峠への招待 > ツーリングフォトガイド >  ’2022 > 御嶽パノラマライン・鈴蘭峠・塩沢温泉



2022年11月6日(日)


昨日の最後の登りは本当に過酷だった。

調べてみたら、軽トラ登場から温泉街までは平均8.7%の勾配であったが、最後はなんと17.6%の激坂であった。

元気な時なら何とかなるかもしれないが、最後の最後にこの登りは強烈だった。


当然全員押していたけれど、なんと34Tの巨大フリーは、17.6%もクリアすることができた。凄いね!
(ギヤ比: 28/34=0.82    ま、無理せず押せばいいんですけどね)

翌日、全員元気な姿で朝食に顔を揃えた。

大変な一日だったが、さすがベテラン揃い、翌日にはすっかり回復している。


玄関にずらりと並んだ皆さんの靴。お値段もピンからキリまで。

ちなみに私の靴は、下段右から3つ目、ワークマンの1900円、「鋼先芯入りセーフティスリッポンシューズ」です。


誰かさんの高級シューズなら、20足は変えますね、きっと。

こんな靴ツーリングになんか使えるか!なんて思ってましたが、いやいや・・・詳しくはそのうち「旅の小道具」で。


朝から何ですか? このブルーシートは? 

ちゃんとサポートカーには、自転車収容時に雨風から愛車を守るブルーシートが積んであるんです。


ありがたいことだ。まとめた自転車にこれをかけておけば、大切な自転車を守ることができる。

ここまで準備していてくれてたとは・・・感謝感激です。


今日も見渡す限りの快晴。そして無風。

今回初の全員集合写真。カラフルなウェアと、満面の笑顔がとにかく素敵です。

やっぱり同じ趣味の仲間は楽しい。そしてありがたい。


昨日、暗い中を一生懸命登っている時に通り過ぎた旅館街を下っていく。

かつては多くのお客さんで賑わっていたのだろう。大きな建物が道の左右に建っている。

しかしどの建物も朽ちて、薄汚れいる。使われていない旅館はあまりにも哀れな姿だ。


走り始めは気温も上がらず寒い。それでも気分は上々、さあ2日目のツーリングの開始だ。

今日のコースは昨日とは打って変わって天国だ。


さて、総勢12名のクラブランであるが、さっそく2日目にして大きく2グループに分かれてしまう。

まず、本日帰るチームと明日も走るチームとに分かれる。

私を含めた5名がもう一泊し、その他のメンバーは木曽福島方面へ向かって戻ることになる。


サポートカー夫妻もここでお別れだ。まあ、我々のクラブランは、いつもこんな感じだ。

最初から最後までずっと一緒というわけではない。各自好きなプランで好きなように走る。

昨夜の楽しい宴を一緒に過ごせただけでも十分だ。


昨晩真っ暗で何もわからなかった分岐地点。明るいとこんな爽やかな所だったんですね。

ここで皆さんとはお別れだ。お互いの無事を祈って下り始める。


昨日いやというほど登ったので、今日は一日下り基調の極楽コースだ。

登っただけ下れる。自転車旅は、ちゃんと頑張った分だけご褒美がもらえるところがいい。

冷気の中、朝からのダウンヒルはかなり寒い。日陰では路面が凍結している所もあるので要注意だ。


日差しが出てくるとほっとする。体も次第に暖まってくる。

細かな起伏を繰り返しながら、御嶽パノラマライン(岐阜県道441号濁河温泉線)を行く。


静かな山中を我々が走っていくと、前方の木々がいきなり「ガサガサ!」と揺れ出した。

すぐに猿だと分かった。よく見ると、こちらに驚いて大急ぎで逃げようと必死だ。

やはり人間が怖いようだ。そんなに慌てなくてもいいというぐらい、木から木へ飛び移って消えていった。


宿で聞いた話によると、一か所通行止めがあると言っていた。

と言われたところで、我々はとにかくこの目で見てみないことには納得できない性格。

スタートして8km地点、追分の分岐に「全面通行止」の看板が現れた。


これから向かう、鈴蘭峠手前辺りで工事中の印がついている。

車はゲートで通れないようになっているが、当然我々は行ってみるしかない。

今朝、サポートカーの奥様にいただいた差し入れで一息つく。こういう甘味が嬉しいですね。


もし工事中を突破出来なければ、再びここへ戻ってきて岳見峠経由で迂回することができる。

まあ、なんとかなるでしょう、今日のこの天気なら。


通行止めのおかげで、しばらくは我々だけの貸し切り林道となった。

ここからはほぼフラットな、起伏の少ないパノラマラインが4kmほど続く。


御嶽山の雄姿を眺めながら、濁河川に沿って続くこの林道は絶景続きだ。


静かな貸し切り林道に、暖かい日差しが降り注ぐ。フカフカの落葉の中を、音を立てて走り抜ける。

