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全体スケジュール


今年最初のロングツーリングを計画した。
「さんふらわあ」の割引券があるので、またしてもそれを消化するためのツーリングを考えた。
と言っても船に乗るだけが目的ではない。いろいろと思案を重ね、こんな予定をたててみた。

●大好きな「サンライズ」に乗る
●50年前に訪れた”あの場所”、32年前に見たあの光景を再び見に行く
●大好きな「さんふらわあ」に乗る
●大好きな「シマノ博物館」に行く

要するに、大好きなものが詰まった最高級のツーリングだということだ。
もう、プランニングの段階で旅は成功したも同然。これで天気がよければ何も言うことはない。

地図購入・天気予報・切符手配


プランが決まれば忙しくなる。まずは切符の手配だ。
運よくサンライズは簡単にゲットできた。最近はサンライズも意外と乗車しやすくなった。

やはりネットで予約できるようになったおかげで、諦めずにいればキャンセルがでるからだろう。
面倒なのは発券しなければならないことだ。JR東海の窓口へ行かなければ発券できない。


そして地図を買いにく。
もう、5万図がなくてもほとんど問題ないのだが、地図を眺めていると思わぬ発見をすることがある。

GPSやスマホと比べて、一度に得られる情報量がやはり勝負にならない。
メインで使わないかもしれないが、やはり5万図は必須だ。


そしてガイドブックを手に入れる。
50年前のあの場所は、あの駅はどうなっているのだろう・・・

色々な情景が浮かんでくる。いまだにしっかりと覚えている・・・
そして最後は自転車の聖地、堺の街を散策する。そのためにはこのガイドブックが最適だ。


今回訪れるのは、熊本→宮崎→大阪 と広範囲にわたる。
どこかで天気が崩れても不思議ではないが、幸運にもこの三泊四日の期間中、天気は大丈夫そうだ。


2025年3月31日(月)

サンライズ乗車


サラリーマンの皆さんが、仕事始めの月曜日に旅立つという、昔だったら考えれない出発だ。

残業で疲れた会社員が行き交う東京駅9番線ホーム。
長距離のホームライナーが次々入線してきては、仕事帰りの人たちが乗車していく。

この時間から家に帰っても寝るだけだ。そしてすぐまた出勤しなければならない。
自分もそんな生活を何十年も過ごしてきた。ここまで体を壊さなかったのが不思議なぐらいだ。


ひときわ輝く、そして美しいサンライズが入線してきた。これで何回目の乗車かな? 
やはり王者の風格だ。なんとも言えぬ高級感、なんとも言えぬカラーリング。美しい、そして優しい。


3回目のサンライズで、初めて2階のB寝台シングルを手に入れることができた。
これまで1階ばかりだったので、2階からのサンライズを一度楽しんでみたかった。

1号車21番というのは、サンライズの先頭車両の、そして先頭の部屋だ。運転席のすぐ後ろということだ。
だからと言って特別な景色が望める訳ではないが、一番前で寝るんだ、と思うとなぜか興奮する。
(下の写真は、「旅と鉄道」2024年1月号よりお借りしました)


今回輪行袋はドア横のデッキに置くことができた。
手すりもついていて、自分の輪行袋であればまったく邪魔になることがない。

検札に来た車掌さんに申告して問題ないことを確認済みだ。
初めての2階は、こんな素敵な空間に包まれている。もう、この大きな窓があるだけで夢のような雰囲気だ。

昔乗り損ねたA寝台シングルデラックスもきっとこんな窓だったんだろうな、と思い出す。
やはり1階とは景色が違う。上から見下ろす眺めは最高の優越感だ。


買ってきた豊富な食材を窓際に並べて、さあて今宵も豪華なサンライズ旅の始まり始まり〜!

3回目のサンライズとなれば慣れたもの。あんまり興奮していると睡眠不足になる。
夜行列車は、やはりたまりませんね。こんな贅沢はなかなかないでしょう。

●Youtube動画 サンライズ瀬戸乗車
https://youtu.be/T5Nkaczp21o


2025年4月1日(火)

岡山駅 〜 熊本駅 〜 立野駅 〜 高森駅


早朝の岡山でサンライズを下車。ここから新幹線で熊本へ向かう。
例によって、サンライズの切り離し作業に鉄道ファンが群がっている。

もう何度も見ているので、自分もちょっとしたベテランの仲間入りの感じだ。
東京から九州へ行くにはサンライズがいい。始発の新幹線でいくより半日有効に使える。


岡山から熊本までも結構時間がかかる。最終下車駅の高森駅までは、まだまだ果てしなく遠い。
サンライズの夜行を楽しみ、新幹線で熊本へ。そして今度は「あそぼーい」に乗車だ。

もう、すっかり乗り鉄の仲間入りって感じになってきた。
初めて乗る「あそぼーい」・・・楽しい! すっかり気に入りました!


