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そもそもこの旅の始まりは・・・


メイプル耶馬サイクリングロードを走りたい

数多くの自転車道を走ってきたが、ここだけはどうして走りたい自転車道がある。
それは大分県の「メイプル耶馬サイクリングロード」だ。
評判高きこの自転車道は、日本全国の自転車道の中でも特に人気がある。

実は昨年、2022年の秋に行く計画を密かに計画していた。
詳細なプランまで出来上がっていて、あとは日程だけを決めればいい段階まできていた。
そこへツーリング仲間から「国東半島磨崖仏巡り」のお誘いがきた。同じ大分県だ、大いに迷うことになった。

結局、「国東半島磨崖仏巡り」へ行くことに。「メイプル耶馬サイクリングロード」は翌年に延期だ。
そして2023年。秋に行こうと思っていたら、なんと7月の豪雨で自転車道が一部通行止めになってしまった。
なんて不運なんだ・・・と復旧を心待ちにしながら、時々大分県のホームページで様子を伺っていた。

9月になってからだろうか、「メイプル耶馬サイクリングロード復旧」の嬉しいお知らせがあった。
やった!全線通れるようになった。これで今度こそ走ることができる、と急に慌ただしくなった。

それにしても、今年の秋は10月からロングツーリングが続いている。
10月の「関西・九州フェリー旅」。11月の「会津クラブラン」。そして今回のツーリングだ。

かなり雑務が溜まっていて相当忙しい。そしてさらにこのツーリングのプランニングだ。
さてどうする? どこをどうやって走る? どこに泊まる? と頭を悩ませるのであった。


メイプル耶馬サイクリングロード

メイプル耶馬サイクリングロードは、耶馬溪鉄道廃線跡を利用した自転車道で、1982年(昭和57年)に整備されました。鉄道跡を利用しているため、勾配も緩やかで初心者にもお勧めのサイクリングコースです。

県道臼木沖代線(うすきおきだいせん)から山国町守実(やまくにまちもりざね)までの約36キロメートルの「一般県道中津山国自転車道」で、うち本耶馬渓から山国までの約22キロメートルが、山国川を沿うように走る自転車専用道路となっています。

紅葉のきれいな耶馬溪、菊池寛の『恩讐の彼方に』でも有名な「青の洞門」など多くの景勝地を楽しむことができ、鉄道跡を利用したトンネルや鉄橋などバリエーションに富んだサイクリングロードです。
https://nakatsuyaba.com/?introduce=cyclingroad
 



サンライズに乗りたい

(忘れもしない 2013年9月15日 10年前の悔しさをようやく・・・)

昨年も大分の国東半島へ行った。そして先月もフェリーで大分へ行った。またまた今月も大分だ。
なんでこんなに大分に縁があるのだろう、と不思議でならない。
何度も行くということは、それだけ魅力があるところ、ツーリングに適したところということだ。

東京からはかなり距離がある。往復する時間だけでも相当かかる。さて今回はどうやって行こうか?
当然新幹線を使って大分県の中津駅まで行こうと考えるが、それでも到着は11過ぎだ。
走り出すのは12時になってしまう。それではどこか途中で一泊せざるをえない。

なんとか「メイプル耶馬サイクリングロード」を一日で走り終えたいのだが・・・
もっと早く現地に着くにはどうしたら・・・
そうか、サンライズだ! 
これを使えばもっと早く大分に着けるじゃないか!

思い出すのは10年前。
A寝台シングルデラックスのプレミアムチケットを入手したにもかかわらず、台風で運休になってしまった。

あの時の悔しさはいまだに忘れていない。なんとかリベンジしたいとずっと機会を待っていた。
今回、まさかサンライズが利用できるなんて夢にも思っていなかったので、自分でも衝撃の喜びだ。


まずは何と言ってもサンライズの寝台券を手に入れないことには始まらない。
予約サイト「e5489」で何度も挑戦するが、A寝台だけは超プレミアムチケットで手に入らない。
しかし行きの「東京→岡山 サンライズ瀬戸 B寝台シングル」は意外とあっさり手に入れることができた。

ただし喫煙室だ。まあ、この際乗れるだけで有難いので、文句も言わず予約する。
じゃ帰りもサンライズ、乗っちゃう? 
と出雲市からの予約をその後数日試していたら、キャンセルが出てこちらもゲットできた。