フロントバッグには、この4日間のプロフィールマップが入っている。

3日目の今日は、登りが少なく一番楽なコースだ。


素晴らしい雰囲気だ。

標高1400m付近はかなり紅葉も終盤に近くなり、そろそろ晩秋の気配が漂っている。


薄っすらと雪化粧した山頂の脇から、小さな「噴煙?」が見える。

?かと思ったが、ズームで確認してみるとやっぱり「煙」だ。


ビデオ映像を見てみると、確かに噴煙が立ち上っている。やはり、いまだに活動しているのがわかる。

帰宅後調べてみたら、やはりこの日(6日)には噴煙データが記録されている。


現在地から噴煙辺りまでの直線距離を測ってみると約8kmあった。これだけ離れていればまず安全だ。

過去、北海道の有珠山で噴火の直撃を浴びた自分は、少なからず噴火への恐怖がいまだに残っている。


それにしても「パノラマライン」とはよく名づけたものだ。まさにその通りの展望が続く。

いい時期に訪れた。青空の中に、雪も紅葉も見ながら走れるとはなんと贅沢な事だろう。


「大平展望台」という絶景の東屋が現れた。昼飯時だったら、感激して涙していたことだろう。

残念ながら時刻はまだ11時。ランチタイムにはちょっと早すぎる。

そうだ、この感じは何度も訪れている北アルプスの絶景ポイント「立屋展望広場」に似ているかもしれない。


展望台の少し先に、「日本一の溶岩流 馬の鞍滝 落差25m」と書かれた表示があった。s

溶岩流」と書いていなければ、深い尾根が続いているな、としか思えない美しい眺めだ。

溶岩流

火山活動で地下のマグマが火口から噴出するとき、爆発して破片にならずに、液体のまま静かに地表を流れていくのが溶岩流です。

マグマの性質によって、ねばりの小さい流れやすい溶岩流では、なだらかな形の火山になり、ねばりの大きい流れにくい溶岩流は、ドーム状の火山になります。

御嶽山の溶岩はねばりが中間的で、富士山のような形の裾野になっています。


御嶽山の草木谷溶岩流

御嶽火山は、溶岩流などの噴出物がたくさん積み重なってできています。

約6万年前に摩利支天山から流れた草木谷溶岩流は、当時の兵衛谷を埋めながら、15kmほど先の巌立付近まで続いています。

http://hidaosaka-kanko.com/geopark/
 


約6万年前に流れ出した溶岩流が、なんと15kmも続いていると知ると・・・

上記のホームページには、次のように紹介されている。

「六万年。想像を超える遥かな物語が、ここにはあります。」
 まさにその通りの眺めだ。


適度にアップダウンを繰り返すと、一気に200mほどのダウンヒルが待っている。

素晴らしい下りだ。眺めは最高、走りやすい林道、そして何と言ってもこの天気だ。

自転車でなければ絶対に味わえない魅力だろう。


下っていく途中には、こんな大きな棒葉がたくさん落ちている。うーん、何かに使いたいが・・・残念。

楽しく下っていくと、忘れた頃にやっと通行止めの現場が現れた。


そうですか、ここですか・・・路肩が崩れて修復中のようだ。

大きな重機で道を塞いで、車両が通れないようにしている。

幸運なことに今日は日曜日で工事はお休みだ。まあ、この程度だったら自転車は通してもらえただろう。


よかった。これで不安材料がなくなった。

工事中のおかげで、最高の絶景パノラマラインを満喫することができた。


ここから鈴蘭高原までは150mほど登り返すが、途中に鈴蘭峠(1250m)がある。

峠の雰囲気は感じられず、大きな木の根元に「標高1250m」とあるだけだ。


鈴蘭高原はかなり有名な観光名所。ゴルフや温泉、美しい景色などを楽しむ高原観光リゾートだそうだ。

ついさっきまで静寂の時間を楽しんでいたのだが、ここにきて一気にバイクが多くなった。


展望台ではご覧の通り、バイクのツーリングクラブが愛車を一列に並べて記念撮影中。

他の観光客が来てもスペースを独占して動こうとせず。他の人も皆さん写真撮りたいんですけどね・・・

一団が去ると、さらに次の一団がやって来た。バイクライダーにとっては、ここは名所なのでしょう。


さすがにここからの展望は素晴らしい。

穂高連峰、乗鞍岳から御嶽山までを一望することができる。そして遠く槍ヶ岳の姿までも確認できる。


少々邪魔者がうるさいが、ここでランチタイムにするのがベスト。

御嶽山をバックに今日も美味しいランチタイムの始まりだ。


今日は宿で作ってもらったお弁当に棒ラーメンというメニューだ。

登場したのは、BE-PAL付録の棒ラーメンケース。棒ラーメンファンなら必ず持ってますよね?