10:51 ようやく立野駅に到着。

昨夜東京駅を出発してから、すでに13時間経過している。それでもまだスタート地点に着いていない。
いよいよ最後の路線は、南阿蘇鉄道に乗って高森駅を目指す。

いよいよ思いで深い九州のど真ん中へやってきた。
熊本は何度も訪れたことのある、思い出いっぱいの地だ。またこうして来れることに感謝するばかりだ。


さすがにここまで来ると外人観光客は少ない。それでも車内にはアジア系の旅行客が乗車している。
やはり日本の自然は魅力なのか? それとも何か”推し活”で来ているのだろうか?

高森駅に着くと、驚いたことにやはり外人観光客が目立つ・・・まさかここまでとは驚いた。
残念ながら50年前の高森駅のイメージは、どこを見渡しても自分の目には入ってこなかった。


高森駅 〜 高森峠 〜 高千穂駅


50年前の高森駅で撮影した一枚。

デッカイSLが展示されていて、立派な高森駅の表示がいい記念になった。
1ケ月のキャンピングで訪れた小さな町だった。この日は町のYHに泊ったのを覚えている。


駅の中も、駅前もすっかりきれいになっていた。
残念なことに、最初の思い出「駅前のSL」はすでに移設されてしまって、対面することができなかった。

なんてこった・・・この写真の思い出は、もう二度と見ることができなくなってしまった。
このSLは、調べてみると福岡県直方市へ移設されたようだ。


熊本県高森町で展示されていた蒸気機関車(SL)「C12形241号」が、福岡県直方市のNPO法人「汽車倶楽部」(江口一紀理事長)に無償譲渡され、倶楽部の敷地に移設された。町側が撤去を検討していることを知った倶楽部側が「延命させたい」と引き取った。
https://www.asahi.com/articles/ASNCC7314NCCTGPB00B.html


スタートからいきなり出鼻をくじかれた。
高森駅のSLにお目にかかれるだろうと思っていたのだが、なんと移設されてしまって何もない・・・


しかたない。次の思い出「村田家旅館」を探す。駅からすぐの所に変わらず残っていた。
50年前ここにお世話になった。ここはユースホステルでもある。

当時の日記を読み返してみると、また思い出が蘇ってくる。
ちょっと中を覗いてみたが、さすがに何もかも変わっているようだ。


残念ながら天気が冴えない。出発前の予報では雨マークはなかったが、走り始めて霧雨が降ってきた。
雨具を着るほどではないけれど、気温も低く残念な旅立ちとなった。

高森峠の千本桜の案内に従って登っていく。

運が良ければ満開の桜に出会えるかと期待していたのだが、まったくその気配はない。
この気温ではまだ見頃は1週間以上先だろう。おかげで誰もいない静かな高森峠だ。


50年前もこの道を登ったはずだが、当然ながらすっかり周囲の景観は変わってしまった。

「峠にくもを仰ぐ」(高森 峠とさくらの会)という立派な句碑があった。
今日は雨雲に覆われてしまって、せっかくの展望も期待外れだ。


下の写真は50年前の高森峠。阿蘇を背景にして、正面の「高森峠」の峠名が見える。
いったいこの場所はどこなのか? と一生懸命出発前に調べたが、明確な場所は特定できなかった。

