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2020年、この一年は深く記憶に残る年になるだろう。

新型コロナウィルス・・・何もかもがこのウィルスのおかげで狂ってしまった。

いまだ先の見えない状況。さらに感染拡大が続く毎日。いったいどうなる日本、そして全世界・・・


ようやくツーリングに出かけることができた。いや、無理やり出かけたと言った方が正解かもしれない。

「GO TOトラベル」の勢いで旅心も掻き立てられる。

アクセルとブレーキを同時に踏んで・・・とか、冷房と暖房を同時に入れて・・・とか。

何をすることが正解なのかさっぱりわからない。何もしないことが正解なのか? 

そんな中、恒例の秋のクラブランの時期になった。いろいろと葛藤の中、プランニングを進める。


クラブランは1泊2日で飯山駅から雑魚川林道経由、切明温泉に泊って越後湯沢へ抜ける。

自分は、その前に十日町から飯山へのコースをプラスして、計3泊4日の豪華ツーリングをすることにした。

下の地図は、当初予定していたコースだ。

しかし実際は天候の影響で、3日目以外は大きくコース変更せざるをえなかった。

天気予報は最悪の模様だ。初日からずっと雨だ。まあ、それでも行くしかない・・・
 


2020年11月20日

ゆっくりな旅立ちとなった。今日は午後から走り出して、軽くお散歩程度のつもりだ。

すでに山岳地帯は冬期通行止めの時期に入っている。

ホームページで調べ、さらに現地に電話して状況を詳しく聞いてみた。


例年ならそろそろ積雪の時期なのだが、今年は異常に暖かく、雪の気配など全く感じられないという。

こうなると装備に困る。ある程度の冬山対策は必要だし、さらに徹底的な雨対策も考えないといけない。


新幹線もチケットレスの時代となった。初めての経験で、どうやって乗るのか不安で詳しく調べみた。

自分の持っている交通系ICカード(スイカ、パスモなど)をえきねっとで登録すると、予約した列車と結びつく。


乗車当日、パスモ一つで自宅の私鉄駅から、JR乗換え、そして新幹線の改札まで通過できた。

新幹線の改札を通過すると、登録したメールアドレスにお知らせが届くので、座席を確認することができる。


ついでに座席票発行機も試してみた。やっぱり紙がいい、という人はこれで座席票を発行する。

なんだよ、登録が面倒だなぁ、やっぱり乗車券の方がシンプルだよな・・・なんて思っていたけど、反省。

時代はチケットレス、キャッシュレス、無人化、自動化なんですね。ほんと、便利になりました。
 


新幹線はコロナの影響で空いていた。越後湯沢でほくほく線に乗り換える。

昼前の列車はガラガラだ。乗客も少なく、ローカル線の車窓からの眺めを楽しむ。

冴えない空模様の中、十日町の駅に到着。
 


駅は立派だが、ほとんど人の姿が見えない。そしてポツポツと雨が降ってきた。

のんびりしている暇もなく、すぐに組み立てて走り出す。

この天候では先が思いやられる。スタートから気が重い。
 


3泊4日で荷物も多く、雨具を着ての走り出しは辛い。

雨の中、直線の農道をひた走る。視界も悪く、ご機嫌な事は何一つない。

やがて坂もきつくなりはじめ、しだいに体中蒸し暑くなってくる。
 


雨宿りする場所がなく、我慢して走り続ける。

ようやくみつけた民家の車庫に逃げこむ。オーバーヒートで全身びしょびしょだ。


雨具もシャツも脱いで全身クールダウン。そして汗を拭う。

エネルギーを補給して、湿ったシャツを着なおし、再び雨の中へ飛び出す。あぁ、最悪の気分だ。
 


旅の初日からこれでは気が滅入る。

今日はのんびり足慣らし、お散歩のつもりで来たのだがとんでもなかった。


フロントバッグと靴を防水するタイミングをなくし、そのまま走り続ける。

しだいに手足もバッグも雨が浸みこんでくる。

トンネルで一息つく。こんな天候の時はトンネルが本当にありがたい。
 


まつだい駅へ向かうには、車道を行くとトンネルだらけだ。トンネルを使わずに行くには薬師峠を越えるしかない。

地図上の薬師峠をよく見ると、峠付近で道が切れている・・・なんでここだけ繋がっていないのだろう?

