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プロローグ


今年も「大人の休日倶楽部パス」の時期になった。
毎年このお得なパスを使って東北ツーリングを満喫している。

さて、今年は「越後米沢 十三峠」を巡るプランが持ち上がった。
米沢から村上まで、十三峠の中からいくつかの峠を越える二泊三日のツーリングだ。
参加者はお馴染みのメンバーが集まり、総勢9名の大所帯となった。

十三峠のうち、自分は「榎峠」「大里峠」「黒沢峠」を越えたことがある。(1999年8月)
しかし他の峠は全く未知の世界。行きたくてもなかなか行かれない、憧れの峠でもある。

今回は残された峠のうち、いくつ越えられるかが楽しみでもあった。
コースをよく調べてみると、残された10峠のうち、5〜6峠は越えられそうな感じであった。


十三峠コース概要 http://mount13.web.fc2.com/13pass0.html


 

6月に入ってすでに真夏の気温だ。一ケ月早く夏がやってきた感じだ。
果たしてこんな猛暑の中、峠越えなんてできるのだろうかと不安になってくる。

切符の手配も完了し、後は好天を願うだけとなったのだが・・・出発前になって大変な事態になった。

【6月17日に発生した東北新幹線および山形新幹線内でのE8系の車両故障の影響により、当面の間、山形新幹線は一部の直通列車を除き福島駅で山形・新庄駅方面へ折り返し運転を行っています。このため、山形新幹線をご利用予定のお客さまは一部の直通列車を除き福島駅でのお乗り換えが必要となります。

なんと、乗車予定の新幹線「やまびこ131号」「つばさ131号」が運休となってしまった!
急遽、後続の「やまびこ133号」に変更しようという案になったが、実は出発は平日の朝だ・・・通勤ラッシュが!

この時間に自宅から東京駅へ向かうには、都会の地獄の通勤ラッシュが待っている・・・まず無理。乗れない。
どちらに乗るにも、早朝に東京駅へ行って数時間待機するしかない。
ということで、それならば早朝の「つばさ121号」で行こうというメンバーが出てきた。

この列車なら米沢まで乗り換えなしだ! これにするしかないでしょう・・・でも京都から来るメンバーがいる・・・
結局、今回は先発組(5名)、後発組(3名)、カーサイ(1名)が米沢駅に集合という変則的な形になった。


すでに各人に送付済みの切符を変更する事になって、さらに大混乱だ。
まとめて購入した特別なパスだ。いったいどうやって列車を変更したらいいのかさっぱりわからない。

変更するには、まとめて購入した人のクレジットカードが必要になるのか? 券売機で変更できるのか?
ええい、やっぱり面倒だ、ということで自分がみどりの窓口へ行って列車を変更してきた。簡単だった。

それを皆に伝えて、各自最寄りの駅で変更手続きをしてもらう。
そんな慌ただしい中、出発直前になってやっと切符の変更が終わった。


それから地図を買いに行く。今回は日本橋の「ぶよお堂」へ行ってみた。
ここも地図に関する様々な物が取り揃えられていて、実に楽しいお店だ。

米沢周辺の5万図は持っているが、かなり古い地図なので買い替えだ。
買ってきた5万図に、消えるサインペンでルートを塗ると、全体の行程がよくわかる。

十三峠の位置をあらためて確認すると、自転車で行けるような峠は少ないことがよくわかる。
今回のツーリング、果たしていくつの峠を越えることができるだろうか・・・


2025年7月3日(木)

米沢を味わう


出発の朝、通勤ラッシュを避けるため、始発の電車で東京駅へ向かう。

やはりこれで正解だ。余裕で輪行袋を持って乗車できる。
東京駅には次々に輪行組が集まってきた。


6:12発「つばさ121号」が入線してきた。さっそく輪行袋を置こうとしたのだが・・・
私を除いて他の4名は全員デモンタ仕様だ。フォーク抜き輪行に比べて、輪行袋の厚みがかなりある・・・

座席の後ろに置こうとしたら、なんとこの車両、ステップ付きの車両だ。
フォーク抜き仕様は簡単に収まるのに、このステップが邪魔をして、デモンタ仕様では入らない!

しかたなく、車両を移動してあちこちに分散して、なんとか片付けることができた。
デモンタ組、いつも輪行袋の置き場に苦労している。もっと薄くなる方法はないもんですかね?


