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2023年11月22日(水)

広島駅 〜 井原市駅 〜 三次駅


ビジネスホテルは、朝早くから朝食が食べられるので、今回のような旅にはちょうどいい。

7時には朝食を食べ終わり、チェックアウト、すぐに広島駅へ向かう。

昨日痛い目に合ったから、なるべく余裕を持って駅に向かうことにした。


平日早朝の広島駅は、大都会の通勤ラッシュのど真ん中。地下通路も通勤客で一杯だ。

人々が、次々と自動改札に吸い込まれていく。そのちょっとした隙間を狙って自分も自動改札を通り抜けた。


「自動改札をパスモで通り抜けた」

なんてことはない
、いつもと同じ感覚でパスモを使ってしまった・・・またやってしまった・・・

7:53 三次行きの芸備線に乗る。よかった、これに乗れれば一安心、のはずだったのだが・・・


列車が発車してすぐに気が付いた。降りる駅は確か無人駅・・・パスモで下りられるのか?

どの駅もとっても小さなローカル駅だ。タッチ式の改札などなさそうだ・・・うわ、またか・・・

昨年、津山線に乗った時と同じだ。パスモで乗車しても下車の処理ができないと、その後パスモが使えなくなる。


悩んいると、ちょうどいいタイミングで車掌さんがやって来たので聞いてみた。

やはり心配した通りで、パスモでは処理できず、「有人のタッチ式機械」がある駅で処理しなければダメだ。

それじゃ芸備線の三次駅に立ち寄るので、そこなら大丈夫かと聞いたら、三次駅もダメだと!


なんだって、じゃいったいどの駅へ行けばいいんですか? 

それじゃ江津駅なら? 江津もダメ? えぇ〜参った・・・最後の頼みは出雲市駅だ。なんてこった・・・


9:10 「井原市(いばらいち)」駅で下りる。

ご覧の通りの物凄いシンプルな駅。駅というより、物置小屋程度の大きさだ。驚いた。

これじゃパスモで下りられるわけがない。とりあえず、ここまでは運賃払わずタダとなった。


あまりのローカルな風景にしばし呆然とする。トイレも駐輪場もない。果たして乗る人はいるのだろうか?

昔の写真をみると立派な駅舎があったが、いつからこんなにシンプルになったのだろう?


