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昔のニューサイを眺めていたら、長谷川さんのこんな記事を見つけた。(No.431)

「水郡線沿いに、阿武隈山地の旅」

水郡線かぁ。ほとんど知らないし、乗ったこともない路線だ。

そして阿武隈山地。いつもニューサイには登場する阿武隈であるが、これまでに行ったのは過去1度ぐらいだ。

緊急事態宣言も解除され、気候もすっかり穏やかな秋の気配になった。

急に旅心が湧きあがり、行くなら今しかないと、急遽プランニングをし始める。

1泊2日のコースを練り上げ、宿の予約、列車の予約を済ませる。

自転車の整備、輪行の準備を済ませ、棒ラーメンと具材を買いに行く。

さあ、旅立ちの準備はできた。


2021年10月4日(月)


始発電車で東京駅へ。

新幹線eチケットにもすっかり慣れて、今日もスムーズに乗車できた。

郡山駅まではあっという間だ。平日の通勤通学時間の慌ただしい中、さっそく組み立てる。


郡山駅からすぐに逢瀬川に出ると、そこはもう誰もいないのどかな風景が広がる。

「みちのく自転車道」の大きな案内にこの先のルートが示されている。

月曜の朝からこんな旅に出られるなんて幸せだ。


川沿いの自転車道だから、ほとんど地図も不要で道に迷うことはないだろう・・・

と油断していたらいきなり渡る橋を通り過ぎてUターン。いかんいかん、油断大敵。

阿武隈川に合流し、後は延々と川に沿って南下するだけだ。


こんな快適な自転車道を一日ずっと走っていられるんだ、なんて興奮していたらさっそくトラブル発生。

走っているといきなり”カラカラ”と異音発生。なんだ?と思って調べたらガードステーのダルマがない!

なに?いつも乗っている自転車でこれまでノントラブルなのに・・・


たった今落下したばかりなので探してみたが一部しか見つからず。まぁ、なくてもなんとかなる・・・

でも大丈夫。こんなこともあろうかと、工具袋の中には予備のダルマが入っているのでありました。

さすがでしょ!すぐに取り付けて修理完了。今後は予備ダルマをステーに取り付けておこうかな?


