峠への招待 > ツーリングフォトガイド >  ’2025 >  桃ノ木川自転車道・広瀬川自転車道・利根川自転車道・渋沢栄一記念館




久しぶりに、車で前橋へ出かける用事ができた。
せっかくなので、ツーリングも楽しもうとプランを考えた。
前橋と言ってもいいアイデアが浮かんでこない。そんな時は「たびりん」の力を借りる。

「たびりん」は、日本全国のサイクリングコースを紹介してくれる。内容も充実していて役に立つ。
今回は、群馬エリアから「自転車道満喫コース」を参考にプランを考えた。


2025年4月18日( 金)


早朝の都内はまだ空いていて、順調に前橋に到着。
2泊するホテルの駐車場に車を置けないかと思い、朝からホテルのフロントで事情を話してみる。
しかし、まだチェックイン前で、駐車できる台数も限られているため断られた。まあ、仕方ない。

すぐ隣がコインパーキングになっているので、ここをデポ地にすることにした。
駐車料金「最大500円」という安さに驚く。都内ではありえない安さだ。
さらに驚いたことに、ここの駐車場「ロック板」も無ければ、「カメラ」もない。もちろんゲートもない。

駐車スペースの地面にはセンサーが埋め込まれているようだが、入出庫は完全にフリーだ。
いったいどうやって個別の車両を監視しているのだろう・・・不思議だ。

これでは料金を支払わず出ていくことが可能だ・・・疑問が解けず、そばにいた地元の人に聞いたがわからず・・・
「ロックレス」はよくあるけれど、そこには必ずカメラがある、はずなのだが・・・性善説駐車場なのか?


とりあえず、朝の前橋駅前から気持ちよく走りだす。
8時を過ぎて、ちょうど通勤・通学のラッシュだ。歩道を次から次へと自転車が突っ走っていく!

凄い数だ、そして凄いスピードだ! こちらがひるんでしまうほどかっ飛ばす。
それもそのはず、歩行者はほとんどいなく、歩道も広いとあって自転車天国だ。
さすがに信号無視する人はいないけれど、いつ出会い頭にぶつかってもおかしくない朝の光景だ。


桃ノ木川に出ると、静かな世界が待っていてくれる。「桃の木川サイクリングロード」の案内が現れる。
まずはこの標識に従って伊勢崎方面へ向かう。


川沿いの自転車道は、菜の花やハナダイコン、多くの草花が美しい姿を見せてくれる。


地元の方が朝の散歩に行き交う。
こんな素敵なコースが近所にあるなんてうらやましい。

静かな流れの川には、カモが群れをなして佇んでいる。近づいてみると、サーと離れて行ってしまった。
散歩している方に聞いてみたら、どうやら渡り鳥らしい。間もなく旅立っていく、とのこと。


「桃ノ木川ラブリバー案内図」と書かれた大きな案内図が設置されている。
美しく保たれている桃ノ木川は、こうした活動によって維持されているようだ。

特定非営利活動法人 桃ノ木川を愛する会
ラブリバー事業により整備された桃ノ木川河畔緑地を沿川住民の協力により維持管理する
・堤防や高水敷の草刈り、芝刈り、除草、ワイドフラワーの手入れ
・花壇の維持管理(花木、花苗の植裁、除草等)
・サイクリングロードの良好な管理
・空き缶、ゴミをの処理し、環境美化に努める


静かな自転車道は、上毛電鉄の下を潜り抜け先へ続く。自転車の姿もほとんどない。
しばらく行くと、カーブを曲がった先に見事な大木が現れた。あまりの大きさに思わず声が出るほどだ。

木の下のベンチで、若い女性が何やら読書している。素敵な構図なので、遠景から一枚撮影する。
調べるとこの木は「日本で一番太いアカメヤナギ」だそうだ。確かに素晴らしい。


時折散歩する人とすれ違うが、ほとんど誰にも会わない。おかげで本当に静かなポタリングを楽しめる。
ますます菜の花が咲き乱れて、自転車道の両脇が黄色に埋め尽くされてくる。

久しぶりに人の姿を見つけたと思ったら、土手で自転車をひっくり返して修理している。
どうやら後輪を外してパンク修理でもしている感じだ。しかし、なんでまたこんな所で直しているんだ?