しばらく列車もやってこないので、のんびりと組み立て始める。

だれも来ないので「広い駅舎」を贅沢に使って組み立てた。


すると、なんと年配の女性が一人現れた。10:05の広島方面への列車待ちだ。おぉ、いるんだ、乗る人。

それにしても、この時刻表をみるといかにローカル線なのかがよくわかる。

一本乗り損ねたら、そりゃ大変な事になる。なので、今日の輪行はとても重要だった。


今日からは芸備線・旧三江線に沿ったツーリングが始まる。

サンライズに始まった今回のツーリングの主役は「鉄道」と「川」だ。


行きも帰りもサンライズに乗車するということで、ゴールは出雲市駅と決まっている。

そこまでどうやって行くかと頭を悩まして考えたのが、この芸備線・旧三江線のコースだ。

輪行をうまく使えば、瀬戸内海から日本海まで、鉄道と川に沿った旅ができる。


走り始めは、低い山に白い靄がかかって青空が見えなかったが、次第に太陽が顔を出してきた。

小さな川に沿って芸備線沿いに三次駅を目指す。


鉄道沿いに走るのは大好きだ。

線路は必ずゴールまで繋がっているから、何も考えずに走っていれば目的地に着ける。

それに駅ごとに小さな町があるし、補給地点、休憩地点にもなる。そして最悪そこから輪行でエスケープできる。


鉄道沿いのコースは、自転車にとってとてもリスクが少ないと言える。

向原駅手前の踏切だ。列車がやってきたら素敵な写真を撮れるのだが、あの時刻表では期待薄。


事前にコンビニの場所をしっかり調べてGPSにセットしておいたので、この先のコンビニに立ち寄る。

なかなか食料を手にいれるのも大変な所なので、こうした準備は欠かせない。


のどかな田園地帯をのんびりと行く。道路の片隅には、こんなユニークな置物も。思わずパチリ。

広々とした農耕地を行くと、何やら立派な記念碑に出会った。

「小原地区 圃場整備記念碑」という石碑だ。参加戸数173戸、総事業費7億6千8百万円 と書かれている。


地域が一体となって、田畑、原野、道路、水路を整備した記念碑だ。

なるほど、だからこれほど綺麗に整備されているのか。皆で力を合わせ生活していることがよくわかる。


戸島川沿いに、気持ちのいい桜並木が続いている。桜の咲く季節には、さぞかし絶景だろうな。

誰もいない静かな土手道をのんびりと散歩する。あぁ、なんて穏やかな昼下がりなのだろう。


戸島川はその先で江の川に合流する。「一級河川 江の川」の大きな標識がとにかく目立つ。

さあ、いよいよこの川に沿って二日間旅をすることになる。ここがある意味スタート地点かもしれない。

時刻はちょうど12:00。まずはここで昼食にして、後半は江の川に沿って鉄道巡りの始まりだ。


それにしても今日も文句なしの秋晴れ、快晴だ。

江の川を前に、芸備線の線路を眺めながら土手に座り込む。日差しが暖かく、もう幸せ・・・


コンビニで手に入れた「燻製風味煮玉子」をいただく。美味しいですねぇ〜これ。気に入りました。

すると、どこからか赤トンボが飛んできて、静かに足に止まった。こりゃチャンスと逃げないように写真を撮る。

しばらくじっとしていて、何だかとっても居心地がよさそうだった。秋ですねぇ〜


気持ちよくて、ゴロンと横になるともう天国だ。

そこへ芸備線の列車がやってきた。滅多に見れない貴重な姿なので、しっかりとビデオに納めておいた。


すっかり満腹になって走り出す。

いいランチタイムだった・・・と喜んでいたら、その先にこんな素敵な東屋があった・・・

なんだよ、もう少し頑張ればここでさらに至福の時間を過ごせたのに、と悔しがる。


江の川の土手を、秋景色を眺めながら気持ちよく走る。行き交う人は誰もいない。

それではと、ネックストラップのアクションカメラを手持ちに代えて自撮りしてみる。

ちゃんとした棒ではないので、フニャフニャと曲がってしまってうまく撮れない。まあこんなもんでしょう。


農作業をしている姿も全然見れない。前も後も、たった自分ひとりだ。

ほぼフラットな道は実に快適だ。空気圧も高めで、ちょっとペダルを回せばどこまでも転がっていく感じだ。

緩やかな江の川の流れを眺めながら三次駅を目指す。


江の川に合流してからここまで約20km、実に気持ちのいいコースだった。

車とほとんど交わることもなく、まったく自転車のための道であるかのような快適さだった。

まず今日の前半戦は、芸備線に沿ったコースを無事に走り終えることができた。


旧三江線巡り  前編(三次駅 〜 作木口駅) 10駅


今回の
ツーリング、帰りのサンライズに乗るためには出雲市駅がゴールとなる。

そこで芸備線、旧三江線に沿って江の川沿いに走ろうと考えた。

井原市駅から三次駅までやってきた。今日これからは、旧三江線の駅を巡りながら本日の宿へ向かう。


旧三江線は、路線距離で108kmもある。35ある駅を一日で走りきることは当然無理で2日がかりだ。

1泊2日の旧三江線ツーリング、ここからは今日の宿、作木口駅そばの旅館まで10駅の旅になる。


三江線ウィキペディアより)

三江線(さんこうせん)は、かつて島根県江津市の江津駅から広島県三次市の三次駅までを結んでいた
西日本旅客鉄道(JR西日本)の鉄道路線(地方交通線)。
2018年(平成30年)3月31日をもって旅客営業を終了し、翌4月1日付で全線廃止となった。



1. 三次駅みよしえき ) ●14:50着 14:55発

旧三江線巡りのスタートは三次駅から。まずは、パスモの処理をもう一度確認しようと駅の窓口へ向かうが・・・
あれ?閉まってる!貼り紙をみると、何だか指定の時間しか窓口が開かないらしい。省エネだなぁ・・・
なんだよ、この駅なら駅員さんに詳しく聞けると思ってきたのにいないのか? 
待合室にいたお客さんに「駅員さんいないんですかね?」と聞いてみる。

「中にはいると思いますよ」というのでインターホンを押してみた。
すぐに駅員さんが出てきてくれて、事情を話すと、やはり車掌さんの言った通りで、この駅も、江津の駅もダメだそうだ。
しかたない、最後の出雲市駅で処理しもらうことにしよう(それでもダメだとどうなるのかな?)
ということで、こんな顛末で三次駅をスタートした。

