峠への招待 > ツーリングフォトガイド > ’2018 > 飛島
山形県山形県酒田市/酒田港の北西39km 周囲10.2km 人口 203人(平成30年1月現在)
今日は飛島へ渡る。
離島旅が面白い。小さい島ほど面白い。
これまでいろいろな島に行ってきたけれど、どれ一つとして同じような島はない。
皆それぞれ独特の魅力を備えている。だから離島は面白い。
飛島は小さな島だ。わざわざ自転車を持ち込んで行こうとは思わない島だ。
有名な観光地でもなければ、自転車で走る道が整備されているわけでもない。
だから面白い。荒らされていない。本当の離島の姿が残っている。
この季節、フェリーは行きが9:30 帰りが13:30 しかない。
島には、約3時間しか滞在できない。それでも行く。
天候次第では行くことも、帰ることもできなくなる。島には宿泊施設も、飲食店もほとんどない。
離島旅といえど、しっかりと計画して、食料を用意しなければならない。のんきな島旅というわけにはいかない。
朝のフェリーターミナルに着くと、すでに待合室は人で溢れている。
えっ、こんなに混んでるの? と焦る。果たして乗れるのか?
なんだか制服を着た人たちが多い。何か飛島で防災のイベントでもあるのだろうか?
乗船券と、自転車の運賃は別のところで購入しないといけない。
荷物受け渡し口で、自転車を係の人に預ける。
「スタンドがないのでよろしくお願いします」と一言伝えて乗船。
船内は乗り慣れた人ばかりで、さっそく横になって寝てしまう人も多い。
あちこち歩きまわって、写真を撮っているのは自分ともう一組の観光客だけ。
自転車はどうなってるかと甲板を見たら、しっかり毛布に包まれて完全防備状態でした。
小さな船だ。軽自動車1台と、物資のコンテナが積まれれば甲板は一杯だ。
酒田港を出港すると、会社の屋上から社員数名が大漁旗を振って見送ってくれたり、釣りをしている子供 達が手を振ってくれる。
船の旅って、こうした見送り、出迎えがドラマチックで思い出に残る。
今日は風が強く、波もあるので小さな船では前後にかなり揺れる。
船内を移動するときは、しっかり手すりにつかまっていないと歩けない。
飛島までは、実質1時間ほどの船旅。やっぱり船旅は何度乗っても新鮮で楽しい。
飛島に上陸。
制服を着た人たちを出迎えたのは、消防団員?の方たち。
やはり何かイベントがあるようで、物資の運搬や片付けにフォークリフトやクレーンが忙しく動き回っていた。
飛島へ来て島を巡ろうと思ったら、まず自転車を確保しないといけない。
どこかへ行こうと思ったら、唯一の交通手段が自転車しかない。
無料観光用自転車が何台も用意されているが、どれもこれも雨ざらしで凄いことに。
なぜか前カゴだけはきれいで、最近取り換えたのかな?
さすがに走るには問題ないだろうが、ちょっと考えちゃいますよね、このサビ具合じゃ・・・
きれいな自転車は、早い者勝ちでしょうね、きっと。
まぁ、途中でトラブルが起きても、押して帰ってこれる距離だから関係ないか・・・
港は人で賑やかだけど、走り始めるとすぐに寂れた離島の風景だ。
どこを走ろうかと悩むほど道があるわけでもないので、島を左回りで一周することに。
当然ながら、なんにもないし、誰もいない。先ほどまでの風もおさまって、海は穏やかに。
島の東側を進むと学校が現れた。(飛島中学校)
え、この島で学校? いったい何人の子供が通ってるの? と不思議でしょうがない。
この島の人口は203人。それじゃ子供の数は?
なのにとても大きな学校でした。どうなってんでしょうか。誰か教えて〜
(飛島中学校 生徒1名(平成30年度)だそうです http://www.mokkedano.net/spot/161)
飛島中学校から道は登り始める。道はとても広く、きれいに舗装されている。
木々が鬱蒼と生い茂り、緑のトンネルのようだ。鳥の鳴き声以外何も聞こえない。
徒歩で島を巡っている外人さんに出会う。
自転車のほうが効率がいいと思うが、この急坂ではあのママチャリでは役に立たないのかもしれない。
急坂を下り、島北端の飛島漁港まで来ると行き止まりだ。
ようやく島の人に出会った。お年寄りだが元気に歩いてきた。そして、すれ違う時に心地よく挨拶してくれた。
静かだ。動くものが何もない。時が止まったかのような漁村の風景だ。
折り返して山側の道へ入ってみる。
いきなりボロボロの廃屋が視界に飛び込んできた。すぐ裏には山の斜面が迫っている。
生活のインフラに問題はないのだろうか? 電気・ガス・水道、豪雨など様々なことが気になってくる。
すると、前からママチャリに乗った、作業服を着た3人組の男性がやってきた。
立ち止まっては、若手二人にいろいろと説明している。カメラでいろいろ写真を撮っている。
今朝、飛島に来るときに一緒だった人たちだ。この島の状況をいろいろ調査しに来たのだろうか。
再び急坂を登って島を巡る。
おばあさんがこの急坂を手押し車を押しながら登っていく。隣の地区に行くには、この坂を歩いて登っていくしかない。
今にも止まりそうな足取りで、今すぐ後ろから背中を押してあげたくなる。
しかし、これが離島の生活だ。
何もせず、何も声をかけず通り過ぎる。
飛島は観光案内が整備されていてわかりやすい。
ナンバリングされた見どころが、地図と標識でしっかり用意されているのでわかりやすい。
http://static.yamagata-ebooks.jp/actibook_data/c31_20170328_0900_tobishima/HTML5/pc.html#/page/1
