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今年も「大人の休日倶楽部パス」の季節になった。

超お得なこの切符を使ってのツーリングが恒例となった。今年もさっそく切符をゲットした。


今回の旅は「遠野物語」に始まって、大船渡から気仙沼へと三陸海岸を行く。

事前準備として、さっそくこの二冊を図書館で借りてきた。


水木しげるの遠野物語は実に面白い。やはり漫画はわかりやすくていい。イメージも湧いてくる。

そしてお得なクーポン券も手に入れた。これで宿泊が2000円安くなる。


さて、出発前日。

明日からの天気予報を見ると、晴れマークがまったくない。梅雨の時期だからしかたないか。

まあいつものことだ。一度や二度は雨に降られるだろう。それを覚悟してのツーリングだ。


2023年6月28日(水)


今回のメンバーは4人。一人は京都からの参加なので、東京駅の出発は、8:48発のやまびこだ。

平日のこの時間に、東京駅へ輪行袋を持って行くのは並大抵のことではない。

ちょうど通勤時間にあたり、山手線の混雑区間は乗れない可能性もある。


それを避けるために、1時間以上も早く自宅を出て、さらに遠回りして東京駅へ行くことにした。

きっと一番乗りだろうと思っていたら、さらに早く来ていたメンバーがいてビックリ。

やはり前回懲りたので、その反省から早く出てきたそうだ。


平日にもかかわらず、車内はかなり混んでいる。皆「大人の休日倶楽部」メンバーかもしれない。

私の輪行袋は、手荷物置き場にピッタリ入るので楽勝。あとはあちこちに置いて一段落。


何年振りか、座席を回転させて出発だ。

こんなことが許されなかったんだから、いったい何だったんだろ、全く。


コピーしてきた資料に目を通す。やはりツーリングにはテーマが大切だ。

調べると綿貫氏の紀行文もあったが、あまりにも古すぎて今回はあまり参考にはならなかった。
(NC16号 1965/8)


11:53 新花巻駅到着。さらにここから乗り換えて宮守駅まで行く。

ちょうど昼食の時間だ。今回は変則的なスケジュールなので、駅の蕎麦屋で簡単に済ます。


自分は2016年5月に、同じように新花巻駅で乗り換えて遠野駅まで輪行したことがある。

その時は、遠野駅から自転車道を辿って新花巻方面へ逆コースで走ったことがある。

宮守駅で降りたのは、我々以外にもう一人だけ。まあ何もない、かなりローカルな駅だ。


時刻はすでに13時。かなり高い気温の中、日陰を求めて駐輪場を借りて組み立てる。

もうニッカなんて履いている場合ではないほど暑く、走る前から汗だくだ。


何もない駅だ。当然お店などなく、唯一自動販売機で水を仕入れることができるぐらいだ。

今日は遠野までの半日ツーリング。
走れる時間は4時間弱しかない。


まあ、遠くまで来ただけあって、初日はこんなものだろう。

まずはめがね橋を見学する。なかなか美しい、見事な橋だ。


めがね橋(宮守川橋梁)

宮守町を代表する観光名勝の1つです。
宮守川橋梁(通称:めがね橋)は、昭和18年9月完成。
長さ107.3m、高さ17.8mで20mの間隔で5連のアーチが並んでいます。
手前にあるレンガ造りの柱は大正4年11月に作られた岩手軽便鉄道の鉄橋の一部になります。
平成3年に地元商工会青年部の企画でライトアップが始まり、令和2年6月からはLEDライトが使用されています。
平成26年から「SL銀河」が運行され、多くの人を楽しませてくれました。
(SL運行は、令和5年6月11日、惜しまれながらも終了しました。)
https://www.city.tono.iwate.jp/index.cfm/45,26756,255,html