しかしまたしても喫煙室だ。しかたない、これも我慢するしかないだろう。
ということで、なんと往復サンライズに乗れることになった。
ここからツーリングの詳細が決まっていくことになる。


プランニングは悩みに悩んだ。相当悩んだ。
第一の目的は「メイプル耶馬サイクリングロード」。そしてサンライズに乗ることだ。

旅の最初と最後は決まったけれど、その途中はどうする? 散々悩んで考えて、やっと決まったのが下の図だ。
こうして図にしないと自分でも何が何だかわからないほど、移動と輪行だらけだ。


全行程の概要(4泊5日)
1.東京から岡山までサンライズ瀬戸に乗車(車内泊)
2.岡山から新幹線、ゆふいんの森を乗り継いで日田へ
3.日田から峠越え、メイプル耶馬サイクリングロードを経て中津へ
4.中津からソニック、新幹線で広島へ(ホテル泊)
5.広島から江津まで芸備線・旧三江線を辿って一泊二日で走る(旅館泊)
6.江津からスーパーまつかぜで出雲市へ
7.出雲市からサンライズ出雲で東京へ(車内泊)



寝台券が手に入れば一安心。あとはその他の切符を購入すれば旅の準備は整う。
今回の旅、あまりに移動距離が長いため、ジパング倶楽部が大活躍だ。
JR東日本ではないため、ネット購入することはできず、手書きのJR乗車券購入証で購入だ。

もう何度も使っているので、書き方もすっかり慣れた。
さて、このままみどりの窓口でこの用紙を提出して、果たしてちゃんと切符を手配してくれるだろうか?

担当者のスキルによって、何か間違いがあっては大変・・・と心配になる。
そこで一生懸命作った全体図(上図)を一緒に持って行くことにした。


まずは、この全体図を提出して、この旅の概要を説明する。
すでにサンライズの寝台券は持っていて、必要な切符は、ここの部分のこの切符、ということを説明する。

「うわ、凄いですね!」「イメージがよくわかります」「助かります!」と絶賛されました。
「ところでこの駅は何て読むのですか?」と逆に聞かれた。「江津駅」が端末で表示されないみたいだ。
「”ごうつ”です」と教えてあげると、「あ!出ました出ました。ありがとうございます」と感謝される。

そうでしょう、いくら何でも全国の駅名を知っているわけではないから、読み方が違えば発券できないでしょう。
やはりこの図を作ってきて大正解だった。


「これ役に立ちましたか?」と聞いてみると、「とっても役に立ちました。勉強になりました」ですって!
もうこちらも感激。作った甲斐がありました。次回もこの担当者狙いで行きます。
手書きの乗車券購入証だけだと、どこをどう巡ってくるのか、担当者もさっぱりわからなかったでしょう。

担当者も、頭の中で色々な経由地を考えながら発券処理をするので、この図は相当役に立ったようだ。
発券された切符は全部で8枚。座席も全て最後列の窓側を指定。
これだけを間違いなく発券するのはやはり大変だ。


サンライズの寝台券は「e5489」というJR西日本ネット予約のサイトで予約した。
乗車する際には当然切符を発券する必要があるが、これがまた非常に複雑だ。
JR東日本の駅で発券できるのは、JR東海の端末がある駅だけだ。

東京近辺では東海道新幹線の駅でしか寝台券を受け取れない。(東京駅、品川駅)
まあネットで予約できるようになったので、それぐらいの不便は我慢するしかない。
さっそく東京駅へ行ってサンライズの往復の切符を端末で発券してきた。ここまではとても簡単。

ただし、何か変更したい時はいちいち駅に行かなければならないのは面倒だ。
というのも、発券後すぐに同じ寝台の禁煙室に空きが出た。
やはり喫煙室に乗車した人の意見を調べると、たばこの臭いがする、消臭剤が必要、なんて意見も多少ある。

ずっと密室にいるわけだから、絶対に禁煙室の方がいい、という意見ももっともだ。
できれば禁煙室に変更できれば・・・とずっと狙っていたところ、出た!


