峠への招待 > ツーリングフォトガイド > ’2016 > 久比岐自転車道
上越市虫生岩戸〜糸魚川市中宿
今日のコースは 、「新潟・長野 サイクリングコースガイド」より「久比岐自転車道」を走る。
コースガイドを読むと、もう最高のロケーションに心が弾む。
昨日までの山岳景色から、一気に今日は日本海へ移動する。
自転車道なんてつまんないよ・・・なんて意見もありますが、そうでもないですよ。
確かに、誰でも安全に走れるように人工的に作られたものなので、仕方ない面もいろいろありますが、まあ呑気にポタリングの気持ちで走るのであれば、楽しく、悩まず、迷わず走れますね。
自転車道と言えど、馬鹿にできない素晴らしいコースもいろいろあり、今回の久比岐自転車道も、なかなかのコースでした。
朝8時には長岡駅のホームで電車を待つ。素早い行動で、朝から気合が入っている。
山から一気に海へ移動できるのだから、こんな素晴らしいことはない。
渋滞もなければ、時間も正確。そして体も疲れない。
やっぱり、輪行旅は最強だなぁ〜。
8:28発 特急しらゆき2号 がホームに入ってきた。
ゴールデンウィークだからか、結構混んでいて通路まで乗客で一杯だ。でも、なんとか座れてラッキー。
車窓の右手には日本海が大きく広がる。約40分で柿崎駅に到着。
この駅で降りたのは、なんと自分だけ。
こんな駅で降りてどうするのでしょう? 何があるの? って感じで乗客はこちらを見ていた。
駅前はやたら広く、誰もいなく、ガランとしていて寂しい限り。
久比岐自転車を走るには、このあたりから「助走」をして足を慣らしておこうという作戦だ。
今日はかなり気温も上昇し、日陰で組み立てないと暑くて仕方がないので、駐輪場の横で組み立て始めた。
天気もいいし、この時間からスタートできる喜び、コースの充実度、景色など期待に胸も高鳴る。
組み立てていると、後ろから声をかけられた。
「お〜トーエイですか!」「最近は珍しいですよね〜ランドナーは」
手を止めて見上げると、なんかアウトドア風の帽子を被った男性が、自分の自転車をジロジロと見ている。
ああ、こんな所にもランドナー好きがいるんだ、時々こういうマニアに出会うことあるよね、なんて感じだった。
話し込むと面倒くさいので、聞き流していたら、今度はパーツ一つ一つに興味を示して話しかけてきた。
サドルがどうの、クランクがどうの、リムだステムだブレーキだ・・・ん? なかなか詳しいぞ。
ただ者ではないな・・・と感じたので、それからはちょっと真面目に応対することに。
身軽な格好で、何一つ荷物を持っていなく、いったいこんなところで何してんの? 何者? という疑問が強かったので、
「ずいぶん詳しいですね。今日はこちらで何されているんですか?」と聞くと 「埼玉から仕事にきました」と。
埼玉から新潟へ仕事で来たって、ここでどんな仕事? と考えてしまったが、それ以上詳しく話してくれなかった。
すると、駅の向こうからぞろぞろと数人が歩いてこちらにやってきた。
なんだか、みんなダルそうな歩き方で、楽しそうにおしゃべりしている。
そして、自分が組み立てているそばまで近づいたとき、その顔を見てびっくりした。
「うわっ!」と思わず声を発してしまった。
なんと 火野正平に会う! NHK こころ旅だぁ〜!
この顔、この頭、この眼光・・・あの人、あの人・・・えーと、あの人・・・名前が出てこない・・・えぇ〜、何だっけ・・・!
