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OSMO ACTION4(DJI)


ついにザクティとお別れする時がやって来た・・・


最初にザクティを使い始めたのが2004年。
次々と機種を変更して、最後に落ち着いたのがこのDMX-CS1というザクティだ。
このCS1は2011年からずっとツーリングに使用してきた。そして2023年9月に役目を終えることになった。

一つの機種でなんと12年間も使い続けてきたことになる。
進化の激しいデジタル機器の世界で、12年も第一線で活躍できたことに驚くばかりだ。
それだけ自分のツーリングスタイルにぴったりだったと言っていいだろう。


CS1は、デビュー当時は衝撃のムービーカメラだった。そのサイズ、重さ、画質の良さに腰を抜かすほどだった。
ほぼ手のひらサイズ。そして胸ポケットにすっぽり収まってしまうほどの薄さ。

本格的なビデオカメラと比べられてはさすがに画質ではかなわない。
しかしこのサイズで、ある程度納得できる映像が撮影できるのだから文句は全くなかった。


ツーリング中は、ズボンのポケットやジャージの後ポケットがいつも定位置だった。
液晶画面を開くとスイッチONになるので、片手操作で顎を使って液晶画面を開く。そして撮影開始だ。
パッと取り出し、パッと閉じてしまう。本当にここぞという時にすぐに撮影することができた。


どんなシーンでもいつもザクティを手放さなかった。ツーリングの醍醐味は、その臨場感にある。
写真では絶対に味わえない動画の世界は、一度取りつかれたら抜け出せない。


この機種は自分の望みを叶えてくれた唯一の機種だ。
動画が撮れて、静止画も撮れる。コンパクトでツーリングの邪魔にならない。

十分な光学ズームがあって、画質が良くて、バッテリーが長持ちして・・・もう不満が何一つなかった。
帰りの車内や夕食時には一人シアターになって、その日のツーリングを振り返ることもできた。


きっとこの先もずっとこのザクティを使い続けるだろうなと思っていた。
すでに生産が中止され、市場に出回る量も激減してきた。

ただしいつか壊れるだろうと思って、日頃見つけた時には予備機としてヤフオクで手に入れてきた。
結果、なんと3台の在庫を抱えることになった。もうこれで安心だ。一生ザクティを使い続けられる。

ザクティの動画ファイルは、撮影後の編集も楽だった。
動画編集ソフトで、編集からブルーレイ作成に至るまで、慣れてくれば一日で終わった。

楽しかったツーリングの思い出を、数日で一緒に走った仲間に送ることができた。
もう、なにも不満のない、究極のムービーカメラだった・・・のだが・・・


アクションカメラの衝撃!!


巷で、アクションカメラが人気なのはわかっていた。
多くのユーチューバーが、アクションカメラを使って素晴らしい映像を撮影しているのは知っていた。
特にスポーツ動画では、その信じられないような映像に釘付けになることもしばしばだ。

自転車ツーリングの世界に、こうしたカメラが必要だろうか? と思っていた。
友人が送ってくるGoProの登山映像の美しさは見事だった。しかし、自分にはピンとこなかった。
銀塩一眼レフから写真の世界へ入り、手巻き8mmカメラから動画の世界に入った自分にはピンとこなかった。

カメラはやはり両手で構えて、パン・チルトを自分で操作し、光学ズームで迫力ある映像を残す・・・これが基本。
こうしたアクションカメラは、何かに固定したまま撮影し、ズームも無ければパン・チルトもない・・・
自転車のハンドルにセットして動画を投稿しているサイクリストもいるが、作品としては全く面白くない。

どうせ撮影するなら、手持ちカメラのように構図を変え、まるで専属カメラマンがいるかのような映像を残したい。
手振れもなく、超高画質で、前面も、背面もしっかり撮影したい・・・
そんなムービーカメラ、あるかい! と思ったら、なんとありました! それがこいつです。


OSMO ACTION4の凄さは、様々なサイトで見ていただきたいが、それよりもこのネックマウントだ。
そもそも”ネックマウント”って何? ってところからはじまる。