8:21 米沢駅に到着。こんな時間に米沢まで来れるのだから、やはり直通運転は素晴らしい。
米沢駅に来るのは2014年11月以来だ。
あの時は駅前でオランダのオーケストラメンバーにジロジロと鑑賞されたっけな。

そんなことを思い出しながら、のんびりと組み立て始める。
ここでカーサイメンバーの一人と合流。総勢9名中、6名が揃った。


後発組3名が米沢駅に到着するまで、まだ3時間近く余裕がある。
ということで、米沢駅周辺のポタリングに出かけることに。

それにしても暑い・・・何もしなくても汗が流れてくる。走っていたほうがまだ涼しい。
しかし走れば熱風を浴びる・・・日影を求めて自転車道へ入っていくが、どこへ行っても暑いものは暑い。


とりあえず午前中は、足慣らしのお散歩だ。
暑さに慣れておくにはちょうどいい練習になる。

最上川に沿った自転車道はなかなか気分がいい。
暑くなければルンルン気分でお散歩することができただろう。


いつものツーリングだと、スタートしてすぐに組み立て、買い出しと時間に追われる。
しかし、今日はまったくその緊迫感がなく、適当に道を選びながらのポタリングだ。


決してよく整備された自転車道とはいえないが、どこまで行けるのか適当に走り続けてみる。


周囲は広大な田畑が広がる。見渡しても高い建物が全くない。
おかげで日影もなく、直射日光をふんだんに浴びて、路面からの照り返しもかなり厳しい。


冷たいものを仕入れて休憩しようと、コンビニに逃げ込む。
コンビニの外の室外機の風、これがなんと涼しい・・・あまりに気温が高いと、この風さえも涼しい!
ガーミンのセンサー温度は、なんと39度にもなっていた。


絶好の東屋を見つけて休憩タイム。ようやくいくらか涼しい場所でクールダウンだ。
とにかく危険な暑さだ。こんな時にアウトドアを楽しもうなんて、本当はやめた方がいいのかもしれない。
さて、のんびりポタリングを楽しんで再び米沢駅へ戻る。


米沢駅へ戻ると、構内は結構にぎわっている。というより、やはり列車運休の影響が大きいようだ。
掲示板の運休状況を確認して、右往左往する人もいる。利用者にとってはかなりの影響が出ているようだ。

定刻より少々遅れて「つばさ133号」が到着した。後発組の3名と無事に合流だ。


米沢と言えば、もちろん「米沢牛」! 前回来た時も米沢牛を堪能した。
全員揃ったところで、まずはランチタイムだ。もちろん前回お世話になった「黄木(おおき)」へ。
先ほど米沢駅に戻る際に9名分予約しておいたので、待つことなくすぐに案内された。


ツーリングの開始から、なんて贅沢な昼食なのだろう!
きっと今回のツーリング、大成功に終わるに違いないだろう・・・とこの時は全員ご機嫌だった。

それにしても、美味しそうですね! やっぱり、米沢へ来たならこれをいただかないとね!


サイクルハウス前山 再訪


満腹になってまず向かったのが「サイクルハウス 前山」。

残念ながら一昨年の12月にご主人が急逝されてしまい、お店も閉店となってしまった。
2014年に訪れた時にお世話になり、再訪を楽しみにしていたのにこんな形になってしまった。


2014年11月に訪れた時の記録を読み返すと、実に楽しかった思い出に溢れている。

ご主人も我々の訪問を快く歓迎していただき、店の前に並んだランドーをじっくりと鑑賞していたのを思い出す。

https://tougehenoshoutai.sakura.ne.jp/photoguide/2014_11_hibaratouge/hibaratouge.htm


店の前で撮った記念写真が貴重な思い出だ。
シャッターが閉まって店名も消えてしまったお店の前で、ご主人を偲んで記念撮影をする。


ケラオ峠(螻尾峠)へ


14:15 「サイクルハウス 前山」をあとにして、ようやく今回のツーリングがスタートした。

松が岬公園、米沢城址、上杉神社を見学してから走りだす。
今日の予定はこれから宿まで35kmほどだ。途中にピークが一つあるがたいしたことはなさそうだ。


総勢9名で走りだすとかなり迫力がある。
隊列も長くなり、先頭と後方、二手に分かれてくる。

交通量は少なく走りやすいが、午後の気温も相変わらず危険なレベルだ。
走っていれば風を浴びて涼しさを感じるが、それでも気温は35度前後もある。


暑くて何もかも溶けそうな中、道路脇に現れたのがさくらんぼの直売所だ。
店先に並んだ見事なさくらんぼが視界に入ると、当然のように先頭が急停車!
なんたってこのおじさんたち、さくらんぼが大好きだ。

お店のおねえさんも、突然現れたこの大集団に思わず驚く。
「試食どうそ〜」と言われて、全員次々口に入れて、「うまい!」と大絶賛! そしてお値段も格安!
となれば、本日の二次会用に大人買い〜! パニアバッグのおかげでいくらでも入ります!


