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(白沢洞門)長野県白馬村(標高1092m)
「新緑の風を切る」
泊まった部屋に自転車の写真が飾られていた。もしかしたら管理人はサイクリストなのだろうか?
わざわざ自転車の写真を飾るなんて、やはりこの地はサイクリストのための聖地に違いない。
今日はこれから、サイクリストの聖地「嶺方峠」に向かう。
ニューサイクリング 1977年5月号 創刊150号
あまりにも有名な表紙だ。この一枚の写真は衝撃で圧倒的な迫力だった。
この表紙を見て、多くのサイクリストがこの峠を目指したに違いない。
サイクリスト憧れの地、「嶺方峠」
まさか、行ったことがないサイクリストなんていませんよね?
サイクリングが趣味で、ランドナーが好きで、そして峠越えが好きな人なら一度や二度行ったことがあるはず。
峠越え定番中の定番、それがこの嶺方峠だ。多くの説明は不要なほど、この峠の魅力は語り尽くされている。
( ニューサイクリング 1977年5月号 No.150 より )
ニューサイには嶺方峠の記事がいろいろ掲載されてきた。
ご存知の通り、今のトンネルは馬蹄形ではなくなってしまった。
やっぱり「絵」になるのは昔のトンネルなのだろうが、北アルプスの眺めは今も昔も一つも変わっていない。
多くの著名人がニューサイや自転車雑誌で嶺方峠の魅力を伝えている。
確かに、噂通り、評判通り、期待を裏切らない感動を与えてくれる峠だ。
時代とともに、トンネルの形が変わり、標識が増えて味がなくなってしまった感もある。
しかし何といってもこの峠の魅力は、自分の力で峠を越え、トンネルを抜けた時の絶景を自分の目で見ることだ。これに尽きる。
私が最初に嶺方峠を越えたのは、今から38年前、1980年の5月である。
この時は、白馬側から嶺方峠を越えるルートであった。快晴とはいかず、曇天の中の北アルプス鑑賞であった。
トンネル越えの感動を味わいたくて、反対側から何度かトンネルを往復した思い出がある。
( クラブラン 1980年5月 曇り)
( クラブラン 1980年5月 曇り)
二回目に嶺方峠を越えたのが、それから21年後の2001年10月秋。
この時も白馬側から越えるツーリングであった。天気は小雨、MTBで雨具を着ての峠越えだった。
展望も望めず、気温も低い中、嶺方峠のトンネルに逃げ込んだ。
しばらく遠ざかっている間に、トンネルは四角い今の形になってしまい、昔の思い出は薄れてしまった。
その後、2011年5月にカーサイでの帰り道に車で立ち寄ったことがある。この時も雲の多い天気だった。
かれこれ三回嶺方峠を訪れたことがあるが、これまで天気には恵まれず、そして鬼無里側から越えたことは一度もない。
そう、何を隠そう今回初めて本当の「嶺方峠越」を味わうのである。
( 2001年10月 小雨 )
( 2011年5月 曇り )
さて二日目。
今日は、今回のツーリングの目的、嶺方峠を越える。
窓から外を見てみると、多少雲が多い。果たして今日こそ峠からの絶景は拝めるだろうか?
朝風呂に入って朝食。
いつものナイトラン・ハードツーリングであれば、朝から空腹で、お櫃お代わりとなるのだが・・・
やはり昨日は一日中食べて飲んでばかりだったので、食欲も控えめ。
我々の体は単純でわかりやすい。走った距離に応じて、朝食のご飯が減っていく。
「峠で、さだぼんさんに会えるかなぁ?」
「いやぁ、あの人は朝早いからもう走ってるよ」
「泊まりは民宿って言ってたから、朝風呂なんか入れないしね」
(さだぼんさんは、朝6時過ぎに民宿を出発してました・・・早!
こちら、まだ寝てましたけど・・・)
(さだぼんさんは、鬼無里を出発して7:40嶺方峠到着
・・・早! こちら、朝食が7:30ですけど・・・)
9時過ぎに出発。
走り始めると、しだいに峠方向の雲が消えて青空が見えてきた。徐々に期待に胸が膨らむ。
峠までは標高差300m、1時間弱の登りだ。
この時間はほとんど車もなく、静かな峠路を楽しむことができる。
やはり今日も登りはきつく呼吸も乱れがち。
最初のトンネルが見えてくるが、これは峠のトンネルではない。まだ半分登りが待っている。
ノンストップで登ってくると、いよいよ嶺方トンネルの入口が近づいてくる。
全員でトンネルに入って、峠越えの感動をビデオに収めたいので、全員が揃うまで入口で待つ。
さあいよいよ、全員揃って呼吸を整えてトンネルに入る。
今回、この嶺方峠越えの感動をリアルにお伝えしたくて動画をYouTubeに用意しました。
ぜひこの感動の瞬間をご一緒に味わってください。(再生時間1分35秒 SANYOザクティ DMX-CS1にて撮影 )
言葉で説明するより、動画を見ていただいたほうが感動がよく伝わる。
真っ暗なトンネルの先に眩しく浮かび上がってくる残雪の北アルプス。
ゆっくりとフェードインで視界に映し出される山並みの陰影、澄んだ青空、真っ白な雲。
なんという演出、なんというライティング、なんという感動・・・本当に見事な演出だ。素晴らしすぎる。
これが本当の嶺方峠越えだ。峠越え経験44年目にして、初めてこの感動を味わった。
やっぱりベスト1ですね、間違いなく。
それでは嶺方峠からの絶景を何枚かお届けしましょう。
時間とともに観光客が増え始め、峠の駐車スペースも混み始めた。
やはり、さだぼんさんのように早朝に峠に来て、澄んだ空気の中、絶景を独り占めするのが正解だ。
我々は、峠のトンネル横の斜面をよじ登り、高台から北アルプスを眺めて一服だ。(ここが本当のアルプススタンド?)
