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峠の本をいろいろ探していたら、「播磨の峠ものがたり」という本に出会った。

”播磨”ってどこだ? と一瞬悩む。


なんとなくあの辺りかと思うが、
正確な地域が頭に浮かんでこない。

ネットで調べてみると、播磨とは以下のように書かれている。


「はりま【播磨】
旧国名の一。山陽道に属し、現在の兵庫県の西南部。播州(ばんしゅう)。

播磨の峠・・・これまで一度も訪れたことがない・・・峠の名前も全く知らない・・・どうしてだろう?

ニューサイのデータベースを調べてみても、”播磨”というタイトルはなんと一度も登場してこない。


播磨の峠を題材にしたツーリングレポートが皆無なのである。これには驚いた。

兵庫県を走ったことはあるが、それは観光地周辺だけだ。

これまで兵庫県の峠などまったく気にしたことがなかった。


この本では66もの峠を紹介している。

自転車のために書かれた本ではないので、内容は風土記のような感じだ。

それでも、これほど多くの峠(実際はもっとたくさん存在している)があることに驚くばかりだった。


兵庫の峠をいろいろ調べてみると、もう一冊関連する本を見つけた。

「兵庫の峠」というタイトルの本で、独特の表紙の本だ。

この本では代表的な36の峠を味のある写真とともに紹介している。


どちらの本も、関東の人間にとっては知らない地域だけに実に興味がある。

標高の高い峠やダイナミックな景観の峠ではないが、小さくても歴史ある峠が実に多い。


日本列島の中でも、近畿地方のこの辺りは自分の峠越えでも未知の領域だ。

この機会を絶好のチャンスと思い、細かなプランニングを計画することになった。


2冊の本を読むと、全ての峠に行ってみたくなる。

今では交通量の多い車道もあれば、廃道になったものもある。そして自転車には不向きな峠も多い。

どの峠をどう巡るか・・・と考えるだけでも超難関な問題だ。


兵庫県の峠は、広すぎて多すぎる。まずは全体像を把握するために、グーグルマップにプロットしてみた。

海から平地、山岳地帯に至るまで満遍なく散っている。これを自転車で巡るには相当の時間が必要だ。

今回は”播磨の峠デビュー”として、手軽に巡れそうな17の峠と、5つの自転車道をつないでプランニングしてみた。

 


2022年4月4日(月)


