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2024年6月23日(日)


日本列島はこの時期、雨、雨、雨。それでも幸運なことに青森地方だけは曇りマークだ。
早朝の龍飛崎。ホテルの部屋からの眺めは、ご覧の通り真っ白な世界だ。

早起きして龍飛崎の上まで行こうと思っていたのだが、これでは何も見えない・・・
せっかくここまで来たのだが、諦めるしかない。やはり昨日行っておくべきだった。


元気に揃った面々。朝食も完食し、今日は気合の入った一日が始る。
今日の予定は、前半・後半二つに分かれる。

前半は、前回のメンバーが見学できなかった「青函トンネル記念館」を見学し、蟹田港からフェリーに乗船。
後半は、脇野沢港から海峡ラインを越えて宿のある福浦へ向かう。

しかし、どう頑張っても宿への到着は18時を過ぎる。標高差、勾配、距離を考えるともっと遅くなるかもしれない。
今日のポイントは、後半の走りにどれだけ体力を温存できるかにかかっている。


朝靄の中、オープンと同時に「青函トンネル記念館」に入場する。
前回コロナ禍で乗れなかった「もぐら号」に何としてでも乗りたいという、強い思いで再びやって来た。

今回のツーリング、まず津軽半島に来たのは、このリベンジのためだった。
自分は、こんな施設の存在も、モグラ号も知らなかったので、いったい何のことかと思っていたのだが・・・
それはそれは、素晴らしい体験ができる「テーマパーク」だった。

海面下140mまで降りていく「もぐら号」。そしてその地底に広がる別世界。
ありとあらゆる苦労と困難に立ち向かった人びとのドラマが伝わってくる。
黒部ダムも凄かった。そして、この青函トンネルも凄い。人類の英知と努力の結晶だ。


見学を終え、地上に戻ってきた。
さあこれから一日、こちらも厳しい走りが待っている。
まだまだ真っ白な世界の中、気を引き締めて蟹田港へ向かう。


蟹田港へはずっと海岸線を行く。
大海原を左手に眺めながら走る海岸線は、平坦路で快適だ。


明るくなってくると、海の碧さが一段と美しくなってくる。
日本列島各地で雨の情報ばかりだが、ここ青森だけは別世界だ。なんて恵まれた場所にいるのだろう。
まだまだ前半戦、美しいシーサイドコースにどっぷり魅了されながら走る。


11:36 前方に下北半島が大きく見えてきた。これからフェリーで渡る脇野沢港もあの辺りだ。
そして対岸をよく見ると、白く見える海岸線は明日訪れる「仏ケ浦」ではないか!
近くに見えるが、ここから行くには果てしなく遠い距離がある。

すっかりいい天気になった。そして海も本当に穏やかだ。
なんで青森だけこんなに天気がいいのだろう。運が良すぎるんじゃないか・・・と不吉な予感・・・


当初の予定では、蟹田港に着いたら海鮮丼でも頂いてからフェリーに乗る予定だったのだが・・・
港まで来てみると、どうもそんな簡単にご馳走にありつけそうもない雰囲気だ。
目指したお店も営業していないようだし、港にも食事ができるところは限られている。

こうなれば贅沢は言っていられず、まずはチケットを購入して2Fの中国料理店へ行ってみる。
ところが「ただいま満席です」との表示が! どひゃ、ここで何も食べられないと困っちゃうんですけど・・・
諦めずに交渉してみると、運よくOKの返事をもらうことができた。やっぱり我々は運がいい!


むつ湾フェリーに乗船する。大型のフェリーと違って、乗船するのも簡単だ。
自分で走って行って、船内に入ったらチケットを係員に渡す。

そして係員の指示通りに自転車を所定の場所に持って行く。
数名の係員が手際よく我々の「魔物」を固定し始める。その作業は神業だった。


自分もこれまで何度となくフェリーに乗船したが、今回の扱いが一番見事だった。
船会社によって自転車の扱いは千差万別だ。

壁に立てかけてロープで固定することが多いが、中にはサイクルラックを用意している所もある。
他には毛布を敷いてそのまま寝かせる方法もある。


しかし、今回のフェリーは今まで見たことがない固定方法だった。
なんと見事なロープワークで、サドル、ペダルを利用して、自転車を立たせたまま固定する方法だ!
これには驚いた。どうやって考えたのか? それとも経験豊富なのか? こんなの見たことない。

