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2025年11月28(金) 後半


佐柳島(さなぎじま)

瀬戸内海に浮かぶ塩飽(しわく)諸島に位置する佐柳島は、香川県多度津郡にある多度津港からフェリーで約1時間で到着する島だ。美しい瀬戸内海に浮かぶ、周囲わずか6.6kmしかない島に暮らす島民はわずか40人ほど。長崎港と本浦港の2つの港があり、それぞれの港に分かれるようにして約100匹ほどの猫が暮らしている。
https://note.com/yamatotransport/n/na106cede221d



午前中に讃岐うどんを三杯も食べた。
今回はうどんを食べに来たのかと思われるがそうではない。本当の目的はこの島へ渡るためだ。

2016/10に高松港から男木島へ渡った。そう、この島も猫の島で有名だ。
猫好きなら一度は「猫の島」へ行くべきだ。もう別世界が広がっている。
●男木島 https://tougehenoshoutai.sakura.ne.jp/photoguide/2016_10_ogijima/ogijima.htm

佐柳島へ渡るフェリーはわずかしかない。
この島だけが目的なら、朝一で島へ渡り最終便で戻ってくればゆっくりできる。

しかし午後から島へ渡るとなると、14:00→14:50、17:10→18:00 という方法しかない。
島にはたった2時間しか滞在できないが、小さな島だ、これでもたっぷり猫と過ごせるだろう。

佐柳島は一周できる道がない。島の東側だけしか道がない。
隅から隅まで見て回っても、往復で約7kmしかない。2時間で歩くのは厳しいが、自転車があれば十分だ。
島巡りはやはり自転車が便利だ。船に乗るのも簡単だし、島の全てを見て回れる。


佐柳島へ渡るフェリー乗場は、ホント小さな乗場だ。
すでにフェリーが停泊しているが、まだ時間前なので乗ることはできない。
小さな切符売り場も閉まっていて、担当の方がやってくるのを待つしかない。

切符売り場にはこんな注意書きが・・・「犬・猫 片道500円」とある。
自転車は片道270円なのに、動物が500円とは・・・どういうことなのだろう?


乗客は地元の方が5名程、観光客が自分を含めて5名だけだ。もちろん自転車は自分だけ。
手すりに簡単に縛ってもらって出航。途中、高見島へ立ち寄り、約50分の船旅が始まる。

ツーリングに船旅が加わると、旅の思い出がぐっと深まる。
そして小さな島を訪れると、別世界の魅力に引きこまれる。だから島巡りはやめられない。


いきなり視界を圧倒するのが「オーシャン・ネットワーク・エクスプレス(ONE)」のコンテナ船だ。
「ONE」とは日本の大手海運3社(日本郵船、商船三井、川崎汽船)が2018年にコンテナ船事業を統合して設立した、日本の世界有数の外航コンテナ定期船会社だ。

競争の激しい世界の海運会社に対抗するために、日本が総力をあげて作り上げたものだ。
自分は日本郵船、商船三井の株主なので、この「ONE」に対する思い入れは相当なものだ。
まさかここで、こんな近くでコンテナ船を見れるとは思っていなかったので、もう興奮しまくりだ。

「ONE SERENITY」はとにかく巨大だ。あきれるほどデカイ! 
これにコンテナを満載したら、いったいどれぐらい迫力があるのだろう!


そして反対側には商船三井の自動車運搬船、「LAZULITE ACE」の姿だ。
自動車運搬船独特の船体、美しいブルーの塗装が鮮やかだ。


そしてさらにその先には、日本郵船の自動車運搬船、「AZALEA LEADER」も見える。
もう、巨大船好きにはたまらない眺めだ。とにかくその迫力たるや、想像を絶する!


巨大船の間を通り抜けていく佐柳島フェリー。こんな贅沢な船旅も初めてだ。
日本の船会社、これからも頑張ってくれ〜 株主としてずっと応援しますからね〜


瀬戸内海の海は穏やかだ。風もなく、波もない。
いくつもの小さな島を眺めながら、小さなフェリーは佐柳島へ向かう。

途中立ち寄る高見島で数名の島民を降ろすが、その操船技術が神業だ。
接岸時間はほんのわずかだ。船は接岸したかと思えばすぐに島民を下船させ、あっという間に動き出す。

写真を撮っていると、あっという間に佐柳島が近づいてきた。
さあ、いよいよ憧れの猫の島、佐柳島だ!

