峠への招待 > ツーリングフォトガイド > ’2017 > 北上・御所湖
みちのく三大桜名所、北上展勝地さくらまつり。
北上の駅を降りると、多くの観光客がぞろぞろと北上川に向かって歩いていく。
北上川へ出ると、目の前には雄大な川の流れと、対岸に見事な桜並木、そして北上川に鯉のぼりが泳いでいる。
ゆっくりと、目の前をボートやカヌーも行き来している。
なんという素晴らしい眺めなのだろう。ちょっと都会のお花見とは比べ物にならないスケールと美しさだ。
前回のつくば・霞ヶ浦のツーリングでは、まだ桜の開花に早すぎたため、桜前線の北上を待って東北へやってきた。
願いがかなって、ちょうど満開、そして天気もまずまずだ。
今日から三日間、東北お花見ツーリングのスタートだ。
川沿いに進む。外国人観光客も多く、中でも中国語が賑やかに飛び交う。
対岸へ渡る橋や周囲の道路はもの凄い渋滞で、延々と車が続いて全く動かない。
こんな時自転車は渋滞の中をスイスイと先へ進む。
車の方たち、いったいいつになったら車から降りられるのでしょう?
いやぁ、見事な桜のトンネルです。
皆さん、上を見ながらのんびりと歩いて散策しています。
都会だったら、そこら中にビニールシート敷いて宴会の光景でしょうが、ここは皆さんお行儀よく静かに桜を鑑賞している。
ちょうど、「北上花巻温泉自転車道」の横なので、自転車で来れば最高のお花見ツーリングとなる。
この自転車道、昨年の5月に花巻から南下して通り抜けた道だ。
その時はすでに桜も散っていたため、こんな素敵な光景には巡り合えなかったし、誰もいなかった。
季節とタイミングが違うと、これほど景観が違うのかと驚かされる。
景勝地の人混みを後にして、自転車道を北へ向かう。
一歩離れれば、もう静寂の世界。観光客の姿は誰も見えなくなる。
川沿いに続くこの自転車道は、静かに桜を楽しむには最高だ。
時々すれ違う地元の方々は、気持ちよく挨拶を交わしてくれる。若者もお年寄りも、皆さん本当に気持ちがいい。
ほんの小さなことだけど、訪れる場所によって挨拶もそれぞれだ。自然と挨拶を交わしてくれる街は、やはりいつまでも思い出深い。
北上川の流れは速く、そして水量も豊富だ。荒天の時には、 いったいこの水量はどこまで増えるのだろうか。
この川は、 穏やかな流れをイメージすることはほとんどできず、強く荒々しく、そして時には不気味な印象さえ感じる。
自転車道は
道幅も広く、路面もまずまず整備され、ほとんど平坦な道はのんびり走るのには最適だ。
そして桜の見どころも多い。
「自転車道桜並木」
現在、更木町では、県道北上・花巻温泉自転車道線(サイクリングロード)の更木地区内の路線沿いに桜の植栽を行っています。
町内の住民が参加する「マイ桜オーナー制度」により、平成20年度より毎年約40本の桜(シダレザクラ・ソメイヨシノザクラ・ヤマザクラ・ヤエザクラ)を植栽していき将来は素敵な桜並木にし、自転車道を行きかう人や町民の憩いの場にしたいと考えています。
昨年走った時には、こんな表示が建てられていた。
植栽一本一本にはオーナーの名前が記され、大切に手入れされているのがわかる。
こうした住民の活動が輪になって素敵な自転車道を維持しているのだろう。
毎年毎年植栽が進められ、来るたびに桜並木も増えていく。
いつかまたここへ来るとき、果たしてどんな素晴らしい自転車道になっていることだろう。
花巻まで気持ちよく走る。前半でかなりゆっくりしてしまった。
今日はこれから、豊沢ダムから峰越峠を越えて御所湖まで行く予定だ。少々気合を入れないといけないと、気を引き締める。
北上川と別れ、豊沢ダムを目指す。
それまでの静寂の自転車道から一般道へ出て、しばらくは我慢の走りだ。
本日のピーク、峰越峠は標高約560m。峠方向を眺めると、若干周囲の山にはまだ残雪が見え隠れする。
都会ではすっかり春だし、桜も散った。ここ東北も桜が満開となれば、まさか雪が残っているなんて思いもしない。
当初っから標高560mの峠に残雪、なんてことは想像もしていなかった・・・しかし、甘かった。
コンビニで食料を調達し、豊沢ダムあたりでお昼にしようかと考えていた。
道はわずかに登りはじめ、ギヤを1枚2枚と軽くする。
天気も良く、汗ばむほどの陽気。暑くてシャツの袖をまくり上げる。
ダムまであと何キロだろうか? そんな時であった。
道路の通行案内に、「豊沢ダム以降冬季全面通行止」「中山峠冬季通行止」の電光表示が・・・
何? ダム以降通行止? 中山峠? 自分の行く方向か?
峰越峠は確かに豊沢ダム以降だが、中山峠方面ではない。じゃ大丈夫か? いや、ダム以降ダメなんだろう? えぇ〜?
頭の中はグルグルと回り始めた。いろんなことを考え始める。
行けるか? 行けないか? 車は無理でも自転車なら突破できる?