まあ、50年前の写真だ・・・このまま残っていたら逆に怖いぐらいだ。


桜が咲いていないとなれば、ここを訪れる人もほとんどいない。

生憎の天気と低い気温で、すっかり春先の厳しい峠越えとなってしまった。
晴れていて、桜が満開の時期だったら最高の山岳展望を楽しめただろう。

初日の予定はかなり忙しい。
というのも高千穂駅から「グランドスーパーカート」に何としても乗りたいからだ。


ゆっくり昼食をとる時間もとれなかった。
工事現場の資材置き場で、雨宿りしながらおにぎりを二つ食べて走りだす。

すっかり雨模様になってしまい、手足もしっかり濡れるまでになってしまった。
雨の中、いつもにないペースで高千穂を目指す。初日から結構体力を消耗する走りだ。

熊本県から宮崎県に入る。道路脇にはこんな立派な立像が出迎えてくれた。
・手力男神(たぢからおのかみ) ・天鈿女命(あめのうずめのみこと)


高千穂の最初の観光ポイントは「トンネルの駅」だ。

トンネルの駅には、SLや高千穂鉄道TR-300形気動車が展示されている。
そして塞がれたトンネルが、幻の九州横断鉄道の歴史を物語る。


トンネルの駅


このトンネルは延岡と熊本を結ぶ予定であった、九州中部横断鉄道の名残で熊本県の高森駅の近くでトンネル工事中に突然大量の水が噴出して鉄道工事が中断しました。
その後、神楽酒造株式会社が焼酎の貯蔵庫として利用して高千穂観光物産館「トンネルの駅」として営業しています。
https://takachiho-kanko.info/shopping/3/


焼酎の貯蔵庫として使われているトンネル内は、独特の匂いと重厚な雰囲気で満たされている。

ここを列車が通るはずだったのか・・・
すごい歴史遺産が残っているものだ。


グランドスーパーカート(高千穂あまてらす鉄道)


頑張って高千穂駅を目指したが、「グランドスーパーカート」の最終便5分前に到着。
すでにホームには列車が到着していて、まもなく発車しようとしている。

残念、諦めるしかないか・・・と切符売り場で聞いてみると、「大丈夫ですよ、乗れますよ!」とのこと!
急いで自転車を置いて、貴重品を持って大慌てで乗車券を買う。

雨がシトシト降っているので、雨具を着ての乗車だ。よかったぁ〜間に合ったぁ〜


その後追加で観光客が現れ、総勢8名で出発することになった。
全員にタオルが渡され、濡れたシートの上に座りながら、ゴトンゴトンと列車は動き出した。

駅員全員でお見送りしてくれる。
なんだかテーマパークに来たような楽しさで一杯だ。


●「神話の里」を走るグランド・スーパーカート
https://www.yomiuri.co.jp/hobby/travel/ryokou-select/20241219-OYT8T50006/



ワクワクする小さな「鉄道旅」だ。
線路脇の桜が素晴らしく、さていったいこの先どんな景色が広がるのかと期待する。

屋根のない客車は開放感抜群だ。冷たい風を顔いっぱいに浴びながらトンネルに入っていく。
真っ暗なトンネルに入ると、天井に奇麗なイルミネーションが映し出される。にくい演出だ。

最初の駅「天岩戸駅」をゆっくり通り過ぎる。今でもきれいに駅の姿が残されている。
そしてこの「鉄道旅」最大の見どころが、「高千穂橋梁」での列車停止だ。

360度の大展望が広がる、高さ105mの橋梁の上で列車は停止する。まるで空中に浮いているような景観だ。
運転士はここでシャボン玉を飛ばし始めた。なんだ子供だましの演出だな・・・と思っていたが・・・

