峠への招待 > ツーリングフォトガイド >  ’2024 >  和歌山ツーリングB 糸我峠・方津戸峠・湯浅・紀州鉄道



2024年9月28日(土)


和歌山ツーリング三日目。今日もまだまだ気温は高い。
今朝の朝食も美味しかった。この宿、シンプルかつサービスがよくて気に入りました。

昨夜は、いらない荷物やお土産をコンビニから発送した。
コンビニが併設されているので本当に便利だ。


まずは「熊野古道 糸我峠」へ向かう。
2004年9月に和歌山を訪れた際、熊野古道を辿ろうと計画し糸我峠を越えた。

徒歩でしか越えられない小さな峠だったが、なかなか味のある峠だった。
再びこの峠を越えて、前回と同じように湯浅の町に下りたいと思った。

走り始めると、20年前の記憶が蘇ってくる。
いつも思うが、自転車で走った道というのは何年たっても覚えている。車やバイクではありえないことだ。
糸我稲荷神社から熊野古道の雰囲気がより漂ってくる。


糸我稲荷神社で珍しく観光客に出会ったが、そこから先はまったくの一人旅だ。
糸我峠を越えようという物好きはなかなかいないだろう。

越えたところで、湯浅まで行くのも大変だし、戻るのも大変だ。
やはりここは自転車で越えるのが一番正しい・・・と思っている。

糸我稲荷神社からすぐ先に「糸我王子」がある。


熊野古道の「王子とは」?

12世紀から13世紀にかけて、上皇や貴族たちがこぞって熊野詣(熊野古道を歩き、熊野三山を参ること)に出かけていました。当時の熊野詣は現代とは異なり、命がけの行程。往復するのに1ヶ月もの時間を要しました。
上皇や貴族の熊野詣先達を務めていたのは修験者たちでした。修験者たちは道中の守護を祈るために、地元民が在地の神を祀るために立てていた社を「王子」として認定し、神社として整備したと考えられています。
その数は熊野古道沿いに100箇所以上と言われており、「数多」を意味する九十九をつけて「九十九王子(くじゅうくおうじ)」と呼ばれています。

https://sen-retreat.com/journal/36/


前回来た時に比べ、真っ赤な熊野古道の幟が置かれ、「糸我王子」の解説板などが整備されている。
やはり世界遺産に登録されただけあって、しっかり管理されているようだ。


熊野古道はどんどん山の奥へ進んでいく。そして最初の分岐を左へ向かう。
この場所はしっかり記憶に残っている。20年前とまったく変わっていない。

比較するために当時の写真と並べてみた。違いは案内板が建ち、欠けた路面が修復されたぐらいだ。
まったく時が止まっているかのような熊野古道の道筋だ。


とにかく雰囲気は最高だ。このまま、古代にタイムスリップしてしまうのではないか、なんて感じてくる。
山道はいよいよ勾配がきつくなり、すでに乗車することは不可能だ。
明るい時間帯ならなんともないが、日が暮れてきたらこの道は恐ろしくて歩けそうもないだろう。


舗装も終わり、とうとう本格的な山道になってしまった。
この辺りの記憶はあまり残っていないが、最後が辛かった事だけは覚えている。

糸我峠の茶屋があった場所は、現在車が通れる細い車道になっている。
そこへ出るには熊野古道を直登することになる。その最後の地点に東屋がある。


前回来た時には、もちろんこんな立派な東屋はなかったし、解説板もなかった。
かなりお金をかけて整備してきたことがよくわかる。

糸我峠の解説が相当詳しく書かれているので、ここに写真で紹介しておこう。
平成29年(2017年)となっているから、7年前に整備されたようだ。
歴史的遺産は、こうして解説があるとより分かりやすい。こうした配慮に感謝するばかりだ。


この東屋から先が、この峠の最大の難所だ。前回来たときは、「藪漕ぎ」状況だった。
今回、そんな状況を覚悟してきたのだが、さすがに整備されて「藪漕ぎ」から「押し上げ」に変わった。

●糸我峠への「押し上げ」紹介
https://youtu.be/uivAU4eFniA


押し上げて飛び出た先に「糸我峠」「峠茶屋跡」の石標がある。
これは20年前とまったく変わっていない。この場所へ来ると、再び鮮明な記憶が蘇ってくる。


峠の切通しから、湯浅方面が眼下に見える。
前回も同じように、ここに腰を降ろして休憩したのを覚えている。
「峠を越えた」という実感をこれほどよく味わえる峠もなかなかない。

昔の峠越えは皆こんな感じだったのだろう。車道を簡単に越えられる今の峠越えとは重みが違う。
スタートして約1時間、順調に糸我峠まで来たが、本日はまだ始まったばかり。
のんびり雰囲気に浸っている時間もなく、一服してすぐに下りに入る。


