明会は実に興味深く、勉強になる体験だった。


3000円の宿泊費助成は有難いが、そうまでしても川原湯温泉の灯を消さないよう必死なのだと伝わってくる。

我々首都圏組は、この八ッ場ダムの恩恵を受ける立場なのだが、これまであまり関心がなかった。

これを機会に、もっともっと関心を持たなければいけないと思うばかりであった。
 


時刻は11時を過ぎた。ツーリングとしてはこの時間から開始となる。

ここで本隊メンバーもさらに分割して少人数になる。


昨日
の別行動組3名はここでお別れ。ダムに詳しいI岡さんも単独輪行へ。サポートカーSさんもお別れだ。

とうとう12名のグループが、残り5名となってしまった。


本日のツーリングの目的は、草軽鉄道跡を辿り、碓氷峠から下って横川駅へ戻るというプランだ。

すでに半日終わってしまい、 草軽鉄道跡もショートカットコースとすることに。
 


ここからは北軽井沢に向かってずっと登りだ。正面に雄大な浅間山の姿がよく見える。

交通量は多少あるが、路肩に落ち葉が積もる道をのんびりと登っていく。

直線的な登りが続いて面白くない。じりじり登っていく横を、アクセルふかした車がかっ飛んでいく。
 


ある意味単調な登りなのでペースもなかなかいい。予定よりも時間に余裕が出てきた。

そうなれば、ゆっくりとランチタイムを楽しめる。さっそくコンビニを見つけて食料の調達だ。


ちょうど
いい所に、浅間山を眺められる絶好のランチポイントを発見。ちょうど5人で満席の東屋。

天気もいいし、よく登ったし、わいわいがやがや楽しいランチタイム。いつもながら、ほんと楽しい時間です。
 


食後は1kmほど先、軽井沢町との境を東へ分岐する。ようやく車から解放されてほっとする。

下り基調の広々とした車道を気持ちよく飛ばす。やっと静かなツーリングの雰囲気になってきた。


ゴルフ場の脇を気持ちよく快走する。広々とした景色の中、傾き始めた太陽が晩秋の景色を映し出す。

標高は1277m。さすがにこの時期、15時を過ぎると冷えてくる

防寒具を着て、いよいよ国境平の草軽鉄道跡の道へ分岐する。
 

路線図は「草軽鉄道Web博物館」より引用


地図は「廃線探索 草軽電気鉄道」より引用
 


道はよく締まった上質のダートだ。
久しぶりのダートに気分も盛り上がる。

すぐに通行止めの ゲートが現れる。 その横に「軽井沢林道」と書かれた案内が建っている。

廃線跡だけあって道幅も自転車で走るにはちょうどいい。
 


小枝は散乱しているが、大きな石や倒木もなく快適なダートのダウンヒルを楽しめる。

晩秋の日暮れ間近の林道は、寂しくもあり美しくもある。


逆光の
中、直線的なダートを走り抜けるエルスが眩しく、そして熊鈴の音が次第に消えていく。

それにしても、結構激しい下りをこんなにガンガン飛ばすエルスを初めて見た。大丈夫? 壊れ ちゃうよ?
 


見通しもよく、路面も安定しているので結構スピードを出しても大丈夫だ。

と、思っていたら前方で何やらトラブル発生だ。近づいてみると、なんとまあ凄いことに!


ご覧の通り、太い枝をホイールが巻き込んでガードが”グシャ”と曲がってしまった。

急ブレーキがかかって、路面には激しいスリップ痕が・・・これがフロントだったら・・・おぉコワ。
 


見た目は激しい損傷でビックリしたが、手でたたいて曲げて、すぐに復旧。やわらかいガードで助かった。

こんなこともあるんだねぇ〜なんて笑い話で済んでよかった です、ホント。
 


距離は短かったけれど、実に雰囲気のいい、そして味のある廃線跡だった。

本来はもっと廃線跡を辿りたいところだが、さすがに今日は時間がない。しだいに夕暮れも迫ってきた。

ダートの出口には再びゲートがあるが、下をくぐって通り抜ける。
 


別荘地を抜けて旧軽井沢まで下ってきた。
日没も近いが、多くの観光客で通りはまだまだ賑やかだ。

静寂の世界からいきなり違う世界に舞い降りてきた、という感じだ。


さあ、最後は碓氷峠からのダウンヒルが待っている。横川駅までは下ってゴールというフィナーレだ。

薄暗くなってきた中、交通量も少ない碓氷峠に到着。
 


標高差550mはかなり下りを楽しめる。寒さ対策をして、テールライトも点灯して、さあ行こう!

道幅が広く、路面もよく、そして適度なワインディングロードが実に気持ちいい。


コーナーリングの楽しさを、久しぶりに十分味わったというダウンヒルだ。

すぐに日没になってLEDライトを点灯する。真っ暗になるのはあっという間だ。


気が付けば周囲の様子もほとんどわからないほど暗くなってきた。

しかし下界へ降りてくるとまだまだ紅葉がきれいだ。

止まって見上げれば、最後の色づきが暗い中でもよく見える。
 


いいダウンヒルだった。結構下れた。そして十分満足できるダウンヒルだった。

無事に全員横川駅に到着。カーサイ組と輪行組と分かれて帰り支度だ。


駅周辺には
お店もなく、帰りの車内は二人だけの寂しい反省会となった。

ぐるっと周回してきた今回のツーリング。


メンバー
が増えたり減ったりと慌ただしい二日間だった。トラブルもいろいろあった。

そしていい社会勉強にもなった。とても中身の濃い、充実したツーリングであった。
 




距離: 58.9 km 
所要時間: 7 時間 45 分 7 秒
平均速度: 毎時 7.6 km
最小標高: 390 m
最大標高: 1374 m
累積標高(登り): 1207 m
累積標高(下り): 1393 m

(2013/11//24 走行)


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