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2023年6月29日(木)


格式高い宿だと思っていたら、なんと天皇・皇后両陛下の写真が飾られていた。

東日本大震災の被災者を励ますために訪れた際に、この「あえりあ遠野」に宿泊されたようだ。

そして隣に飾られた自転車のオブジェ。これは何を現わしているのか不明だが、素晴らしい作品だ。


時刻は8時。

今日は予定が一杯なので、これまでにない早いスタートとなった。記念撮影をして出発だ。


まずは「遠野ふるさと村」へ向かう。遠野へ来たなら、ここだけは見逃せない。

走り始めてすぐに何やら異音がする。「ヒューヒュー」と何か擦っている音。


ガードかな? と確認するが異常なし。あれこれ試してみるが原因わからず・・・なんだ?

走っていても気になるし、隣の人も気になるので、徹底的に調べてやっとわかった。

ダイナモコードがタイヤに微妙に擦っているのがわかった。大事に至らず一安心。


猿ケ石川に沿って、朝から自転車道を行く。

白い靄が立ち込める中、早朝の自転車道はなかなか気持ちがいい。


今朝は涼しい。少々雨が降った後なので、昨日とは打って変わって快適だ。


一部雑草が伸び放題の所もあるが、全体的に道幅も広く、路面も綺麗で走りやすい。

こんな素敵な自転車道なのに、ほとんど誰も利用しないのだから、実にもったいない。


自転車道から離れ、ダートの小径を進む。舗装路の車道の往復ではつまらないので、遠野の風景を楽しむ。

ダートを走るのは久しぶりだ。考えてみると、最近ほとんど走っていないことに気が付いた。


細いタイヤで少々走りにくいが、それでも林間の林道はとても味がある。

突然大きな水たまりも登場して、汚れないようにゆっくりと通過する。


朝から楽しいポタリングで、9時の開村に合わせて「遠野ふるさと村」に到着。

ここは広大な敷地に、市内の「南部曲り家」を移築・保存し懐かしい農村を再現した場所だ。


これだけの規模を移築し、維持管理していることにまず驚く。

曲り家は靴を脱いで実際に中も見学でき、昔の生活を味わことができる。

日本の建築の素晴らしさ、美しさ、機能的な造りに感動し、感心するばかりである。


多くの生活道具や物資、仕組みなどを見ていると、いかに現代の生活が快適なのかがよくわかる。

何をするにも人の力、馬の力などに頼らざるをえなかった。昔の人は、とにかく凄いと痛感する。


曲り家の片隅にポニーがおとなしく生活している。全く動かないので置物かと思ったら、本物だった。

外の広場には、"遠野ふるさと村"の看板娘、ばん馬の"白雪"ちゃんの姿を見ることができた。


実に楽しい「遠野ふるさと村」だ。一日ここにいてもいいぐらい、色々な体験もできる。

どぶろくも売っているし、面白そうな本も沢山置かれている。


もっともっと見学したいところだが、今日は予定が詰まっている。それでも結局1時間以上見学していた。

次は「伝承園」と「カッパ淵」へ向かう。

猿ケ石川の道は実にいい雰囲気が広がる。まさしくカッパが登場しそうな川の流れだ。


再び自転車道に合流する。

遠野の街は、この「遠野・東和自転車道」によって色々なところへ行くことができる。

「かっぱ橋」と名づけられた橋には、こんな大きなカッパさんが佇んでいる。


ここから先、「伝承園」「カッパ淵」はカッパ一色だ。

「伝承園」は、遠野地方の農家の生活様式を再現したところ。

そして、遠野物語の話者「佐々木喜善記念館」がある。


とにかくここは”カッパワールード”だ。あきれるほどカッパに徹底しているところが凄い。

売店は全てがカッパ。店員さんも面白く、カッパの世界になりきっているのが見事だ。


さすがにカッパティーは飲まなかったけれど、カッパグッズお買い上げ〜

カッパは見つからなかったけれど、元気そうな猫ちゃんを見つけました。


続いて「カッパ淵」へ。

遠野の観光はレンタサイクルが便利。皆さん伝承園に自転車を置いて、カッパ淵の見学に歩いて来ている。


カッパ淵

岩手県遠野市で最も有名な観光名所といえば「カッパ淵」ですが、この「カッパ淵」には、多くのカッパが棲み、人々を驚かし、いたずらをしたといわれています。カッパにまつわる話は他にもたくさんあり、遠野のカッパは、赤い顔で口だけが異様に大きく、鳥の鳴くような声を発するといいます。澄んだ水がさらさらと流れる「カッパ淵」は、うっそうとした茂みに覆われ今にもカッパが現れそうです。
https://www.tohokukanko.jp/attractions/detail_1002848.html


