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プロローグ 「切符が届かない・・・ 」


今年も恒例の「大人の休日倶楽部パス」の時期になった。
今回は、「津軽・下北」6名で行く3泊4日のツーリングだ。

仲間が切符を手配してくれて、私だけ郵送してくれることになったのだが・・・
千葉から東京まで、通常であれば普通郵便でも3日あれば届くはず。

これまでも普通郵便で、遅れも紛失もなかったので、今回も同様に送ってもらった。
しかし、待てど暮らせど届かない。出発4日前になっても届かない。3日前、2日前になっても届かない。

出発前日の明日届かなければ、自分だけ参加出来なくなってしまう・・・うわぁ一大事だ。
郵便配達員を捕まえて事情を聞いてみると。「今、とても時間かかってます・・・」とのこと。
どこから投函したか詳しい事情を説明してみると、「きっと明日届くのでは?」との答え。

ひょとっして配達局には届いているのかと、だめもとで、かすかな望みを持って局へ行ってみる。
局へ届いていれば明日投函される、と期待したのだが、「そんなの調べられません!」とのこと。当然です。
もう、明日の配達を待つしかない。配達はいつも夕方4時過ぎだ。

もし、配達されなかったら、そこから急いでみどりの窓口へ行って、別途切符を手配しなければならない。
当然費用も無駄にかかる。もう、毎日毎日ハラハラ・ドキドキの連続だった。


そして前日の夕方・・・いつものようにバイクの音・・・玄関のドアを開けて配達員を待つ・・・
配達員とはすでに顔なじみで、事情を話してあるのですぐに郵便物を見つけ、差出人の住所を見て・・・

「これですね! ありました!」「そう!これです!! 明日乗る切符が入っているんです!!」
と笑顔で一杯になり、お互いに感動を味わった瞬間でした。

今回の件で懲りました。普通郵便は、やはりリスクが高いです。いつ届くか見当がつきません。
多少高くても、確実に追跡できる手段で送るべきですね。
消印を見ると5日前の日付だ。どうしてそこから5日もかかるのか?

集荷までは正常だ。そこからどこでこれだけの時間がかかったのだろう? 
いくら人手不足、郵便サービスの見直しと言っても、5日はひどいだろう。
この時期、株主総会のラッシュで、都内は普通郵便の量が膨大に増えた? ということかもしれない。

切符が届き、やっと落ち着いて準備に取り掛かる。
しかし天気は梅雨の時期だけにあまり冴えない。それでも青森地方は日本の中でもまだいい方だ。


2024年6月22日(土)


出発当日の朝、東京駅に今回のツーリングメンバーが次々に集まってくる。
京都から参加のメンバーと合流するために、出発は10:45と遅い新幹線だ。

いつもは早朝の新幹線に乗ることが多いが、この時間帯は物凄い人で混雑している。
6名なので、3列シートを回転させて準備完了だ。


楽しくおしゃべりしていれば、3時間の乗車もあっと言う間だ。
初めて降りる「奥津軽いまべつ駅」。下車したのは我々6名だけという寂しさだ。

この駅は、JR北海道管内の駅にあたるため、追加料金が必要だ。
新幹線の駅とはいえ、この寂しさは尋常ではない。駅前には何もない。人影もほとんどない。
時刻はすでに15時を過ぎている。今日はほとんど移動の一日で、今から龍飛崎まで行ってゴールだ。


ようやく走り出す。
曇り空で気温も涼しい。そして交通量も少なくて走りやすい道だ。
最初に向かったのは「青函トンネル入口広場」。


広場の入口にさしかかると、ちょうど目の前を上りのはやぶさが通過するところだった。
慌ててアクションカメラのスイッチを押して、なんとか撮影することができた。

青函トンネル入口広場

青函トンネルの本州側の入口で、ここから全長53.85キロメートルの世界最長の海底トンネルで
北の大地北海道と結ばれています。
トンネル入口上部の題字「青函隧道」は時の中曽根首相によるものです。
平成27年春に展望台が新たに整備されました。
北海道新幹線が青函トンネルを出入りする様子を間近で見ることができる絶好のスポットです。
https://www.town.imabetsu.lg.jp/sightseeing/tourist/tonneru.html



広場にはすでに先客がいて、カメラを構えて次の新幹線の通過を待っている。
掲示されている時刻表をみると、あと15分後の15:48に、下りはやぶさ23号が目の前を通過するではないか!
こんなチャンスは滅多にないので、絶好の撮影ポイントを探して待ち構える。

そして定刻ピッタリにはやぶさ23号の姿が現れ、青函トンネルの中に消えて行った。
なんだかいきなりスタート直後からショータイムを観れて感激だ。
もう、このトンネルの先は北海道なのかと思うと、やっぱりとんでもないトンネルだな、とつくづく思う。


さてさて、ここで今回参加するメンバーの愛車を紹介しておこう。
6台中5台がTOEI、そしてエルスが1台というラインナップだ。
今時、これだけのランドナーが集まって走る姿も珍しくなった。目の保養になる「魔物」たちの集まりだ。


