峠への招待 > ツーリングフォトガイド >  ’2023 >  下北半島・尻屋崎・”ワケあり”横丁



プロローグ:旅の始まり


今回のツーリングの始まりは、2020年1月17日に放送されたこの番組からだった。

NHKドキュメント72時間「 青森・下北半島 "ワケあり"横丁」だ。

これを見た大先輩のU氏が、どうしてもこの"ワケあり"横丁に行きたくなった。


そこで地元の友人サイクリストを含む、仲間の3人で行くことになったのだが、なぜかそこに私が誘われた。

2020年5月、ツーリングの詳細も宿の手配も済み、いよいよ来月、というところでコロナの大騒ぎだ・・・

この頃は、県をまたいでの移動も制限され、こんな呑気な旅行をしている雰囲気ではなかった。


もう少し落ち着いてから行きましょう・・・ということで、なんと3年も過ぎてしまった。

そして今年6月、ようやく全ての条件が揃って、やっとの思いで出かけることになった。

3年も待たされると思いも一層募る。再度「ドキュメント72時間」を見て、下北への思いを馳せる。


いよいよ出発が迫ってきたときに大事件が起きた。

当初の予定では、下北駅まで輪行する予定だったのだが、なんと野辺地駅から先が「運休」のお知らせだ!


幸運にも出発前に気が付いてまだよかったのだが、こんなことがあるなんて予想もしていなかった。

ちょうど乗る日も、時間もドンピシャ! なんて不運なんでしょう! そして唖然!


参った。野辺地駅〜下北駅間は、列車が無ければ移動手段は全くない。

そこで相談の結果、もともとカーサイで来るメンバーが1人いるので、その車で残りの3人を拾ってもらうことに。


結局、青森在住の1名を拾って八戸駅へ。東京からの輪行2名も八戸駅で合流することになった。

初日は下北駅から尻屋崎まで往復する予定であったが、これもコース変更だ。

車で尻屋崎付近まで移動し、カーサイ周回コースとすることにした。


予定が大幅に変更になり、コースの再設定や昼食の手配などで大忙しだ。

しかしまだよかったのかもしれない。これを知らずに行っていたら大変な騒ぎになっていただろう。


2023年6月6日(火)


準備は整った。あとは全員がちゃんと八戸駅に集合できるかどうかだ。

さすがに青森は遠い。始発電車で東京駅へ向かう。


過去のニューサイから、下北の記事を探したら5件見つかった。(NC139、178、244、351、426)

輪行組、私とU氏は山本進一氏の大ファンだ。今回も記事をコピーして持ってきた。

走った季節、コースは若干違うが、下北半島の独特の雰囲気、世界が伝わってくる。


東京駅から約3時間、八戸駅へ到着。まだ下北半島の入口にも到達していない。

駅を出ると、予定通りカーサイ組2名が待っていてくれた。これで4名全員が無事に揃った。

今回のメンバー紹介
・今回の旅のプランナー「東京のU氏」
・なんとカーサイでここまで来た「静岡のY氏」
・私とは初対面の「青森在住のK氏」この3人は昔からのツーリング仲間。
・そして自分。なんで誘われたのかしら?


ずっと温めてきた下北半島ツーリングが、やっとスタートすることになった。

さっそく移動だ。まだまだ果てしない距離が残されている。

新幹線で3時間、そしてここから2時間以上のドライブだ。


自分は1997年8月に、カーサイキャンピングで下北半島に来たことがある。

その時は時間はいくらでもあったので、車での移動も気にならなかったが、今回は違った。

初日の予定をこなすために、限られた時間で尻屋崎方面へ向かわないといけない。


さらに食事処がほとんどなく、見つけたお店に車の中から予約をする。まあ、いろいろ大変だ。

それにしても下北半島の太平洋側は、驚くほどの原野だ。とにかく道がまっすぐで「何もない」。

行き交う車も皆100km近いスピードだ。走っても走ってもゴールが見えてこない。たまげた、驚いた。


延々走って、ようやく尻屋崎手前のパーキングに到着した。

輪行とカーサイだけでも疲れるのに、Y氏はずっとここまで一人で運転してきた。もう、ギネスものだ。

輪行組はここで自転車を組み立てる。時刻はちょうど12時。さあ、やっと自転車に乗れる!