万が一カッパを見つけても、「カッパ捕獲許可証」がないと捕まえられません。伝承園で購入しましょう。


さてさて、楽しい遠野の観光も午前中でおしまい。午後からは峠越えして真面目に走らないと・・・

まずは腹ごしらえだ。遠野と言えばジンギスカン。そして食べるならここ、「遠野食肉センター」だ。


GPSに目的地をセットして直行。ちょうど12時だったけれど、すぐに入ることができた。

いただいたのはこれ。「生ラム食べくらべ3種盛り定食 \2480」サイコーに美味しかったです。


13時、ようやくツーリングの開始だ。

遠野の街の中を走っていると、やたらと「菊池」の名前が目立つ。

あっちも「菊池」、こっちも「菊池」だ。とうとう「菊池サイクル」まで現れた。


まさか我々の仲間のキングも関係ある? と思ったら字が違いました。

調べてみると、確かに遠野は菊池姓が多く、
遠野市は、人口の約4分の1が菊池姓だそうだ。凄い!


すっかり晴れてきて、また暑い中の峠越えとなった。

蕨峠への道は、まったく交通量がなく走りやすい。自転車にとってはありがたい道だ。


道幅も広いので、どこをどう走ろうと自由自在だ。たまーに車がやってくるぐらいだ。

峠まで約300m程の登りだ。この道なら1時間かからず越えられそうだ。


そんなとき、トラブル発生だ。なんと、登っている最中にフロントのエアー漏れ発生。なんで?

滅多に経験したことのないパターンなので、少々心配になったのだが・・・


原因は、パンク修理したパッチが剥がれかかっていたという顛末。パンクというより、パッチの接着不足でした。

よくまあここまで耐えたものです。もう、このチューブは御役目御免でしょうね。 


ちょうどいい休憩になったので、今回の参加者のマシンでも紹介しておきましょう。

個性あふれる4台のランドナー。今回はバッグに個性があって面白いですね。


パンク修理後、すぐに蕨峠が見えてくる。この小さな峠は「岩手の峠」という本に紹介されている。

本の詳細は「峠の資料室で」で紹介している。
http://home.catv.ne.jp/dd/takasu/T_siryou.htm#touhoku_199104


ちょうど手頃な登りの峠だった。適度な勾配と、峠のピーク感がなかなかいい。

ちょうど右カーブの辺りが峠になっている。静かで明るい峠だ。


峠の名前は、道路標識の下に小さく書いてある。残念、ちゃんとした標識を建てて欲しいものだ。

峠での一服ということで、冷たい抹茶をいれていただく。今日は暑いだけに最高にうまい。


汗もひいて、いよいよ下りに入る。ちょうど距離も半分、残り40km少々だ。

下り始めは道幅も広くて快適だ。危険な所はほとんどない。


しかし、途中から路面の様相が一変してきた。

急に山道に変わり、道幅も狭く見通しも悪い。さらに路面にいやな「苔」が現れ始めた。


日陰で少々湿った辺りは、荒れた路面と苔の存在がとても気になる。

細いタイヤで変なラインに乗ってしまうとかなり危険だ。思わずスピードダウンしてしまう。


緊張の連続だったが、そこを抜けると再び素晴らしい下りが待っていた。

一気にブレーキレバーから指を離して加速していく。


交通量ゼロ。カーブの見通しも良く、コーナーリングも楽しめる。

抜きつ抜かれつでダウンヒルを撮影する。距離は短かったが、なかなか「濃い」ダウンヒルだった。


蕨峠の下りが終わりになると、徐々に交通量が増えてきた。

道路脇にはこんな標識が建っていた。


「この先わらび峠前後巾員狭少のためバス大型車等は赤羽根峠を経由してください」

どうりで交通量が少なかったわけだ。確かに車で峠を越えるには、結構神経を使うところがある。

 

ここから登り返して、最後の白石トンネル越えだ。全長808mのほぼまっすぐなトンネルだが、結構交通量がある。

全員テールランプを点灯させてトンネルに入っていく。

いつものように、前からも後からも轟音に怯えながら、早く抜けたいと気ばかりが焦る。


無事にトンネルを通過すると、再び豪快なダウンヒルが待っている。

山から下って、次第に海に近づいていく。その変化がやはりツーリングの醍醐味だ。


大船渡の街が徐々に近づいてくる。

いよいよ海とご対面できるかと心待ちにしていたのだが・・・全然青い海が視界に入ってこない。


海岸線沿いは、真っ白な壁がずっと張り巡らされていて、車道からは壁と空しか見ることができない。

これがいわゆる防潮堤というやつか・・・自分の目で見るのは初めてだ。


しかし、大船渡港が近づいてきたときに、巨大な客船の姿が前方に見えてきた。

あのマークは、日本郵船「飛鳥U」ではないか! なんでこんな所に! と仰天! 私、株主ですけど!