これまでビデオカメラは、どこかにしまっておいて、撮影する時に取り出すのが普通だった。
自分のザクティも、ジャージの後ポケットに入れていた。ところが、こいつはデジカメの様に首からぶら下げられる。
このアクションカメラと、ネックマウントの組み合わせが、ザクティを引退に導いた。

首から下げるムービーカメラは初体験だ。
ハンドル固定のアクションカメラは面白くない。なんとか手持ちと同じような使い方ができないものか?
多くの動画を参考にしているうちに、このネックマウントに出会った。

そうか、こんな手があったのかと衝撃だった。
頭に付けたり、胸に付けたりと装着方法は色々あるが、首とは予想外だった。
頭につけると、自分の頭の動きに当然カメラが向いてしまう。

自転車に乗車中は、前後左右に視線が動く。頭につけるとそれだけカメラが動いてしまう。
また、胸につけると視線が低いし、前方だけしか撮影できない。上下左右、そして後方は撮影不可能だ。

ネックマウントは、カメラを持って左右にも上下にも向きを変えられる。
並走している人を撮ることもできるし、青空も足元も撮ることができる。ほぼ手持ち撮影と同じことができる。


現在、ツーリング中の装備はこうなっている。首からは、アクションカメラとデジカメをぶら下げている。
こう見えても、デジカメ254g、アクションカメラ300g、合計554gの重量だ。
ズームレンズをつけたデジタル一眼カメラよりも軽いだろう。

これまではデジカメだけだったので、多少重さを感じるが、それでも首が痛くなるほどの重さではない。
周りから見ると、なんだこの人は? と思える異様さだが、意外と驚かれることはない。
手に持ったカメラは目立つが、こうして体と一体になったカメラはあまり違和感がないようだ。


こんな撮影が可能になった その1【背面撮り】

通常、手持ちの撮影でも無理すれば撮影できないことはない。しかし、相当困難な体勢で撮影することになる。
ましてや、ハンドル固定カメラでは、後方撮影は不可能だ。
ところが、このネックマウントを使えば簡単に後方撮影が可能になる。

カメラを適当に前方に傾斜させて、ネックマウントをくるりと後へ回す。
背中の真ん中に来るように微調整すれば後方撮影ができる。
水平維持機能があるため、多少傾いても画像は水平が維持されている。

右の写真は、こうして撮影した動画から切り出したものだ。どうでしょう、バッチリでしょう。
これは何度か練習を重ねないとうまく行かない。自分も練習してコツを掴んだ。


こんな撮影が可能になった その2【ハイアングル・ローアングル・自撮り】

さらにこんな撮影方法もある。
ネックマウントはある程度の硬さもあるため、自撮り棒のように高く掲げて撮ることもできる。
また逆に下へ下げて撮れば、超ローアングルの撮影もできる。

地面すれすれからの映像は、これまで見たことのない迫力がある。
カメラはひっくり返るが、画像はひっくり返らないで撮影されるところが凄い!

走りながらの自撮りでは、右の写真のような事もできる。
「こころ旅」で火野正平さんが自撮りしているが、ちょっと工夫すれば同じことができる。
カメラはひっくり返っているが、水平維持機能で画像は正常のまま撮影されている。


こんな撮影が可能になった その3【ダートの登り・下り・ナイトラン】

ダートの撮影は困ったものだ。路面が荒れているだけに、撮影していても画像はガタガタ。
片手で走れる所などほとんどなく、撮影できるシーンは限られる。
ましてやダートのダウンヒルなどは、まず撮影不可能だ。片手で撮影しながら下るなど神業だ。

さらにその上を行くのが、ナイトランでのダートのダウンヒルだ。
この状況は、サイクリストにとっても、カメラマンにとっても最悪の状況だ。
かつて、こんなシーンを動画で撮影した人はいないのではないだろうか。

このネックマウントとアクションカメラの組み合わせは、その限界を簡単に越えることになった。
暗さに強いレンズ、強烈な手振れ補正、そして水平維持機能。もう、凄すぎる!


