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2025年5月7日(水)


三日目の天気は、予想を覆して素晴らしい青空が広がった。
天気がいいというだけで気分がいい。

豪華な朝食が朝からテーブルに並ぶ。まるで夕食並みの御馳走だ。
全員の靴を玄関に並べて写真撮影してみた。

自転車もいろいろだが、皆さんの靴もいろいろだなぁ、としげしげと眺める。
今回、ワークマンシューズは自分ともう一人いた。ちゃんとツーリングにも使えるということだろう。


最終日は、帰りの列車の都合もあって早めに上越妙高駅に着きたい。
といっても、せっかくここまで来たのだから、あれこれ4つのコースを考えてきた。
当日の天気、体力などを考慮して最終的に決める予定だった。

@は前回走ったコース。距離は短いが結構登らされる。しかし景色はなかなかいい。
Aは前回のコースの1本北側を走るコース。登り返しが結構あって疲れそう。
B、Cはちょっと観光を含めた欲張りコース。駅への到着が心配だ。

検討の結果、やはり@の前回のコースが総合的に安心、安全だろうという結論に達した。
獲得標高は435mあるが、時間にも余裕があるのでタンデム組も何とかなるだろう。


天気もいいし・・・今日は25km程でゴールだし・・・早めに駅について「あの店」で反省会〜! と楽しみ。

すっかり気の緩んだおかげで、スタートもすっかり遅くなり9時半を過ぎてもこの状況だ。
記念撮影をしようと近くにあったパイロンをお借りして、ゴリラポッドの出番。


今時はワイヤレスで撮影できるけど、昔のカメラなのでいつまでもセルフタイマーだ。

「はい、いきますよ〜」とシャッターを押す・・・いい写真が撮れました・・・と思ったら一人だけ・・・あらら。


宿を出てすぐに「横畑の観音堂」と「六地蔵」がある。

皆さんノンストップで走って行ってしまったけれど、自分はここの風景が気に入っている。
長閑な原風景が広がるこの地域は、とっても心癒される世界が広がっている。


小さな桑取川に沿って緩く下っていくと、すぐに本日のコースの分岐が現れる。
昨日は最後に予想外の登りに出くわしたが、今日は一度走ったコースなのでだいたい予想はついている。

前回の記憶を頼りに登り始める。
前回は工事中で色々とアクシデントがあった。今回はその心配もないので安心して登っていける。

●前回のレポート

https://tougehenoshoutai.sakura.ne.jp/photoguide/2021_11_taiutouge/taiutouge.htm


この辺りが前回工事していた所だと思い出しながら、と奇麗になったカーブをクリアしていく。
あの時は重機が作業中だったけど、優しい現場監督のおかげで無事に通過することができた。

工事現場には何度も遭遇してきたけれど、サイクリストに対する対応も色々だ。
こうして工事箇所を再び走ってみて、作業者の方たちに感謝するばかりだ。


参考までに 前回工事中の様子


太夫(たいう)峠へ


いい天気になった。まさかの天気回復だ。日本海側の天気を予想するのはなかなか難しい。

振り返ればまた残雪の山々が雲の間から見えてきた。こりゃあ最終日、なかなかいいぞ!


時間もたっぷりあるし、無理して乗らなくても全然余裕だ。

のんびり押して歩いて、静かな峠越えを楽しみましょう!


小さな峠だが、ところどころキツイ登りがある。

なんだ坂、こんな坂・・・昔はなんてことなかった坂だが、もはやこの歳では限界ぎりぎりだ。
しかし、こうしたヒルクライムで自分の限界を知ることになるのだろうな。


太夫峠(標高290m) ほんの小さな峠だが、実に魅力が詰まった峠だ。
峠越えの厳しさもあり、峠越えの達成感もある。やっぱりこのコースを選んでよかった。

10:20 結構息も上がったけれど、なんとか太夫峠に到着。
後続のタンデム組は結構難儀していて、到着を皆で待つ。


ソロだったら、あっという間に通り過ぎてしまう峠だが、やはりクラブランの魅力はこういうところにある。

峠越えは越えるだけの楽しみではない。
その道筋を楽しみ、峠で仲間を待つ、逆に待たせることが思い出だ。

一人で走っていたら、きっとその思い出も印象も、きっと薄っぺたいものになってしまうだろう。そんな気がする。

前回の記録を自分のホームページで調べてみると、驚いたことに、峠の到着時間が全く同じだ!
やっぱり何年たってもやってることが変わっていない、ということだ。さすが名人芸というしかない!