きっと、多くのサイクリストがこのフェリーを利用しているのだろう。
そこから考え出された方法が、こうした固定方法なのだろうと想像される。
ある程度台数が揃わないとできない固定方法だ。


前半戦はここまで順調だ。しばらくは船旅を楽しむことができる。
やはり旅の途中に船旅があると、感動も
思い出もより一層深まる。

天気に恵まれ、楽しい仲間と一緒の船旅となれば最高だ。
約1時間の船旅。忙しく船内を歩き回ると、こんなイルカの写真を見つけた。


むつ湾フェリーから撮ったイルカの写真が飾られている。どれも皆素晴らしい作品だ。
こんなに近くでイルカが観れるのか!と驚くばかりだ。
まさか今日はいないかな? と探すがそこまで運が良いわけがない。

それどころか、その横にこんな「お知らせ」が掲示されてあった・・・
「全面通行止めのお知らせ」

なんと、脇野沢港から我々が予定していた海峡ラインが、途中で通行止めになっているという。
ここまで全くそんな情報を得ることもなく来てしまい、ここで初めて知ることになった。
「通行止め」と言われても、そう簡単に諦める我々ではないが、念のためにネットで調べてみた・・・


車が通れなくても、歩行者や自転車が通れる場合はいくらでもある。
これまで完全に自転車が通れなかったケースはごくまれだ。ほとんどの場合、通過できている、いや通過している。

今回も、「大丈夫でしょ、行けますよ」なんて感じだったが、ネットの情報を見ると、結構厳しそうな感じだ。
念のため、宿に電話して状況を詳しく聞いてみると・・・


地元の人も、通行止め個所の様子までは把握していないようで、迂回することを勧めてきた。
車やバイクは皆迂回している。宿の方も海峡ラインは通らず、川内から迂回したほうが楽だと言っている。

地図で表示するとこのようになる。
もともと予定していたのが青いライン。予定の時刻までGPSに落とし込んである。

これでもノントラブルで、そして気合を入れて到着が18時となっている。これでもギリギリだ。
しかし、迂回となるとこの赤いラインを行くことになる。約10km余計に走ることになる。
さあ、どーする? 皆で緊急会議が始まった。


●一発勝負に賭けて、通行止め個所を突破する。うまく行けば、予定時間通りにゴールできる。
(万が一、突破できなかったら、脇野沢港に戻って迂回路を行くという、最悪の結果になる)

●安全策をとって、川内からの迂回路を行く。宿到着はさらに遅くなる。
(距離は長くなるが、標高差も少ない。脚力に不安を抱えるメンバーもいるので、こちらの方が安心)

結局、安全策をとるしかなかった。やはり、リスクが少しでも少ない方法を選択するしかないだろう。
さあ、そうと決まればあとは頑張って走るしかない。
フェリーから降りて、なぜか皆さん笑顔だ。(登りが少なくなって喜んでるみたい)


今日の走行距離は100kmを越える。もともと厳しい後半戦だったところに、さらに10km以上の迂回だ。
果たしてこの選択、どちらが正解なのか・・・結果はゴールしてみないとわからない。

川内まで17kmの表示。
海岸線を行くのだから、平坦路で楽だろうと思えるが、とんでもない。
強烈な向かい風が吹いていて、海面も小さな波が打ち寄せている。

この向かい風が結構体力を奪っていく。そして休憩もほとんど取らず走り続ける。
16:20 川内のコンビニで一息つく。ここまではなんとかいいペースで走ってきた。


ここから川内ダムまで、川内川に沿って緩い登りがしばらく続く。
自分は昨年この道を下って来たので、どんな感じのコースなのかよくわかっている。
道は実に綺麗で、交通量も少なくて快適な道だ。昨年は、本当に気持ちよく下ってきた。


やはりこちらのコースを選択して正解だったかもしれない。
緩やかな勾配は、実に気持ちよく走り続けることができる。
脚にも優しく、精神的にも落ち着いていられる。10kmのハンデもこれなら負担にならない。