素晴らしい秋晴れになった。

ついこの前までの残暑も、そして台風、大雨の悪天候も過ぎ去った。


ほとんど誰も通らない自転車道。ブルートゥースのイヤホンでラジコを聞きながら走り出す。

28Cのタイヤに高めの空気圧で、ほとんど路面抵抗がないぐらいよく走る。


阿武隈地方はこれが2度目のツーリング。

阿武隈川に沿って延々と走ってみたい、なんて思ったこともあったがなかなか実現できず。


今回、たまたま見つけた紀行文に心奪われやってきた。

やっぱり来てよかった。そんな景色が広がってきた。


一面黄金色に輝く稲穂の広がり。なんて美しい色なのであろう。

時が止まってしまったかのような静寂の風景だ。

そんな中、広々とした自転車道をMTBに乗った若者が、立ち止まることなく通り過ぎていった。


ちょっとした休憩所がある。

といっても小さな椅子とテーブルがあるだけだ。トイレや水場はない。

ようやく一息付ける場所があったので、冷たいお茶で休憩だ。


なかなか綺麗に維持されている自転車道だ。

台風や大雨でかなり河川は被害を受けていて、所々復旧工事が行われている。


自転車道ももっと荒れていてもおかしくないのだが、障害物ひとつなく走りやすい。

阿武隈川はもっと暗いイメージかと思ってきたが、今日の阿武隈川はとても明るく、美しい。


稲刈りの真っ最中だ。

広大な田んぼの中を、ご主人が機械を運転し、奥さんが後片付けをしながら追いかける。


機械化されたとはいえ、この広さを二人だけで刈り取ると言うのだから果てしない作業だ。

仲の悪い夫婦だったら大変なことになるな・・・としばらく遠くから眺めていた。


鹿嶋神社の大きな鳥居で小休止。この辺りはリンゴ畑が道路の両脇に続いている。

2019年の台風19号で阿武隈川が氾濫し、リンゴの木も半分まで水に浸かったらしい。


そんな甚大な災害を感じさせないぐらい見事なリンゴが実っている。

道路脇のリンゴ畑にお邪魔して、ちょっと一枚写真を撮らせてもらいました。


早朝から走っているので結構走った気分だが、まだまだ本日の予定の1/3にも満たない。

平坦な道だから何とかなるだろうと考えているが、なかなかペース配分が難しい。


それにしても刻々と変化する景色に魅了される。いい季節に来たものだとつくづく感じる。

日差しの厳しい夏場であったら、こんな優雅な気分ではいられないだろう。


適当な休憩場所がなく、日陰の少ないこのコースは夏場ではなかなか辛いだろう。

秋景色広がるこの時期だからこそ、のんびり、ゆったりと走ることができる。


郡山の駅を出て3時間半、約33km走ってみちのく自転車道の起点までやってきた。


起点は日本の滝100選にも選定されている「乙字ケ滝」だ。

この滝は落差こそないが、豊富な水量が、幅広く豪快に流れ落ちる姿はなかなか迫力がある。


日焼け止めを持ってきて良かった。

あまりに天気が良すぎて、そして日差しが強すぎて、何もしないと腕も足も顔も真っ赤になりそうだ。

出発の時に塗ったけれど、再度また塗りなおす。


農道を走っているとこんな「刈取り適期です」の旗がなびく。まさに収穫真っ最中だ。

どこかでそろそろ腹ごしらえをしたいが、適当な場所がない。駅でも行ってみましょうと立ち寄ってみる。


「川辺沖」という小さな駅。商店ぐらいあるかと思ったが、全く何もない。

時刻表を見てみたら1時間に1本。そして日中は走ってないというローカル線特有の寂しさだ。


線路沿いの旅だから、それほど食料調達には不便しないだろうと思っていたのだが・・・

当然こんな状況ではコンビニなどあるはずもなく、さらに普通の商店でさえほとんど見当たらない。


公園の一つでもあればベンチに座って棒ラーメンでも作りたいところだが、そんな場所も皆無。

やっぱり駅に行くしかない、ということでようやくちょっと大きな「里白石」の駅に立ち寄る。


多少”立派な”駅舎があって、ベンチもあるのでここで棒ラーメンでも作るかな、なんて思ったのだが・・・

どうやら無人駅なので、監視カメラが設置してあって、こんなところで煮炊きしていてはまずいことに。


しかたなく、しばらく列車の来ないホームに陣取って軽食でお腹を満たすことに。

こんな場面に列車が入ってきたら、きっと運転手も乗客もビックリするだろうな。


ここまでの走行距離約60km。

かなり足も出来上がってきたが、まだゴールまでは30kmほど残っている。

まあこのペースならいい時間に宿に到着できそうだ。


再び広々とした景色が広がってくる。稲刈りが終わった後の”わらぼっち”が稲田に綺麗に並ぶ。

天日に当ててよく乾燥させた後、様々な用途に利用される貴重な材料だ。

棚倉町へ入ると、本日最後のお楽しみ「久慈川サイクリングロード」が現れる。


ガーミンには目的地時刻が表示されているが、これは現時点までの平均スピードから計算された時刻だ。

寄り道、食事休憩なども含んだ時間から計算しているので、この先はもっとペースが上がってくるだろう。


走りやすそうな自転車道なので、なんとか5時半までには宿に着けるだろう。

自転車道はご覧の通りきれいな舗装路になっている。きっと河川の氾濫で護岸工事をやり直したのだろう。


久慈川に沿って標識も整備され、適度な道幅の自転車道が延々と続いている。

しかし、この自転車道もやはり人の姿は見えない。

この道をずっと行けば宿まで一本道なので、もう後はのんびりムードだ。


急にトンボが多くなってきて、顔面に当たりそうになるほどだ。

ちょっと写真撮らせてよと、止まった所をそっと近づいてシャッターを押す。


都会ではトンボの姿も全く見なくなってしまったので、これだけの大群には本当に驚く。

ようやく地元のおじさんとすれ違った。あとは誰一人見当たらず。


気持ちよく走っていると「通行止」のバリケード。困ります、こんな所で・・・

仕方なく線路沿いに迂回して、その先で再び自転車道に復帰。

ちょうどいい所に絶好の休憩所があったので、コーヒーで一服することに。


とにかく静かで走りやすい自転車道だ。

台風の被害で所々工事しているけれど、とても気持ちのいい景色が広がっている。

残りの距離が徐々に少なくなってくる。日が傾き始め自分の影もだいぶ長くなってきた。


再び綺麗な路面に変わった。ということはこの辺りも水害に見舞われたということだろう。

ちょうど川の支流と合流する地点で、豪雨で護岸が氾濫してしまったのだろう。


流されてしまった橋もいくつもあった。そして削られた護岸も結構あった。

台風、大雨、豪雨、その驚異的な破壊力は本当に恐ろしいと感じるばかりだ。


ゴールまであと5km。最後の最後までのどかな田園風景が広がる。

17:15 宿に到着。よく走った88km。

素晴らしい自転車道、そして上出来の一日だった。


今日の宿は温泉施設と宿泊を兼ねた「東舘温泉 ユーパル矢祭」という宿泊施設。

宿泊者は仕事関係の人が多く、旅行者らしき人は自分だけだ。

たぶん工事関係の方がほとんどで、夕食もだらだらと食べているのは自分だけ。


よく走った日はとにかくビールが水のようだ。

豊富な料理と20万図をつまみに、今夜もやはり最後の一人となってしまった。


いやぁ、面白い一日だった。

距離は長かったけれど、それをあまり感じさせない変化に富んだコースだった。



 
距離: 88.2 km
所要時間: 9 時間 4 分 22 秒
平均速度: 毎時 9.7 km
最小標高: 184 m
最大標高: 354 m
累積標高(登り): 256 m
累積標高(下り): 298 m

(2021/10/4 走行)



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