楽しい。仲間と峠を越えるって、なんて楽しいのだろう。
毎年毎年、歳を重ねるたびに峠越えの楽しさを感じてくる。

峠越えは小さな人生のドラマみたいなもの。
起承転結があり、苦しみも喜びも、歓喜も絶望も、いろんな人生ドラマが凝縮されている。



次々下ってくる姿をカメラに収める。

最初の峠を無事にクリアして、気持ちよく下る。
小さな峠だが、下りは結構スリリングだ。皆さん慎重にコーナーをクリアしていく。


●Youtube 動画 太夫峠のダウンヒル
https://youtu.be/OxuvbRq9XQ4


「この先は雪がいっぱい残っていてな、そーだな・・・ ”たんぼ” だな! あはは!


調子に乗って下っていて、分岐地点を通り過ぎてしまった。
分岐地点には車が止まっていて、我々の姿を見て地元のおじさんが話しかけてきた。

「この先は雪がスゴイよ」「道は雪で埋まってるよ」「雪が崩れ、そーだな、雪崩だな」
「この先は行けますか?」

「そーだな、行けないこともないが・・・」
「そーだな、あれだな、言ってみれば”たんぼ”だな」「たんぼの中を行くようなもんだな」
「まあ、行ってみてダメだった戻ってくればいいじゃん! あはは!」

雪があるなんてまったく信じられず、適当なオヤジだな、とこの時は全く信じていなかった。
どうせ道路脇に雪が少し残っているぐらいだろう・・・だって標高500mないんだよ。


あのオヤジ大袈裟だよ、自転車の凄さを知らないからね・・・人が行ければ自転車も行けるんだから・・・
なんて馬鹿にしていたら、さっそくこんな”たんぼ”が現れた。

なるほど、こういうことか。
たしかに”たんぼ”だ。雪が解けてグチャグチャになっている。


オヤジの言ったことは正しかった・・・ここから想像をを絶する「雪との闘い」が延々続くことになる。
雪はたいしたことはないが、さすがに足元がドロドロ状態で悪戦苦闘する。

特にタンデム組は、自転車自体も重くて扱いにくい。見ているだけでも大変そうだ。
最初の”たんぼ”を抜けた後はいったん道は走りやすくなる。

日当たりの違いで雪の残り方も全く違っている。
路面が全く見えないところもあれば、アスファルトが見えるところもある。


いったん道は走りやすくなりすっかり安心する。
なんだ、これで”たんぼ”も終わりか・・・やっぱりたいしたことはなかった、と気が緩む。

あとピークまで100m少々。すっかり展望も広がってきて、気分も上々だ。


ところがその先が本当の難所だった。
標高が400mを越えてくると、再び深い残雪が目の前に現れてきた。

今度の残雪は、その量、厚さがこれまでとちょっと違う。思わず立ち止まってしまうレベルだ。
果たして行けるのか? と不安になるほどの眺めだ。

先頭が自転車を置いて偵察に行く。しばらくして戻ってきて状況を説明する。
「こんな感じがまだまだ続いている」とのこと。あとピークまで50m少々・・・ここで戻る訳にはいかない。


道に積もった雪も安心できない。厚みは結構あるように見えるが、実はその下はトンネル状になっている。

歩く場所を間違えると崩れて穴に落ちかねない。なるべく雪の厚みがある部分を歩かないと危険だ。


自転車用の靴はよく滑る! まったくこんな雪道では役に立たない。
すでに靴の中はグチョグチョだ。

重いし、滑るし、不快だし・・・もう、こんなの聞いてないよぉ〜 と悲鳴が上がる。
いやはや、貴重な体験でしょう! タンデムで雪道を押し上げるなんて、やりたくてもなかなかできませんから。


