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2022年6月29日(水)


下駄の音で始まる温泉街の朝。部屋の窓からは、すでに朝市へ向かう浴衣姿が見える。

ここ肘折温泉は、朝市で有名だ。さっそく見物に行ってみる。


新鮮な野菜や山菜、果物、手作りの民芸品など、地元ならではの物が通りに並ぶ。

温泉の湯治客であれば、いろいろ野菜でも買って自炊できるだろうが、我々は買うわけにもいかない。


宿は湯治場らしく、くつろぎの場や自炊場が設けられている。

流れる時間があまりにゆっくりと贅沢だ。やはりここへ来れば、心も体も癒される。


朝食も素晴らしかった。

例によって食欲旺盛の5人は、ご飯の御代わり攻撃。お櫃ごと置いてくれれば楽なんですけど・・・


宿の前には源泉が流れ出している。この源泉は温泉街唯一、飲料可能だそうだ。

玄関の「歓迎看板」は”浦安サイクリング会”となっている。いつから名前変えたんでしたっけ?


宿のご主人に写真を撮ってもらって宿を後にする。

従業員も出てきて、玄関先でいつまでも見送ってくれる姿に、この温泉街の素晴らしさを感じた。


早朝の温泉街は忙しそうに人々が動く。我々の姿を見かけると、気持ちよく挨拶して手を振ってくれる。

なんて人情味溢れる温泉街なんだろう。温泉街全体が観光客を歓迎してくれている。


銅山川を渡る。川はまだ泥水で溢れている。

いい温泉だった。昔のニューサイの紀行文に出てくるような味のある温泉街だった。


ツーリング2日目は、距離も標高差もあって一番辛い日だ。あまり余裕もなく、早々と走り出す。

宿から一旦登るが、その後はしばらく平坦路が続く。そして最後にきつい登りが連続する。


スタートしてからすぐに150mのヒルクライムはきつい。お腹も一杯で体も重い。

薄曇りで助かった。これで晴れていたらどんなに厳しい登りになっていただろう。


相変わらず素晴らしい舗装路が続く。車1台通らない貸し切りだ。

次第に展望が広がってくる。


迫力ある山岳風景ではないが、緩やかな山並みが幾重にも重なり、東北特有の雰囲気を感じる。

ここはどこだ? 山形の山岳地帯はこんな風景だったけ? と考えてしまうほど美しい道筋だ。


スタートして30分、前半戦最初のピークを迎えた。ここからはしばらく辛い登りはない。

ボトルの水もすぐに無くなる。見つけた冷たい湧き水を補充する。今日も暑さとの闘いだ。


下り始めると、牧場風景のような広大な景色が広がってきた。馬でもいたら北海道と間違えそうな感じだ。

その先の分岐地点に、やけに折れ曲がった標識が現れた。文字が反対側だったので振り返ってみると・・・

なんと肘が折れ曲がった「肘折温泉7km」の標識だった!


これには思わず笑ってしまうほど。

あまりにお見事なギャグとしか言いようがない。座布団1枚でしょう!


緩やかな下りの、緑溢れる貸し切りの山道。木陰に入ると涼しく、気持ちのいい風を感じる。

すっかりご機嫌の面々。笑顔が止まらない極上の下りだ。


美しく広がる緑の水田を見ながら快適なダウンヒルが続く。

それにしても全く人の姿が見えない。動物の姿も、虫も鳥もいない。


道路一杯に広がって、楽しくおしゃべりしながら初夏の日差しを浴びて走る。

いいところですね、この辺りは! 最高に気持ちがいい。


快調に距離を稼いで25km地点で最上川を渡る。川は相変わらず物凄い色だ。

橋には自転車用の道が設けられている。前方の4人は先を急いでさっさと渡ってしまったが・・・


私はゆっくり風景を眺めていたら、道の左手の風除けに芭蕉の句が書かれているのを見つけた。

まっすぐ前だけ見ていたらまず気付かないでしょう。


「五月雨をあつめて早し最上川」
(梅雨の雨が、最上川にあつまって、猛烈な勢いで流れている)

この句の意味を調べてみると、今日の最上川の様子がまさにピッタリじゃないですか。


皆さん快調にどんどん先へ行ってしまうので、一人で山形の風景を写真に収めていた。

東北の農村風景は味がある。どこまでも広く、深く、そして静かだ。


かつて、NC380号 山本進一氏の「東北日本海農の風景」に影響されて、自分も1999年に山形を走った。

その時の記憶は今でもはっきり覚えていて、再びこの景色を目の前にして、すっかり昔の思い出に浸っていた。


時刻は12時を過ぎ、そろそろ空腹になってきた。

食料は途中のコンビニでしっかり確保してあるが、適当な場所がなかなか見つからない。

できれば東屋があって、椅子とテーブルがあれば・・・と贅沢な要求。


探しに探して、最後まで諦めず粘ったおかげで、ようやく川沿いの広場に絶好の場所を発見!

