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2023年6月30日(金)


フロントには、明日の日の出は4:09と案内が出ていて、その時間が気になっていた。

あれほど美しい日の出の写真を見てしまったら、ぜひともこの目で見てみたいものだと思った。

運よく起きられることを祈って眠りについたら、願いがかなって日の出ちょっと前に目が覚めた。


部屋の窓から大船渡湾を覗く。

おぉ〜始まっている! 雲が多くて少々残念だが、それでも次第にオレンジ色に染まっていく空に魅了される。


部屋にはこんな素敵な2枚のカードが置いてあった。どちらも素敵な日の出のイラストだ。

季節によっては、海から昇る太陽を見ることができるらしい。

やはり2年連続、絶景部門第1位なのも納得できる。


朝食会場は朝から行列だ。宴会ができるような大きな会場に、次々宿泊客が入っていく。

いったいこの宿には何人泊っているのだろう? ツアーの団体さんたちなのであろうか?


昨夜担当だった板前さんも朝から出勤していて、我々に挨拶してくれる。

さすがに今朝は忙しすぎて、呑気にお喋りする瞬間もなかった。_


最終日 8:40 この日も天気は怪しいが、なんとか降られないことを願って準備を整える。

今日は距離も短く、ゴールの気仙沼駅には15:30には着かなければならない。

宿の方が見送りに出てきてくれていろいろとお話する。


「今日は碁石海岸行かれますか?」「ここより2、3度気温が低くて快適ですよ」と教えていただいた。

自分もこの景勝地のことは全く知らず、どんな所か興味があった。


素敵な宿だった。そして料理が素晴らしく、眺めも素晴らしく、そしておもてなしが最高だった。

大きな宿ではあったが、また泊まりたいな、と思わせる宿だった。


自分が最後に三陸を走ったのが1988年。あれから35年の月日が流れてしまった。

その時は輪行キャンピングというスタイルで、気仙沼から三陸海岸を南下し石巻まで走った。

またいつか来るだろうと思っていたらあの大震災だ。それからぷっつりと三陸への道は閉ざされてしまった。


今回、本当に久しぶりに、そして自分の記憶と様々な思いを込めてここへやって来た。

あの美しい三陸の海、海岸は今も残っているのだろうか? 見たい気持ちと、怖い気持ちが交差する感じだった。


碁石海岸を散策する。

全てが昔とは違ってしまったのだろうが、美しい海と海岸線はやはり変わらず残っていた。

何となく昔の記憶が蘇り、素晴らしい展望に少しホッとした気持ちになった。


大船渡市立博物館を見学する。

これまでの歴史、自分が知らなかった35年間の事実が語られている。


多くの写真は見るものに衝撃と事実を伝えてくる。

そして、そこに生きる人たちの計り知れないエネルギーが伝わってくる。


碁石浜へ立ち寄ってみる。海岸には碁石になりそうな綺麗な石が沢山転がっている。

どれどれと探してみると、すぐに丸い手触りのいい石が見つかった。これはお土産だな。


今我々がいる場所は、被災地のど真ん中。どれだけの被害があったのか、今となっては想像もつかない。

しかし、この防潮堤がその事実をしっかりと伝えてくれる。


どういう言葉で表現すればいいのか悩んでしまうほどのコンクリートの壁。

その巨大さに思わず見上げてしまう。垂直の壁というのはこれほどまで圧迫感があるのかと、つくづく思う。


圧倒的な衝撃だ。海に対する思い、あこがれ、景観、展望、恵み、やすらぎ・・・何もかもを遮断する。

やはりこの地へ来て、自分の目の前でその存在を知ると思いは複雑だ。


自然の脅威に対して人間ができることは、これぐらいしかないのかもしれない。

防潮堤と港をつなぐゲートがあった。信じられないほど頑丈な分厚いコンクリートの壁だ。とにかく、すごい。