Youtube動画(1分57秒) 多度津フェリー(多度津港→佐柳島) https://youtu.be/FmUKYrFK4uo
 


フェリーを降りて、自転車を押していくと、いきなりこんなシーンが待っていた。
フェリー乗場、切符売り場周辺には猫たちが集まってきている。

そしてやってきた人に向かって、ゆっくりと近づいて来るではないか! あぁ、やっぱりここは猫の島だ!
溢れかえるほどの猫ではないけれど、あっちからも、こっちからも元気な猫が集まってきた。

スゴイ! やっぱり猫の島はスゴイ!
大きなフライパンが食器替わりのようだ。あっちにも、こっちにもたくさん用意されている。


さあ、これから2時間、たっぷりと猫と戯れさせてもらおう。
まずはかわいい猫のオブジェと写真を撮らないと。佐柳島へ来た証拠だ。

そして用意してきた「減塩こざかな」を準備する。
我が家の猫たちのお気に入りを持ってきてみた。猫ちゃんの健康を考えて「減塩」にしてみたがどうだろう?


ここから登場するのは猫ばかりだ。猫好きでなければ見るのは遠慮した方がいいでしょう。

どこを歩いても猫に出会う・・・それが猫の島だ。
特に人の集まるところには猫たちも集団で潜んでいる。

自転車でゆっくりと走りだす。左右を注意して見ていくと、いるいる・・・あっちにもこっちにもいる。
猫と目が合えば、向こうから近寄ってきてくれる。なんだなんだ、この人なつっこさは!


どの猫も皆元気で健康そうだ。体格もよく、毛並みもいい。きれいなお顔をした猫たちが次々現れる。
そして、空腹そうな猫があまりいない。だからみんなおとなしくお行儀がいい。

自分で猫を飼っている人が見れば、この島の猫たちはかなり管理されている、とすぐわかるはずだ。
猫同士の争いも無ければ、食べ物を求めてケンカすることもない。皆仲が良さそうに見える。


持ってきた「こざかな」は、まあまあ好評だった。
多くの観光客はきっとカリカリを持ってくると思ったので、自分はちょっと変わった「こざかな」にしてみた。

それにしても人間に慣れているし、人間を怖がらない。自転車で近づいても全然逃げようとしない。
こんな猫たちだから、すぐにお友達になれる。座ればすぐ横にやってくるし、抱っこすることもできる。

きっと島民の方の日頃の接し方が素晴らしいのだろう。人間にこれほど慣れている猫も珍しい。


同じ種類の猫が目立つ。そして茶トラと三毛猫が少ないように感じる。
我が家の猫が、茶トラと三毛猫なので、なんだかちょっと寂しい。

ようやく見つけた茶トラは、他の猫に比べて控えめだ。遠巻きにしてこちらを眺めている。
やっぱりこの世界も派閥があるのだろうな。少数派閥は控えめなのかもしれない。

港以外は島民の姿はまったく見えない。本当に静かで、ひっそりとした小さな島だ。


岩合さんは、こうした堤防で「ジャンプする猫」を撮影するのだろうな。
意外と簡単に撮影できるのかと期待してきたけれど、とんでもない・・・

まずこの堤防の上に来てもらうだけでも大変だ。
おなかの空いている猫ちゃんならすぐに来てくれるだろうが、皆それほどお腹が空いていない・・・
やっと乗ってくれたこの猫ちゃんも、ジャンプするほどの元気はなさそう。じっと海を見てるだけだ。


それでもやっぱり海と猫は「絵」になる。

少しでも岩合さんらしく撮れないかと、あれこれやりながら何枚も撮影する。
猫ちゃんはさすがにモデル慣れしているのか、時々向きを変えてじっとしていてくれる。さすがだ!


