峠への招待 > ツーリングフォトガイド >  ’2018 > 中山峠・小峠・小繋トンネル


中山峠:福島県南会津郡田島町と舘岩村の堺。標高1155m。帝釈山脈東部の荒海山から北に派生する尾根に位置し、田島町滝原と舘岩村岩下とを結び、国道352号の旧道が越え、 新道は南側を越える。北よりに沼ノ平といわれる小湿原がある。中山峠の登り口の滝原集落に三滝温泉がある。

小峠:福島県南会津郡伊南村と舘岩村との境。標高1263m。小繋峠(こつなぎとうげ)とともに檜枝岐村と舘岩村の木賊温泉を結ぶ。檜枝岐村は、米その他の穀物が自給できなかったため、この峠は生活を支えるための大切な峠であった。

小繋峠:福島県南会津郡伊南村と檜枝岐村との境。標高1400m。



今年もこの季節がやってきた。毎年恒例のクラブラン、秋の紅葉・温泉ツーリングだ。

今回は南会津を巡る、リベンジの峠越え、温泉旅である。


10年前のクラブラン、馬坂峠(帝釈峠)越えて檜枝岐温泉に至るルートで、悲惨な目にあった。
(帝釈峠着なんと19時!)

残念ながら(というか運よく)、自分は参加できなかったため詳細はよくわからないが、今でもその時の話は語り草だ。

10年を経て迷惑をかけた宿へお詫びし、逆ルートになるがこの峠を越えるということが今回の目的であった。
 


全体ルート   2日間のGPSログよりカシミールにて作成(1日目:青いライン 2日目:赤いライン)  