これはもう切符を持って「東京駅」「品川駅」どちらかに行くしかない、とすっ飛んで行ったのだが・・・
品川駅・・・窓口はインバウンド客で大行列。すぐに東京駅へ向かう・・・同じ。
ダメダこりゃ・・・どれだけ待てばいいんだ? 待っている間に誰かに取られちゃうよ。

そうだ、新横浜駅があるじゃないか! とひらめく。
ここより空いているだろう、と電車に乗って向かう。もう電車賃なんか気にしてはいられない。


新横浜駅へ移動する最中にも、スマホで空きがあることを確認しながら新横浜駅に到着。やはり混んでいない!
なんとかこのまま誰にも取られずに・・・と願って自分の番になった。ドキドキ・・・
そしてすぐに、取れました! お見事! 新横浜駅へ来て大正解!

その後、帰りのサンライズも運よく空きが出て、今度は直接新横浜駅へ行って同じように禁煙室をゲット。
スマホの画面は、すぐに空き状況が変わり、その後両方埋まってしまった。やはり凄い争いだ、サンライズは。


おぉ!禁煙室に空きが出た!
急いでJR東海の窓口へ行かないと!


ドキドキしながら、順番を待つ・・・
やりました!禁煙室獲得!


するとすぐに、喫煙室も埋まりました!
やはり人気が高いですね。


結局、サンライズの切符は以下のように変更することができた。(手数料1回だけ無料)
行きのサンライズ瀬戸は、東京駅で発券の翌日に、新横浜駅で変更ができた。

帰りのサンライズ出雲は、東京駅で発券10日後に、新横浜駅で変更ができた。
サンライズでいい席をゲットするには、乗車日直前まで諦めないことですね。結構キャンセルが出ます。

後日
座席
変更

後日
座席
変更


2023年11月20日(月)


今回のツーリングには多くの本や資料を参照した。
ツーリングの善し悪しは、どれだけ事前に一生懸命になれるかどうかだと思っている。
本気で考え、本気で調べ、本気で準備したツーリングに失敗はないと思っている。

自転車に対する思い、ツーリングに対する愛情、目標に向かう情熱・・・こういう気持ちを忘れたらおしまいだ。
旅を楽しみ、素晴らしい思い出を残すために準備は欠かせない。

行く前からすでに旅情たっぷりな日々を過ごしてきた。ようやく旅立ちの日がやってきたか、という感じだった。
都会は帰宅の時間をむかえる頃、自分は輪行袋を抱えて東京駅へ向かう。

人様が仕事を終え、帰宅へ向かう時間に、コイツは旅立とうとしている。そんな視線を少し浴びる。
こんな時間の旅立ちも最近は珍しい。ツーリングのほとんどが早朝の出発だ。

「サンライズ瀬戸・出雲」の旅 

「旅と鉄道」
2024年1月号 

「旅と鉄道」 増刊
2023年11月号 

「九州の峠」

「旅と鉄道」
2022年7月号付録 


今回は本当に久しぶりの夜行寝台列車だ。
昔は、上野駅、新宿駅、東京駅、色々な夜行列車があった。
久しぶりに夜の旅立ちをむかえて、本当に懐かしい気持ちに満たされた。

ブルートレイン「富士」に乗った時もそうだった。
「441M」「信州6号」「八甲田」「津軽」「能登」「銀河」に乗った時もそうだった。
夜行列車の魅力は、本当に自分で乗ってみないとわからない。

今宵は、本当に、本当に久しぶりにその思いを肌で感じた。
サンライズが入線してくると、多くのカメラマンが現れる。
邪魔だ邪魔だ、俺の前に出てくるなって! みんな写真を撮るのに必死だ。(自分も)


やはり別格ですね、サンライズは。貫禄が違うし、たたずまいも違う。本当の「横綱」だ。
年配者が必死に写真を撮っている。もう、旅心満載の人たちが集まってますね、サンライズには。


初めて乗るサンライズ。自分もドキドキだ。
いったい車内はどうなっているのだろうかと、不安と興味で一杯だ。

輪行袋は室内に入れないといけないと思っていたら、何のことはない、デッキで十分じゃないか!
フォーク抜き輪行なら、室内に入れる必要はないかも。(車両によってちがうのかな?)
今回は室内に入れず、デッキに置いて広々と部屋を使いました。


