峠への招待 > ツーリングフォトガイド >  ’2021 >  みちのく自転車道・久慈川自転車道・水郡線A


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昔のニューサイを眺めていたら、長谷川さんのこんな記事を見つけた。(No.431)

「水郡線沿いに、阿武隈山地の旅」

水郡線かぁ。ほとんど知らないし、乗ったこともない路線だ。

そして阿武隈山地。いつもニューサイには登場する阿武隈であるが、これまでに行ったのは過去1度ぐらいだ。

緊急事態宣言も解除され、気候もすっかり穏やかな秋の気配になった。

急に旅心が湧きあがり、行くなら今しかないと、急遽プランニングをし始める。

1泊2日のコースを練り上げ、宿の予約、列車の予約を済ませる。

自転車の整備、輪行の準備を済ませ、棒ラーメンと具材を買いに行く。

さあ、旅立ちの準備はできた。


2021年10月5日(火)


今日も元気だ、朝飯がうまい。

お仕事の方たちは、あっという間に食事していなくなってしまった。

朝からまた一人だけ残って、ゆっくりコーヒーをいただく。


宿の目の前が久慈川サイクリングロードだから、スタートしてすぐに昨日の続きが始る。

時刻はちょうど8:00

今日も早い時間からこんな贅沢ができる。幸せだぁ〜


本日の予定、92.46km。まともに走ったら、なんだかんだ100km越えかもしれない。

距離はあるが、時間もたっぷりある。夕方まで走っても東京までは短時間で帰れるから安心だ。

二日目もいい天気だ。朝の陽を浴びて、今日も稲田が輝いている。


こんな恵まれたサイクリングがあるのだろうか、というぐらい文句のない朝だ。

ある意味予想を完全に覆されるほどの満足感だ。


歳を重ねてきたからこそ、こうした走り方が好きになってきたのかもしれない。

そして、ようやく阿武隈の魅力が少しわかってきたのかもしれない。


今日はずっと水郡線と一緒に走る。

最初に立ち寄ったのは「矢祭山駅」。東北の駅百選選定駅と記されている。


立派な駅舎で、造りもなかなかしゃれている。無人駅なのでホームまで自転車で入ってみる。

地方の駅はホームとの境界がほとんどないので気軽に写真が撮れる。


県境を越えて茨城県に入る。サイクリストにとって、県境はやはり特別の思いがある。

続いての駅は「下野宮」駅。ちょっとしゃれた駅舎で、町の集会所を兼ねている。


時刻表を見るとさすがに驚く。

1時間に1本あればいいほうで、日中は数時間に1本という衝撃。

この時刻表で暮らす生活というのはいったいどんなものなのだろうか。ちょっと想像がつかない。


駅には最新のディスプレイが設けられていて、様々な情報を知らせてくれる。

この水郡線はサイクルトレインを実施していて、チャンスがあれば乗りたかったのだが、平日は実施していない。


ちょうど水戸方面行の列車が入ってきた。ローカル線にしてはやけに派手なカラーリングだ。

さすがにこの時間帯では乗客はほとんどいない。


水郡線に沿って走る。

万が一でも列車がやってきたら素敵な写真が撮れるのだが、それは運しだい。

先ほどの時刻表が頭に入っているから、まず出会うことはなかなか難しいだろう。


それにしても2本のレールを見ているだけで、どうして旅愁にかられるのだろう。

このレールの先はどこまで繋がっているのだろうと考えるだけで旅心が豊かになる。

線路脇を走っていると、いつもそんなことを考えている。


いいことばかりでは無くなってきた。

せっかくの贅沢な道筋も途絶え、交通量多い車道を走らねばならなくなった。

まあ長い道中だ、たまには我慢も必要と諦めてもくもくと走る。


袋田の滝へ行きたかったが、往復10km+観光の時間はかなりのハンデだ。今回はしかたなく諦める。

次の駅は「上小川駅」。この辺りではかなり立派な駅だ。自動販売機で炭酸水を買って一服する。