なんてことのないシャボン玉がこれほど美しいのかと、心の底から感動した。全員拍手で盛り上がる。
しばらく絶景を眺めた後、進行方向を逆にして高千穂駅へ戻る。

30分ほどの小さな乗車だったけれど、やはり「高千穂橋梁」からの眺めは文句なしの絶景だ。
そして雨のおかげで、また違った雰囲気の展望を楽しむことができた。

●Youtube動画 グランドスーパーカート
https://youtu.be/sxuHsoNOAa4


高千穂駅 〜 日之影


Google ストリートビューより

時刻は16:15 

本日の宿、日之影まではあと15km残っている。

順調に走っても約1時間、17時過ぎの到着でちょうどいい時間だ。

本当は旧高千穂鉄道に沿って、残された駅をひとつずつ訪ねてみたかった。

高千穂駅と天岩戸駅はこの目で見ることができた。

次の深角駅はきれいな駅と桜が美しいらしい。

駅に立ち寄ると約30分のロスタイムだ。

行くか諦めるか悩んだが、この先の道路事情も不安があるため、残念ながら諦めることにした。


いよいよ日之影に向けて、五ヶ瀬川沿いの思い出の道を行く。

ここは1975年8月にキャンピングで初めて訪れた所だ。
高千穂峡を見学した後、今日の寝場所を求めて日之影に向けて走った所だ。


そして1993年8月、豪雨の後に再びここを訪れた。
豪雨で高千穂鉄道も被害を受け、そして五ヶ瀬川沿いの道も土砂崩れで大変な事になっていた時だ。

こうして三度目に来てみると、あらためて五ヶ瀬川沿いの道の切り立った岸壁に驚くばかりだ。
「落石の恐れあり 頭上注意」の看板がそれを物語る。


全くの無人地帯だ。車一台通らない。ここで何かトラブルがあったら、きっと助からないかもしれない。
霧雨の中、独特の深山幽谷の趣きを味わいながら思い出に浸る。


さすがに50年前の記憶は薄れてしまったが、32年前の思い出はしっかりと覚えている。
このトンネル、そして赤い鉄骨製のロックシェッドはしっかりと覚えている。

●Youtube動画 五ヶ瀬川沿いの道(高千穂〜日之影)
https://youtu.be/BKPSFgBap0E


日之影の町の手前、最後のロックシェッドが現れた。
32年前、ここで大規模な土砂崩れに遭遇して大変な目にあった。その現場だ。

下の写真左は現在の入口側、そして右の写真は当時の出口側だ。
このロックシェッドがなんとそのまま変わらず残っているのには驚いた。

当時の悪戦苦闘の様子は、以下で紹介している。
https://tougehenoshoutai.sakura.ne.jp/photoguide/1993_08_kyuushuu4/kyuushuu4.htm


17:20 本日の宿、日之影の「あさだや旅館」に無事着いた。
結局高森駅をスタートしてからずっと雨に降られていたことになる。おかげで何もかもよく濡れた・・・

この旅館、注意して探さないと通り過ぎてしまいそうな質素な宿名しか掲げていない。
さていったいどんな宿なのだろうかと興味津々だ。

フロントバッグ用のカバーを忘れてしまったので、バッグの中までよく濡れた。
靴も帽子も、そして財布の中のお札まで濡れてしまった・・・もう、雨対策不十分でした、反省。

質素な宿ではあるけれど、なんだろうこの我が家にいるような寛いだ雰囲気は・・・


夕食は他の泊り客と同じ部屋でいただく。
長崎からのご夫婦で、この宿の常連だ。

自分は昨年10月に長崎に行ったばかりなので、長崎の話ですぐに盛り上がる。

例によって聞いてみた。
「長崎の街は自転車がほとんど走ってませんよね?」
「長崎の街には、自転車屋さんがほとんどないっていうのは本当ですか?」

やはり「自転車のない街」というのは本当で、さらに、
「私の妻は、自転車乗れませんから・・・」ということでした。これには驚いた・・・

すっかり打ち解けてしまって、持ってきた高千穂の本格純米焼酎「露々」を御馳走になる。

まろやかな口当たり、すっきりとした飲み心地が実にうまい! 
すっかりお気に入りのお酒になってしまった。

自分の日之影の思い出話に盛り上がる。
この先のバス停で野宿した話、土砂崩れて大変だった話、そして自転車旅の魅力に皆さん聞き入っていた。
最後は女将さんも一緒に加わって、皆で飲みながら楽しい一夜となった。


あさだや旅館 Instagramより


女将さん、インスタグラムに熱心で、宿泊客との思い出を丁寧に記録して紹介している。
当然自分も格好の”ネタ”となり、色々と写真を撮影してもらった。

帰宅後覗いてみると、すでに更新されていて自分が紹介されていた。
色々と解説した自転車のことも、ちゃんと間違えずに紹介してくれている。


「トーエイ」の解説はどこまで理解してくれたかわからないが、ちゃんとアップで写真を載せていただいた。
自転車の世界が色々あると初めて知ったようで、とても感謝していただいた。



参考資料 1975年8月10日・11日 の日記


距離: 53.8 km
所要時間: 4 時間 59 分 15 秒
平均速度: 毎時 10.8 km
最小標高: 287 m
最大標高: 858 m
累積標高(登り): 614 m
累積標高(下り): 866 m

(2025/4/1 走行)


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