BRTの踏切?を横切る。自転車で走りたくなる専用道が伸びている。

今回初めてBRTなるものに出会うことになったが、どういうものだかさっぱりわからない。

とっても簡単に言ってしまうと、BRTとは、専用のレーンを走るバスだ。


通常のバスがこれまでの列車の代わりとして運行する、といった感じだろうか。

基本的には、専用レーンなので、事故がなく、遅れもなく、定時性が確保されるということだ。

BRTは、このツーリングの最後に再び登場するので、のちほど紹介する。


陸前高田市に入る。東日本大震災で甚大な被害を受けた街だ。

高台から遠景が視界に入った瞬間、街がまるごとなくなっているのがわかった。

高い建物が全くなく、広い平地が広がっている。これだけで相当ショックを受ける。


海岸線に出ると、「壁」「壁」「壁」の連続だ。すぐ隣が海だなんて全くわからない。

この防潮堤の高さが、津波の物凄さを想像させる。

防潮堤の真下に立って上を見上げると。果てしない高さだ。人間も自転車も小さな点でしかない。


そしてこの集合住宅が全てを物語っていた。

4階まで浸水し、ことごとく破壊されている。5階は綺麗に残っている。

こんな高さまで津波が来たのかと、呆然と立ち止まって見ていた。本当に言葉にならない。


津波に浸水した区間の標識が設置されている。この街の何もかもが失われた標だ。

そして今日の目的は「高田松原津波復興祈念公園」の見学だ。


高田松原津波復興祈念公園

高田松原津波復興祈念公園は、東日本大震災による犠牲者への追悼と鎮魂、震災の記憶と教訓の後世への伝承とともに、国内外に向けて復興に対する強い意志を発信するため、国、岩手県、陸前高田市が連携して整備した、復興の象徴となる公園です。
https://iwate-fukkokinen-park.jp/



「奇跡の一本松」で有名なこの場所をどうしても見学したかった。

広大な敷地を歩いていくと、遠くに「奇跡の一本松」の姿が見えてくる。


高台まで登ると、美しい海が広がっている。そしてこの被災した衝撃の姿だ。

その対比があまりに強烈過ぎて、息が止まるほどのショックを受ける。「何なんだ、これは・・・」


この建物は「陸前高田ユースホステル」だった。

こんな立派で頑丈そうな建物が、折れ曲がるほどの姿になっている。


そしてその横には、ただ一本だけ残っている松が立っている。この光景も衝撃だ。

現在、この一本松はモニュメントとして維持されているそうだが、あまりに凄い眺めだ。


見学していると。ついに小雨が降り始めた。やはり今日は降られてしまったか。

雨雲レーダーを見ても、あまり好転は期待できず、気仙沼までの残り20kmをどうしようかと悩む。
 

時刻は11時を過ぎたばかり。食事をするには早いが、この先適当な場所もない。

走る? 走らない? BRTで輪行? 4台輪行可能? ばらしてダメだったら? また組み立てる? 

あれこれいろいろ考えたが、なかなか結論が出ない。


結局予定通り気仙沼まで走りましょう、ということで昼飯に。

しかし、奮発してこんな豪華な食事を注文したら、まだお腹も空いていなくて食べきれず・・・

天気の回復を待って、「東日本大震災津波伝承館」を見学。 


ちょうど雨もあがって走り出したのはよかったが、すぐにまたパラパラと降り出した。

さすがに無視できない雨になってきたので、真面目に雨具を用意する。

すぐ先にはBRTの「駅」があって、屋根があるので着替えるのにちょうどいい。


これがBRTの駅なんだ、と初めて見る案内に食いつく。

そこで何を思ったか、ヒマ?だったので問い合わせの電話番号に電話してみた。


「もしもし、我々自転車でツーリングしてまして・・・」「分解して袋に入れて・・・」
「たとえば、〇〇駅から気仙沼まで・・・」「4台ですけど・・・」「可能なんでしょうか?」