見えてきたのが「伊勢崎オートレース場」だ。
何も音が聞こえないということは、今日はレースは開催されていないようだ。

競馬場、競輪場、競艇場には行ったことがあるけれど、オートレース場は行ったことがない。
自分はバイクにも乗るので、同じ二輪ということで、今度機会があればぜひ観戦してみたい。


オートレース場の前も、菜の花ストリートと化している。
誰も歩く人もいなければ、自転車で走る人もいない。なんて平和で長閑な風景なのだろう。


今度は「広瀬川サイクリングロード」の案内が現れた。いつの間にか桃ノ木川から広瀬川に変わっている。
どこからが広瀬川なのかよくわからないけれど、どちらにせよ快適な自転車道が続いている。
案内図も整備されていて、適度に休憩所も設けられている。なかなか整備が行き届いた自転車道だと感じる。


竜宮橋の下に「浦島太郎伝説の地 龍神宮」の入口があった。


浦島太郎伝説の地 龍神宮

群馬県伊勢崎市に残る「浦島太郎伝説」がSNSなどで話題になっている。
今月放送されたバラエティー番組「ナニコレ珍百景」(テレビ朝日系)にも登場。
「海がないのにどうして?」などと驚きをもって受け取られているようだ。
伝説の舞台は、同市宮子町。
広瀬川に架かる「竜宮橋」のたもとに「竜宮の森」と呼ばれるこんもりとした茂みがあり、竜神をまつった神社もある。

「ぐんま謎学の旅 民話と伝説の舞台」(ちいきしんぶん)の著者でライターの小暮淳さん(63)はこう語る。
「地下に深い淵があり、竜宮城へつながっているといわれているのです」
神社の隣には、釣り竿(ざお)を手に亀にまたがった浦島太郎像のほか、唱歌「浦島太郎」の歌詞看板も立っている。
「ぐん馬名所百選第48位」という立て看板もある。

https://www.asahi.com/articles/ASQ6V6THQQ6RUHNB00M.html


なんでこんな所に浦島太郎が・・・と、疑問を持って見学に行ってみる。
何やら畑のような所を進むと、ありました! 大きな亀に乗った浦島太郎だ!
周囲の風景とのアンバランスに、思わず突っ込みたくなるけれど、何やら伝説があるようだ。


その奥には「龍神宮」神社があり、どうやら竜宮城へつながっている・・・ということらしい。
誰かに話を聞きたいが、いたのはかわいい猫ちゃんだけ。残念ながら多くの疑問は謎のままだった。


時刻は10:40 ここまでの走行距離21km。まだ本日の予定の1/3にも達していない。
結構先は長いが、ほとんど勾配がないので、時間調整は意外と楽だ。


続いてまた違う案内図が現れた。
もう次々名称が変わるので、何がどうなっているのかさっぱりわからなくなってきた。

あとで悩まないように、すべて写真に収めてあとでじっくり見ることにしよう。
広瀬大橋付近は工事中のため、自転車道は通行止めだ。大きく迂回しなければならない。


再び広瀬川に戻ってくる。時々車道と交差する場所もあるが、車に悩まされる所はほとんどない。
11:45 走り始めて34km地点で埼玉県との県境に差し掛かった。

利根川を渡り、ここからは「利根川自転車道」に沿って走る。
ここまでが前半戦。後半は、まず「渋沢栄一」を訪ねての観光から始まる。


青天を衝け(NHK大河ドラマ)

2021年に放送された、NHK大河ドラマ「青天を衝け」は素晴らしかった。
渋沢栄一の生涯を、感動のドラマで見事に描いた作品だった。

ドラマを見て以降、渋沢栄一に関する本を読んだり、講義を聞いたりとすっかりファンになってしまった。
2024年7月3日には、渋沢栄一の肖像画が描かれた新一万円札が発行された。
そんな状況の中、機会があれば渋沢栄一ゆかりの地を訪ねてみたいと思っていた。