ツーリングではよくあるアクシデント。仲間がいれば、条件によっては強行突破もあり得るのだが・・・
雪となると条件は厳しい。たとえ突破しても、峠を前に行く手を阻まれたらアウトだ。宿に行く手段がなくなってしまう。
どうなんだろうか、この先の道の状況は・・・誰かに聞いてみたい・・・と、思った時、なんとパトカーが自分を後から追い越していった!
「すみませーん、ちょっと聞きたいことがあるんですけど! 止まってくださ〜い!」
と声を発する前に、パトカーは視界から消えてしまった・・・うわぁ、奇跡的なチャンスだったのに・・・残念。
ひょっとしたら、パトカー戻ってくるかもしれないので、それを待とう。戻ってこなければ駐在所へ行って聞いてみようと、先へ行く。
やっと見つけた駐在所。自転車を止めると、すぐにお巡りさんが出てきてくれた。
「あれ、速いですね、先ほど抜きましたよね」
「ええ、パトカー戻ってくると思っていたんですけど、戻ってこなかったんで・・・」
「あの、この先豊沢ダム以降は通行止めなんですか?」
「そうなんです、今年は雪が多く、まだまだ残雪が凄くて除雪してないんですよ」
「峰越峠を越えて、御所湖へ行くんですけど無理ですか?」
「全然ダメですね。GW明けにならないと通行できないんじゃないでしょうか。すみませんねぇ・・・」
「うわぁ、参ったな・・・御所湖に宿がとってあって・・・無理ですかぁ・・・戻るしかないかぁ・・・どうしよう・・・」
なんとか、可能性はないか、話の中から希望を見出そうかと思ったが無理だった。
さんざん雪道で苦労して撤退するより、早めの決断、ゆっくり昼食、そして輪行で移動という結論に至るまで時間はかからなかった。
駅まで戻ってばらしで輪行。そして組み立てて宿まで走る。とっても面倒で時間もかかる。できればやりたくない。
いっそのこと走ってしまおうか? 何キロある? そもそも列車はどうなっている? 行けるのか? いろいろ問題点が出てくる。
まあ、あーだこーだ言っても始まらない。時間は十分ある。まずは腹ごしらえをしながら考えよう。
ということで近くの公園で、ランチタイムだ。
乗換案内で花巻→小岩井の列車を調べる。1時間のランチタイムが取れるとわかり、さっそくベンチに陣取る。
こんな広々とした公園、桜も満開なのにほとんど誰もいない。そうか、通行止めともなれば来る人も少ないか。
まあいい、おかげでゆっくりとくつろげる。しばらくのんびりして、さて駅に向かうとするか、と片づけ始める。
すると、急に空模様が怪しくなってきた。なんてこった、自分の上空だけ雨雲が・・・
暖かった陽気から、急に冷たい風が吹き始め、ついにはパラパラと降り始めた。
なんてこった、泣きっ面にハチとはこのことだ。
まあ、前方は晴れているし、すぐに止むだろうと走り出す。しかし寒い。なんて寒さだ。春から真冬に急に戻ってしまった。
ウィンドブレーカーを取り出し、その上に雨具を着てやっと寒さをしのぐ。息が白くなるほど気温が下がり、手足も冷える。
これじゃ、まだまだ山は雪だな・・・と納得。東北の春はまだ遠いと実感した。
雨雲を抜けると、今度は明るい日差しとポカポカ陽気。激しい天気の移り変わりだ。
花巻駅で輪行。15:11発の盛岡行に乗り、乗り換えて小岩井駅まで行く。
日中の大事な時間を輪行してしまってはもったいないが、今回ばかりは仕方がない。
まだ、輪行の手段が残っているだけで助かった。
日が長い季節なので、17時から走ってもまだまだ楽しめる。
助かった。これで今日の行程は安心だ。輪行はやはり便利だ。そして列車は楽だし、速い。
小岩井駅から走り出す。車窓から見えていた岩手山の姿が大きく背後に見える。
まだまだ残雪の岩手山の姿は厳しい真冬の姿だ。
御所湖へ出る。綺麗な湖だ。
人造湖だが、とても大きな湖だ。そして碧い。
夕陽の逆光に湖面が光る。そして岩手山の姿が右手に大きく広がる。
綺麗に整備された周囲の公園は、広く、静かで、文句なしの景観だ。
湖岸の自転車道はゆったりとしていて、本日のフィナーレには最高の演出だ。
こんなに素敵な所とは・・・予想外の素晴らしさに今日の苦労などどこかに吹き飛んでしまった。
輪行して本当に正解だった。
強行突破や、自走したりしていたら一体どうなっていたことだろう。
こんなご馳走にもありつけなかったかもしれない。
越えたかった峰越峠。走りたかった御所湖への道。
しかし、いい判断、正しい選択、そして勇気ある撤退に乾杯だ。
距離:
43.5 km 所要時間: 5 時間 6 分 1 秒 平均速度: 毎時 8.5 km |
最小標高:
58 m 最大標高: 185 m |
累積標高(登り): 170 m 累積標高(下り): 137 m |
(2017/4/23 走行)
距離:
9.4 km
所要時間: 0 時間 51 分 34 秒
平均速度: 毎時 10.9 km最小標高:
175 m
最大標高: 218 m
累積標高(登り): 73 m
累積標高(下り): 103 m
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