あの、NHKの こころ旅の・・・そう、そう、火野正平だぁ〜 やっと名前がでてきた〜
カメラマン、音声さん、スタッフが控えていて、これは撮影だとすぐにわかった。
NHK こころ旅だぁ〜 げげ! こんな所で遭遇するとは・・・もうすでにカメラはまわっていて、自分もしっかり撮影されている。
ほぼ組みあがったランドナーを見て、
「なんか、俺の自転車と違うよね、これ」と火野正平さん。
「これはフランスタイプですよ」とスタッフの一人が説明する。
(フランスタイプってなんでしょうね? まあ、火野さんにわかりやすく言ったんでしょうね)
「フランスタイプ? へぇ〜・・・いいねぇ」「火野さんのはイタリアタイプですよ・・・」みたいな会話が目の前で。
「俺のにはこれついてないけど、どうして?」とガードを指さす。[
火野さん、自転車に対してはほとんど詳しくないようで、ガード付き自転車が珍しいようである。
時間に余裕があるのか、火野さん座って煙草を吸い始めた。
自分も片づけをやめて、ここぞとばかりに話しかけることに。
まずは、火野さんの愛車について聞いてみる。
「火野さんのトマジーニ、いいですよね〜。素晴らしいのに乗ってますよね〜」と聞くと
「俺の自転車、トマジーニって言うの?」とスタッフに確認すると・・・「そうです」とスタッフさん。
どうやら、愛車の名前もよくわかっていない様子・・・まあ、別にいいんですけどね。
次の話題。
2014年9月に、日経ホールで「火野流、九州旅のススメ」というトークショーがあって、火野さんがゲストで出演していた。
その時の火野さんのなんとも言えぬ雰囲気や、ボケが印象に残っていたので、思い出して聞いてみた。
「トークショーでお客さんから質問された時の、火野さんの答えが最高に面白かったですよ!」
「お客さんから、長崎で一番ちゃんぽんがおいしいお店はどこですか? と聞かれたとき、火野さんは、”そりゃ間違いなくリンガーハットだよ””やたら変な店行くよりよっぽどうまいよ!” って答えて会場大爆笑でしたよ。覚えてますか?」 と聞くと、
「いやぁ、全然覚えていないんだけど・・・」 と、ぼそぼそ・・・
「あぁ、火野さんあれですよ、あの九州のトークショーの時ですよ・・・」とマネージャーらしき女性がフォロー・・・
まあ、お忙しい方ですから、いちいち覚えてませんよね・・・
その後も、火野さんが高い所が大嫌いで、坂や橋も嫌いなことなど、なんだかんだいろいろお話しました。
そんな話で盛り上がっている様子も全部撮影されていて、最後に、
「あのー、写真撮らせていただいていいですか・・・」と聞くと 「いーーよーー」と例の低い声で即OKです。
「どうせなら一緒に取ってあげなよー」とスタッフに言い、自分のスマホで写真を撮ってくれました。
火野さん 全然芸能人らしくなく、普通の小柄なおじさんって感じ。見た目はちょっと怖いけれど、とっても気さくで優しい人でした。
後で調べると、この日の撮影は、柿崎駅から越後川口まで輪行して「お手紙」の地へ向かうロケだったようです。
ここでの撮影は、本日のロケのスタートらしく、列車の時間になると火野さんは輪行袋をかついでホームへ向かいました。
実際は、すべてスタッフが列車に持ち込んでいて、火野さんは役者ですから、自分で荷物を運ぶなんてことはしません。まあ、当然ですね。
さらにわかったことは、火野さんは連日「歯痛」で苦しんでいたそうで、この日も歯が痛くてしかたなかったっと書かれていました。
どうりで、あまり元気がないように見えたのは、そのせいだったんでしょうね。
嫌な顔せず、おしゃべりに付き合っていただいてありがとうございました。すっかり、火野正平ファンになっちゃいましたね。
それから、火野さんは自分と同じ目黒区生まれだったんですね。
この時知っていれば、もっと、もっとローカルなお話しできたのに、残念でした。
・
・
・
騒ぎが終わると、駅前はまた誰もいなくなり自分一人だけとなった。
何だったんだろうか、この騒ぎは。自分も相当興奮してしまい、何が何だかわからないままだった。
でも、なかなかないですよね、こんなこと。
よりによって、ツーリング中に「NHK こころ旅」に出会い、芸能人 火野正平と語り、一緒に写真撮ったんですから。
もしかしたら、自分がTVに出ちゃうかも?! どうしよう?! みんなに知らせないと! なんて期待が沸いてきて、もー大変です。
それからしばらくは、仲間に連絡したり、あの詳しい人は一体誰なのか調べてもらったり、今日のロケの放送予定を調べたり・・・
あれこれ、仲間とやり取りしたり、ネットで調べたりしていろいろ判明。
あの詳しい方は、埼玉の自転車ショップの方で、「こころ旅」に同行しているメカニックの方だそうです。
だから詳しいんだぁ・・・それを教えてくれた仲間もすげぇ〜な。
放送予定もわかると、「ひょっとしたら、NHKに映るかもよ〜」なんて仲間に連絡しまくりでした。
仲間の皆さんから、「絶対見るね!」「録画するね!」「楽しみ〜!」「いよいよTV界にデビューだね!」なんて返信がいっぱい。
もう、こっちがスターになった気分で、田舎者はこんなことではしゃぐので困ったものですね。
数日後、期待に胸を膨らませて待ち望んだ放映は・・・・・
いきなり、火野さんが列車に乗る輪行シーンから始まったぞぉ〜〜〜 うあぁ〜〜
それまでの自分とのやり取りは、なんとすべてカットされた かぁ〜〜〜
モンベルの帽子とウェアが目立ちすぎたのかな?
それとも企業名や商品名をしゃべりすぎたのかな?