17:54 川内ダムに到着。海岸線から約220m登ってきた。
本来の予定コースを走っていれば、もうそろそろゴールになる時間だ。
こちらの迂回コースは、さらにもうひと頑張り登らなければいけない。


この時間になっても空は明るく、まだまだ日没には時間がある。
残りの距離も少なくなってきて、かなり心に余裕が生まれてきた。
すでに宿には遅くなることは連絡済みなので、焦らず走ることができる。

落ち着いて走っていれば、周囲の素晴らしい景観にはっと気が付く。
昨年ここを訪れた時、「日本で最も美しい村 佐井村」という標識があった。
まさにその通りの美しい景観が、道の左右に広がっている。


昨年気持ちよく下った、ちょっとおしゃれなトンネルが現れる。素敵なデザインだが、きつい勾配の登りだ。
もうそろそろ脚の具合が悪くなってくるメンバーも出てくる。


18:21 標高254m ピークまであと120mだ。
長かった登りもそろそろ終わりに近づいてきた。正面の空に夕焼けがきれいに輝いている。


なんと、こんな所に牧場があった。牛が何頭も放牧されていて、突然の珍客に皆驚いている。
美しい夕焼け、美しい牧場、緑豊かな草地。佐井村は、やはり美しい。


18:46 標高370m ピークに到達。
脇野沢港から3時間30分、川内のコンビニから2時間15分かかった。

さあ、あとは一気に福浦の海岸まで急降下のダウンヒルだ。
道幅が広く、路面が素晴らしく、対向車が全くこない最高のダウンヒルの様子をご紹介しよう。
https://youtu.be/EvaIvuacNSs


素晴らしいダウンヒルだ。これほど恐怖感の少ないダウンヒルも珍しい。
とにかく路面が素晴らしい。まるでサーキット場のような、奇麗な舗装だ。

道幅一杯に広がって下ることができる。
コーナーもきつくなく、ブラインドコーナーもほとんどない。


信頼のおけるホイールと、制動力のあるブレーキが必須だ。
ブレーキレバーを離せば、グングンスピードが上がる。しかしこのダウンヒルは下りやすい。
とにかく気持ちのいいダウンヒルだ。なかなかこんな条件のいい下りはないだろう。


19:08 300m以上を一気に下って、ようやく本日の宿に着いた。
宿の方たちは、もう長いことお待ちだったようで、すっかり迷惑をかけてしまった。
走り終えてみれば、今日の走行距離は、前半53.3km 後半52.9km 合計106.2km  という新記録となった。


小さなお風呂に順番に入って、ようやく20時から夕食の開始だ。
もう何もかも異例づくめの一日になってしまった。
しかしよく走った。全員、よく脚がもった。途中でトラブルに見舞われたら、まだゴール出来ていないだろう。


テーブルに並んだご馳走の数々! 豊富な海の幸に驚くばかりだ。
今宵は我々だけの貸し切り。思う存分飲んで食べて、といきたいところだが、すでにこんな時間だ。

ウニの美味しさに全員ノックアウトされた。
心のこもった数々の料理に大満足の一夜だった。

二次会は工具の自慢話で盛り上がる。おすすめの工具を取り出して解説が始る。
これだけ走って、これだけ食べて、本当に元気なおじさんたちだった。



帰宅後、海峡ラインコースと迂回コースの詳細を調べてみた。
両方をプロフィールマップで比べると、その差は一目瞭然だ。

やはり迂回コースの方が楽だ。距離はあるが脚にやさしい。
海峡ラインコースを行っていたならば、きっと3つのピークに脚も死んでいたに違いない。


 

スタート

蟹田

距離: 53.3 km
所要時間: 5 時間 24分 59 秒
平均速度: 毎時 9.8 km
最小標高:  1m
最大標高:  75m
累積標高(登り):  220m
累積標高(下り):  268m

脇野沢

ゴール

距離: 52.9 km
所要時間: 3 時間 58分 00 秒
平均速度: 毎時 13.3 km
最小標高:  27m
最大標高:  377m
累積標高(登り):  436m
累積標高(下り):  429m


(2024/6/23 走行)


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