その先の旧道を行こうとしたら全面通行止めの案内だ。

もう何度もお目にかかっているが、少々期待して突撃したがやっぱり敗退・・・なかなか手強いぞ。


次は「西金駅」。次々と駅を訪れると、それぞれ違った特徴があって実に面白い。

鉄道ファンならば、この路線を自転車で走って、一駅一駅見て楽しむのも面白そうだ。


この駅も無人駅。バラストの積み込み駅だそうで、専用の貨車が停車している。

まったく人の気配がない駅というのも実に面白い。

いったいここはどこなんだ?と聞きたくなるほどの静寂だ。


西金駅から先は一気に林道風の道に変わってきた。

国道を離れ、線路沿いに行く道などを利用する人は誰もいない。


道はダートに変わり、雑草の生い茂る中を抜けると小さな踏切があった。

こうした山の中の線路まで保守点検するのだから、ほんと鉄道の維持というのは頭の下がる思いだ。


車も頑張れば通れるような山道を行くと、素敵な眺めが目の前に広がった。

対岸の国道、久慈川、水郡線を上から見下ろせる絶好の場所だ。

綺麗なカーブを描いた線路と久慈川が美しい。願わくば列車が走ってきたら文句なしだろう。


その先の標識、「成金」?かと思ったら「盛金」だった。

どちらにしても何かしら”金”にまつわる場所に違いない。


「全面通行止め」の看板が朽ち果てる様に建っている。どうやら永遠に整備するつもりはなさそうだ。

このルート、車で走るには確かに危険だが、徒歩や自転車なら気持ちよく通り抜けられる。


今日の久慈川は本当に穏やかだ。風もなく、キラキラと光る川面がとても綺麗だ。

釣り人もいなければ、鳥や魚の姿も見当たらない。本当にのどかで静かな眺めが広がっている。


「下小川駅」も小さな駅だ。おしゃれな駅看板と、美しいデザインの駅舎が絵になる。

こんな時間は当然誰にも会うことはない。サイクリストにとっては、ちょうどいい休憩場所になる。


ホームのベンチで小休止。周囲を眺めてみても、動くものはなにもない。

駅ってこんなに静かだったっけ。聞こえてくるのは虫の音だけだ。


その先はすっかり雰囲気のいい線路沿いの道に変わる。

道路標識を見ると、なんと制限速度20kmだ。

ゆっくり走りなさいということだ。まさに自転車のスピードだ。


時にはちょっとした山越えもあって、意外と登り下りを味わうこともできる。

ひと山越えて下ってくると、次の駅「中舟生駅」の上に出てくる。

高い所から駅を見下ろすというのも、なかなか気分がいい。


ちょうど運よく列車が駅に到着してきた。

滅多に撮影できない貴重な瞬間なので、発車する姿をしっかりとビデオに収めることができた。

まっすぐな線路、田園地帯を縫って走る水郡線。その横をできるだけ離れずに行く。


12時ちょうどに、次の駅「山方宿駅」にやってきた。

この駅はとても大きく、駅前には商店や大きな駐車場も揃っている。


駅横には素敵な広場があってランチタイムに最適だ。よし、昨日食べられなかった棒ラーメン祭りだ。

例によって、棒ラーメンに様々な具材をトッピング。お餅も入って腹持ちもいい。

イカ天がさらにカロリーUPでお腹も満腹。締めはコーヒーで出来上がり。


せっかく持ってきたブルートゥースのスピーカーでラジコを聞きながら休憩だ。

こんなもの持って走っているサイクリストも珍しいでしょ。

音楽を流したり、ラジコを聞いたりと結構ソロツーリングでは役に立ちます。


できるだけ国道は走りたくないが、どうしても走らざるをえない場合がある。

それでも、裏道があればすぐに国道を離れ川沿いへ向かう。


ガーミンのおかげで、こうした裏道探しは本当にやりやすくなった。

5万図を見ていてはこんな軽快なルート探しは不可能だ。そして再び専用の自転車道に出てきた。


ここまでの走行距離約45km。本日の予定の半分ぐらい来ただろうか?