道路案内図を見ると、ついにこんな最果ての地まで来たか、と感慨深い。

尻屋崎は行ったことがないので、どんな所なのか期待でワクワクする。


まずは昼食だ。200m走ってすぐに食事処へ。「海峡食堂善」、名前がいいじゃないですか。

周辺には食事処が少ないので、ここも結構人が入っている。予約しておいてよかった。


これを食べなきゃダメ、という地元のK氏のお勧めで、全員「味噌貝焼き定食」を注文。

食べ方を教わって、最後は卵でとじて出来上がり〜。なかなかユニークなメニューでしたが旨かった〜。


時刻は13時を回った。いよいよ本当に旅のスタートとなった。

向かうは尻屋崎。下北半島の東の外れだ。尻屋崎は灯台と寒立馬(かんだちめ)で有名な所。
(寒立馬とは青森県東通村の尻屋崎に生息する野放し馬で、青森県の天然記念物に指定されている)


果たしてお馬さんに会えるのだろうか?

海岸線の道、半島特有の寂れた雰囲気が広がる。漁村が次第に寂れてきて、セメント工場が広がってきた。


尻屋崎の入口はこんなゲートが設けられている。そして道路にはこんな工夫がされている。

このゲート、車はセンサーで自動的に開くが自転車は自分でボタンを押さないといけない。


さっそく寒立馬に会えるかと思ったら、どこを見渡しても1頭も見当たらない。

まあ、灯台まで行けばきっと沢山のお馬さんに会えるでしょう・・・と期待する。


寒立馬の保護

地域の歴史と歩んできた寒立馬ですが、 一時、絶滅の危機にも瀕しています。

本来は軍用馬として重宝されましたが、改良が進むにつれて耐寒性・耐久性・粗食性といった能力にも長け、 農用馬としても活躍しました。

しかし、 時代が進むにつれて農業が機械化されると、 農用馬の需要は激減。 寒立馬も平成7年には9頭まで減少し、 存亡の危機に見舞われます。

そこで、 青森県と東通村は平成8年に寒立馬保存対策基金を創立し、民間からの助成も活用し、 施設整備、繁殖・分娩対策、 衛生管理、 放牧管理などの保護対策に乗り出しました。

寒立馬保護への善意は全国から寄せられ、 保護対策も功を奏し、 寒立馬は平成10年には26頭まで回復します。

以後、 自然と向き合いながら適正な管理と放牧地の保全を行い、 自然放牧のバランスを取りながら頭数を維持しています。



天気が良ければ対岸の北海道も見えるのだろうけれど、今日は霞んでいて真っ白だ。

それでも、大きく広がる大海原を横目にしながら走るのは格別だ。


荷物も少なく、初日の足慣らしとしては申し分ない。

車1台通らない、綺麗な舗装路を快適に走る。背後に見えるのは、大間崎方面の海岸線だ。


やがて草地が広がる先に、白い尻屋埼灯台の姿が見えてきた。

本州最北端 津軽海峡を望む白亜の灯台。

本当は、こんな景色を期待していたんですけど・・・

お馬さんの姿はどこにも見えません・・・


皆さん、どこに隠れてしまったのでしょうか?

一緒に写真も撮れるなんて聞いてきたので、残念です。


写真はこちらからお借りしました。
https://aomori-tourism.com/spot/detail_45.html


300円払って灯台の上まで登ってみると、さすがにそこからは絶景が広がる。

津軽海峡と太平洋が交わる尻屋埼灯台からの眺めは、今まで見たことのないダイナミックな景観だ。


ちょうどそこへ観光バスの団体客がやってきて、一気に賑やかになった。

同年代の観光客からはすぐに声をかけられ、自転車旅の説明をするのに一苦労。


素晴らしい景色が広がる尻屋崎。まったく我々だけのための道が続く。

灯台から南へ向かい、ぐるっと周回する。

どこかに寒立馬がいないかと、目を凝らして探してみるが全くその気配がない。

と、そのとき突然現れたのがこいつだ!

道路の左側にいきなり登場して、すぐに姿をくらました。

ビックリして、慌ててカメラの電源を入れてなんとか撮影できたのがこの一枚だ。

一瞬のことでその時は、たぬき? きつね? ぐらいしか判断つかなかった。

帰ってから調べたら、これは「ニホンアナグマ」だとわかった。

どういう生き物なのかよくわからないが、見た感じでは臆病な動物の様に見えた。


おいおい、お馬さんはいないのかい? と諦めていたら、ついに願いがかなった!

灯台で出会える寒立馬とは違う、競走馬のような馬が群れをなして牧場内を疾走している!