いったいどこまで続くんだ・・・と小休止を入れながら頑張る。
もうちょっと雪が深かったらここまで登ってくることもできなかった。

そしてもしソロだったら、きっともっと手前で引き返していたかもしれない。
一度走っているコースなので、この先がわかっているからこそ諦めずに登ってこれたのだろう。


あと50mと思えばあらためて気合も入る。
天気はいいし時間にも余裕があるし、食料もたっぷり持っている。装備に不安は全くない。

道端には「ふきのとう」がたくさん顔を出している。辛い登りを癒してくれる姿がそこにあった。


12:34 目の前に現れたのは山肌から流れる落ちる滝と、その先の雪の壁だ!
思わずギョっとして立ち止まってしまった・・・そして「ダメだ」と感じた。

先頭グループは呆然として行く手を阻まれている。な、なんなんだこれは! もはやここまでか・・・
しかしピークまであと40mほど。無謀かもしれないが行くしかないだろう。


再び偵察に行く・・・ちょっとレベルが違う・・・ここまで来て戻るしかないのか・・・くそ!
全員そろって作戦会議だ。戻る選択肢もあるが、そうなれば大幅なコース変更が必要になる。

時間はかかってもここを抜けるしかないと再度確認して、あらためて雪と闘い始める。
ちょっとした「八甲田」のシーンだ。まさかこの5月にこんな経験をするなんて・・・


先頭を行く人は大変だ。後続は細い轍の跡を行けば辛さも半減する。

道なき道をツルツル滑りながら、押したり持ち上げたりと「雪遊び」が続く。

笑顔はなく、撮影されていてもポーズをとる余裕もない。もう全員必死の形相だ。

●Youtube 動画 雪中行軍 森林基幹道「南葉高原線」その1
https://youtu.be/10Y4molVcqo


とうとう”楽しかった雪遊び”も終わりだ。念願のピークがやっと現れた。
もう、ホッとして気が抜けた。そしてお腹が空いた。

道路の真ん中に輪になって、楽しいランチタイムの始まりだ。
まさかこんな事になるなんて。予想外の展開に、今日のランチは特に盛り上がる! 


すっかりお腹も満たされて下りに入る。といっても、下りもやはり雪に閉ざされている。

しばらくは再び「雪遊び」が続く。しかし、下りは意外と楽だ。
もうここまでくれば安心だ。あとは楽しく雪道下りを楽しむ。

●Youtube 動画 雪中行軍 森林基幹道「南葉高原線」その2
https://youtu.be/dUAdMOFgosw


すぐに雪もなくなり、明るい景色が広がってきた。

ようやくまともな林道が現れた。そして大きな展望が広がるダウンヒルが待っていた。

●Youtube 動画 森林基幹道「南葉高原線」ダウンヒル
https://youtu.be/h3B0qNrUxtg


一時はどうなるかと思っていたこの雪道も、下りに入れば全員この笑顔だ。

当然車は入ってこれないので、ダウンヒルも我々だけの貸し切りだ。


上越妙高駅へ向かう。
前回も最後のこのラストランがとてもよかった。

空が広い。この景色、この展望、この広さ。
激しい雪道突破だっただけに、この穏やかな眺めが心にしみる。


ゴール手前の広場には、こんな美しい光景が広がっていた。左手奥に残雪の妙高山がよく見える。

最後にこれほど美しい山岳展望を望むことができて、もう何も言うことがないぐらい幸せだ。


今回のツーリングも無事にすべて終了した。

毎回毎回多くの感動と喜び、そして完璧なプランニングに本当に感謝するばかりだ。
またひとつ記憶に残る素晴らしいツーリングを記録することとなった。


打ち上げは前回お世話になったこのお店。前回同様、この時間から楽しく飲み始める。

念願の「しょうが棒」も手に入れることができて大満足。


あらためてお酒を仕込んで新幹線に乗車。
座席を回転して、6人で静かに「かんぱ〜い!」

さっそく究極のおつまみ「しょうが棒」をいただく。おぉ〜これだ、この味だ! と感激。
こんな御馳走があったのでは、お酒がすすむ、すすむ。

あとは例によって、飲兵衛親父の居酒屋列車となってフィナーレを迎えることになった。

皆さん、本当に楽しツーリングをありがとうございました! 文句なしに楽しい三日間でした!


 
距離: 26.2 km
所要時間: 6 時間 17 分 11 秒
平均速度: 毎時 4.2 km
最小標高: 3 m
最大標高: 483 m
累積標高(登り): 564 m
累積標高(下り): 759 m

(2025/5/7 走行)


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