今回乗るサンライズ、「B寝台シングル」という部屋だが、自分がゲットしたのは「平屋」だ。
行きも帰りも「平屋」だ。ところで「平屋」ってなに?
多くのサンライズの車両は2階建てだ。1階の人は上に2階の人がいるということ。

平屋というのは、上に誰もいないということ。なので、天井が高い、ということだ。
B寝台シングルでも、平屋とそうでない人がいる。じゃ平屋の方がいいじゃん、とはならない・・・
平屋の位置というのは車両の端だ。モーター音、車軸の揺れなどがかなり大きいそうだ。(マニアはたまらない)

静かに、揺れもなくすごしたい人には不評らしい。(自分にはそんなことどーでもいい)
他のB寝台シングルより広く、天高もあるというだけで嬉しいばかりだ。

画像:「SUNRISE EXPRESS の部屋」よりお借りしました。 
http://iamreck.g2.xrea.com/ec285/sekiban.html 


何もかもはじめてのサンライズ。こんな夜行寝台列車に乗ったことがない。
なんたって昔のブルートレイン当時の夜行しか経験がない。
車内は何もかも素敵に作られている。通路も見事な造りだ。部屋は必要かつ十分な広さだ。

1列車で、自分のためにこれだけの空間を用意してくれたことだけで感激だ。
なんたって、足を伸ばせる十分な広さ。大きな窓、照明、空調、小さなテーブル、着替え。
ほんの小さなビジネスホテル並みの環境だ。信じられません、こんな列車に乗れるなんて。


輪行袋を持って通るには狭い。
最初の乗車時が混雑する。


B寝台シングル平屋、十分な広さだ。
天井が高く快適だ。


大きな窓からホームが丸見えだ。
都会を抜けるまではちょっと恥かしい。


ブルートレイン 寝台特急「富士」

夜行寝台列車にはまったのは、やはりこのツーリングからだった。
1975年8月、3人で九州・沖縄キャンピングに出かけた。そのスタートが「寝台特急 富士」だった。

切符を手に入れるだけでも大変だった。
荷物を持って駅に行くのも大変だった。乗るのも大変、降りるのも大変だった。

とにかく何もかもが未知の世界のツーリングだった。その始まりが「富士」だった。
夜行寝台列車には、必ず何かある。きっと旅のヒントにつながる何かがあると今でも思っている。



さて、現代の夜行寝台列車はあまりに快適だ。何もかも快適でスマートだ。
窓の外に広がる光景は、ガラス一枚隔てただけで、あまりに温度差が違いすぎる。
向かいのプラットホームには、仕事帰りの疲れ切ったサラリーマンが佇んでいる。

どの顔も皆暗く、覇気がなく、楽しそうでない。
逆にこちらの乗客は、どの顔も皆活気があり笑顔に満ちている。

そういえば、サンライズの入線を待っている時に、一人のサラリーマンに声をかけられた。
東京駅から湘南方面へ帰るらしい。

話を聞けばサイクリストだそうで、短時間だったけれど会話すると、とにかくうらやましそうだった。
手には車内で食べるおにぎりを持っていて、この時間からおにぎり食べて、帰宅か・・・と考えてしまった。

「何に乗ってらっしゃるんですか?」と聞かれ、「トーエイ」ですと答えると、「トーエイ!ですか!」と。
それほど驚くことはないけれど、とても感激した様子で電車に乗って行った。


用意してきた物全てを取り出して、最高の夜行旅を満喫する。
流れる夜景を見ながら、「遅くまで大変ですね、頑張ってください」とビルに向かって声援を送る。
とにかく都会の光が美しすぎる。すれ違う列車の車内の明かりがまた美しい。

あまりに違う、このサンライズとすれ違う通勤列車。
人様が働いているその隣で、こんな贅沢な人たちがいたなんて。

持ってきた昔のスマホで地デジを見る。コピーしてきた資料で予習する。三脚使って写真撮影する。
もうやることいろいろありすぎで、なかなか落ち着かない。

寝るのが惜しくて、いつまでも車窓から外を眺めていた。
やっぱりいいね、夜行寝台は。何物にも代え難い魅力に溢れている。
こんな感じで旅は始まったが、もう初日からテンション最高潮だ。

 

(2023/11/20〜21 輪行)


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