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2023年11月21日(水)

道の駅やまくに 〜 中津駅


昼食を短時間で済ませ、いよいよ期待の「メイプル耶馬サイクリングロード」が始まる。

ここを走りたいと思ってから何年たっただろうか。

行くのなら紅葉の時期にを狙うしかないと、ずっとその時を待っていた。そしてやっと願いがかなった。


スタートはよくある自転車道と同じような雰囲気だ。道標もしっかり整備されている。

「中津駅まで35km」の表示。うーん、いいね、これから35km、たっぷり楽しませてもらいましょう。


豪雨の被害でどうなっているのかと心配していたが、走り出してみてもそれほど気にはならない。

綺麗な舗装路が続いていて、この先どんな景色が広がるのかと楽しみだ。


と安心していたら、すぐに工事現場だ。この辺り、豪雨で護岸がかなり削られている。

自転車道もなんとか走れるように仮復旧している。ありがたい、このおかげで走ることができる。

まだまだ荒々しい状況が川岸に広がっている。いつもならもっと穏やかで美しい眺めなのだろうな。


迫力ある岩肌が間近に迫る中を自転車道は進んでいく。なかなか味わえないダイナミックな景観だ。

路面は落葉が散乱しているが、晩秋の気配をしみじみと感じさせてくれる。


「メイプル耶馬サイクリングロード」は「耶馬渓鉄道の歴史」だ。

1913年に開業したこの鉄道は、1975年に全線廃止となった。その鉄道跡を利用したのがこの自転車道だ。

自分が生まれるはるか前の時代の鉄道だ。まったくその存在も知らず、見たことも、聞いたこともない。


全国にはこのような廃線跡が数えきれないほどある。

幸いなことに、こうした廃線跡が少しではあるが自転車道として整備されている。


歴史的に価値ある遺跡を、有難く自転車で辿れることに感謝の念で一杯だ。

実際に自分の脚で鉄道跡を辿ると、ほんのわずかであるけれど、当時の様子が浮かんでくるようである。


自転車道は、集落を通過していくごとに駅名の表示が現れる。

ここを鉄道が走っていたのか、ここに駅があったのか、どんな様子だったのだろう・・・と思いにふける。

耶馬渓鉄道の歴史
https://www.city-nakatsu.jp/doc/2014060400012/



こんな快晴の日に、誰にも会うことがないのか・・・と思っていたら、なんと親子連れがやって来た。

お父さん、お母さんと、その後に補助輪を付けた子供が走っている。なんだろう? 近所の人だろうか?

天気もいいので、きっと親子でお散歩だろうな、と横から挨拶して追い抜いて行った。


岡山県の「片鉄ロマン街道」もよく整備された自転車道だが、またちょっと雰囲気が違う。

この山国川に沿った景観は、他の自転車道にはない山深さや渓谷美、田園風景を見ることができる。


「中摩駅」跡には、こんな豊かな里山風景が広がっている。

絶好の秋日和に、ここで何も考えずに寛いでいたら、どんなに疲れた人もきっと心が癒されると思う。

できればコーヒーでも淹れてゆっくりしたい所だ。


こんなポスターが貼ってある。読んでみると、何やらスタンプラリーをやっているらしい。

調べてみたら「サイクリングロードスタンプラリー」なる催しで、豪華商品がもらえるらしい。

なかなか面白そうな企画だ。ぐるっと名所を巡れて、景品ももらえれば一石二鳥の楽しい企画だ。


そこへ先ほど追い抜いた親子がやって来た。休んでいるとすぐに追いつかれる。

お父さんとお母さんは電動自転車だけど、子供は”ガラガラ”と音を出しながら必死に漕いでいる。

いくら何でもこりゃ子供が大変そうだ。いったいどこまで行くのだろう?