1980年5月の写真でも同じ所から撮影している。やることはやっぱり昔と変わっていない。
峠で1時間20分も休憩していた。こんな人たちも珍しい。
充分に満足して、何もかも満たされて下りに入る。
ちょうどその時、下から女性ロードが登ってきた。
なかなか鍛え上げられたいい足に見とれていたが、向こうはこちらのヘンテコスタイル自転車にビックリしていたようだった。丁目
すぐにもう一人が登ってきて、「前に女の子いましたかぁ?」と聞いてきた。
なんだかトレーニングで走ってきたのだろうか?
それにしても、女子でここまでいいスピードで登ってくるのだから、それなりのレベルの人達ですね。
ダウンヒルと言っても、絶景の連続なのですぐに立ち止まって写真撮影だ。
どこから撮っても素晴らしい景色。
仲間を待ち構えたり、待ち構えられたりと撮影に忙しい。
新緑の中、最高のダウンヒルを満喫。いやぁ、嶺方峠、いいですね〜
タイヤも直って快適。まだまだ走れるぞ〜、速い速い
思わず笑顔になっちゃいます。気持ちいい〜
ダウンヒルも終わり、里に下りてくる。雄大な眺めともそろそろお別れだ。
標高差300mほどの短い下りだったが、道幅も広く、路面も良くて素晴らしいダウンヒルだった。
今回のツーリング、嶺方峠を越えるまではストーリーができていたのだが、その後が決まっていない。
まともに考えれば、このまま白馬へ下っていき、大糸線周辺を巡って松本から帰るのが定番だろう。
しかしいろいろと検討の結果、長野から新幹線で帰るほうが便利ということで、長野へ戻るコースを検討することに。
ところが、地図を広げても、距離を考えても、標高差を考えてもいいルートがない。
欲張ったコースを行けば、距離も標高差もハイレベル。楽なコースを行くのなら、車の多い国道を行くしかない。
結局、いい答えがない。しかたなく、適当に長野駅に向かって、脇道を探しながらの小川村散策ルートに落ち着く。
ま、このツーリングの最大の目的を十分に達成したので、あとはもう欲張りません。
気温も高くて、こんな日はあまり無理しないほうが安全。
また、おいしいおそばをいただいて、旅のフィナーレを迎えましょう、ということになった。
美麻トンネルを抜けて南下する。長いトンネルだが、ほとんど下りなのであっという間にトンネル出口が見えてくる。
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国道と別れ、裏道を探しながら走るが、まともに食料が手に入らない。
鍋でもやるかとスーパーで物色するけれど、美味しそうな食材は見当たらず。ラーメン屋を一軒見つけたが今一つ。
たまたま現れた地元のサイクリストに尋ねれば、食べるところは、この先の道の駅ぐらいしかないとのこと。
そして今日もおそばで満腹。さらにデザートまで・・・よく食べるおじさんたち。
長野駅までの道は今一つだった。
なるべく脇道を行くが、アップダウンが結構あって疲れるばかり。
市内の住宅街を通り抜け、15:40に長野駅に到着。早いゴールとなりました。
問題は帰りの新幹線。
GW最終日なので、かなりの混雑が予想される。そこで、長野発の新幹線を狙うことに。
さっそく輪行開始。
時間もたっぷりあるので輪行も焦らなくていい。狙う列車は、17:09 長野始発のあさま628号だ。
この自由席に並べば、4人分の座席が取れるはず。
新幹線改札口に行くと、切符を買う人で混みあっている。駅員が数名出て行列の整理をしている。
うわぁ、やっぱりすごいことになっている。乗れるかなぁ? と心配。
そして結局ホームで1時間並ぶことに。
東京行の自由席はご覧の通りの大混雑だ。久しぶりに見たな、こんな混雑・・・
しかし、長野始発のあさまは余裕でした。先頭に並んだおかげで、しっかり座席も確保。
やっぱり時間に余裕があるって、大事なこと。ゆとりをもってフィナーレを迎えることができました。
さっそく乾杯だ。豊富なおつまみがフロントバッグから次々登場する。
まだこんなに持ってたか、ってぐらい出てくる魔法のバッグ。さすがです。
今回のツーリング、天気に恵まれ、美味しい料理とお酒をいただき、絶景の北アルプスを満喫することができた。
そして著名な方にも出会えた。
やはりここ嶺方峠は、本物が集まるサイクリストの聖地に間違いないだろう。
距離:
51.4 km 所要時間: 6 時間 40 分 20 秒 平均速度: 毎時 7.7 km |
最小標高:
360 m 最大標高: 1099 m |
累積標高(登り): 566 m 累積標高(下り): 1007 m |
(2018/5/6 走行)
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