まずは「
尾高惇忠生家」を訪ねる。観光客が多少いるかと思ったが、まったくひっそりしている。
どこから入っていいのかわからず、裏手の出口に自転車を置いて入ってみる。


中へ入ると係の人が案内してくれた。
まずは名簿に記帳する。すでにお昼の時間だが、本日最初の見学者となった。

他に見学者がいないので、自分専用の担当者がついてくれて、詳しく丁寧に説明してくれる。
大河ドラマを見ていたおかげで、解説がとてもよくわかる。
ドラマの話が目の前で蘇ってくるかのような雰囲気だった。


渋沢栄一記念館に行く前に昼食にする。
創業明治38年
「麺屋忠兵衛 煮ぼうとう店」で、「煮ぼうとう・とろろご飯セット」を注文する。


ちょうど昼時なので、店内はかなり賑わっている。
「煮ぼうとう」は、渋沢栄一翁の大好物だったという。野菜がたっぷり入ったボリュームある郷土料理だ。
「渋沢栄一翁 夢七訓」と書かれた箸袋。その裏にはこんな言葉が記されていた。


「夢なき者は理想なし」から始まる七訓を一つ一つ読む。深い言葉だ。
読むごとに納得する。そしてうなづく。どんどん引きこまれる。そして感銘を受ける。
その通りだ。本当にその通りだ。この言葉に出会っただけでも、今日は来た甲斐があった。


店内には渋沢栄一直筆の掛け軸が飾られている。
店員さんも詳しく説明してくれて、店内が何もかも渋沢栄一で一杯だ。
支払いはもちろん新一万円札で。


お店の外には看板猫の二匹がお客様の応対をしている。
人気の猫で、来るお客さん全員が声をかけて撫でていく。おとなしい猫で、触り放題だ。
優しい飼い主さんのおかげで、のんびりと幸せに暮らしている。


渋沢栄一記念館へ向かう。
この記念館の目玉が、「渋沢栄一アンドロイド講義」だ。予約制の人気イベントだ。
事前に13:30の講義を予約しておいた。


●渋沢栄一アンドロイドとは
深谷市の郷土の偉人・渋沢栄一(1840年〜1931年)の生誕180年にあたる節目の年、2020年に本物そっくりの「渋沢栄一アンドロイド」が完成しました。 渋沢栄一は、明治維新後に近代化を迎えた日本経済の発展に大きく貢献しました。論語の精神を重んじた「道徳経済合一説」を唱え、生涯設立にかかわった会社は500を数えます。 また、約600もの社会福祉事業、教育・福祉の支援と民間外交にも熱心に取り組みました。 この渋沢栄一アンドロイドは、当時の渋沢栄一の風貌を忠実に再現しており、アンドロイドが語る言葉を通して、在りし日の渋沢栄一の考え方を今に伝えます。 渋沢栄一アンドロイドは、深谷市出身の鳥羽博道氏(株式会社ドトールコーヒー名誉会長)の寄付により制作しました。

https://www.city.fukaya.saitama.jp/shibusawa_eiichi/1592454024442.html

●阪大・石黒教授の技術指導で誕生した「渋沢栄一アンドロイド」。よみがえった“肉声”の講義

https://newswitch.jp/p/28348


立派な記念館で、広い駐車場が用意されている。
さすがにひとときのブームも静まり、平日の今日は観光客も少ない。

さっそく予約した講義の受付を済ます。講義開始まで、別室の展示室で渋沢栄一の足跡を学ぶ。
あまりにも膨大な功績が紹介されていて、じっくり見学するだけでかなり時間が必要だ。

そして講義開始の時間になり、特別講義室に入る。
今回の参加者は10名ほど。講義室には、渋沢栄一アンドロイドが壇上に立っている。


どういう講義なのか興味津々だ。
担当の係員が説明をはじめ、その後渋沢栄一の肉声を真似た声で、ある日の講演が流される。

手の動き、目の動き、肌質、表情、全体のバランス・・・驚くほど人間に近い。
ちょっと遠くから見たら、本物の人間と見分けがつかないかもしれない。

講義終了後、自由にアンドロイドの見学ができる。
すぐそばから、後ろからと写真を撮ってみるが、本当によくできている。
年配の方は、あまりによくできているので「こんにちわ!」と語りかけていた。