こんな撮影が可能になった その4【ダウンヒルのコーナーリング】

手持ちでの撮影の限界は、ダウンヒルに現れる。
下り始めは片手で撮影できるけれど、徐々にスピードが上がってくるともう限界だ。
ましてやコーナーリングの撮影などは絶対に不可能だ。自分のリスクが高すぎる。

これまでの動画撮影では、コーナーリングの撮影はコーナー入口までが限界だった。
しかし、このACTION4を首からぶら下げれば、そんな限界は関係ない。

自分の視線と同じアングルでコーナーに突っ込む様子を全て撮影できる。
あり得ないような映像を、高画質で残すことができる。これは画期的なことだ。
動画を再生すると、自分でも怖くなるほどの迫力ある映像が撮れている。


このネックマウントのおかげで、これまであり得なかった映像を残すことができるようになった。
カメラの性能も驚異的だが、このネックマウントも本当に素晴らしい。

ネックマウントを首から取り外すには、この丸いボタンを押せば外れる。
はめる時は、上からスライドすればパチンとはまるが、少々慣れとコツがいる。
そしてアクションカメラ本体とマウントの結合部分も画期的だ。

ツーリング中、ほとんどカメラ本体を外すことはないが、このロックシステムがまた魅力の一つだ。
カメラ本体とマウントの結合は、強力な磁石の力で成り立っている。近づけると、パチンと結合される。
外すには両脇のロック解除ボタンを押せばいい。この仕組みが実に快適で、安心・安全だ。素晴らしい!


このネックマウントは、素材がクネクネ曲がる、ある程度の硬さと柔らかい素材で出来ている。
そのおかげで、ある程度自由自在に曲げることができる。
ご覧の通り、ガードレールに巻き付けたり、三脚代わりに使ったりすることができる。

おかげで、デジカメ用の三脚が必要なくなった。マウントを交換すれば、デジカメをセットすることができる。
ただし使っているうちに、デジカメをセットしてセルフタイマーで撮影する必要が無くなった。
というのも、動画の画質があまりに綺麗なので、動画を撮影しながら被写体になれば、後で静止画に切り出せるからだ。


専用のカメラケースもある。これだけお気に入りのカメラとなると、大切に保管したくなる。
走行中は首からぶら下げているからいいものの、走り終えればフロントバッグの中に入れたりする。
レンズや液晶画面がむき出しなので、やはりこうしたケースに入れないと傷だらけになりそうだ。


素晴らしいアクションカメラなのだが、それでもやはり不満はいくつかある。
まずはバッテリーがめちゃくちゃ高い! なんでこんなに高いのかと驚く。
それでも最低予備のバッテリーは持っていないといけないから、充電器とともに買わざるをえない。

充電器もバッテリー3つを充電できる純正があるが、そこまで必要ないのでこんな物を見つけた。
バッテリーの保管と充電を兼ねたものだ。USB-TypeCで充電できる。
すでに何度も使っているが、まったくトラブルなく快適に使っている。

またズーム機能が貧弱なのも不満の一つだ。
光学ズームなどなく、動画ではデジタル2倍という寂しさだ。
これまで、ズームを使って迫力ある映像を撮ってきた自分にとっては、腕の見せ所が無くなってしまった。


とてつもないアクションカメラが登場してきた。
この世界は日々進化し続けていて、次々と新製品が登場してきている。
もう、これで十分と思えるほどの満足度なのだが、同じようなことを昔感じていたと思うと、終わりはない。

あまりにデジタル化し過ぎた映像は、ある意味「味」がない。
手振れもなく、何もかも完璧に加工された映像は、逆に違和感を感じるときがある。

音声はガタガタ言っているのに、画面は全く揺れていない・・・
自分は傾いているのに、映像は傾いていない・・・
どんな苦しい場面でも、画面は冷静にクリアな映像を届けてくれる・・・

なんだか、これでいいのか、それとも人間味がなくなったのかと不思議な気持ちにもなる。
しかし、映像はやはり綺麗なことに文句をいう人はいない。

ツーリングから帰ったら、撮影した映像を編集し、1枚のブルーレイに仕上げる。
一つ一つの撮影したクリップを見ながら、カット、編集し、全てをつなげてドラマを仕上げる。
そうして出来上がったのがこんな作品だ。

楽しかった思い出を、素晴らしい絶景を、再び再現することができる。
やはり、動画の世界はツーリングに欠かせないものだと思っている。

(購入 2023年9月)


おすすめ指数 ★★★★★