三厩駅に立ち寄る。駅舎は綺麗で、駅前も大きな広場になっている。
私を除くメンバーが前回この地を訪れた際、この駅で旅を終えて輪行した駅だ。


当時はまだこの津軽線も運行していたのだが、2022年8月の災害以降、ずっと不通のままだ。
そしてついに廃線の流れが決まったようだ。

一日にわずか5本の運行。果たしてどれだけの乗客がいたのか。
復旧には膨大な費用がかかり、維持費用も膨大だ。全国各地のローカル線の存続問題と同じだ。


三厩駅にいた地元の方にお話を聞き、そして龍飛崎を目指す。
いよいよ津軽半島の先端までやって来た。

自分はこの地を走るのは2回目だ。
1978年8月に、キャンピング装備の東北一周ツーリングで来たのが最初。
あれから46年。周囲はすっかり綺麗になったが、美しい自然と厳しい環境はそのままだ。

当時は竜泊ラインなんてなかったから、日本海側の小泊から増泊峠を越えて三厩へ抜けてきた。
三厩の民宿に泊まり、翌日荷物を預けて龍飛崎を往復した。

龍飛崎から見える長い海岸線は、あの「津軽から江差へ」(綿貫益弘)の舞台が広がっている。
綿貫さんはこの海岸を彷徨ったのか、と自分の目で確認したのを覚えている。


「あじさいロード」と名づけられたこの道、見頃を過ぎてしまったのか、ちょっと寂しい感じだ。
奥へ奥へと進んでいく。津軽半島最奥地へ進んでいく。
何もない。人も、車も、建物もない。あるのは風力発電の大きな「羽根」が静かに回っている姿だけだ。


半島特有の景色になってきた。行けば行くほど何もなくなってくる。どんどん寂しくなってくる。
もし一人で走っていたら、相当寂しい所だろうが、仲間と楽しく走っていれば全く違う世界だ。


日もすっかり傾き出したころ、龍飛崎が見えてきた。そして今夜の宿もすごそこにある。
あまりに有名な「津軽海峡冬景色」の唄が聞こえてくる。

自分が初めて来た1977年8月当時は、もちろんこんな立派な歌謡碑はなかった。
今ではすっかり観光名所になっているようで、ボタンを押せば名曲が大音量で周囲に響き渡る。
この地で、この景色を目の前に、この唄を聴くなんて旅情満点というしかない。


晴れていれば、対岸の北海道の雄大な景観を楽しむことができるのだろうが、今日はちょっと残念だ。


すでに時刻は17:18 龍飛崎の上まで行くには時間切れだ。
明日、早起きして龍飛崎を往復しようと、このままホテルへ向かう。


こんな龍飛崎の突端に、こんな大きなホテルがある。
やはり石川さゆりの効果は絶大なのだろうな。
あの1曲がどれだけの経済効果を生み出しているのだろうと思う。


初日のプロローグランは無事に終了した。さすがに遠かっただけに、走った距離はわずかだ。
しかし旅情満点の雰囲気、半島特有の景観、美しく厳しい海岸線は、さすが津軽半島だ。


今夜は団体客と一緒の夕食となった。
大型バスでやって来たツアーの面々。きっと龍飛崎から同じように下北へ渡るのかな?
まあ、そんな賑やかな宴の中、我々も美味しい料理にお酒がすすむ。

初日はお遊びみたいなコースだったが、明日はかなり厳しい一日だ。
まずはいい足慣らしとなった一日であった。


補足 「津軽から江差へ 」(・綿貫益弘 著 ・百合出版  ・1978/5)

この紀行文は、NC誌 No.96(1972/11)に掲載された。(実走 
1972/8/20-23)
とにかく衝撃の紀行文だった。いったい何をしているんだ、というぐらいの驚きだった。

綿貫氏が実走してから6年後、自分も同じ地を訪れることになった。
同じ景色を少しでも味わおうと、小泊までやって来たが、その先は増泊峠を越えるしかなかった。

そして辿り着いた龍飛崎。
下の写真は、1978年8月に訪れた時の龍飛崎からの眺めだ。
この海岸線を綿貫氏は彷徨い、小舟に乗って龍飛崎の港に上陸した。

以下の文書は、自分のHPで紹介している一文だ。(東北キャンピング 1978/8)



寂しい所だった。そして北の果てだった。東北の寂しさの頂点が、ここ龍飛岬だった。
それぐらい、遠く、果てしなく、何もなかった。
この海岸を、この海を、この景色を綿貫氏は眺めたのか・・・
どこをどうやってさまよい、どうやって辿り着いたのか・・・信じられない。
あまりに壮大な物語に、ただただ唖然とするばかり。
やはり、自分の目で見ないとだめだ。読むのと、見るのでは重みが違う。
すごいサイクリストだ。


(龍飛崎 吉田松陰記念碑)


距離: 25.9 km
所要時間: 2 時間 17分 22 秒
平均速度: 毎時 11.3 km
最小標高:  7m
最大標高:  130m
累積標高(登り):  336m
累積標高(下り):  298m

(2024/6/22 走行)


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