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私の好きな峠ベスト3を紹介しよう。

難易度、標高、アプローチ、展望、ダウンヒル、そして感動・・・

この3つの峠はすべての要素において満点だろう。


しらびそ峠は2度越えているが、乙見山峠と京柱峠は一度しか越えたことがない。

いつかまた再び訪れたいと思いながら、長い月日が過ぎてしまった。
 

しらびそ峠(長野)1987/5 1991/11

乙見山峠(新潟/長野)1993/10

京柱峠(徳島/高知) 2002/8



前回行った乙見山峠のホームページを書き終えてから、にわかに今年の紅葉ランはここなるかな? と感じていた。

その後予想通り、隊長のプランニングは私の走ったコースを再び辿るコースとなった。


待ちに待った瞬間だった。きっかけがなく、なかなか再訪できなかった乙見山峠にまた行ける!

28年前の感動を再び味わうことができる・・・もうそれだけで心が弾んでいた。


2021年11月13日(土)


妙高高原駅に集まったのは、輪行5名と、カーサイご夫妻2名の計7名。

京都からのメンバーは、列車の都合で遅れてやってくる。その後タクシーで追いかける予定だ。

そのほか別ルートで3名が宿で合流し、合計11名の大所帯で今回の晩秋ツーリングはスタートした。


快晴の妙高高原駅をゆっくり走りだす。

今回もいつものようにカーサイメンバーの奥様が車でサポートしてくれる。

着替えや輪行袋、その他走行中に不要な物は持たずに峠を目指せる。この有難さは絶大だ。


自分が1993年に来た時と同じルートを辿るが、今回は途中で一泊のためずいぶんと気が楽だ。

季節も晩秋を迎え、日没の早いこの時期は無理はできない。

体力も衰え、無謀なプランは危険だ。これぐらいのコース設定がちょうどいい。


峠へ向かう道路は、二日後から冬季閉鎖になると書かれている。

もうこの休日が最後のチャンスということだ。

おかげで交通量もほとんどなく、静かな峠路をゆっくり味わうことができる。


今年の紅葉は期待外れだと言われている。夏の天候の影響か、確かに色づきも今一つだ。

それでもやはりこの季節のツーリングは、一年の中で一番魅力的だ。

爽やかな青空と澄んだ空気。気持ちのいい高原の中をゆっくり登っていく。


最初の目標地点、五八木(ごはちぎ)まで、踏み応えのある勾配がしばらく続く。

徐々に高度をあげてくると、下界に野尻湖の展望が大きく広がってくる。


五八木で小休止していると、京都メンバーから連絡が入り、間もなくタクシーで追いつくとのこと。

さすがに遅れを取り戻すにはタクシーしか方法がなく、事前に予約しておいたらしい。


すぐにタクシーがやってきて、手を振りながらそのまま先へ走り去った。

ランチポイントの仙人池まで先行し、組み立てた頃我々が追いつくという作戦だ。


これで峠越えのメンバー全員が揃って一安心だ。

あとはじっくりと峠越えのアプローチを楽しむばかりだ。

最高の天気と素晴らしい展望。路面も素晴らしく、晩秋の峠路は我々だけの貸し切り状態だ。


こんな場面に出くわした。皆が”ニューサイの表紙にあったね〜”なんて言っている。

どんな表紙だったかうる覚えだったので、帰宅後探してみたらこれだったようだ。まあ確かに似ている。


標高差800mを気持ちよく登りつめて、仙人池に到着。

京都メンバーもちょうど組み立て終わり準備完了だ。

暖かい日差しの中、道路脇に陣取って、全員で楽しいランチタイムの開始だ。


回を重ねるごとに様々なメニューが登場するこのクラブラン。

今回もアッと驚くメニューのオンパレードだ。

見れば説明不要のふざけた物ばかり。なんだこのポップコーンは!


そして100均で買った鉄プレートで焼肉だ!