前回のレポートでは、峠からの下りをこのように報告していた。
今回もこの素晴らしい絵に出会えるのかと期待していたのだが、すっかり絵はなくなっていた。
旅人への素晴らしいお土産だっただけに、実に残念である。何とか復元できないものだろうか。


絵はなくなってしまったが、急勾配の糸我峠からのダウンヒルを紹介しよう。

糸我峠からのダウンヒル
https://youtu.be/1mwkzdOXn4s


本当に古道を下るといった感じのダウンヒルだった。
スケールは小さな峠であるが、やはり歴史を感じる峠の一つだ。

広い車道に出ると、その先の分岐が「方津戸峠」だ。
この峠もよく覚えている。そして峠の標がそのまま朽ちずに残っている。
道路脇には詳しい解説板が設置されていて、この峠の歴史がよくわかる。


峠を下ると湯浅の町に入っていく。この町を訪れるのはこれで2度目だ。
まずは「有田湯浅警察署」を訪ねる。

実は、プランニングしている段階で道路の通行止めの情報を得た。
これから向かう白崎方面の途中で工事中らしい。そして通行はできないような事がわかった。

しかし、こちらは自転車だ。いつものように通れるかもしれない・・・詳しくは現地で聞くしかない。
ということで、ここの大きな警察署ならわかるだろうとやってきたのだが・・・結局管轄外で不明とのこと。
なんだよ、すぐ隣の町のことなのに。仕方ない、もっと現場に近い所で聞くしかない。


和歌山県 有田郡 湯浅町

和歌山県の中部西岸に位置する港町、湯浅町。
町に面した紀伊水道は瀬戸内海と太平洋の狭間にあたり、波穏やかな深い入り江に沿った海岸線は、時間帯でさまざまな美しい表情を見せてくれます。
隣接する広川町にまたがる広い湾には広川が流れ込み、天然の良港として漁業が栄えただけでなく、その地形や立地の良さから古来より回船の寄港地や物流の拠点としても発展しました。
町の南北を熊野三山へと続く巡礼の道 熊野古道が貫く「古道歩きの宿場」としての側面からも、水陸交通の要衝として栄えた町と言えるでしょう。
湯浅と言えば、最もよく知られているのが「醤油醸造発祥の町」の印象ではないでしょうか。
今や和食の味の原点として世界に知られる醤油。その発祥が湯浅町です。
石積みの護岸でできた「しょうゆ堀」と呼ばれる内港、大仙堀には醤油蔵が建ち並び、今なお歴史情緒あふれる風情を湛えています。
醤油醸造発祥の地としてのストーリーは「最初の一滴」として平成29年(2017)に日本遺産にも認定されました。
https://www.yuasa-kankokyokai.com/article/1182/


前回来た時は、ゆっくり観光する時間もなく、ただ町中を通り抜けるだけだった。
今日は多少時間に余裕があるので、歴史ある町の中をゆっくり訪ねてみることにした。
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醤油醸造など商工業を中心に発展した湯浅の町並みは、その重厚な歴史的風致が伝わってくる。
細い道が町中に入り組んでいて、のんびりと散策する。
旧栖原家住宅、角長職人蔵、甚風呂と巡る。

角長では、名物「生しょうゆジェラート」をいただく。なんと醤油味のアイスクリームだ!
甚風呂は、幕末から昭和の終わりまで営業していた銭湯。

中に入ると、どこかに記憶が残っている、懐かしい風景が溢れている。
やはり昭和が懐かしい。そして落ち着く。
町歩きが楽しくて、気が付けば1時間も湯浅の町巡りをしていた。


時刻は11時。
今日はまだ50kmも残っている。ちょっとペースを上げないとまずい。
この後はずっと海岸線を行くことになる。どこかで昼食にしたいが、お店はほとんど期待できない。

GPSに事前に飲食店を登録しておいたので、ちょうど昼時にラーメン店に入った。
数少ない飲食店なので、店内は満員だ。お客さんは慣れた様子でお気に入りのメニューを注文していく。
何がいいのかさっぱりわからず、自分は「ネギ豚ラーメン」を注文。量・味とも満足の一品でした。


食後はシーサイドコースを快走、と行きたいところだが、アップダウンがあって結構つらい。
さらに満腹のお腹で、体が重くてしかたない。ヒーヒー言いながら海岸線を登っていく。


12:43 衣奈(えな)の町までやってきた。この先の通行止めを確認できる最後のポイントだ。
通行止めとなると、ここから海岸線を離れて南の衣奈隧道を行かなければならない。
どこかで、誰かに道を聞きたいと探していると酒屋を発見。さっそく道を訪ねてみる。

突然の訪問にお店の方も驚いた様子。
事情を話して聞いてみると、さらにご主人にも確認してもらって、土日は問題なく通行できるとのこと!