峠の前後はちゃんとした道なのに、このピーク付近だけ道がない・・・

まあ切れている部分もたいした距離ではないし、フラットだから何とかなるだろう、と気にせず進む。
 


薬師峠の少し前のピーク。なんか峠の雰囲気がバッチリだがここは峠ではない。

雨がシトシト降り続く中、もう今日は諦めの境地。

この先の薬師峠を越えればとりあえず満足かな、なんて思っていた。
 


薬師峠への分岐まで来ると、「冬季間全面通行止め」のバリケードが現れた。

まだ雪はないし、こんなものはまったく気にすることはないと先へ進む。

ひっそりとした山間部、こんな天候だが雰囲気だけはなかなかいい。
 


たまには雨に濡れた峠越えも、いつもと違った写真が撮れていいや・・・なんてやけくそだ。

晴れてたら、きっと素敵な写真が撮れるのに・・・と乳白色の天を仰ぐ。

フレームやガード、そしてボトルの水滴が、今日はやけに美しく見える。
 


薬師峠直前の最後の分岐。これを右に行けば峠に出れるはずだ。

さて、途切れた道はどうなっているのだろう・・・

周囲の状況からして難なく通過できると考えていたのだが、甘かった・・・


舗装が切れ、いきなりグチャグチャの山道が現れた。

この雨でさらに路面はぬかるみ、足首まですっかり埋まってしまうほどの沼地状態となってきた。


それでも諦めきれず進むと、とうとう藪に阻まれ、前方の視界が全くなくなってしまった。

道らしき痕跡は何もなく、ただの泥沼が続いているだけだった。
 


ちょっと無理して突破すれば行けるのかもしれない。このわずかな距離を進めば、再び道が現れるはず。

そうわかっていながらも、この最悪の藪の中へ突っ込む勇気はなかった。


撤退の決断は早かった。初日からこんなジャングルツーリングはしたくない。

まあ峠を越えたことにはならないが、ほぼ峠に到達ということで自分としては納得。

やっぱりあの地図は正しいと感心するばかりであった。


分岐まで戻って左へ行く。

ここからは静かで雰囲気のいい林道が続いていた。

晴れていたらきっと素晴らしい晩秋の景色を楽しめることだろう。
 


登り返しもあって、雨の中かなり体力を消耗してきた。ようやくまつだい駅までやってきた。

町の片隅、渋海川に並ぶマスク姿の手をつなぐオブジェに遭遇。


一瞬ギョッとしてしまったが、今を物語る意味深い作品だ。

早くマスクを取って、明るい笑顔を見せてもらいたいものだ。
 


16時を過ぎてすっかり暗くなった。町の棚田を散策するが、暗くてもう何がなんだかよくわからない。

最後は宿までの辛い登りが待っていた。登ってゴールというのは一番やりたくないが、ここしか宿がない。


ついにナイトランになってしまって、得意のハイパワーLEDライトの活躍だ。

ようやく雨もあがって、歩いて宿に到着だ。もう、参りましたよ、この雨には。
 


宿ではさっそく「GO TOトラベル 地域共通クーポン券」をもらった。

なんだかよくわからない仕組みのままやってきたが、使い方もひどく限定的だ。


限られた地域、限られた期間のみ有効だそうだ。なんと有効期限は明日までらしい・・・なんだそれ?

この宿の売店で使うか、町の加盟店で使うしかない。あえて不要な物を買う余裕などなく、考えてしまった。


一日雨の中を走り続け、何もかも濡れまくった。

豪華な温泉で温まり、ご馳走をいただいてようやく心も穏やかになった。
 


部屋に戻って「乾燥大会」だ。

石油ストーブを使ってフロントバッグを乾燥させる。衣類は洗濯して部屋干しだ。


靴は宿の人が乾かしてくれるという。ありがたい。

後はのんびりと、「食べるやわらかにぼし」と黒霧島で一日を振り返った。
 

 

距離: 31.4 km
所要時間: 4 時間 10 分 56 秒
平均速度: 毎時 7.5 km
最小標高: 126 m
最大標高: 404 m
累積標高(登り): 798 m
累積標高(下り): 577 m

(2020/11/20 走行)


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