天気は悪いどころか良すぎる。暑くて、日焼け止めをしっかり塗っておかないと危険だ。

遠野に向かって走り始めるが、日陰が全然ないので辛い。

自分は逆コースで一度走っているが、ほとんど記憶がない。やはり方向が違うと見える景色も全然違う。


10km少々で自転車道の入口が現れる。ここから遠野まではこの自転車道で行くことができる。

車道から自転車道に入っていくと、そこはもう天国だ。狭いながらも車を気にせず安心して走れる。


かなり草に覆われた細い道になってしまっているが、おかげでとっても涼しい。

木陰が多く、草や土の自然の涼しさで、車道の暑さとは段違いの快適さだ。


おっと、気が付くとニッカから着替えてますね! さすが用意がいいですね。

6月はどんな格好で走ったらいいのか、意外と悩みます。


周囲を見渡すと、なにもかも「緑」一色。この季節、とにかくグリーン一色の眺めが広がっている。

このままずっと走って宿まで直行したい気分だ。

7年前に来た時も、確かここで写真を撮ったっけなぁ。季節は5月でした。


初日の今日は、遠野観光のスタートとして「続石」「南部曲り家千葉家」を見学に行く。

「南部曲り家千葉家」は現在保存整備のため公開が中止されているが、外観だけでも見てみたい。

自転車道から「続石」に向かう。地図とガイドブックで場所を確認する。


広々とした田園風景が広がる中、のどかな農道をのんびりと行く。

日差しは暑いが、広大な眺めに心も癒される。これが遠野の雰囲気なのだろうな。


まっすぐに伸びる釜石線の線路を横切る。すぐ先が「岩手二日町」の駅だ。


岩手県遠野市綾織町上綾織のエリアだ。

のどかな景色だ。人も車も、そして鳥も虫も全く見当たらない。本当に静かな午後のひとときだ。


名勝「続石」にやってきた。今日一番楽しみにしている遠野の観光名所だ。

入口には「続石」の簡単な説明がある。鳥居があると書いてあるが、なぜか見当たらない。


「続石」まではちょっとしたハイキングだ。整備された山道なので、それほど苦労せず歩いて行ける。

国東半島の磨崖仏巡りを思い出す。結構こうした史跡巡りは疲れるが、今日はたいした事はなさそうだ。


続石

鳥居をくぐり、山の小道を15分ほど登ると、杉林の小高いところに鳥居状の巨石の創造物に出会います。
2つ並んだ石の上の、左側の方のみに幅7メートル、奥行き5メートル、厚さ2メートルほどの巨石が笹石として乗っています。
「遠野物語」の第91話に出てくる奇石で、古代人の墓とも、武蔵坊弁慶が持ち上げて作ったともいわれています。
https://tonojikan.jp/kanko/tsuzukiishi.php


上を見上げると、木々の隙間から、どーんと大きな岩が視界に飛び込んできた。

な、な、なんだぁこりゃ? と思わず立ち止まってしまうほどの大迫力だ。

それにしたって、なんというアンバランス! なんでこのまま維持されてるの? って驚きだ。


近づいてみると、さらに驚きの光景だ。なんと、2点で支えられていると思ったら、片方は浮いている・・・

おぉ、ミラクル! さらにこの隙間を通り抜けることができる。

長い時間の風雪に耐え、地震、豪雨にも耐えてこの姿が残されている。もう驚異としか言いようがない。


続いて、すぐ先の「南部曲り家千葉家」に行ってみる。

工事中ということは知っていたが、せっかくなので遠くから外観だけでも見てみたい。

南部曲り家千葉家(平成28年4月より10年をかけ大改修工事中)

南部曲り家の代表格である千葉家は、遠野市から盛岡市に向かう国道396号線の右手にあります。見晴らしの良い小高い丘の中腹に石垣を築き、前面に柵をめぐらした屋敷構えの家で、曲り家の最盛期に建てられ,保存状態も良く、上層農民の最高級の曲り家として典型的なものといわれます。「日本十大民家」の一つに数えられます。
https://tonojikan.jp/kanko/chibake.php