2. 尾関山駅(おぜきやまえき) ●15:10着 15:13発

さて、旧三江線の駅巡りはいったいどんな感じなのだろうか。
事前に何も調べてこず、ただ駅の位置をGPSにセットしただけだ。まずは街中を抜けて尾関山駅へ。
すぐに駅は見つかった。駅舎もしっかり残されているし、写真も飾られいる。
窓には「ありがとうJR三江線」の掲示と、何枚かの写真が貼られていた。なんだか、もうこれだけで胸が一杯になる。

駅には、車椅子の高齢の女性を連れた介護の方が車で来ていた。二人は静かに、じっと線路の先を眺めていた。
何も会話せずしばらく眺めた後、車に戻っていった。
何だか、いきなり感動的なシーンを見てしまったようで、こちらも胸が熱くなる思いだった。


3. 粟屋駅(あわやえき) ●15:30着 15:33発

江の川は広く、そして雄大だ。眺めているだけで心が癒される。
粟屋駅は車道からちょっと入った所にあった。注意して探さないと通り過ぎてしまうような感じだ。
駅にはホームもレールもしっかり残されている。今にも向こうから列車が走ってきそうな感じだ。

 
ホームの待合所には、粟屋駅の思い出がたくさん展示されていた。
一つ一つの写真を見ると、なんて美しい自然に恵まれた所だったのだろうと感じる。
もったいない、本当にもったいない、もっと早く来るべきだったと思うばかりだ。


レールはほとんどが残されているが、踏切部分はレールが撤去されている。
錆びたレールと「立入禁止」の看板が、廃線跡を物語る。
交通量は全くない。車1台通らない。もちろん人の姿はどこにもない。


4. 長谷駅(ながたにえき)  ●15:44着 15:47発

「昭和44年、粟屋小学校北分校の廃校に伴い、長谷集落の子供は7キロ離れた小学校に通うことになり、仮乗降場として誕生したのが長谷駅です」(三江線クルーズより)
三江線の中で、唯一通過駅が設定されている駅だ。道路から見ると、全く”駅らしくない”駅だ。

上記のような事情だけに、子供たちの登下校にしか利用されなかったのだろう。
こうした歴史を知ると、この地域の生活感が伝わってくる。
階段を登っていくと、赤茶けたホームが残っていた。レールも枕木もしっかり残っている。
かつては、このホームを子供たちが賑やかに列車を待っていたのだろう。その姿が目に浮かぶ。


ますます秘境感が深まっていく。周囲の雰囲気は、もはや現代の姿はどこにも感じられない。
「廃墟」とまではいかないが、何もかもが長い歴史を終えて朽ちていく姿を現わしている。
こんな大河のすぐ脇を三江線は走っていたのか・・・凄い所に鉄道を敷いたものだ・・・
どれだけの費用と時間と人力を費やしたのだろう。その足跡が目の前にしっかり残っている。


5. 船佐駅(ふなさえき)  ●15:58着 16:04発

走っていると「船佐駅」とかかれた小さな小屋が見えた。バス停も設置されている。
ホームへ上がってみると、かなり雑草に覆われているが、まだまだしっかりとレールが残っている。
レールがずっと先へ続いてフェードアウトしていく景色が実に旅情的だ。しかし、物悲しい。


小屋の中には思い出の写真が飾られている。そして記念のスタンプが置かれていた。
こうして廃線跡巡りを楽しむ人も多いのだろう。こんなちょっとした気配りが実に嬉しい。


6. 所木駅(ところぎえき)  ●16:08着 16:12発

所木駅は、道路からちょっと下った先にあった。建設会社のすぐ裏手が駅になっている。
すでにホームもレールも見えなくなるほど草や木に覆われてしまっている。
立入禁止の表示がなければ、よく見ないと駅の存在に気が付かないかもしれない。
当時でも、ほとんど乗降客はいなかったのではないだろうか?