いや、そもそも放映するに値しない 会話だった・・・だろうな。
という結末でした。連絡を差し上げた皆さま 、いろいろとお騒がせいたしました・・・
さてさて、話を本題の久比岐自転車道に戻すことに。
この騒ぎで大幅にタイムロスとなった。急いで走り出し先を急ぐ。
今日は異常に暑く、そして風が強い。
右手に日本海を眺めながら、久比岐自転車道のスタート地点へ向かう。
海岸線を気持ちよく快走〜と行きたいところだが、強風でなかなか前に進まない。
自転車で走っている暇な人は誰もいなく、ただただ大きく広がる日本海を直江津へ向かう。
海岸の砂浜には、GWで家族連れが賑わっているが、風が強いので皆さん大変そうだ。
ようやく自転車道のスタート地点へ到着。といっても、車道脇の歩道だ。
多少道幅は広いが、しばらくは車道と並行して進む。
車は渋滞でノロノロ運転。その横をスイスイと気持ちよく走る。
車道の反対側へ渡ると、ようやく車から離れ快適な自転車専用道が待っている。
この自転車道は、旧北陸本線の廃線跡を利用して作られているので、トンネルが何か所も残されている。
最初のトンネルは距離も長いが、照明がしっかりしているので安心だ。
トンネル内は寒いほどで、ビュンビュン通る車の音もまったく聞こえない。右に緩くカーブしながら出口へと向かう。
自転車道は完全に車道と分離され、さらに車道より高い位置を行くことになる。
車道を見下ろしながら、日本海を右手に誰もいない自転車道をのんびりと走る。
この道も「片鉄ロマン街道」と一緒で、十分な道幅と、きれいに整備された路面、そして贅沢すぎるほどの眺めが素晴らしい。
前方から、親子連れのサイクリングとすれ違う。このコースなら子供でも十分走れるし、なにより安全だ。
次のトンネルが現れる。
トンネルの長さと、自転車での所要時間が記されている。「青木坂トンネル 長さ 321m 通過時間1分」
さらに次のトンネルが続く。「大抜トンネル 長さ 391m 通過時間2分」
こうした変化のあるコースと眺め、そしてトンネルの連続で気分も最高潮だ。
トンネルを抜けると、名立休憩所がある。駐車場もあるが、ほとんどの車は止まることなく通り過ぎてしまう。
ここからの眺めも素晴らしく、遥か彼方まで広がる日本海がとにかく雄大だ。
しっかりと仕入れた食料を並べ出して、本日のランチタイムの始まりだ。
時間も十分あるし、この景色、このロケーションに至っては、いつまでものんびりしていたい気分だ。
トイレがないのが唯一の難点だが、車中泊好きならば、この場所は夕陽ショーを独占できる最高の場所だろうな。
すっかりお気に入りの場所になってしまって、相当ゆっくりくつろいでいた。
天気はだいぶ曇ってきて、夜には雨になりそうな予報だ。
山陰をツーリング中の友人からは、悪天候の悲鳴がメールで届く。
お気の毒に、予定がすべてパーになってしまったらしい・・・こっちは、天気が悪くなる前にお帰りだ。
満腹になって走り出す。
その後も短いトンネルが続く。本当にトンネルの多い自転車道だ。それだけ、変化があって飽きないコースになっている。
道の駅は車が溢れんばかりだ。どこも満車で止める所もない。
それを横目で見ながら、こちらはこんなに空いてますよ〜と鼻歌気分。
あ〜、自転車に乗っててよかった。車でなくて良かった、とつくづく感じる。
最後の白山トンネルを抜けると、能生歴史民俗資料館に出る。時間があればゆっくり見学するのもいいだろう。
いよいよこのツーリングもフィナーレだ。糸魚川へ向けて、最後のコースをゆっくりと味わう。
海岸線沿いに自転車道は降りてくると、今度は潮の香りが一段と強くなってくる。
空模様がだいぶ怪しくなってきて、日本海の海もしだいに薄暗くなり始めた。
糸魚川が近づくにつれて、わずかに残った残雪の山並みが正面に近づいてくる。
今日は、朝からいろいろなことがあった。そして、いい思い出になった。
自転車道も見事だった。一日を通じて、ほとんど車に邪魔されることなく、自分だけのツーリングを楽しむことができた。
なかなかないですよ、これだけ恵まれた環境は。素晴らしい自転車道に拍手を贈ってあげたい。
距離:
61.8 km 所要時間: 6 時間 42 分 32 秒 平均速度: 毎時 9.2 km |
最小標高:
0 m 最大標高: 35 m |
累積標高(登り): 303 m 累積標高(下り): 308 m |
(2016/5/3 走行)
峠への招待 > ツーリングフォトガイド > ’2016 > 久比岐自転車道