見知らぬ土地を訪れる時はとてもワクワクする。

関西・近畿地方は滅多に行くことがないだけに、どんなツーリングになるか期待に胸が膨らむ。


そして今回、新幹線の「特大荷物スペース」の予約を初めて体験した。

スマホに専用アプリを入れれば、いとも簡単に予約ができる。

当初は”面倒くさい”と想像していたのだが、実際はこの予約システムは実にいい。


これまでは、最後列のスペースは早い者勝ちだった。

せっかく最後列の席を確保しても、輪行袋を置けるかどうかはその日の”運”しだい。


デカイ楽器を置かれたり、巨大なトランク、ベビーカーなど競争相手は多い。

しかしこの仕組みでは、そうした不安は一切なくなった。


予約していれば、万が一大きな荷物とバッティングしても車掌が対応してくれ、別の場所を確保してくれる。

輪行袋の置き場所が確保されている安心感というのは、サイクリストにとって実にありがたい。

まあ私の輪行袋であれば、置き場所をそれほど気にすることもないが、できるだけ周りに迷惑をかけたくない。


自転車道1 「神出山田自転車道」


2泊3日、「播磨の峠と自転車道」の旅がスタートした。

新神戸駅から地下鉄に乗り換えたが、移動距離がありすぎて、予定の電車に乗り遅れる・・・

まあ10分ほどの遅れなので気にしない。ようやく降り立ったのは谷上駅という神戸に近い街。


右も左もわからないが、街中を散策するわけではないので、走り出せばすぐにいつもの感覚だ。

快晴、春爛漫の陽気。完璧にプランニングしてきたガーミンに導かれて、最初の自転車道にやってきた。


こんな自転車道があることなど、これまでまったく知らなかった。

また、自転車の雑誌や本などでも、紹介されたことはほとんどなかったのではないだろうか。


立派な看板と案内図に導かれて自転車道を走り始める。

心のこもった全体図がとても利用者への優しを感じる。

色々な自転車道を走ってきたが、標識も案内図もない自転車道も結構多い。


静かで美しい自転車道だ。平日ということもあり、全く人の姿はない。

専用道は見事に整備され、実に走りやすい極上の舗装路が続く。

十分な道幅、フラットな路面、湖の脇を気持ちよく走り抜けるプロムナードは最高の贅沢だ。


つくはら湖に沿ってのんびりと湖岸を行く。

いきなりこんな素敵な自転車道に出会って、もう初日から大満足だ。


つくはら湖の先はなんと階段が現れた。自転車道も時には車道の上を越えて行くこともある。

ちゃんと自転車用のスロープが設けられているので許せるが、これが何回も登場してくる。

短かければ許せるものの、結構標高差があるところもあって、息が弾むほどに・・・


眼下に道路を見下ろすほど一気に登らされる場面もある。これにはちょっと驚いた。

下りも厄介だ。乗車できないので、変な体勢で一歩一歩階段を降りていかないといけない。


それにしても桜が満開だ。ここ数日で一気に満開になったようだ。

東京ではすでに散り始めていて、今年は西のほうが桜前線が遅れている感じがする。

素晴らしい桜並木が続く。散歩するお年寄りが多く、この平和な光景に思わず見とれてしまう。


人もいないので、最近手に入れた「リモコンシャッター」を試してみる。
http://home.c04.itscom.net/takasu/remokon.htm


どんな感じで撮れているのかさっぱりわからないが、リモコン初心者なので適当にシャッターを押し続ける。

下手な鉄砲もなんとかで、撮った写真の中からいいのを選んでトリミングすればこの通り。


こんな乗車姿を一人で撮影することは出来なかったが、これは画期的なことだ。

まだまだ下手くそなので表情も姿勢もぎこちない。そのうち使い方にも慣れてくるだろう。


老ノ口という自転車道の終点まで、本当に楽しく気持ちよく走り抜けた。

なんて素晴らしい自転車道なのだろうというのが第一印象だ。景色も環境も申し分ない。

さて本日は午前と午後で二つのプランを計画している。


午前中は「神出山田自転車道」を、午後は「播磨の峠」を巡り始める予定だ。

プランニングに悩んだ結果、仕方なく日中に輪行せざるをえなくなった。

今日はこれから駅へ向かい、少々時間を費やして海側へ一気に移動する。


自転車道終点からその先の穴沢池に差し掛かって、思わず息が止まるぐらいの絶景に出会った。

美しい青空をバックに、咲き乱れる菜の花と桜並木があまりに美しすぎた。

するすると引き込まれるように寄り道し、誰もいないこの「絵画」を独占する。


列車の時刻を確認しながら厄神駅を目指す。

午前中の走りはそれほど疲れていないので、昼食は輪行で移動した後にとることに。


全く人気のない駅の入口で分解する。改札へ行ってみて驚いた。なんと駅員が誰もいない。

こんな大きな駅舎なのに、なんとこの駅は無人となっている。

「この駅は無人になりました」と案内が掲示されているが、果たしてこれで問題ないのだろうか?


無人ながらも、パスモはちゃんと使えるし、乗車するのに何も問題はなかった。

しかしやってきた車両はたったの1両。それも本数が少ないからかなり混んでいる。

加古川まで我慢の乗車。乗り換えて曽根駅で降りる。やっとホットする。


播磨の峠1 「馬坂峠(標高45m)


さあ、午後の部開始。

今日は一日で二つのツーリングを味わえるという豪華版だ。


時刻は14時を過ぎたが、この季節ならこの時間からまだまだたっぷり走れる。

いよいよ播磨の峠シリーズ、最初の峠を目指す。


町を抜け南へ向かうと、すぐに馬坂峠の登りに入る。

細い農道をトラクターが走っていたり、犬の散歩、ウォーキングする人など、意外と賑やかな峠路だ。

散歩するにはちょうどいい登りだろう。適度に息が弾んで、ワンコも来た道を戻っていった。


峠は切通しになっていて、峠越えの雰囲気はなかなかいい。

「馬坂峠」の標識は倒れかかっていたが、しっかりと道案内も整備されている。


必要な部分だけを冊子にして持ってきた「播磨の峠ものがたり」を読み返してみる。

こうした案内が手元にあると、より一層峠への理解と愛着が増してくる。


この峠でこんなことがあったのか・・・峠の名前の由来はそういうことか・・・なんて思い出に残る。

小さな峠であるが、峠からの展望もなかなかいい。


ちょうど小さなベンチが置いてあるので、ここで遅めのランチタイムをとることに。

食事中にも何人もが峠を通り過ぎていく。この道が生活道として重宝されていることがよくわかる。


峠の下りも味があった。

短いダウンヒルだが、雰囲気最高の下りである。そしてその先にはまた素敵な公園が広がっている。



播磨の
峠2 「袖もぎ坂(標高17m)