えっ?持ってない? ダメですね〜すぐにBE-PAL買ってください。


食後の最後は、例によって「お茶会」だ。この陶酔しそうな表情が最高ですね。

幸せです。こんな贅沢な旅をさせてもらって。


鈴蘭高原から400mのダウンヒルを楽しんで、鳥屋峠への分岐に出た。

当初の予定では鳥屋峠を越えて、塩沢温泉へ向かう考えであった。


鳥屋峠までの登りは、距離4.5km、標高差350m、平均勾配7.8%だ。まあ、約1時間程度だろう。

時刻は14:30 さあどうする? 鳥屋峠を越えても時間的には問題ないが、最後の宿までの登りが辛い。


5万図を道路に広げて作戦会議だ。

「えー?、あの山登るの?」「たいしたことないよ、すーぐそこ、すーぐそこ」

「距離はあるけど、ぐるっと迂回して行こうよ」「走ってもいいよ〜」「今日は宿でゆっくりしようよ〜」


など、色々な意見がでた結果、峠越えはやめて、ダム経由でぐるっと遠回りすることに決定。

これなら距離はあるけれど、登らずに済む。


ところが、5万図ではなく道路地図をよく見たら、なんと途中でトンネルが開通している!(権現トンネル)

5万図にはそんなトンネルないんですけど・・・やっぱり5万図はもう古くてダメか。こういうことあるからね。

グーグルマップ見ても、ガーミン見てもトンネルはしっかりある。5万図を信じちゃいけませんね、これからは。


ということで、一気に楽ちんコースがみつかり大喜びの面々。

今日は昨日みたいな苦労せずに宿に行きましょう〜! となるはずでしたが・・・


貯水池沿いの道は、午後の光を浴びてこんな美しい光景が続く。

道はフラットだし、車もほとんど来ない。やっぱり峠越えしなくて大正解だった。


権現トンネルはこんな素敵なデザインだ。

このトンネルの先にはいよいよ野麦峠への道が待っているぞ、という感じだ。


約2kmのトンネルは結構長かったが、交通量も少なかったので、意外とあっさり抜けることができた。

峠越えしていたらとんでもない苦労をしていただろう。トンネルの有難さを、またしても感じてしまった。


さあ、今日も無事にフィナーレに近づいてきた。

ここで突然思い出したように、宿でもらったクーポンを使わねば・・・ということになった。

岐阜県でもらったクーポンは県内で使わないと無駄になる。明日は長野県に入ってしまう。


ということで急遽道の駅へ立ち寄る。スマホのアプリに各自のクーポンを登録し・・・

さーて何買おうかな? でもここクーポン使えるの? 店員さん「使えません」ですって・・・がっくし。

なんなんだよ、道の駅で使えないって、いったいどこで使えんのか教えてよ〜


一気にトンネルワープで時間短縮になったので、中之宿トンネル脇の旧道に入ってみる。

この中之宿トンネルも5万図には記載はない。

かつての難所「地蔵尾の下道」のいきさつを記した看板がある。


地蔵尾の下道

野麦峠への近道が、国道の旧道の川をはさんだ対岸の断崖に通っていたそうです。

行商人の市蔵がここに道を造るべく、人々と協力して岩場を切り開き、ついに830mに及ぶ道を造りました。

のちに市蔵の開いた道は「飛騨の青の洞門」と称されるようになったそうです。

http://usa-nekosando.pupu.jp/miti_361huna-map.html


面白そうな脇道だが、先に行ったメンバーがすぐに戻ってきた。

すでに廃道になっていて、行き止まりだ。


時刻は15:50 さて、今日もゴールが近づいてきた。

最後は塩沢温泉へ150mほど登らなければならない。それでも、ちょうどいい時間に宿に着きそうだ。


余裕の一日だった。絶景パノラマラインを堪能し、トンネルワープのおかげで時間も短縮できた。

さて本日の宿はどんな温泉宿なのかな? かなり山の中にあるけど、一軒宿かな?