やっぱり今回も我々は運がいい。必ず希望がかなってしまって怖いくらいだ。


本日のランチタイムも豪華だ。回を重ねるごとにレシピも充実してくる。

コンビニの冷凍食品は最高だ。氷代わりになるし、焼いたり温めるだけで絶品料理がすぐできる。


ランチタイムに肉を焼いたり、ニラレバ作ったり、そしてナンを焼いてカレーで食べたり・・・

おにぎりやパンでさっと済ますというのもありだけど、この充実したランチタイムはやめられない。


時刻は14時。残り35km。登り標高730m。

2つのピークを越えて、最後3つ目は登りゴールという、カテゴリー1級の山岳ステージだ。


お腹も満腹、すっかり足も冷え切ってしまって果たして無事に登り切れるのか?

計算上はなんとか5時には到着できそうな感じだが、この暑さと疲労でどうなるか。


最初のピーク、青沢トンネルまでは快調に登る。トンネル内は最高に涼しくて生き返る。

せっかく登ったのに下ってしまってもったいない。道路脇には豪快な滝?がお目見え。


小さなトンネルが連続する。

トンネル内は
車も来なく、舗装が完璧なので安心して走ることができる。

まだまだ登りはこれからが本番。残りの行程を確認して先を急ぐ。


2つ目の登りに入る。登って下っての連続はジャブのように効いてくる。

しだいに脚が重くなり、踏み込む力が衰えてくる。

日が長い季節で助かった。まだまだ日没まではたっぷり時間があるから安心だ。


自分のガーミンに入れてきた新しいアプリ、6項目を表示できるようになったが、ここで読み間違えた。

まだ慣れず、文字が小さく走りながらの確認で、現在地の標高と、獲得標高を読み間違えてしまった。


なんだ、あと200じゃないか、なんて思っていたら大きく読み間違えていてダブルパンチ・・・

100m以上も高度を間違えていて平謝り・・・どーもすみません。


間もなく時刻は17時。宿へ向かって最後の登りが続く。

この何でもない直線の登りがとにかくきつい。なんてことない坂に見えるが、いやいや大変な勾配だ。


鳥海山に向かって登っていく道だから、そりゃきつい。

一息つかせてくれる優しさなどなく、ようやく宿の建物が見えてきた時には感動するほどだった。


「湯の台温泉 鳥海山荘」の大きな看板に迎えられてゴールイン。いやぁ、よく走りました。

宿の駐車場からは絶景が広がっているが、もう疲れ切って展望を楽しむ余裕もなかった。


綺麗で立派な山荘だ。ロビーは吹き抜けでとっても開放感がある。

モンベルカードを持っていると、何かサービスしてくれるという。運よく一人が持っていた。

プレゼントは「鳥海高原飲むヨーグルト」。濃厚でしっとりとした味わいに感激! なんだこれ! うんめぇ〜


風呂上がりでさっそく待ちきれず、かんぱ〜い。いやはや、最高の一杯ですね。

そして今宵も、夕食は贅沢な御馳走三昧。


またまた今日も利酒セット、「酒田 蔵巡りセット」を味わう。

もう、美味しい料理とお酒に大満足だ。


ロビーでは、何やら上品な集まりが。

真空管アンプと年代物のスピーカーから音楽を流しながら語り始める。

何の話かさっぱり聞こえなかったけれど、きっと何かの趣味の仲間なのでしょう。


売店には感動の「鳥海高原飲むヨーグルト」がたくさん並んでいる。

帰ったら絶対に売ってるところ見つけて買おうと決めた。ホントこんな美味いヨーグルトは初めてだった。


この暑さの中、80kmを越えるコースも無事にゴールできた。

まだまだこの歳でも十分走れるじゃないか、と全員自信を深めた一日だった。

距離: 85.9 km
所要時間: 8 時間 08分 14 秒
平均速度: 毎時 10.6 km
最小標高:  43m
最大標高:  521m
累積標高(登り):  1187m
累積標高(下り):  958m

(2022/6/29 走行)


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