会津へ行くには特急リバティ号が便利だ。

昨年会津田島駅からの帰りに乗って、すっかり味をしめてしまったおじさんたち。


いい席を占領できれば、輪行袋も十分置けるし、長い時間反省会を楽しめる。

行き帰りともリバティ号の席を確保すべく、一月前に隊長が駅まで出向いて全員分の席を確保してくれた。


いよいよ当日。始発電車で浅草駅へ向かう。

誰もいないホームで始発を待っていると、なんと輪行袋をかついだサイクリストが現れた。


今まで、同じ駅で輪行袋を見たことがなかったので驚き、少々気が引けたが話しかけてみた。

すると、これから奥只見方面へ行くという。意外と近い地域なので話が弾み、「八十里越」の話に盛り上がった。

へぇ〜、近所に同じような人がいるんだ、と朝から驚いた。
 


早朝の浅草駅だが、観光客や外人客で賑わっている。この二日間、天気も良いので、ホームに続々と乗客が集まってくる。

今回のツーリングは、輪行組6名、カーサイ組5名、そしてメンバーの奥様2名が車でサポート隊として同行する。


北千住と春日部で他のメンバーが合流してくるが、どの駅もリバティ号に乗る乗客で溢れている。

他の輪行客もいて、広かった特等席もすぐに自転車で一杯となった。
 


会津高原尾瀬口駅に降りると、さすがに空気も冷たい。広々とした駅前の駐車場で、カーサイ組、サポート隊と合流。

あまりにいい天気なので、走る前から全員ご機嫌だ。時間もないのでさっそく組み立てる。


今回、奥様2名は観光兼サポート隊ということで、宿までは不要な荷物を運んでくれる。

着替えや輪行袋、その他初日に不要な物はすべて持たなくて済む。この1kg、2kgの軽量化の効果は大きい。

さらに、何かのトラブル時には緊急要請で援助を頼むこともできる。なんともまあ、贅沢なツーリングとなった。
 


三滝温泉の入口から中山峠を目指す。標高差約430mの登りだ。

スタートが10時を過ぎているため、あまり余裕がない。


さらに峠を越えた反対側が崩落して、かなり荒れているという情報もある。

いきなりウォーミングアップもなしにヒルクライムという状況だが、とにかく秋景色が最高だ。
 


快晴、無風、そして貸し切りの林道。

暖かい日差しが差し込み、真っ青な上空からは落ち葉がひらひらと舞い降りる。

静寂な林道に、熊鈴の音色と落ち葉を踏みしめるタイヤの音。
 


時々落ち葉をガードに巻き込むと、シャーという音が響き渡る。

本当に静かで美しい林道だ。
 


舗装路を埋め尽くすほどの落ち葉の中、適度な勾配が我々を峠まで導いてくれる。

乗ったり、押したり、どちらも大差はない。

落ち葉で見えない路面も、登りなら安心。ふかふか絨毯の中、いよいよ峠も近い。
 


登りやすかったのと、荷物も少なかったためであろうか、予想外に簡単に峠に着いた。

メンバーが多くなると走り方もいろいろ。ペースも様々だ。

先頭グループに引っ張られていいペースになったのかもしれない。


峠で小休止。

この先の崩落状況が不明のため、昼飯は難所を越えてからとなった。


携帯の電波状況が悪く、林道に入ってからまったく通信できない状態だ。

まだまだこうした山中では携帯電話が通じないところも多い。ソロでの行動は十分注意しないといけないだろう。
 


さて中山峠の下りに入る。

事前にインターネットでこの峠の様子を調べてきたが、ほとんど最近の映像がない。


唯一、バイクで峠越えを目指した映像を見つけたが、途中で崩落個所に遭遇して断念している。

自転車で越えた情報も見つけたが、実際の様子がどうなっているのかさっぱりわからなかった。
 


もし、この峠を下りきれないとすると、本日の予定は大幅に変更せざるをえない。

まずは、その最大の崩落箇所がどうなっているのか、この目で確認するまでは安心できなかった。


さっそく道が荒れ始める。大雨による路面の陥没、崩壊、倒木、落石など、まあなんでもありの状況だ。

ほとんど乗車できない。乗ってもすぐに降りて押すことになる。


そして、無理して乗車すればホイールを壊すことになる。

調子に乗って馬鹿なことをしないほうがいい。ひとりのトラブルが全体に迷惑をかけることになる。


とにかく、慎重に、ケガをしないように下る。

以下は、そんな路面状況の写真だ。
 


そして、ついに現れた最大の崩落個所。いきなり工事現場が目の前に飛び込んできた。

元の姿がどうなっていたのかわからないほど、大規模な崩落だ。


すでに重機が入って復旧作業を行っているが、このスケールからするとしばらく復旧することはなさそうな感じだ。

さて、どうやってここを突破しようかと思っていたところ、ちょうど昼休みで手を休めていた作業員のおじさんが手を振っている。

「こっち、こっち、こっちへ来い、来い!」と山側のルートを指さしている。
(車の前にいる人が”来い来いおじさん”です)


山側には赤いテープで標がされていて、ルートの目印になっている。

なるほど、こうして突破するお馬鹿さんたちのために、親切にもルートを作ってくれたようだ。


まずは山に慣れたYJ氏が先頭を切って進む。

ひょいと担いで軽快に登っていく。さすがに百戦錬磨の経験者。


ルートが確認できれば、後続はついていくのみ。

フロントバッグが重 いので、逆に担いで登っていく。
 


後続が心配そうに見つめる。やはり、サポートがあるほうが安全にクリアできる。

なんとか、大きなトラブルもなくこの崩落個所を通過することができた。

実際の映像を用意した。中山峠崩落個所の様子(YouTube)
 