道路から遠く離れた所だったので、危うく見逃すところだった。望遠レンズで撮影すればこの通りだ。


おぉ、ちょっと遠くてよく見えないけれど、やはり馬は美しく、そして力強い。

もっとこっちに寄ってこないかなぁ・・・と思っていたら・・・


入口のゲートまで戻ってきたところで、先ほどは1頭もいなかったのだが、なんと2頭が遊んでいるではないか。

すぐに近寄って柵に自転車を立てかけたら、なんと近寄ってきてくれた。


これにはビックリ! こんな決定的な瞬間はないと写真を撮ると、すぐに離れて行ってしまった。

大きな体、太い脚、そして優しい目。こんなに近くまで来てくれて、やっと一緒に写真を撮ることができた。


再び来た道を戻る。帰り道は大間崎方面の眺めが素晴らしい。

海抜0mからは、恐山山地が壁のように立ちはだかる。明日はあそこを抜けて行くことになる。


カシミールソフトで撮影位置からシミュレートすると、山の名前もよくわかる。

釜臥山は878mもある。海抜0mから見る恐山山地はなかなか迫力がある。


20km少々、約3時間の楽しいポタリングだった。初めて訪れた所なので、なにもかも新鮮で心が弾んだ。

当初の予定では、下北駅から尻屋崎までの往復だったが、列車運休のおかげで逆に良かったのかもしれない。


さて、ここでも急遽予定変更だ。

当初は3日目のゴールである大湊駅に車をデポして、むつ市のホテルまで走る予定であった。


しかし明日の朝、ホテルから大湊駅へ行けばいいだけのことなので、このままホテルへ車で直行する。

ということで、ほとんど楽ちんのドライブでホテルへ到着。車があるってホント便利ですね。


チェックインして、一息ついて、シャワーを浴びて、いよいよこの旅最大の楽しみに突入だ。

時刻はまだ17時過ぎ。空も明るく、平日の飲み屋街には誰一人姿が見えない。

こんな時間から飲みに行く奴は本当にいるんでしょうか? そもそも営業しているの? とあちこち歩いてみる。


U氏はすでに事前調査をしっかりしてきたようで、入りたい店の目星はついているようだ。

まず1軒目は「大間まぐろ」と大きく掲げられた「居酒屋 祭」の暖簾をくぐる。

小さな居酒屋かと思ったら中は結構広く、個室がいくつもある。


さぁさぁ、あとは次から次へと海の幸の競演だ。刺身もお店のサービスでこんなに大盛に!

いやはや、とにかく何もかも新鮮で旨いのなんのって! 大間のまぐろ、ホント美味しいですね!

飲んだ飲んだ、1軒目ですでに相当飲みましたよ。


そして2軒目はもちろんここ、「居酒屋 ほそ川」。ドキュメント72時間に登場した、名物女将のお店だ。

中に入るとすでに常連さんがいて寛いでいる。そこによそ者4名が入っていくと空気が変わる。

一人青森のメンバーがいたおかげで、すぐにお店の中もなごみ、楽しい会話が弾む。


常連さんとすぐに打ち解けて話が弾む。下北の現状、課題、問題点・・・

色んな事を色々話した。そうなのか、下北の置かれた現状はこうなのか・・・いろいろと勉強になる。


やはり”ワケあり”横丁は奥が深い。誰でも受け入れてくれるし、皆さん素朴でやさしい。

本州の最果ての地に、こんな温かい飲み屋街があるとは思ってもいなかった。やはり魅力ある”横丁”だ。


料金もリーズナブル。料理も最高、雰囲気も、会話も、おもてなしも、何もかも素晴らしい。

U氏が何としてでもここへ来たかった気持ちがよくわかった。


さあ、明日のことなど考えずに次へ行きましょう。最後は雰囲気を変えておしゃれなバーへ。

恐るべし下北半島、”ワケあり”横丁。こんな店まであるとは驚いた。


日頃飲み慣れないカクテルなんぞを皆さん頼んで、おじさん4人で締めの乾杯だ。

飲んだ飲んだ。今夜は相当飲んだ。まぁ、飲兵衛にはたまらない町ですね、ここは。

距離: 21.4 km
所要時間: 2 時間 52分 54 秒
平均速度: 毎時 7.4 km
最小標高:  0m
最大標高:  44m
累積標高(登り):  120m
累積標高(下り):  120m

(2023/6/6 走行)


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