ジュージューといい音立てながら、旨そうな臭いが一面に広がる。


定番は棒ラーメンで決まり。それ以外にももつ煮のアレンジや、お得意の野菜炒めのトッピングなどなど。

食後は当然本格的なコーヒーを淹れる。何でパニヤバッグなのかよーくわかりますね。


今日は意外と時間に余裕があったため、ゆっくりとランチタイムを楽しむことができた。

なんたってこの時間が最高に楽しいから、ランチタイムは最低1時間は必要ですね、やっぱり。


乙見山峠までは標高差約200m。たいしたことはないが、距離はたっぷり残っている。

ここからしばらくは極上の高原風景が広がり始める。


すでに標高の高い山は冠雪し始め、もう冬間近の気配が伝わってくる。

綺麗に並んだランドナーの姿が美しい。やはり峠越えはこのスタイルでなければ味わいがない。


ここはどこなのか?と聞きたくなるほど美しい世界が広がる。

広大な牧場風景を眺めながら、フラットな路面を気持ちよく走り抜ける。


最初に来た時もこの素晴らしい光景に感動したものだ。

辛い登りの後に訪れる休息の時間。脚を休め、呼吸を整え、気持ちをリフレッシュする。

こうしたドラマチックな変化が続くところがこの峠越えの魅力だ。


笹ヶ峰牧場、笹ヶ峰キャンプ場を過ぎると、いよいよ道も細くなり峠越えの雰囲気が濃くなってくる。

小さな橋を渡ると、道は舗装路からダートへと変わった。


カメラを構えていると、遠くから熊鈴のいい音色が聞こえてきた。

かなり山深くなり、熊鈴をつけてダートを登っていく。

走りやすいダートだが水たまりが結構多く、避ける様に通り抜ける。


乙見湖を回り込む杉野沢橋で小休止する。

もう誰にも会わないかと思ったら、この川原でデイキャンプをしている車両に出会った。


乙見山峠の魅力の一つが、この最後のダラダラと続く峠までの長さだ。

笹ヶ峰を過ぎてからの峠路は、思っていた以上に長い。

勾配は緩く、辛い登りは峠直前までほとんどないが、細かなアップダウンが気持ちを揺さぶる。


いつまでたっても標高が増えていかない。登ったかと思えばまた下る。そんな繰り返しが続く。

次第に影が長くなり始め、午後の逆光の中を行くようになってきた。


標高1300m付近でついに雪が現れた。そして日陰ではかなり気温が低くなってきた。

通過する車はほとんどいない。確かにもう走れるぎりぎりの状況かもしれない。

この悪路をサポートカーは順調に走り抜ける。その運転技術と度胸に驚くばかりだ。


最後の3kmで一気に高度を上げる。

長かったダートの林道もここで表情を変え、峠越えの最後の登りが始る。

ここまでくればもう安心だ。


残り100mの地点で大展望が広がった。傾き始めた陽を浴びて、晩秋の山々が美しく輝いている。

妙高山、黒姫山、そして登ってきた道筋に乙見湖の姿もかすかに見える。

しだいにフィナーレを迎えるこの峠路。本当によくできたシナリオだ。この期待感がたまらない。


GPSを眺めながら最後の登りを頑張る。

次のカーブを曲がれば念願の峠のトンネルが見えてくるはず・・・

最後は当然乗ってゴールしたい・・・の思いもかなわず、最後は残念ながら押して歩くことに。


そしてあのトンネルが、ついに視界に入ってきた。長かった。やっぱりこの乙見山峠は長かった。

しかし28年ふりの乙見山峠は昔とまったく変わっていなかった。

懐かしい。やっぱり峠のトンネルはこの形でなければだめだ。


トンネルの上には、この見事なトンネル銘鈑が佇む。

見事に揃った峠越えの条件。十分すぎる。何一つ不満のない完璧な道筋だ。


全員揃ってからトンネルに入る。遠くトンネルの出口に”感動の扉”が見える。

あの先はいったいどんな光景が広がっているのだろう・・・期待に胸が高鳴る。


嶺方峠を初めて越えた時の興奮に近いものが湧きあがってくる。いや、それ以上かもしれない。

冷たい風が通り抜ける中、いよいよトンネルに入っていく。


逆光の中に映るシルエットの姿があまりに美しすぎる。

こんな素敵なシーンは、長い峠越えの経験でも滅多に見ることができない。


あぁ、なんていい後ろ姿なんだろう。

これだったら間違いなくニューサイの表紙に採用されただろう・・・


最後の最後に自分がトンネルに入る。ビデオを撮りながら、感動の瞬間を実況中継する。

来る、来る、いよいよ来る・・・あと10m、5m・・・そして一気に目の前が明るくなった・・・

どっひゃ〜! おぉぉぉ・・・スゲー! これだこれだ! この雲海だ! 28年前と同じだ!