10m進むたびに猫に出会い、「こざかな」をあげて戯れる。
なかなか島の先端まで行くのが大変だ。果たして2時間で足りるだろうか? ちょっと心配になってきた。

なんと郵便局が現れた。この島に郵便局がある? とよく見るともう廃止されたようだ。
建物は立派に残されているので、一目見ただけでは営業中に見える・・・が、周りは猫のたまり場だ。

近づくと、あっという間にこれだけの猫が集まってきた。もう、凄すぎ〜
そしてその先の唯一の宿「ネコノシマホステル」でやっと三毛猫ちゃんに出会った。


残念ながら今日は休業日なので中に入ることができない。
できればここで一服したいと思っていたのに残念だ。きっと最高のカフェなのだろうな。


「ネコノシマホステル」を過ぎると、急に猫の姿が見えなくなった。
やはり人のいる場所に集まっているのがよくわかる。

島の北端までやってくると、風景が一変してくる。


島の先端には、美しい海とともに、多くのお墓といくつかの神社が並んでいる。
ここには猫の姿を見ることはできなかったが、きっとどこかに潜んでいるのだろう。

猫ばかりではないこの島の特徴が現れる光景だ。
島の文化が大切に守られているということだろう。

両墓制

ここ、佐柳島には「両墓制」の風習が残る土地。
両墓制とは、遺体を土葬する「埋(うず)め墓」と、石塔を建てて霊を祭る「詣り墓」、2つのお墓を建てる風習です。
遺骸は穢(けが)れているけれど、ある期間を経た死者の霊魂は清浄なものとする観念からだと考えられています。
https://tabijo-bp.com/?p=570



いくつかの民家はあるが、人の気配は感じられない。
島では珍しい乗用車も置いてあったが、車が走る姿は結局どこにも見ることはできなかった。

やはり2時間では足らなかった。そろそろ港に戻らないと最後のフェリーに間に合わない。
と言っても、自転車ならあっという間に港まで行けるので、ギリギリまで遊んでいられる。


帰りの自転車用の切符を買う。
切符売り場は島の高齢の方が担当していて、猫の面倒を見ながら切符売り場を任されている。

「もうすぐフェリーがきますよ〜 最後のフェリーですよ〜 乗り遅れると帰れませんよ〜」と声をかける。
行きのフェリーで一緒だった面々が再び集まってきた。皆、間違いない猫好きの方ばかりだ。

フェリーを待っていると、こんなかわいい猫ちゃんが自転車に近づいてきた。
「帰っちゃうの?」とでも言っていそうな様子だ。こんな姿を見せられると辛いね、まったく。


帰りのフェリーがまた素晴らしかった。ご覧の通りの夕焼けだ。
瀬戸内海の夕日は素晴らしいと聞くが、こうして船から見る夕焼けは格別だ。

なんて素晴らしい船旅、島旅だったのだろう。
たった2時間ではあったが、その何倍もの感動を味わった。


多度津港に戻ってくると、もう街は真っ暗だ。多度津駅までちょっとしたナイトランだ。
これから岡山まで輪行してホテルに泊まる。

なんて素敵なツーリングだったのだろう。
「サンライズ」に始まって、「サンセット」で終わった、出来すぎの一日だった。



女ひとり旅 猫島(香川県・佐柳島)

帰宅後、佐柳島のことを調べていたら、この方のYoutubeを見つけた。
まさにこの方と同じ心境で佐柳島を旅してきた。

この動画を見れば、島の素晴らしさ、猫たちのかわいらしさが本当によくわかる。
動画撮影のテクニックも素晴らしく、編集も素晴らしい、クオリティの高い作品です。

https://www.youtube.com/watch?v=wLt1hTF5tUw



距離: 7.1 km
所要時間: 2 時間 14 分 7 秒
平均速度: 毎時 3.2 km
最小標高: 0 m
最大標高: 6 m
累積標高(登り): 8 m
累積標高(下り): 8 m

(2025/11/28 走行)


2025年11月29(土)〜 30(日)


翌日から二日間は、岡山大学で、ある講義を聞いてきた。
そもそも今回の旅はこれがメインだったのだが、あまりに昨日のツーリングが素晴らしすぎた。

しかし、岡山大学の紅葉も圧倒されるほどの美しさだった。
見事としか言いようがない「いちょう並木」。こんな素敵な大学があるんだ、と驚いた。


広大なキャンパスは、どこを歩いても見事な紅葉景色が広がっている。

歩くだけで幸せ、見ているだけで幸せ、本当に心癒される空間だった。


サンライズを含めれば三泊四日の長い旅だった。
最後はいつものように、グリーン車で旅の余韻に浸る。

しかしいい旅だった。
そして本当に思い出に残る島だった。またいつか訪れたい。


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