続いて「旧渋沢邸 中の家」へ。先ほど食事したお店のすぐ隣だ。


旧渋沢邸 中の家

渋沢栄一の生地です。現在残る主屋は、渋沢栄一の妹夫妻によって、明治28年に上棟された建物です。主屋内部では栄一が多忙ななかで帰郷した際に、滞在した上座敷を見学することが出来ます。
また、渋沢栄一アンドロイドと映像を組み合わせたシアターでは、80歳代の渋沢栄一を再現したアンドロイドからふるさと血洗島や仲間たちとの思い出を聞くことができます。
https://chocotabi-saitama.jp/spot/19090/


受付で記帳すると、直前の人が自分と同じ区の方だった。そんな偶然に驚く。


ここにもアンドロイドが設置されていて、旧渋沢邸にまつわる歴史を紹介してくれる。
外の庭には、若き日の渋沢栄一像が建てられている。
充実した見学だった。たっぷり時間をかけて見て回れば、渋沢栄一の魅力がより伝わってくるだろう。


時刻は14:25 後半は利根川自転車道を33km程、前橋駅に向かって戻るコースだ。
利根川自転車道は、道幅が広くそして直線が続いて走りやすい。
まだ春先の陽気なのでそれほど暑くないけれど、これから初夏にかけては日影も少なく大変だろう。


ほとんど誰にも会うことがない。珍しく自転車とすれ違うと嬉しくなるほどだ。
長い直線、変わらぬ景色。誰にも会わず、誰ともしゃべらず。店も無ければトイレもない。
ただひたすら、のんびりムードでちんたらと走る。それがこの自転車道の魅力かもしれない。


さすがに飽きてくる。腕、肩、手首、腰も疲れてくる。
たまには自転車を降りて一服したくなる。ちょうどいい休憩場所があったので、一息入れる。
広々とした公園内も誰もいなくて気分爽快だ。本当にゆっくりできる。


いよいよ本日のコースもフィナーレに近くなってきた。
前橋の街が近づいてくると、ようやく人の姿が多くなってくる。
学生の姿が多くなり、散歩する住民、ジョギングする人の姿も目立ってくる。


するとまたまた猫との出会いが待っていた。
自転車道を行く猫の姿を発見。追いかけると壁を登って高台に移動。
すぐに追いかけて写真を撮ると、こちらを見て警戒している。猫にとっても安全で暮らしやすい所みたいだ。


途中までは単純で変化のない自転車道だったが、最後は楽しい自転車道へと変化してきた。
ゴール間近の橋も前方に見えてきた。


最後の最後に、さらにかわいい猫ちゃんを発見!
自転車道脇の畑の中に、二匹の猫ちゃんが日向ぼっこしている。
普通の人なら見つけることもないだろうが、自分には猫発見能力が備わっている。すぐに急ブレーキだ。

慣れた猫たちで、近づいても全然警戒心がない。好きなアングルで撮影できる。
遊んでいたら自転車道に出てきて、ゴロンゴロンひっくり返る。
「あぶないよ〜」と声をかけるがお構いなしだ。


充実した74kmだった。距離は結構あったけれど、ほとんど勾配がなかったので心地よい疲労感だ。
今日のホテルは、天然温泉施設とのコラボ企画だ。温泉利用券と夕食券がセットになっている。
大きな温泉でゆっくりくつろぎ、夕食は食事処で思う存分楽しむことができる。

よく走ったのでビールがうまい。
夕食券だけでは当然物足らず、あれこれ追加で注文していたら結構な金額になってしまった。
よく走り、よく飲み、よく食べた一日だった。さらに帰りにはコンビニによってホテルに戻った。

 

距離: 74.0 km
所要時間: 9 時間 10 分 01 秒
平均速度: 毎時 8.1 km
最小標高: 50 m
最大標高: 144 m
累積標高(登り): 133 m
累積標高(下り): 133 m

(2025/4/18 走行)


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