時刻は16:13 すでに日は傾き始め、正面から眩しい西日を浴びている。

逆光の乙見山峠は、すでに極寒の世界に入ろうとしていた。

感動と興奮で熱気を帯びていたが、落ち着くとそこは厳しい山岳の様相。


標高は1500mを越え、気温は0度まで下がっている。

動いていなければ寒さで凍えそうな状況になってきた。

しかし、そんな中でもこの峠からの日没は幻想的な美しさに満ち溢れていた。


やっぱりこの峠は素晴らしい。期待通りの感動を与えてくれる。さすがだ。

忘れてしまわないうちに皆で記念写真を撮る。貴重な集合写真だ。やっぱりこれが記念になる。

誰も来ない峠を貸切って、全員で最高の笑顔をで記念撮影だ。幸せだ。こんな写真が撮れて。


太陽が間もなく山の陰に沈む。どうせならその瞬間を見てから下ることにする。

暗くなる前に一刻も早く下りたいところだが、やはりこうした瞬間も思い出にしたい。


寒さをこらえて間もなく沈みゆく太陽を眺める。

そう簡単に沈まないよ・・・なんて言っていたらあっという間に山の陰に隠れてしまった。

写真を撮る間もなく、ストンと落ちてしまった・・・まぁ、こうしたことも素敵なイベントだ。記憶に残る。


さぁ、後は宿まで下るのみ。

刻々と気温が低下する中、全員防寒対策をして下り始める。


最初のカーブを曲がったらこんな光景だ。あまりの白さに度肝を抜かれた。

宿まで標高差500m、距離8km。無理せず下ればそれほど困難な下りではない。


下り始めは元気だった面々も、舗装路に変わり、さらに気温が低下してくる中の下りは辛かった。

指先が痛くなり始め、ブレーキングも写真撮影もまともに出来なくなってきた。


対岸にこれから下る道筋が良く見える。

先頭のメンバーがゆっくりゆっくり下っていく姿がかすかに見える。


素晴らしい撮影ポイントだが、寒すぎて指がまともに動かない。

この先、さらに気温が下がる中を慎重に路面を読みながら下っていく。


そして一気に暗闇が襲ってきて、恒例のナイトランに突入。

ある意味これを期待していた所もあるので、ご自慢のLEDライトをここぞとばかりに披露する。

自分はもう一枚着るか悩んでいるうちに宿に到着。最後は震えながらのゴールとなった。


すっかり出来上がった先発メンバーの出迎えを受け、あれこれと厳しい「指示」を受ける。

自転車は畳の部屋に置いてもらえることになったので、タイヤを綺麗に拭いて運ぶこと、ですって。

必死の思いでゴールし、ヘロヘロ状態でタイヤの掃除。そして担いで部屋まで・・・凄いフィナーレだった。


ということで、なんともまぁ何も敷かずそのまま畳の部屋にゴールイン。ありがとうございます。

さすがにチェックインした時には生き返りました。ホント寒かった。

一人ずつ体温を測ったけれど、全員寒すぎて測定不能!それほど体は冷え切っていた。


温泉で生き返り、何もかも出来すぎの締めは豪華絢爛の宴会だ。

もう、幸せすぎて怖いぐらい充実した一日。全てが出来すぎのツーリング。


初日からこんな調子で、果たしてあと二日どうなるのでしょうか。

いつまでも楽しく飲んで語っていたけれど、さすがにこのご時世、そろそろお開きに。

あとは再び恒例の二次会の始り始り。


早起きですでに疲労困憊のメンバーは、あっという間におやすみなさい・・・

いつものように残ったメンバーで、いつまでもダラダラと飲み明かす。

あぁ、楽しいね、この集まりは。


素晴らしい一日だった。

やはり乙見山峠は本当に峠越えを味わえる、日本に残された数少ない峠だと思う。


 

距離: 40.3 km
所要時間: 7 時間 35分 43 秒
平均速度: 毎時 5.3 km
最小標高: 511 m
最大標高: 1519 m
累積標高(登り): 1247 m
累積標高(下り): 767 m

(2021/11/13 走行)


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