「宿泊OK 七峰館 二百m先 橋を渡って左へ」と大きな看板が道路脇に立っている。

今日泊まる宿はここ?(ほとんどリーダーにお任せで、泊まる宿の名前も頭にない)

塩沢温泉は地図上では川に沿ってしばらく登った先に温泉マークがある。


プランニングでもらったルートは、その場所が本日の宿となっている。

当然、GPSにもそこが目的地と設定されているため、「橋」の手前を左折していく。

”橋を渡って”
 なんて字は小さくて見えなかったし、”川沿いに登る”しか頭になかった・・・


3人がGPSを付けていて、当然目標は川沿いに登った”温泉宿”になっている。

GPSは正確だから、ここを曲がって川沿いに行けと指示が出る。何の疑いもなく登り始める。

川沿いの道はいきなり寂しい雰囲気が漂う。宿の案内もないし、工事中の看板も出てくる。


「なんか宿があるとは思えないね・・・」なんて話しながら頑張って登っていく。

「橋を渡って・・・て書いてあったよぉ・・・」とアナログ地図派のメンバーが呟く。

「だって、この道しかないよ、温泉宿へ行く道は・・・」とGPS派。

徐々にGPS上のゴールが近づいてくる。さらに寂しい雰囲気・・・いったいどこに宿があるの?


結構厳しい登りだ。すでに温泉記号のある場所は過ぎたが、宿などまったくある気配がない。

いよいよ”おかしい?”と背筋が寒くなってきたが、もう少し先、塩沢の地名があるところまで頑張ってみる。


「ぜーぜー・・・もう勘弁してよ・・・」と最後の力をふり絞る。そして、とうとう見つけた・・・

やっぱりこの道で正解でした・・・ん? 「塩沢山荘?」 これですか?

あまりにも周囲の状況からして温泉宿とは思えない雰囲気。さすがにこの時点で間違いに気が付く。


すぐにスマホでグーグルマップを見てみると・・・「全然違うよ!こっちだよ!」と画面を見せる。

「だから、橋を渡ってって・・・言ってたじゃん・・・」あちゃー。

なんと、最初から目標物を間違えていたということだ。


温泉記号があるものだから、てっきりここが宿だと勘違いしてルートを作成していた。

ルートを間違えていたが、目標に対しては正しく向かっていたというお粗末だった。


ずいぶん頑張って登ってしまった。30分、160mも無駄な登りだった。参った・・・大失敗だった。

GPSを信じすぎて、何も確認しなかった。宿の場所を地図で確認しておくべきだった。

早い時間で助かった。これがギリギリの時間だったら、またまたナイトランになっていたことだろう。


誰を責めるでもない、全員の不注意と確認ミスだ。大いに反省し、今後のためにしっかりと記憶しておこう。

大急ぎで”ダウンヒル”。あっと言う間に先ほどの分岐まで下ってくる。

指示通りに橋を渡ると、温泉宿への案内がすぐに現れた・・・あぁ、あと20m先へ行ってればよかったのに。


大失敗をしでかしたが、それでも16:41には宿に到着することができた。

鳥屋峠を越えてこの失敗をしでかしていたら、いったいどんな結末だったであろうか。


ソロで走っていたら、きっと権現トンネルの存在もコースミスも気付かなかっただろう。

やはり皆の意見と判断があってこそのゴールだ。とにかく無事に着いてよかった。


今日の宿は日帰り入浴ができる大きな温泉宿だ。

日帰り客が帰ったら、玄関に自転車を入れていいと言っていただいた。


もう、この大失敗の笑い話でしばらく持ち切りだ。

「登っている最中に、おかしいな?って感じてたよ」なんていまさら弁解しても始まらない。


皆さんおかしいな、と少なからず感じていたけれど、誰もそれを口にせず・・・

ダメですねぇ、こういう時は一旦立ち止まって確認すべきですね。勉強になりました、ホント。


今夜のご馳走は「飛騨牛をふんだんに使った飛騨牛づくし」の絶品だ。

どうやら今日もまた我々だけで貸し切り宿のようだ。


食卓を彩る御馳走にお酒もすすみ、贅沢な時間がゆっくりと流れる。

今日も思い出に残る素晴らしい一日だった。最後の大失敗は、この先延々と語り継がれるでしょう。


食後は天然温泉展望大浴場「美肌の湯」で温まった後、いつものように二次会だ。

明日はいよいよ野麦峠越え。今日の失敗に懲りて、しっかりとルートの確認だ。

さあ明日で最終日。3つの峠を越えて藪原駅まで下る。果たして無事にゴールできるだろうか?

 


 

距離: 54.9 km
所要時間: 7 時間 20分 33 秒
平均速度: 毎時 7.5 km
最小標高:  874m
最大標高:  1764m
累積標高(登り):  776m
累積標高(下り):  1542m

(2022/11/6 走行)


峠への招待 > ツーリングフォトガイド >  ’2022 > 御嶽パノラマライン・鈴蘭峠・塩沢温泉