渚の鐘がある御積島展望スポットは素晴らしい眺めだ。
自転車を置いて少し下っていくと、目の前に「日本の渚・百選 荒崎」が広がる。
鐘を叩いてみると、透き通った音色があたり一面に響き渡った。
確かにここからの夕日は文句なく素晴らしいだろうなぁ。でもここで夕日を見るには、この島に一泊しないと無理だ。
飛島を横断するように遊歩道が整備されている。きれいな小道で自転車で巡るのに最適だ。
道に迷うこともなく、くねくねと曲がっていくと小さな「ダム」が現れた。
島民の生活のために、ちいさなダムが何か所かあり、火力発電所もあるらしい。
何でも自力で用意しなければ離島の生活は成り立たないのだろう。
のんびりと島を横断していると、ゆっくりママチャリで走る男性を見つけた。
首から望遠レンズをぶら下げて、野鳥を探しているようだ。
追い抜くときに「こんにちわ」と声をかけたらまた外人さんで、ビックリしたような顔をしていた。
こんな島まで多くの外人さんが観光に来るのかと、こちらのほうが驚いてしまった。
島をぐるっと一周回ってくると、最後に舘岩がある。
約40メートルもある大岩に、数えきれないほどのウミネコが休んでいる。
静かな飛島は一転して、ミャーミャーとうるさいほどの鳴き声に包まれた。
まるで岩の模様に見える白い点がすべてウミネコで、その数はいったい何羽いることやら・・・
時刻は13:00。出港まであと30分。持ってきた食料でランチタイム。
港のベンチで休んでいると、先ほど出会った三人組が戻ってきた。任務完了のようだ。
狭い島なのですっかり顔なじみになってしまい、軽く会釈をして港へ向かって行った。
飛島勝浦港を出港する。
帰りは風もなく、穏やかな海に浮かぶ鳥海山を眺めながら、快適な船旅だ。
地元の人には見飽きた眺めだろうが、都会のサイクリストにとってはこんな絶景はなかなかお目にかかれない。
出港からずっとデッキで鳥海山を眺めていた。
「鳥海山は海から眺めるもんだ」って、いつかテレビを見たときに漁師さんが言っていたのを思い出した。
確かに、その通りだと思った。海に浮かぶ、美しい鳥海山の全景を見れるのは海からしかない。
デッキで例の3人組と再び一緒になった。
船からも飛島の写真を撮っている。真面目な方たちだなぁ、と感心。
声をかけて話をしてみると、やはり飛島の防災調査で来たそうだ。
自転車で急坂登って大変なお仕事ですね、と聞いたら、ええ、まあと遠慮がちに答えてくれました。
短い時間だったけれど、島の魅力も厳しさも味わった、とても充実した離島旅だった。
これだから離島旅はやめられない。
預けた自転車を受け取る。
面倒くさくて厄介なお荷物、丁寧に扱っていただきありがとうございました。
さて、今日はこれからいろいろと忙しい。
予定では、鳥海山を眺めながら吹浦駅(ふくらえき)までポタリング。そして輪行して秋田のホテルまで行く。
限られた列車しかないので、一生懸命走らないといけない。
いつもの調子で写真ばっかり撮っていると、輪行の時間がなくなってしまう。
酒田港に着いて休む間もなく走り出す。
吹浦駅までのナビをセットして、残りの距離と時間を計算しながらペースを保つ。
しかし、この絶景だ。ついつい止まって写真を撮ることに。
ペースがなかなか上がらない。さらに向かい風が吹き始めた。
本当はのんびりと裏道を辿って駅まで走りたいところだが、今日は時間に追われ国道を行くしかない。
交通量は多いが、歩道が広いので、安心して景色を眺めながら走ることができる。
輪行に必要な時間を考えると余裕がほとんどなくなり、最後は久しぶりにランドナーで全速力走行。
急いで分解、輪行。
無人駅だがお迎えの車が一台来て、輪行の一部始終をずっと眺めていた。
定刻2分前にホームへ。手も洗えない中、2両編成の列車がやってきた。
車内はガラガラ。車窓からは日本海の眺めが素晴らしい。
ようやく落ち着いて、残っていたお酒とつまみで1時間半のローカル線旅の始まりだ。
と安心していたら、次第にこの列車、通学列車に大変身。
ひと駅ごとに学生が乗ってきて、ついには座席も埋まって、飲んでる場合じゃなくなってしまった。
まあ、この時間帯じゃ仕方ないね。
秋田に着くと小雨だ。ホテルまでは歩いて5分ほどかかる。
しかし、雨の中輪行袋を担いで歩くわけにもいかず、タクシーでホテルまで。
まあ、こういう時はタクシー使って楽をしましょうよ。
さて今夜のご馳走は、ホテル直結の和食処。
一人旅の宿泊プランにセットされた、きりたんぽコースだ。本格的な秋田の名物料理やお酒を味わえる。
お客も少なく空いていたので、いろいろと会話してみると、いぶりがっこにクリームチーズが絶品と教わった。
全く知らなかったが、うますぎてかなり有名らしい。
さっそくいただいてみると、確かに相性抜群だ。いったい誰が発見したんだろう。
あんまり美味しいんで、追加で注文しちゃったじゃないですか。
いやぁ、秋田はやっぱりうまいもんが多いです。
今日も、何もかも満腹の一日でした。
距離:
117.7 km (フェリー含む) 所要時間: 7 時間 56 分 26 秒 平均速度: 毎時 14.8 km |
最小標高:
0 m 最大標高: 61 m |
累積標高(登り): 212 m 累積標高(下り): 232 m |
(2018/4/23 走行)
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