自転車道には多くのトンネルが現れる。廃線跡のトンネルは実にいい。

ちょうど自転車にピッタリのサイズ感だ。広くもなく、狭くもなく、そして長すぎない。

このトンネルがあるおかげで、廃線跡の自転車道の魅力が一段と増す。


名勝耶馬渓「一ツ戸城山の景」で小休止する。

ここは「名勝耶馬渓66景」の一つだ。耶馬渓には他にも多くの名勝地がある。

66景全てを訪ねれば、きっと素敵なツーリングになりそうだ。

https://yabakei.com/landscape/66spots/


せっかくなので、アクションカメラを手すりに固定して、動画で自撮りしてみた。

一人で走っているとなかなか自分の姿を撮ることができない。

いままで自撮りするには、デジカメのセルフタイマーが当たり前だった。


そこへスマホとリモートシャッターという組み合わせで、さらに高度な撮影ができるようになった。

そして今現在は、高解像度のアクションカメラで、動画を撮って後で編集という手法に変わった。

動画なら撮影の失敗がない。好きなシーンを好きなだけ編集できる。とにかく画像が美しい。便利だ。


次々と変化していく「メイプル耶馬サイクリングロード」。好天に恵まれて、文句なしの晩秋ツーリングだ。

すると前方にまたまた先ほどの親子が登場だ。今度は自転車を降りて地図を見ている。

「どうしましたか?」と声をかけてみると、「xxxってこの辺りですか?」って聞いてきた。


話を聞くと、この親子は先ほどのスタンプラリーに参加しているらしく、この辺りにポイント地点があるらしい。

「いやぁ、ちょっとわからないですね」と答えるが、お父さんはすでに先へ行ってしまっている・・・


この子を連れてポイントラリーって、いったい何キロ走るつもり?

車を置いて走ってきて、戻る途中だっていうけれど、もうこの子は疲れ切った表情だ。

「この補助輪付じゃ大変ですよ・・・」と言ってはみたけれど、さてこの親子無事に帰れたかな?