今日は土曜日だ、 助かった。これで当初の予定通りのコースで走れる。
やはり地元で確認しないとダメだとよくわかった。
突然飛び込んで、何も買わずに大変申し訳ありませんでした。


いったいどこでどんな工事をしているのか、逆に工事現場が待ち遠しくなってきた。
トンネルを抜け、走ること数分。工事の看板があったが、通行止めにするような状況ではない。


ようやく現れた通行止めの現場。どうやら斜面の崩落の復旧作業のようだ。
たしかにこれでは車は通行できない。自転車もきっと通してもらえなかっただろう。よかった・・・


13:13 昨日、有田みかん海道から見えた白崎海洋公園までやってきた。
「日本のエーゲ海」とも称される白の海岸美、と紹介されている。どれどれ、と園内に入っていく。
さすがにここは観光客が多く、ショップやレストランも充実している。


エーゲ海を見たことがないので何とも言えないが、「えぇ〜?」って感じでした。
上空や海から観れば全貌がよくわかるが、園内からではそのスケールがよくわからない。

それでも真っ白な石灰岩は確かに美しく、なかなか見ることのできない自然の造形美であった。
そして、 ここからの夕日もきっと絶景だろうな。


せっかくなので、グーグルストリートビューの画像で、「日本のエーゲ海」を味わいましょう。


和歌山の旅もいよいよフィナーレが近づいてきた。
最後は西御坊駅から紀州鉄道に乗って帰ろうと考えている。

由良港に近づくと、湾内に巨大な船舶の姿が見えてきた。そのデカさはちょっと異常だ!
何の船だろうと、できる限りそばまで近寄ってみることにした。
そして見えてきたのは、「LNG MARS」と船腹に書かれている。

調べてみたら、商船三井の大阪ガス向けLNG船 “LNG MARS”であることがわかった。
でかい! とにかくでかい! その大きさにしばし見惚れてしまった。
商船三井の 株主ですけど、さすがにこの船には乗ることはできませんね。

■LNG MARS概要
全長:288.0m
全幅:48.94m
満水喫水:11.55m
LNGタンク: モス独立球形ストレッチタンク方式(連続タンクカバー付)
総トン数:13万8000トン
タンク容量: 約15万3000立方m
主機関: 再熱式蒸気タービン
航海速力: 19.5ノット
建造造船所: 三菱重工業長崎造船所
船舶管理会社: 商船三井

 


「LNG MARS」に驚いていたら、さらに衝撃の映像が・・・
今度はなんと潜水艦が湾内に浮上しているではないか! えっ? 事故? 故障? なに? 
潜水艦なんて、自衛隊の基地以外では見ることがないのに、なんでこんな所に? 

望遠レンズで思いっきり拡大してみると、潜水艦の上に乗員がたくさん集まって何かしている・・・
やっぱり故障だ・・・何か不具合があって潜れなくなった・・・航行不能だろう・・・

違う場所から覗いてみるとさらに乗員の様子がよく見える。
トラブルにしては皆落ち着いている。慌てる様子もない・・・なんだ? 訓練かな?

まったく無知の自分には一大事のように見えたが、調べてみてわかった。
「海上自衛隊潜水艦『らいげい』 公試 由良港出港 の様子が紹介されていた。

巨大LNG船、自衛隊潜水艦と滅多にお目にかかれないモノに遭遇し大満足だ。


最後は今日初めての峠「小浦峠」を目指す。
標高50m弱の小さな峠だが、海岸線のアップダウンの繰り返しで、もうくたくただ。
峠は殺風景な小さなピークだった。峠を示すものは何もなく残念であった。


三尾の村に差し掛かった時に、道路脇の民家の窓にこんなかわいい猫たちの姿を発見!
すぐに急ブレーキをかけて戻ってきた。

わざわざ窓際に椅子を並べて、外が見れるようにしてある。
部屋の中も他に猫がいる感じで、ここはいったい何だ? と網戸越しにご挨拶を交わす。
あんまり近づきすぎると警戒されるが、それでもこちらに興味津々の様子。

寝ていた猫も起きだして、何の騒ぎ? って顔している。
しつこく観察していたら、最後に「シャー!」と怒られたので退散することに。すっと元気でね!!


15:47 西御坊駅に到着。さあ最後のお楽しみ、紀州鉄道だ。
この時間から輪行すれば、17時台の列車に乗って東京には23時過ぎには帰ることができる。
輪行するか、それともJR御坊駅まで走るか?