7. 信木駅(のぶきえき)  ●16:18着 16:21発

信木駅も道路から川岸に少々下ったところにある。道路の上からだと駅の存在は気付かない。
草木に覆われてしまっているので、すぐ近くまで行かないとホームの姿は見えてこない。
ホームからは目の前に雄大な江の川が良く見える。きっとこの景色を眺めて、皆さん列車を待っていたのだろうな。
 
信木駅の少し先から残されたレールの様子が伺えた。
これだけの資産を、何もせず放置しておくのも考えものだが、どうしたらいいのか見当もつかない。
何かに利用したくても、需要もなければ資金もない。じっとこのまま朽ちていくのを待つだけなのだろうか?
それにしても険しい所に鉄道を作ったものだ。道路を走っていても、「落石注意」の表示があちこちに目立つ。

8. 式敷駅(しきじきえき)  ●16:28着 16:31発

式敷駅は立派な駅舎が残されている。スタンプも置いてあった。
バス乗り場になっているので、今でも十分利用できるように管理されている。
ホームは雑草が伸び放題で見る影もないが、それでも駅の面影は十分感じられる。
 
式敷大橋を渡り、江の川の反対側へ渡る。すると前方に撤去中の赤い鉄橋が見えてきた。(第二可愛川橋梁)
豪雨で鉄橋が流されてしまった姿は見たことがあるが、こうして解体している姿を見るのは初めてだ。
何というか、何も言葉が出てこない光景だ。

この川を渡るために大工事を行い、莫大な費用をかけて作った鉄橋を壊している・・・
まあこのまま放っておけば、今後の豪雨で流されてしまって二次被害が出かねない。そう考えればしかたないことだ。
しかし不要な物とはいえ、何とも言えぬ複雑な気持ちて解体現場を通り過ぎた。
 
道路脇にレールがすぐそばまで近づいてきたので、記念にちょっと写真を撮ってみた。
レールに触れてみるが、雑草がなければ、今すぐにでも使えそうな感じだ。
さすがに線路跡を行く気にはならないが、可能ならばテクテクと歩いてみたい気持ちになってくる。

9. 香淀(こうよどえき)  ●16:47着 16:51発

香淀駅も綺麗に駅舎が残されている。やはりバス停が設置されている駅は、維持管理がされている。
六角形の形をした駅舎はとても素敵だ。しかし果たしてどれだけの人が利用しているのだろうか。
ホームは意外と荒れてはいない。草刈りもされているようだ。
 
17時近くなって、だいぶ暗くなってきた。本日のメニューもあと1駅だ。ここまでくればもう余裕だ。
それにしても秘境だ。そして道も、橋も、道路もすべてワイルドだ。
こんなワクワクするコースは今まで味わったことがない。
対向車はまず来ないけれど、せっかくなのでライトを点けて走る。

10. 作木口(さくぎぐちえき)  ●17:12着 17:15発

いよいよ本日最後の駅にやってきた。立派な駅だ。
駅前には民家が数軒並んでいて、これまでの駅の中でも住民が多そうな感じだ。
まったく静寂の世界だ。動くものが何もない。犬も見かけない。鳥も飛んでいない。全てが静止している感じだ。


橋を渡って町中へ向かう。郵便局があるぐらいだから、この辺りでは一番大きな集落だ。

この辺りで一泊できればと、探して見つけたのがこの「滝見家旅館」。ほんと、貴重な存在だ。

すっかり薄暗くなってしまったが、予定通り無事に到着。


当然泊り客は自分ひとりだけ。

旅館経営というが、三江線が廃線になってしまってさぞかし大変だろう、と想像する。


宿の女将はかなり高齢で、ほとんどが息子さんが切り盛りしているようだ。

食堂も経営しているので、料理も満足できる物をいただける。

たまにはこうした質素な旅館もいいものだ。いろいろと話を聞くこともできる。


贅沢に部屋を使わせていただき、自転車も玄関にいれさせてもらった。

夕食が終われば明日のプランニングだ。天気はバッチリ。明日も快晴が期待できそうだ。


明日はいよいよ最終日だ。残りの駅巡りを終えて、出雲市駅からサンライズに乗る。

しかし、明日の走行距離は100kmを越える。

5万図を並べて明日の全行程を眺める。一つだけ離れた駅がある。この駅、どうするか? パスするか?


駅巡りをしながらの100kmはなかなか大変だ。

何も考えずに走っていては大変な事になる・・・ということで、またGPSに目標時刻をセットしてきた。

さあ、明日はどんな一日になるのだろうか、と期待と不安を感じながら眠りに入った。

距離: 68.3 km
所要時間: 7 時間 35分 2 秒
平均速度: 毎時 9.0 km
最小標高:  140m
最大標高:  236m
累積標高(登り):  276m
累積標高(下り):  259m

(2023/11/22 走行)


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