と、意地悪な質問を投げかけると、なかなか返事が返ってこなく、担当の女性も相当困惑している様子。


そもそも輪行する気はないけれど、BRT輪行ってどんなもんだか知りたくなって電話してみた。

いろいろと確認したんでしょうね、結局かなり待たされた後、輪行可能と答えが返ってきた。

やっぱり、輪行OKだ。でもそれは混雑状況によるとのこと。まあ、4台は無理ですって。


最後の難所は「唐桑トンネル」だ。

標高100mまで登らされ、800m程のトンネルを抜けなければならない。


小雨が降る中、しっかりテールライトを点灯してトンネルに入っていく。

交通量も結構あり、出口の明かりを頼りにまっすぐ走る。ハンドルを持つ手が緊張する。


気仙沼の街中に入ってきて、初めて目の前にBRTのバスがお目見えした。

BRTと表示されてはいるが、見た目はまったく普通のバスである。

専用道ばかりを走っているわけではないので、こうして一般道でご対面できる。


いよいよゴールの気仙沼駅が近づく。久しぶりに大きな街並みが現れてきた。

14:00 無事に気仙沼駅に到着。予定よりかなり早い到着となった。


たっぷり時間があるので、ゆっくりと輪行ができる。

16:15発の列車に乗るので、まだ1時間半近く時間がある。

それじゃぁ〜ということで・・・「小さな旅」の、始まり始まり〜


もともと今回のツーリングで、チャンスがあればBRTに乗ってみたかった。

BRTの時刻表を調べて、あれこれ検索してみたら・・・、あれちょっと乗れるかも? とナイスアイデア。

駅員に聞いてみると・・・「大丈夫ですね、戻ってこれます」ですって! いったい何企んでんの?


今回の大人の休日倶楽部パスにはBRTも乗り放題と書いてある。

ならば、ちょっと乗りましょうよ、ということになった。えっ、今から乗るの? とビックリ。


BRTとは何だ? と詳しく知りたい方は、以下をご覧ください。詳しく解説されてます。
https://gazoo.com/column/daily/22/03/29/


まさか最後にBRTに乗れるなんて考えてもいなかったので、このアイデアに全員感激。

さっそくフロントバッグだけ持って乗車。3つ先の「八幡大橋」で降りて、折り返し戻ってくる作戦だ。


万が一戻りのBRTが時間通りに来なかったら・・・という心配は無用。

BRTは列車と同じ運行がされているので、ほぼ時間通りに走っているとのこと。それがメリットのひとつ。


発車するともうワクワク。まるで子供みたいに喜んじゃって、前方の景色に食いつく。

専用レーンをどうやって走るのか、先ほど見た踏切のバーはどうやって開くのか、しっかりカメラを構える。

ちょうど車が踏切を渡る場面に出くわし、車が通過すると見事にバーが上がった。


専用道はとても綺麗に整備されていて、すれ違いのスペースも所々に設けられている。

そしてなんと、前方に小さなトンネルが現れた。


おぉ〜、いいですねぇ〜このトンネル。まるで黒部にでも来た気分だ。

どこかのテーマパークの乗り物にでも乗っているような高揚感。次々変化していく景色。


なんだなんだ、楽しいぞBRT!と感激。

他の乗客はそんな我々を静かにじっと見ている。スミマセンうるさくて。


降りたバス停の正面に、なんと都合のいいことかコンビニがあった。もう、完璧!

戻りのBRTが来るまで数分間、その間に帰りの宴会用の氷を仕入れてくる。


あと3分しかないのに道路を渡って買いに行く。

早く買って来ないと、と心配していたら、地元の人が「大丈夫です、時間通りに来ます」と教えてくれた。


なんだか最後は楽しい探検をした気分だった。駅に戻って帰りの列車に乗り込む。

楽しかった「遠野・大船渡・気仙沼ツーリング」もこれで終了だ。

あとはお酒が無くなるまで、楽しい宴会列車の始まりだ。


新幹線に乗り換えて、そうだここでダイソーの「真空2重ステンレス缶ホルダー」のテストでもするかな。

買ったビールを缶ホルダーから取り出して、直接注いで飲んでみる。

かなり容量があるので全部入ってしまいそうだが、何回かに分けて注ぐ。泡の具合もなかなかいい。


ビールの後は、氷を入れて黒霧島の水割りだ。カランコロンと氷のいい音がして雰囲気もいい。

コンビニの氷はいつまでも溶けず、ずっと冷たいままだ。うーん、なかなかいいねダイソー。

宴会列車もあっと言う間に終了だ。しかし、帰りの新幹線も混んでたなぁ。それじゃ、また次回。

距離: 41.2 km
所要時間: 5 時間 18分 57 秒
平均速度: 毎時 7.8 km
最小標高:  0m
最大標高:  108m
累積標高(登り):  458m
累積標高(下り):  447m

(2023/6/30 走行)


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