駅には、バイクライダーが一人、そして鉄道好きの若者が乗務員とお話している。
やはり、鉄道好きにはたまらない駅なのだろう。

停車している列車の発車シーンを撮影しようと、鉄道好きの若者に聞いてみた。
すると「あと15分」ですって。さすが、なんでも知っている!
15分も待ってられないので、こりゃJR御坊駅まで走ることにして、途中で列車の写真を撮ることに。


紀州鉄道

市民に愛される、御坊自慢のミニ鉄道。御坊駅と西御坊駅をむすぶ紀州鉄道は、営業距離2.7キロメートルの日本一短いローカル私鉄です。時速20数キロでトコトコ走る姿を一目見ようと、全国から鉄道ファンが御坊を訪れます。また、途中の「学門駅」のお守り切符は、受験生の心強い縁起物として大人気です。
https://www.city.gobo.lg.jp/sosiki/sangyokensetu/syoko/tanto/kankou/miru/kisyutetudou/1395033027817.html



何とも古めかしい、そして味のある車両だ。
営業的には存続するのさえ厳しい状況のようだが、ファンにとってはたまらない路線であるようだ。
できれば乗車してみたかったが、たったの2.7kmの路線なので、沿線の駅舎を訪ねることにした。


あっという間に次の駅に到着する。そしてとにかく本当にローカルなミニ鉄道だ。
果たして乗客はいるのだろうかと心配になるほど、駅には人影が見当たらない。
電車を待つより、自転車で走ったほうがきっと早いだろう。若者は多分乗らないのではないか?


「紀伊御坊駅」と「学門駅」の間に短い直線区間がある。
待ち構えて撮影するにはちょうどいいロケーションだ。
そろそろ先ほどの列車が発車して、ここを通過するはず。

一度だけのチャンスを逃さないようにと、ビデオ、カメラを構えて撮影の練習をする。
どういう構図で撮ろうか? シャッターは連写? 通り過ぎたらビデオで後姿を追う? などいろいろ・・・

警報機が鳴り始め、いよいよやってきましたミニ列車。
すでにビデオは撮影開始。そして目の前に近づいてきたらカメラのシャッターを押して連写開始!!

と思った瞬間! あれ? 運転士席に? 誰かいる!


近づいてきて、顔がはっきり見えるようになってたまげた! なんと、さっきの鉄道好きの若者だ!!
なんで運転士席の真横にいて、スマホで撮影してんだぁ? アホか? とこちらが驚くばかり。
もう、おかしくておかしくて、あきれ果てた。しっかり運転士席に入り込んでるよね?


衝撃のシーンに出会って次の学門駅へ向かう。この駅も全く無人だ。
ひょとしたら、先ほどの列車、乗客は彼一人かもしれない・・・
学門駅を過ぎると終点のJR御坊駅だ。本当に短い、そしてローカルな鉄道だった。

駅に着いて帰りの準備をしていると、スマホであれこれ駅の中を撮影している若者の姿が・・・あっ!彼だ!
お互いにすぐにわかって、先ほどの衝撃シーンの話に盛り上がる。
事情を聞けば、運転士さんから撮影の許可をもらったそうだ。それであの特等席で撮影していたらしい。

こりゃ彼にこちらの写真を見せてあげようと、デジカメの画面を見せてあげると大喜び!
こんなシーンは一生の思い出だろう。
彼のメールアドレスを聞くのも気が引けるので、画面をスマホで撮影させてあげた。


最後の最後に楽しい出会いだった。
本当に鉄道が好きで、わざわざ紀州鉄道に乗るために日帰りでやってきたそうだ。
好きな事をやっている人は生き生きしている。目が輝き、そして気持ちが優しかった。

彼は1本前のくろしおに乗っていった。
17:37 くろしお30号で新大阪へ向かう。この時間で東京に帰れるのだから素晴らしい。


車内は空いていた。新大阪までの約2時間は、旅のフィナーレとしては十分すぎる時間だ。
次第に日が落ちていく車窓を眺めながら、この三日間の旅を振り返る。
天気に恵まれ、毎日様々な出会いと、色々な出会いがあった。

考えてみればこの旅、自分の好きな事のオンパレードだった。
ローカル線の駅巡り、ねこ駅長、廃線跡、温泉、工場見学、巨大船、潜水艦・・・そして鉄道好きな若者。
やっぱり旅は楽しい。そして和歌山県は魅力いっぱいだ。またいつか走りたい。


距離: 64.5 km
所要時間: 8 時間 16 分 15 秒
平均速度: 毎時 7.8 km
最小標高: 0 m
最大標高: 158 m
累積標高(登り): 637 m
累積標高(下り): 641 m

(2024/9/28 走行)


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