海側へずっと南下し「袖もぎ坂」へ向かう。

ちょっと峠とは呼べない小さな坂であるが、何やら長い歴史があるようだ。

ナビがなければ通り過ぎてしまうような普通の車道の脇に、袖もぎ地蔵が佇んでいる。


解説板がなければ、全く気が付かない普通の坂道だ。

坂のピークを感じさせるものはなく、この辺り一帯を「袖もぎ坂」と呼ぶようだ。


午後はサイクルオリエンテーリングを楽しんでいるような感じだ。

次の目的地がはっきりしていると、峠巡りも達成感が感じられてなかなか楽しくなってくる。

播磨の峠巡りは標高が低いため、距離はあるがそれほどハードな走りは必要ないだろう。



自転車道2 「夢前川
サイクリングロード」


次の目的地まで、街中を走り抜け、工場地帯を通り抜け、路地や家先を通っていく。

こうした生活感溢れる中を走っていくと、その土地の特徴や街づくりなどがよくわかる。


16:30を過ぎた。本日もそろそろフィナーレだ。

「夢前川サイクリングロード」にやってきた。ここを走るのは二回目。大好きな自転車道だ。

満開の自転車道入口に導かれて車道から降りていく。


ここの自転車道は本当に素晴らしい。

ゆとりある河川敷は柔らかな草地に覆われ、はるか先まで続く桜並木が広がっている。

東京だったら花見客で大混雑するだろうが、ここはパラパラと見物客が座っているだけだ。


何もかもゆとりの景観に癒される。正面の小高い山の眺めもなかなかいい。

まっすぐ綺麗な自転車道がずっと続く。道端のユキヤナギの白さもまたいいものだ。


川の両岸は桜並木が延々と続く。こちら側を走っていると反対側が走りたくなる。

桜並木は反対側の景色のほうがより綺麗に見える。

いつまでもこのサイクリングロードを走っていたいが、惜しむべく本日残りの二つの峠へ向かう。



播磨の
峠3 「笹峠(標高48m)


本日最後の目的地は、今日泊まる宿のすぐそばにある。

「笹峠」は街中の裏手にひっそりと通っている峠道だ。


交通量の激しい車道から外れた団地の横に、こんなピーク感最高の峠が存在している。

写真だけ見ればかなり高低感のある峠だが、実際は小高い丘と言った感じだろうか。



播磨の
峠4 「山田峠(標高48m)


交通量激しい車道のピークが「山田峠」だ。

緩い右カーブの辺りが峠となっているが、峠を示すものは何もない。


珍しく自転車で走っている人がいたが、これでも峠の勾配はきついらしく押して歩いていた。

カーブの先は緩い下りになっていて、その先のゴルフ場辺りが本日のゴールだ。


予定通りの時間に宿についた。

今日は忙しい一日だった。午前と午後でまるで違うコースを味わうことができた。

輪行まで含めて、一日中ほぼ走りっぱなしであったが、とても充実したコースであった。


夕食はホテルのレストランでゆっくりと味わった。

一人旅には20万図が旅の小道具。今日を振り返りながら、明日のコースを頭に入れる。

「播磨の峠と自転車道」初日は、心地いい疲労に包まれて無事に終了した。


午前

距離: 36.8 km
所要時間: 3 時間 16分 58 秒
平均速度: 毎時 11.2 km
最小標高:  31m
最大標高:  251m
累積標高(登り):  172m
累積標高(下り):  380m

午後

距離: 27.5 km
所要時間: 2 時間 55分 14 秒
平均速度: 毎時 9.4 km
最小標高:  1m
最大標高:  43m
累積標高(登り):  138m
累積標高(下り):  113m

(2022/4/4 走行)


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