大きな駐車場とトイレまで設置されている観光名所だ。

左の写真は工事していない時の写真。右が工事中の写真だ。


大きな石垣の上の、広い敷地の千葉家。足場が組まれて大規模な工事が行われている。

ちょうど休憩時間だったようで、作業員が何名もやってきた。


「工事中で見れないんですよね?」「えぇそうなんです」「ちょっとだけ無理ですか?」「無理ですねぇ」

確かに物凄い規模の工事だ。遠くから見ていても、作業員が米粒ぐらいにしか見えない。

なんて大きな曲り家なんだとつくづく思った。いったいいつ工事が終わるのか・・・


さあ、今日の観光メニューはあとひとつ。「道の駅 遠野風の丘」からの原風景を見に行こう。

どこまでも広がる水田、田畑、集落、そして山並み。

とにかく素敵な眺めだ。腰を下ろしてずっと眺めていたくなる。


再び自転車道に戻ってきた。やはり日陰が多くて快適だ。

すっと走っていけば遠野の街だが、道の駅へ寄り道するため車道へワープする。


評判通り、気持ちのいい展望デッキだ。

釜石線の列車と猿ケ石川を眺めながら、名物のジンギスカンでもいただけば、最高だろうな。


時刻は16:30 今日は宿で「遠野民話 語り部の夜」が18時から予定されている。

あまりゆっくりしてはいられないので、一息ついてから遠野の街へ向かう。


猿ケ石川を渡ると、もうすぐに遠野の街だ。逆光に光る川がなかなか美しい。


ゴールも近いので今日は余裕だ。

初日は距離も時間も短かったが、素晴らしい景色と自転車道、そして観光名所巡りがなかなか楽しかった。


17時前に宿に到着。格式高い、とても立派なホテルだ。ちょっと驚いた。

乾杯して「語り部の夕べ」に間に合うように準備する。さあ、忙しいぞ今宵は。


夕食前の30分間、「遠野民話 語り部の夕べ」が設けられている。

専用の部屋が用意されていて、すでに宿泊客が何名も集まっていた。

語っていただくのは、「遠野昔話語り部の会」のメンバーだ。


遠野昔話語り部の会
http://kataribenokai.morioka-mhc.com/introduction/

女性陣の中で、男性はただ一人。今日は、その唯一の男性の語り部を拝聴することになった。

「むがすあったずもな」で始まり,「どんどはれ」で結ばれる遠野の昔話。

遠野物語を読んでいたので、言葉が多少わかりづらくても、話のストーリーはよくわかる。


さすがに素晴らしい語りだ。巧みな話術にどんどん引き込まれていく。

実にいい企画だ。ツーリングに行っても、こうして地元の方の昔話を聴く機会もなかなかない。

たっぷり30分、心温まる昔話を堪能し、ますます遠野ファンになってしまった。


夕食はこれまた贅沢な個室でいただく。我々担当の女性もとても気さくで楽しい方だった。

色々質問したら、一生懸命調べてくれて答えてくれた。


本日の献立表。メニューが多すぎて、全部食べられるのかと心配になるほどだ。

「何時まで食べてて大丈夫ですか?」と先に聞いておいて、次々とお酒を楽しむ。


大好きな飲み比べセット、そしてどぶろくまで堪能して満腹に。

どぶろくの名前の由来を質問したら、結局「よくわかりません」との答え。誠実だなぁ、と感心した。


いやぁ、素晴らしい夜だった。
部屋の窓からは遠野の街の夜景が良く見える。

全員朝が早かっただけに、もうお疲れだ。

遠野、いいところですね。またゆっくり来てみたいと思った。

距離: 28.2 km
所要時間: 3 時間 25分 34 秒
平均速度: 毎時 8.2 km
最小標高:  185m
最大標高:  327m
累積標高(登り):  256m
累積標高(下り):  161m

(2023/6/28 走行)


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