ほっと一息つけば、晩秋の一コマ が路面に広がる。

緊張感が緩んで一安心だ。
 


サポート隊が下りきった合流地点まで来ていると連絡がつき、そこでランチタイムとすることに。

路面も格段に良くなり、見事に染まった紅葉の中を快適に下る。


と、思ったら前方でYG氏が後輪にエアーを入れている。すぐに抜けてしまうので、どうやらパンクだ。

見たところ、パンクの箇所が分からない。バルブかもしれない。


時間もないので、チューブを交換するしかない。

チューブを取り出しエアーを入れると、大きな音がしてエアーが漏れる。


タイヤを調べたら、小さな針のような細い枝木がタイヤを貫通していた。

軽量タイヤなので、さすがにこの荒れた路面では耐えきれなかったのだろう。


よく調べてよかった。そのままチューブを入れていたらすぐにまたパンクだった。

先頭グループに連絡したいが携帯がつながらない。そこへ下から強力な援軍のT氏が登り返して来てくれた。

パンク修理のスぺシャリスト、その速さと正確さは誰もが認めるところ。
 


貫通個所に秘密兵器を貼って修理完了。

最後は極上の景色の中を下り切り、サポート隊が待つ国道に合流した。
 


サポート隊の車には、「午前半休?」で遅れてきた2名も同乗してきた。ようやくここで本日のメンバー全員が揃った。

こんないい林道を走れなくてかわいそうに・・・

すっごくいい林道でした。最高の紅葉でした。落ち葉の絨毯が最高でした。と嫌味たっぷり。
 


時刻は13:50。

本来の予定は、ここから湯ノ花温泉→唐沢峠→小峠・小繋(こつなぎ)トンネル→檜枝岐温泉 というルート。


しかし、さすがにこの時間からすべてを走りきることは不可能となり、唐沢峠をパスすることに。

ここから小繋トンネルまでは約700mの登り。本日の登りのハイライトだ。


逆算すると日没ギリギリの計算だ。何かトラブルがあると、ナイトランは間違いない。

小峠への登りに入る。


完全舗装で、車も少なくて走りやすいのだが、とにかく勾配がきつい。

28*26のギヤ比だが、それでも今にも止まりそうなスピードだ。押して歩いても大差ない。
 


右へ左へ蛇行しながらじりじりと登っていく。

高度が少しずつ増えていくが、まだまだゴールまでは果てしない。


先頭グループからまた大きな差が開いてしまった。

どこかで待っているだろうという期待もむなしく、先頭グループの姿は見えない。


なかなか手ごわい登りだった。ようやく小峠に近づく。

峠を示すものは何もなく、地図上からこのあたりが峠であろうと写真を撮る。


小繋トンネルまで最後のダメ押しが待っている。いい加減登り疲れたころ、やっと峠のトンネルが見えてくる。

久しぶりに味わう本格的な峠越えの雰囲気だ。


先頭グループはここにもいない。すでに下って宿へ向かっているようだ。

止まると息が白い。そしてやはり薄暗くなってきた。

気温も下がり、日没が近づいてきた。のんびりしてはいられない。
 


防寒対策をして一気に下る。

指切りのグローブでは耐えられない。足のつま先も冷えてきた。


路面もよく道幅も広いので、おしゃべりしながら二人並んでダウンヒルなんてことも可能だ。

あっという間に暗くなる。各自ご自慢のLEDライトとテールライトが光り輝く。


暗い中でのダウンヒルも、車が全く来ないので走りやすい。

17:25 檜枝岐温泉到着。


サポート隊、先頭グループ、そしてもう一人の参加者YK氏が到着していた。

サポート隊の車から、事前に用意しておいた巨大なブルーシートを取り出す。

自転車10数台を一気にブルーシートで覆い、紐で縛って駐輪完了。用意がいいね、隊長!
 


ゆっくりと湯につかった後、いよいよ楽しい宴会の始まりだ。

全員揃って大広間での夕食は賑やかだ。


しっかり走った後のビールは格別。乾いた喉にビールが水のように流れていく。

10年前、夜遅く到着した時の話や、今日の苦労話に盛り上がる。


目の前に並べられた郷土料理の数々。

料理も最高、お風呂も完璧。文句なしの宿だ。
 


いよいよ明日が本番。

二次会もそこそこに、全員疲れがピークに達して深い眠りについた。
 

距離: 51.2 km
所要時間: 7 時間 21 分 53 秒
平均速度: 毎時 7.0 km
最小標高: 638 m
最大標高: 1348 m
累積標高(登り): 1183 m
累積標高(下り): 956 m

(2018/11/3 走行)


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