時刻は15:32  本日のピークまで登り100m弱となったところに現れたのがこの標識。
「244 口田沢川西線」「ケラオ峠」と記されている。

あれ? こんなところに峠があるなんて聞いてないよ? ケラオ峠? 知らないなぁ・・・
それにしても「ケラオ」っていったい何? 地図を見ても周囲にケラオの地名はない。ますます知りたくなる。

Yahoo知恵袋には、ケラオ峠の由来が次のように書いてあった。
「螻尾(ケラオ)峠で、螻は昆虫の螻蛄(おけら)のことだから、螻尾はオケラの尾です。」
本当は地元の人にでも聞いてみたかったが、人の姿もないので「オケラの尾」で納得する。(螻尾峠)


一気に雰囲気のいい峠道に変わった。

前半の走りからは想像できないほど、ランドナーの世界に早変わりだ。
木立の中に入るとやはり涼しく、湿った路面と逆光の光が峠の雰囲気を盛り上げる。


実に気分のいい登りだ。勾配も手頃で、静かでじっくりと登りを味わえる。
この道を利用する車はほとんどなく、サイクリストのための小さな峠と言ってもいいだろう。


一気に登り詰めてはもったいない。
美しい道筋が続く辺りで後続を待って撮影する。


15:52 小さな峠なので、すぐにピークが現れた。峠のピークは殺風景で、峠を示すものは何もなかった。
せっかく素敵な峠道だっただけに、何か峠を示すものを写真に収めたかった。


少々ウェットな路面に注意しながらケラオ峠の下りに入る。
こんな小さな峠だから、ダウンヒルもたいしたことはないだろうと思っていたが、予想外の下りだった・・・

下り始めてすぐに、道幅の広い最高のダウンヒルが現れた。なんだ、この贅沢な下りは・・・
そんな素晴らしい「ケラオ峠」の下りを動画で紹介しましょう。

●Youtube 動画 ケラオ峠のダウンヒル
https://youtu.be/FOBkebyK5eU

諏訪峠へ


予想外に素晴らしかった「ケラオ峠」。
まったくその存在を知らなかっただけに、皆「いい峠だね!」と感激だ。

日が傾き始め、最後の峠「諏訪峠」を目指す。このツーリング初めて、十三峠の一つだ。


道幅の広い、直線的な登りの先に「諏訪峠」のピークが現れた。
「ケラオ峠」に比べて、峠越えの雰囲気はまったくない。


峠は川西町と飯豊町の境になっていて、交通量も多少ある。

「諏訪峠」を示すものはどこかにあるのだろうか? 道路脇にはそれらしいものは何も見当たらなかった。
峠からは山道があるようで、それを登っていくと展望台があるらしい。


二つの峠を越えて、あとは宿へ向かうだけとなった。

走った距離も、登った標高差もたいしたことはないが、実に充実した一日だった。

全身汗だく状態で宿に到着。すると宿の入口に「コインランドリー」の大きな幟がなびいているではないか!
ありがたい、全部洗濯できるぞ〜! 着るものが汗だくでは、明日以降困ってしまうから本当に助かる。


とにかく一日中暑かった。部屋に入ると、汗だくの衣類をすべて大型洗濯機に放り込む。
みんなでまとめて洗濯すれば安いものだ。乾燥機もあって、もう完璧の仕上がり〜!

今宵の宴は、なんと初めての円卓の登場だ! こんなの初めての経験。
宿の配慮で、全員の顔がよく見えるようにと、円卓にしてくれたようだ。
確かに皆さんの顔がよく見える。そして会話が一つになる。実にいい!

ビールがうまい。これだけ汗をかくと、いくらでもビールが飲める。
ランチも最高だったけれど、夕食の御馳走も文句なしだ。時間があればいくらでも食べていられる。


いよいよ最後のお楽しみは「さくらんぼ二次会」だ。
冷蔵庫で冷やしたさくらんぼがとにかくうまい! 次々手を伸ばしておいしいさくらんぼをつまむ。

初日からこのペースで、果たして三日間体力が持つのだろうか、と心配になるほど元気な面々。
とにかくよく食べ、よく汗をかき、そして笑いっぱなしの一日目だった。



 
距離: 46.3 km
所要時間: 7 時間 42 分 08 秒
平均速度: 毎時 6.0 km
最小標高: 235 m
最大標高: 418 m
累積標高(登り): 269 m
累積標高(下り): 263 m

(2025/7/3 走行)


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