残りの時間と距離からこの先のペース配分を考える。さすがに日没のナイトランはしたくない。

すると、この先行き止まりの看板だ。


脇道を行こうとしたら、軽自動車がこの細い道に突っ込んできた。

おいおい、危ないじゃないか、下手すりゃ正面衝突するところだよまったく・・・と運転手の顔を睨む。


地元住民の近道なのでしょうね、あまり文句は言える立場ではありません。

そしていよいよ海までの距離が表示されるようになってきた。あと25kmだ。


その先はとんでもなく広い河川敷道路のお目見えだ。

そんじょそこらの高速道路より綺麗な舗装路だ。そしてとにかくまっ平だ。


前後を見ても自分ひとり。いったい誰か利用する人はいるんですか?この道。

こういう時はこういう写真を撮るしかないでしょう。


誰も通らないのでバッタの群れが凄い。下手すりゃタイヤで踏みつぶしてしまいそうで大変だ。

何とかそんな目に合わせたくないので、路面ばっかり見ながら走るのでなかなか大変だ。


こんな調子で海まで行けるのならもう、文句なしのフィナーレでしょう、なんてルンルン気分だったのだが・・・

やはりそう甘くないのが久慈川。ここから不運の始まり始まり。またまた通行止め。

その先の様子がまったく見えず、ここでUターンするわけには行かないので、やはりとりあえず「突破」。


下の地図の通り、赤いラインで走ってきて通行止めを突破したのだが、橋のあたりで完全にストップだ。

このまま青いラインを行きたかったのだが、ここで突然行く手を塞がれてしまった。

やはり橋が流されている。もうどの橋も皆被害を受けて大変な状況だ。


大規模な工事で、プレハブ小屋も建っていて工事関係車両が何台も止まっている。

のこのこやってきた自分を見て、何しに来た?とばかりに厳しい表情だ。

こうなると地図が役に立つが、今回は20万図しか持ってない。しかたなく、適当に迂回路を決めて川を離れる。


車道へ出れば車だらけ。さらにその先も舗装の工事をしてたりして、あっちもこっちもうまくいかない・・・

それでもなんとか再び久慈川に戻ってこれてホッとする。


もうこれであとは海までまっしぐら・・・ではなかった。

さらに先へ進むと渡りたかった橋が跡形もなく崩れ落ちている・・・

「壊れた橋をなおしています」と書かれているけれど、まったくその気配なし。


この先は行き止まりなので、仕方なく戻って支流の橋を目指す。

ここなら何とか残っていてくれ・・と祈ってやってくると、橋は残っているがその姿は見るも無残な状態だ。


豪雨で大量の流木が流れ、全てが橋でせき止められたようだ。

何が何だかわからない物がいまだに橋に取り残されている。


なぜ片付けないのか? 果たして渡って問題ないのか? そんな疑問と不安を抱きながら恐る恐る橋を渡る。

何も対策をしないわけではないだろう。きっと手が周らないというのが正解だろう。

それにしても、川の流域の被害は相当なものだ。何も考えずにツーリングに来た自分が甘すぎたかもしれない。


あっちへ迂回、こっちへ迂回。まともに予定通りに走れず予定も遅れ気味。

多くの”難所”を何とか越えて、あと4km地点までやってきた。

すっかり日も傾き、路面に映る自分の影が長く伸びてきた。


自転車道の最後は、こんな素敵な夕焼けと広々とした河川敷が迎えてくれた。

二日間に渡ってよく走ってきた。どうなるかと思っていたが、よく頑張った。

そんな感慨に浸りながら、いよいよ太平洋へのラストランだ。潮の香りも一段と強くなってきた。


感動のゴール、なんて素敵な物は何もなく、味も素っ気もない海岸に出る。

それでも海まで走ってくると、さすがに感動ものだ。


そろそろ暗くなる。

こんな季節に、こんなところを走っている物好きは誰もいない。


巨大な日本原子力発電所の横を通り抜け、ひたち海浜公園の直線を突っ走り、ようやくゴールが見えてきた。

なかなかつらかった最後の10km。


時刻は17:30。いよいよライトを点灯する。

阿字ヶ浦の駅までは厳しい登りが最後に待ち受ける。

ヘロヘロ状態でなんとかゴール。いやぁ、疲れました。ホント。走行距離95km。


時刻表を確認し、寂しい町を探索して酒屋を見つける。

これでビールが飲めないのでは悲しすぎる。よかった、酒屋があって。


駅に戻って急いで輪行だ。疲れている中、時間に追われての輪行はつらい。

無人駅。切符を買って列車に乗り込む。当然乗客は自分一人だ。さっそく缶ビールで乾杯だ。


しばらく誰も乗ってこなかったので、一人堂々と車内でビールを楽しむことができた。

勝田で特急に乗り換え、後は終点品川駅までの列車旅だ。


帰りは本当に便利だ。駅弁を食べながら旅の余韻に浸っていたらもう東京だ。

なかなかいいね阿武隈。これからはもっと頻繁に出かけることにしよう。

 

距離: 95.3 km
所要時間: 9 時間 36 分 44 秒
平均速度: 毎時 9.9 km
最小標高: 50 m
最大標高: 157 m
累積標高(登り): 394 m
累積標高(下り): 474 m

(2021/10/5 走行)



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