デッキに多くの人が並んでいる。なんだ? と思ったら、間もなく出港だったんですね。


調べてみたら、横浜発着 12泊13日のクルーズだった。ひぇ〜、豪華な旅ですねぇ〜

それにしても、なんてでっかいんでしょうか! たまげました。

国内クルーズだったら、スケジュールを立てればなんとか乗れるかも? なんて思っちゃいましたね。 


豪華客船に見惚れていて、なかなか宿に近づかない。

そしてまたしてもこんな防潮堤や、津波浸水想定区域の標識が現れる。

もう、何もかもが東日本大震災の爪跡だ。


大船渡湾に沿ってフィナーレは少々高台に登る。するとようやく美しい太平洋の海原が視界に広がってきた。

17時過ぎ、無事に本日の宿に到着。玄関わきに自転車を置かせてもらって一安心。


本日の宿は、ちょうど大船渡湾の入口に位置しているため、非常に展望がいい。

それにしても大きな温泉宿だ。駐車場もビックリするほど大きい。

まず、入っていきなりエントラスロビーの絶景に圧倒される。まるで絵画のような美しい空間だ。
https://oofunato-onsen.com/facility/


「絶景部門 2年連続第1位」の輝かしいポスターが掲げられている。素晴らしい、確かに絶景だ。

と褒めたたえていたら、とんだ不手際に見舞われた。

部屋に入ろうとカードキーをタッチするが、鍵が解除されない。緑ランプがすぐ消えて赤ランプになってしまう。


何度やってもダメ、二人がかりでやってもダメ・・・

他のお客がやって来たので様子を見ていると、簡単に入れる・・・どーゆーこと? 

早く部屋に入って寛ぎたいのに、も〜この時間は最悪だ。


頭にきて、再びフロントに行って事情を話すと、どうやらカードの設定間違いのようだ。

セキュリティ面から厳しい設定がされているようで、30分しか使用できない設定になっていたようだ。

再設定にも時間がかかり、結局ドアの前で10分以上も待たされることに。ブーブー!


もう〜いい加減にしてよ〜と不満を言っていたら、なんと部屋の窓からこんな眺めが目の前に!!

なんと、先ほど出会った豪華客船「飛鳥U」が出港していくではないか! なんだこの特等席は!!


白い煙を吐きながら、ゆっくりゆっくりと進む真っ白な「飛鳥U」。なんて美しい姿なのだろう。

しばらくその姿に見惚れていたら、なんとその上空に大きな虹がかかっているではないか!


もう、いったいどこまで出来た演出なのだろう。船の乗客にはきっと見れない、我々だけのスペシャルショーだ。

豪華客船は、ゆっくりゆっくり、そして次第に小さくなって見えなくなった。これから横浜へのクルーズだ。


今夜の料理も豪華だ。「〜漁師めしプラン〜 期間限定ウニ解禁」と書かれた献立だ。

とにかく、目の前に並んだ料理を見るだけでもう大満足。ウニも絶品、ホヤも絶品、何もかも絶品だぁ。

そしてカジキマグロの兜煮でとどめをさされた。その大きさ、柔らかさ、旨さに感動の嵐だ。


担当の板前さんからいろいろとお話を聞いた。震災で様々な苦労をされて、ここで働いているらしい。

とても明るくて人当たりが良く、優しく丁寧な対応がとにかく素晴らしい。そして働き者だ。

一生懸命動く姿を見ていると、こちらにも元気が伝わってくる。


食べきれず、飲み切れず、部屋に持って帰ったが、すでに満腹でこれ以上無理。

なんと今日は84kmも走って、もう満足感一杯だ。

出来すぎの一日。大満足の遠野〜大船渡であった。

距離: 84.0 km
所要時間: 9 時間 4分 35 秒
平均速度: 毎時 9.3 km
最小標高:  10m
最大標高:  564m
累積標高(登り):  675m
累積標高(下り):  900m

(2023/6/29 走行)


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