長閑な山間に、次々に駅が現れる。しかし先ほどの親子と別れてからは、全くの無人だ。

民家がぽつぽつと点在しているが、住民の姿も生活音も聞こえない。

それでも、駅跡周辺は綺麗に掃除されていてとても気持ちがいい。


再び自撮りに挑戦だ。どうでしょう、なかなかいいアングルから撮影できた感じだ。

デジカメでこうした写真を撮るには、相当工夫しないと撮れないが、動画なら何も考えなくていい。


トンネルも同じような作りではなく、形も雰囲気もバラバラだ。そこが楽しくて面白い。

しかしちゃんと整備されているので、危険な所はなく安心して走ることができる。


15時を過ぎて、ようやくサイクリストが現れ始めた。皆さん気持ちよさそうに走り抜けていく。

観光客のレンタサイクルなのか、それとも地元の人なのかわからない。


緩やかに下ってくるにしたがって、紅葉が一段といい色になってきた。

この美しい秋景色を待っていた。本当に静かで美しい「メイプル耶馬サイクリングロード」。


ちょっと長めのトンネルが現れた。実にいいカーブだ。なんて味のあるトンネルなのだろう。

しっかりと照明が整備されているのでトンネル内も明るい。

せっかくなので、VOLT800で雰囲気を出して撮影だ。いいねぇ〜、本当に素敵なトンネルだ。


この辺りがコースの中盤。すっかり景色に魅了されて、もうご機嫌だ。

ずっと緩やかな下りのコースのおかげで、余裕を持って景色を楽しむことができる。


ガードレールに「メイプル(カエデ)」が描かれている。

断崖絶壁の数々の岩肌とともに、自転車道の名前通りの、
美しい秋景色が渓谷に広がってきた。


美しい橋脚の「第二山国川橋」を渡る。自転車のために整備された、極上の橋だ。

サイクリストでよかった、と本当に思えるほど美しい景観に囲まれた橋だ。


トンネルはまだまだ連続する。このトンネルは・・・、次のトンネルは・・・と心弾む。

一直線のトンネルより、カーブしているトンネルの方がいい。

嶺方峠と同じだ。どんな出口が待っているのか、その期待だけでワクワクする。


再びサイクリストが現れ始めた。

外人さんをはじめ、若いカップル、年配のご夫婦など様々だ。

それにしても皆さん、なんていい笑顔なのでしょう。本当に気持ちよさそうだ。


再び静寂の世界が訪れる。本当に価値のある、贅沢な時間を過ごすことができる自転車道だ。

やはりここは秋に来なければだめだろう。この美しい渓谷美を紅葉とともに味わうのが最高だ。


だいぶ日も傾き始めた。そろそろ自転車道も終盤へ向かう。

それにしても、全線に渡って素晴らしい道筋がずっと続いている。

やはり評判通り、そして期待通りのコースであることは間違いない。


かなり民家も増えてくると、小さな集落が現れてくる。

道幅も広くなると、その先に「耶馬渓平田駅」跡が現れる。


「耶馬渓平田駅」跡は、この自転車道の中でも一番立派で、整備されている。

トイレもあるし、昔の写真も展示されている。

あらためて写真をみると、本当にあの橋を鉄道が走っていた事を実感する。


冠石野(かぶしの)駅跡付近も素晴らしい景観だ。

こんな素敵な道がどこまでも続いていて、本当に文句なしの自転車道だと思う。


いよいよ最後の目的地「青の洞門」が近づいてくる。禅海橋(ぜんかいばし)を渡って、山国川の対岸へ出る。

狭い歩道を押して歩いていく。迫力ある大きな岩のトンネルを抜けていく。


そして、再び訪れることができた「青の洞門」。なんと48年ぶりの再訪だ。

48年も過ぎればすっかり様子も変わってしまっただろうと思っていたが、ほぼ同じだ。


立派な石碑に変わったけれど、道路の様子も、洞門も昔とほぼ同じだ。凄いことだ。

約半世紀も変わらぬ景観、そして48年も同じ趣味を続けているサイクリスト。どちらも凄いね!


青の洞門の先にもこんなトンネルが現れる。時にはトラクターが走ってくるのでビックリする。

最後の最後まで多くのトンネルが続き、本当に飽きの来ない魅力的なコースであった。


「メイプル耶馬サイクリングロード」はここから中津駅へ向かうが、自分はコースを外れて山国川へ出る。

フィナーレは、山国川の土手沿いに最後のエンディングを迎えようという作戦だ。


夕焼けに空が染まり始め、次第に暗くなり始めてきた。

この土手沿いの道も、素晴らしい路面と、のどかな風景に囲まれて、最高に気持ちのいいフィナーレだ。

中津駅 〜 小倉駅 〜 広島駅


17:20 予定通りの時刻に中津駅に到着。整備されたコースのおかげでトラブルなく走る事ができた。

さあ、まずは無事に初日を終えることができた。しかし安心してはいられない。


大移動の開始だ。今度は明日のために、中津から広島へ向かう。

18:32 中津駅からソニックで小倉駅へ。19:15 小倉駅からのぞみで広島駅へ。


20:00 広島駅到着。速い、やっぱり新幹線は凄い。あっと言う間に広島までやってきた。

今日の宿はビジネスホテルだ。

もともとこんなスケジュールだから、時間が自由になるビジネスホテルが最適だ。


このホテルの売りが「広島駅直結」ということ。おぉ、それは助かる。輪行袋抱えて歩かなくて済む・・・

と、大喜びしていたのだが、とんでもない! 確かに地下通路でつながってはいるが、その長いこと・・・

何分歩いただろうか、地下で迷い、入口で迷い、結局とんでもない苦労してやっとチェックイン・・・疲れ果てた。


すぐに買い物にでかけ、近くのコンビニでやっと食事を手に入れる。

ホッとする間もなく、風呂、洗濯、食事、そして明日の準備と大忙しだ。

まあ仕方がない、こんなハードなスケジュールを組んだ自分が悪い。


しかし、なんて充実した毎日なんだ。一瞬の無駄もない。そして全て完璧に予定通りだ。

ここまで100点満点の出来だ!

 

距離: 60.8 km
所要時間: 6 時間 1分 41 秒
平均速度: 毎時 10.1 km
最小標高:  23m
最大標高:  463m
累積標高(登り):  492m
累積標高(下り):  552m

(2023/11/21 走行)


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